人事異動でマネジメントとプレイヤーを兼ねることになり、今後の方向性について悩みを抱えているリーダー職の方もいるのではないでしょうか。
これまでと違う役割に対応できるか、不安な気持ちもあるかもしれません。
本記事では、マネジメントにおけるマネージャーとプレイヤーの違いを、特徴や能力に分けて解説します。
働き方のヒントが掴めるようになるため、ぜひご覧ください。
目次
マネジメントにおけるマネージャーとプレイヤーの違いとは
マネジメントにおけるマネージャーとプレイヤーでは、自分で仕事をするのか、誰かに仕事をさせるのかなど、明確に役割が異なります。
具体的な役割と業務範囲を以下の表にまとめました。
マネージャー | プレイヤー | |
役割 |
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業務範囲 |
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マネジメントにおけるマネージャーの業務対象は「組織」、プレイヤーは「個人」となり、その視点から異なります。
求められる立ち回りも変わるため、プレイヤーとして優れているからマネジメントができるとは限らず、逆もしかりです。
マネージャーに向いている人の特徴
個人としての目標を達成するよりも、組織としての目標達成に喜びややりがいを感じている方は、マネージャーに向いているといえます。
たとえば、これまでプレイヤーとして自分の担当業務を後輩に指導したり、新入社員に対してオリエンテーションで講義をしたりといった経験にポジティブな印象を持っている方は適任です。
なぜなら、自分以外の人の成長をサポートすることはマネジメントの仕事そのものであり、組織の成長に貢献している証拠ともいえるためです。
また、キャリアアップやキャリアパスの選択肢として、実務に関するスキルではなく、俯瞰的な視点を持てる方もマネージャーに向いています。
プレイヤーに向いている人の特徴
自分のスキル向上や資格取得など、自己研鑽に情熱を持って取り組んでいる方はプレイヤーに向いているといえます。
また、第一線で働くことにやりがいを感じているため、周りのメンバーとコミュニケーションを取りながら担当業務を進めるのが上手な方もプレイヤーです。
医師やエンジニアなど、持っているスキルや能力が実務に直結している職業はわかりやすい例です。
組織としてどう進めるべきか、どのような結果が組織にとって最適なのかなど、大きな枠組みの話にあまり興味を持たない方もプレイヤー気質があるといえます。
プレイングマネージャーとは
プレイングマネージャーは、組織を管理し、部下の育成を担う役割と最前線に立って部署の目標達成に向けて実務をこなす役割の2つを兼ねるポジションです。
役職としては「課長職」が該当します。第一線に立つ現場と組織管理を担う上層部との情報連携を、スピード感を持って対応する能力が求められます。
なお、実務を熟知しているがゆえに、メンバーの素質を見抜き、適材適所の人材配置や役割分担などのマネジメント業務が期待されるのもこのポジションです。
選任の傾向としては、生え抜きで徐々に役職を上げて就く場合と、外部から有能と判断され採用される場合の2つのパターンが考えられます。
その期待度の高さから、実際に多くの企業で活躍しており、産業能率大学の調査では、上場企業の課長職のうち99.5%がプレイングマネージャーとしての役割を担っているとの結果が出ています。
参考:第6回上場企業の課長に関する実態調査|学校法人産業能率大学
マネージャーがマネジメントとプレイヤーを兼ねる理由
多くの場合、プレイヤーとして結果を残してきた方が、マネジメントを任されるようになります。
ところが、うまく機能しないケースも散見されるのが現実です。
原因としては、自分が結果を残してきた仕事に愛着を持っていたり、手放したくないと考えていたりする場合が挙げられます。
また、自分が結果を出しやすい仕事をやる方が、モチベーションが上がると考えている場合もあるでしょう。
一方で人材不足の結果、プレイヤーをかねざるを得ないケースもあるでしょう。
そのような場合、プレイヤーとしての結果を出しながら、メンバーへの引き継ぎを意識しながら進める必要があります。
いずれの場合も、組織としてマネジメントに関する教育体制が整っていないと、マネジメントの仕事とどのような価値があるのかを理解できず、プレイヤーに集中してしまいます。
自社にマネジメント研修があるかどうかで、マネージャーがプレイヤーを兼ねる理由も変わるため、一度教育体制を確認することをおすすめします。
プレイングマネージャーに必要な能力
プレイヤーとマネジメント業務を兼ねるプレイングマネージャーには、3つの能力が必要です。
