「マネジメント」と「コントロール」は似たような意味を想起させる単語です。
実際、この2つの言葉の違いを説明できるマネージャーの方は、そう多くないのではないでしょうか。
しかし、この2つの言葉の違いを説明できるかどうかは非常に大切なことなのではないかと筆者は考えます。
本記事ではマネジメントとコントロールの違いについて解説しました。
マネージャーの方にぜひ最後まで読んでみてほしいです。
目次
マネジメントとコントロールの違い
マネジメント(management)とコントロール(control)を翻訳すると、どちらも「管理」となります。
しかし英語では明確に「management」と「control」というように分けられているため、両者では意味が異なるのは間違いなさそうです。
ここではマネジメントとコントロールの違いについて解説していきます。
マネジメントとは?
マネジメントは成果を上げるために組織を運営することです。
例えばプロジェクトマネジメントは、プロジェクトを成功させるためにプロジェクト全体を管理することを指します。
他にもタイムマネジメントやリスクマネジメントという言葉がありますが、いずれも「目標達成」が目的です。
コントロールとは?
コントロールは業務を正しく進めるために調整することを指します。
例えば「プロジェクトをコントロールする」という表現の場合、プロジェクトが計画通りに進行するように調整していきます。
マネジメントとコントロールの違いとは?
結局のところ、マネジメントとコントロールにはどのような違いがあるのでしょうか。
まず挙げられる違いが、組織管理の在り方です。
マネジメントは組織の自発的な動きを利用して「組織を運営する」という意味合いとなります。
一方、コントロールは「組織を統制する」という意味合いが強いです。
こうして見ると、たしかに「運営」と「統制」では意味が大きく異なってきます。
また、マネジメントとコントロールは目的が異なります。
マネジメントは何かしらの目標を達成することが目的です。
一方、コントロールは目標達成というよりは「計画通りに正しく業務を進めること」が目的という印象を受けます。
マネジメントを重視した方がいい理由3選
現在の日本企業の多くは、常に業務を正しくするコントロールが得意だと言えるでしょう。
しかしその一方で、業務が本当に正しいかどうかを判断するマネジメントに関しては、あまり得意だとは言えないかもしれません。
ここでは、コントロールよりもマネジメントを重視した方がいい理由を紹介していきます。
理由は以下の3つです。
- 目標達成に繋がるから
- PDCAサイクルを回せるから
- 変化に対応しやすいから
それぞれ詳しく見ていきましょう。
理由①:目標達成に繋がるから
マネジメントは目標達成を目的に取り組む業務です。
企業活動における基本的な目標は利益を最大化させることであり、利益を最大化させるためには数々の小さな目標を達成させなければなりません。
そのためには目標達成を目的とするマネジメントが必要です。
コントロールを重視しすぎると、業務マニュアルにフォーカスしてしまいます。
たしかに業務マニュアルを徹底するのは大切なことです。
しかし業務マニュアルは、あくまでも目標達成のために存在する一要素にしか過ぎません。
目的と手段を履き違えないようにしましょう。
理由②:PDCAサイクルを回せるから
マネジメントではまず始めに、目標達成のために計画立案・資源配分・優先順位を決定します。
しかし計画通りに進むことはほとんどありません。
そのためマネジメントでは、シチュエーションに応じて、業務内容や組織構造を変更しながら対応していきます。
これらの業務は、コントロールにはないものです。
コントロールを重視し過ぎてしまうと「いつも通りの業務」を徹底しがちになるので、PDCAサイクルを回すことができず、業務改善の機会を失ってしまうことになりかねません。
目標達成のために変化し続けるためには、マネジメントを重視した方がいいでしょう。
理由③:変化に対応しやすいから
現代はVUCAの変化の激しい時代です。
そして今後も、テクノロジーの進化に伴う形で、変化がより激しくなるでしょう。
その中でマネジメントは、急激な変化に組織を対応させ、柔軟性のある業務プロセスを構築するのに役立ちます。
従業員の自発的な行動をサポートできるからです。
一方、コントロールの場合、マニュアルで想定されているような状況には対応できるものの、不確実性の強いアクシデントに対応できなくなります。
ただし、もちろんコントロールは重要な要素なので、マネジメントとの適切なバランスを保ちながら組織を運営できるといいでしょう。
マネジメントコントロールとは?
先ほどまではマネジメントとコントロールの違いを解説してきました。
しかしその一方で、マネジメントコントロールという概念も存在します。
マネジメントコントロールは、メンバーがパフォーマンスを発揮できるよう組織を運営・管理することを指します。
マネジメントコントロールは多様な論者が多様な意味で定義してきたため、起源がかなり曖昧です。
その中で有力な起源だと考えられるのが、アルフレッド・チャンドラーが1962年に出版した『組織は戦略に従う』です。
チャンドラーは本書で「組織が大きくなればなるほど、中央集権的な管理とコントロールが必要になる」と主張しました。
また、序文では「過去の歴史から、組織のマネジメントに当たる人々は大きな危機に直面しない限り、日々の業務の進め方や権限の所在を変えることはまずない」と述べられています。
これはまさにコントロールのことです。
組織を円滑に運営するためのツールとして、マネジメントコントロールの考え方は必要だと考えられます。
マネジメントコントロールの3つの手法
マネジメントコントロールの手法は以下の3つです。
- 環境コントロール
- 行動コントロール
- 結果コントロール
それぞれ詳しく解説していきます。
環境コントロール
環境コントロールは、組織のパフォーマンスを最大化するために、職場環境をコントロールすることを指します。
具体的には以下が挙げられるでしょう。
- 経営理念の共有
- 報酬体系の調整
- 人材配置の変更
- 福利厚生の充実
このように職場環境を変えることで、組織のパフォーマンスを向上させていくのが環境コントロールです。
ただし環境コントロールは間接的な手法であることに加え、効果が出るのに時間がかかるため、効果が出ているかどうかが曖昧になるデメリットがあります。
行動コントロール
行動コントロールは、従業員の業務遂行に介入するコントロールのことです。
具体的には以下が挙げられます。
- 業務マニュアル作成
- 日報の提出
- マンツーマン指導
このように、業務内容を調整していくのが行動コントロールです。
例えば工場や飲食店など、均一的な業務が求められる現場で行動コントロールが有効です。
また、仕組み化しやすい経理業務との相性も抜群です。
ただし、臨機応変な対応が求められる職場では、行動コントロールを重視しすぎないようにしましょう。
結果コントロール
結果コントロールは、具体的な業務プロセスは従業員に任せておき、最終的な目標や評価基準のみ設定するコントロール手法です。
この方法であれば、従業員の自発的な行動を促せます。
もちろん、自由な行動を許すと一定の不安を抱えてしまうデメリットがあります。
その一方で、主体的な行動を促すことで従業員のモチベーションが高まり、マネージャーも管理業務に集中しやすいというメリットもあります。
適切なバランスを維持しながら結果コントロールを取り入れていきましょう。
マネジメントコントロールの流れ
マネジメントコントロールは以下のような流れで進んでいきます。
- 目標設定
- プランニング
- モニタリング
- 測定・評価
- フィードバック・修正
それぞれの手順を詳しく見ていきましょう。
1.目標設定
まずは組織目標を設定します。
目標設定の際は「SMARTの法則」などのフレームワークを利用して、可能な限り具体的な目標を設定できるといいでしょう。
なお、SMARTの法則は以下の5つの要素を取り入れた目標設定フレームワークのことです。
- Specific(具体的)
- Measurable(測定可能)
- Achievable(達成可能)
- Relevant(関連性)
- Time-bound(期限)
例えば「営業部門の売上を第3期末までに10%増加させる」という目標は、SMARTの法則を満たしていると言えます。
具体的かつ達成可能な目標を設定するようにしましょう。
2.プランニング
目標を設定した後は、目標達成のための具体的な計画を策定します。
目標達成のために何を変えていくべきか、どのような行動が必要か、どれくらいの予算を要するかなど、必要なアクションやリソースを計画するのです。
なお、目標設定とプランニングに関しては、コントロールよりもマネジメント領域の考え方が適用されると考えられます。
客観的な視点で計画を立てていきましょう。
3.モニタリング
計画を策定した後は、実際に計画通りにアクションを実施し、進捗をモニタリングしていきます。
この初期段階においてはコントロール領域の考え方が非常に大切です。
まず従業員に業務マニュアルを徹底させることで、本当に効果があるかどうかを確かめることができます。
4.測定・評価
モニタリングで収集したデータを基に、本当に目標を達成できるかどうかを評価します。
この際は業績などの定量的な要素はもちろんのこと、従業員の働きぶりといった定性的な要素もしっかり評価しましょう。
また、現場で業務を遂行する従業員の意見も参考にするのも大切です。
5.フィードバック・修正
評価結果が出たらフィードバックを実施し、何が問題なのかを明確にした後、改善案を検討します。
また、必要に応じて、目標設定の変更やアクションプランの再検討を実施するのがいいでしょう。
以上の流れでマネジメントコントロールを進めることで、PDCAサイクルがしっかり周り、組織のパフォーマンスが向上していきます。
マネジメントコントロールのポイント3選
マネジメントコントロールを成功させるポイントは以下の3つです。
- 常に俯瞰する
- オープンにする
- 上下関係をハッキリさせる
それぞれ解説していきます。
ポイント①:常に俯瞰する
マネジメントコントロールを成功させるためには、常に組織を俯瞰することが大切です。
やはり物事を見る時は、客観的であった方が、本質的な要素を見つけ出すことができます。
実際に仕事を進めていると、ついつい主観的かつ感情的な意見を抱きがちです。
「外から見た時にこのチームはどう見えているか」を意識するのがいいでしょう。
ポイント②:オープンにする
マネジメントコントロールを実施する際は、組織内の情報を可能な限りオープンにした方がいいでしょう。
例えば掲示板サービスやチャットを活用することで、業務マニュアルを全体に共有しやすくなります。
組織内で情報を共有しておくことで、メンバーが現状を把握するようになり、団結力が高まるのです。
ポイント③:上下関係をハッキリさせる
マネジメントコントロールを反映させるには、上下関係をハッキリさせて、部下の意見に振り回され過ぎないようにするのがいいかもしれません。
もちろん、部下の意見を聞き入れることは大切なことです。
しかし規模の大きい組織になると、1人の従業員の意見を聞くよりも全体のコントロールを優先した方がいい状況が多々あります。
組織が崩れないように上下関係の区別をつけることで、均一的なマネジメントが可能になるのです。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- マネジメントは「運営」のことで、コントロールは「統制」のことである
- 組織が大きくなればなるほどマネジメントコントロールの必要性が高まる
- マネジメントとコントロールの適切なバランスを見つけることが大事
本記事ではマネジメントとコントロールの違いに加え、マネジメントコントロールについても解説しました。
やはりマネジメントを重視した方がいいと考えられる一方で、組織運営においてコントロールも必要不可欠な領域です。
自社に合った適切なバランスを見つけられるといいでしょう。