ご自身の現状と照らし合わせながら、ご覧ください。
- 部下との円滑なコミュニケーション
- 積極的な権限移譲
- 適切な時間の使い方と配分
部下との円滑なコミュニケーション
組織をマネジメントする上で、部下とのコミュニケーションは欠かせません。
自ら積極的に話しかけ、部下の状況を把握し、業務進捗が滞らないようにする配慮が必要です。
プレイヤーとしての知識を活かし、実務に役立つアドバイスをできることが、ほかの役職には真似できないコミュニケーションです。
経験に基づく具体的でわかりやすい指示命令系統は、結果として部下からの信頼獲得につながります。
積極的な権限委譲
プレイングマネージャーは、プレイヤーとしての役割があるものの、基本的な役割としてはマネジメントの方が優先されます。
よって、プレイヤーとしての役割はできるだけ部下に任せる意識と実践が必要です。
実務がわかっているからこそ、慣れていない仕事を部下に任せるのは不安であり、もどかしさもあるでしょう。
人によっては、権限移譲のつもりがハラスメントになってしまわないか、残業時間が増えてしまわないかと気持ちが落ち着かなくなってしまうかもしれません。
徐々に実務面のリーダーシップを移せるように、年間を通して計画的に進めることが重要です。
たとえば、プレイングマネージャーに着任して早々に権限移譲を宣言してしまうのも一つの手です。
人は自分一人の力では、挫折したり諦めたりしやすい傾向にありますが、他人に話すと約束を守ろうとする力が働き実行の確率を高められます。
適切な時間の使い方と配分
プレイングマネージャーになっても、すぐにプレイヤーの頃と時間の使い方を変えるのは困難です。
だからこそ、マネジメント業務に多く時間を割けるように、現状を可視化して把握する必要があります。
たとえば、手帳やスマートフォンのアプリなどを使って、1日のタスクと要した時間を記録する方法は実効性があり有効です。
1週間も続ければ、おおよその時間の使い方と配分が把握できるでしょう。
現状がわかれば、理想とのギャップを埋めるために何が必要かを考えます。
簡単なタスクやそれほど多くの時間を必要としない仕事であれば、部下に任せてマネジメントの時間に置き換えることで、徐々に業務の比率を変えられるでしょう。
プレイングマネージャーとして意識すべき2つのポイント
プレイングマネージャーは、実務と管理の両面で結果が求められるため、以下2つのポイントを意識しておく必要があります。
- プレイヤーとして優秀であり続ける必要はない
- プレイヤーとマネージャーの役割を明確に分ける
プレイヤーとして優秀であり続ける必要はない
まずおさえておかなければいけないのは、マネージャーとなったということは優秀なプレイヤーであり続けることを求められている訳ではない点です。
プレイングマネージャーとして昇格された理由の1つとして、プレイヤーの実績が参考になっています。
だからといって、部下よりも実務で結果ばかりに意識がいってしまっては、マネージャーの責務を全うできません。
プレイングマネージャーは、組織としての結果を最大限に引き出すためのマネジメントが期待されている点を意識して、業務に当たる必要があります。
プレイヤーとマネジメントの役割を明確に分ける
プレイングマネージャーには、プレイヤーとして表に立つ時はスペシャリストとして、裏方に回る時はマネージャーとして立ち回る姿が求められます。
そのためには、仕事の優先順位をつけて、どちらも中途半端になってしまう状況を避けなければなりません。
たとえば、成果を上げるためのチーム作りを考えるのは、一定の集中力が必要です。
しかし、チームの忙しい様子に気を取られてしまっては、確保した時間が有益なものではなくなってしまいます。
会議室やミーティングルームをおさえたり、朝の早い時間に出社したりするなど、一人の時間を作り、プレイヤーとマネジメントが混同しない工夫が必要です。
関連記事:現場を離れて組織を回すために必要なこと
まとめ
マネジメントにおけるマネージャーとプレイヤーは明確に役割が異なります。
マネージャーは組織の目標を達成するため、プレイヤーは個人の目標を達成するために尽力しなければなりません。
それぞれ向いている人には特徴があり、組織と個人の優先度によって確認ができます。
双方の役割を担うプレイングマネージャーは、多くの企業で任命され活躍が期待されています。
バランスの難しい役職ですが、自信を持って取り組むべきです。
なぜなら、実務をわかっているからこそ可能なマネジメントが実現できるためです。
まずは、自分のタスクと時間配分を記録し、マネジメントに置き換えられる内容がないか、確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。