従業員のパフォーマンスを最大化させるには、「マネジメントコントロール」の概念が必要不可欠です。
マネジメントコントロールを活用することで、マネージャーが保有するさまざまな資源を組織目標達成に充てることができます。
本記事ではマネジメントコントロールとはなにか?その概要から成功のポイントまでを網羅して解説していきます。
ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
マネジメントコントロールとは?
マネジメントコントロールという言葉にはさまざまな解釈がありますが、簡単に言うと「マネージャーが組織目標達成のために資源を効果的に活用すること」を指します。
マネージャーが保有している資源は数多くあります。
部下のような人的資源はもちろんのこと、オフィス、予算、ITツール、目標設定など、あらゆる資源を自由に活用できるはずです。
マネージャーはマネジメントコントロールを駆使し、これらの資源を活用することで、組織のパフォーマンスの最大化を目指します。
マネジメントコントロールの3つの目的
マネジメントコントロールの目的は以下の3つが挙げられます。
- モチベーション向上
- 意思疎通の円滑化
- 組織のベクトル合わせ
それぞれ解説していきます。
目的①:モチベーション向上
マネジメントコントロールの目的として挙げられるのが、従業員のモチベーション向上です。
組織のパフォーマンスを向上させるためには、従業員のモチベーション向上が必要不可欠と言えます。
また、モチベーションが低下した状態が続くと、従業員の離職につながる可能性もあるため、こういった状況は避けなければいけません。
そのために、マネージャーはマネジメントコントロールを通して、従業員のモチベーション維持・向上に努める必要があるのです。
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目的②:意思疎通の円滑化
マネジメントコントロールは、組織内の意思疎通の円滑化にも貢献します。
組織においてコミュニケーションは必要不可欠な要素であり、逆にコミュニケーションが滞ってしまうと、そこで仕事も止まってしまいます。
この状態が続くと、納期に遅れたりスケジュール進行に支障が出たりなど、多くのトラブルが発生することになるでしょう。
そこでマネジメントコントロールの出番です。
組織内のコミュニケーションを円滑にさせる仕組みを構築することで、スムーズな意思疎通を可能にします。
目的③:組織のベクトル合わせ
マネジメントコントロールは、組織のベクトル合わせにも活用できます。
組織運営で難しいのは、目的が異なる従業員の方向性を揃えることです。
組織には、目標達成のために動く従業員だけが在籍しているわけではありません。
可能な限り楽をしたがったり、自分自身のキャリアしか考えてなかったりなど、さまざまな思惑が行き交います。
その中で方向性を揃えていくために、マネジメントコントロールが必要不可欠なのです。
関連記事:部下がルールを守る組織を築くには
マネジメントコントロールの3つの手法
マネジメントコントロールの手法は以下の3つが挙げられます。
- 行動コントロール
- 結果コントロール
- 環境コントロール
それぞれ詳しく解説していきます。
手法①:行動コントロール
行動コントロールは、従業員の行動を管理する手法です。
基本的には、どのメンバーが手がけても同じ結果になるようにコントロールするもので、具体例として業務マニュアルが挙げられます。
行動コントロールのメリット、デメリットは以下の通りです。
メリット
- 品質が安定する
- ミスを防げる
- 人件費を落とせる
- 悩むことがなくなる
行動コントロールを活用することで、経験の少ない新入社員でも安定して成果をあげられるようになります。
また、業務マニュアルにそって行動できるため、途中で悩むこともほとんどありません。
デメリット
- 単縦作業になりがちになる
- 従業員の主体性が無くなる
- 優秀な従業員が離れがちになる
行動コントロールは業務内容を良くも悪くも標準化してしまうため、単純作業になりがちです。
また、言われたことしかできない従業員を量産してしまう可能性があります。
それに加えて、クリエイティブかつ前衛的な人材が業務に飽きて、職場を離れてしまう可能性が高まります。
ユースケース
行動コントロールのユースケースとしては、製造業での業務マニュアルや、入れ替わりの激しいアルバイト向けの業務マニュアルが挙げられます。
また、爆弾処理などの絶対に失敗できない職種でも行動コントロールが有効です。
手法②:結果コントロール
結果コントロールは、メンバーに対して目標を設定することで管理する手法です。
目標や評価基準だけ説明して、具体的な業務プロセスは従業員に任せます。
結果コントロールのメリット、デメリットは以下の通りです。
メリット
- モチベーションが上がる
- 実力のある従業員を優遇できる
- 生産性が高まる
- 主体性のある従業員を育成できる
結果コントロールでは、従業員に目標と評価基準だけ与えて、具体的な業務プロセスは従業員の方に完全に任せます。
そのため、実力のある従業員が活躍しやすい環境を整えることが可能です。
また、自分で考えなければ結果が出ない環境になるので、主体性のある従業員を育成できるようになります。
デメリット
- 成果のバラつきが出る
- 単独行動が増えすぎる
- 新入社員には厳しい
結果コントロールは業務プロセスには関与しないため、従業員の経験や能力、モチベーションなどによって成果のバラつきが発生します。
特に、主体性の乏しい従業員にとっては厳しい環境になってしまうでしょう。
また、経験の浅い新入社員にとっても活躍しづらい環境です。
そのうえ、成果を出す優秀な従業員は単独行動を取りがちになり、マネージャーの管理範囲を超えてしまう可能性があります。
ユースケース
結果コントロールのユースケースとしては、成果報酬型の職場が挙げられます。
成果に連動する形で報酬を決定する職場と結果コントロールの相性は抜群です。
また、クリエイティブ関係の仕事も結果コントロールのユースケースとして挙げられます。
なぜなら、クリエイティブ関係の仕事の大半で、常に新しい業務プロセスが求められているためです。
ほかにも、業務プロセスが定まらない接客業や研究開発職で結果コントロールが用いられます。
手法③:環境コントロール
環境コントロールは、職場環境や企業風土を作ることで組織力を根本的に向上させる手法です。
企業理念やミッションに共感した人材を集めることで組織を形成します。
それに伴い、福利厚生を充実させたり、多様な働き方を提供したりするのも環境コントロールの役割です。
環境コントロールのメリット、デメリットは以下の通りです。
関連記事:組織風土のつくり方
メリット
- 多様性のある人材を獲得できる
- クリエイティブな人材を獲得しやすい
- 長期的な視点に立ちやすい
環境コントロールによって多様な働き方を提供できれば、それに伴う形で多様性のある人材を獲得できます。
例えば夜にしか働けない人材、育休を取らざるを得ない人材、Wワークを実践する人材などです。
そして、このような新しい働き方を模索している人は、一般的な人に比べてクリエイティブである確率が高いと考えられます。
クリエイティブな人材を獲得しやすいのも環境コントロールのメリットです。
また、環境コントロールは長期的な視点が必要不可欠です。
そのため環境コントロールを重視できれば、目先の利益に惑わされず、長期的で大きな利益に集中することができます。
デメリット
- 環境構築までに時間がかかる
- 効果が目に見えづらい
- 株主の目線が痛い
環境コントロールは長期計画に基づいて実行されるため、短期的な成果が出ることがほとんどありません。
成果が出るまでの資金繰りは課題の1つです。
また、環境コントロールの成果が目に見えづらいことも想定されます。
環境コントロールの成果を示す定量的な要素が少ないので、行動コントロールや成果コントロールに比べると、効果検証に工夫が必要です。
そして短期的な成果が出ることがなく、成果が目に見えづらいからこそ、株主に反対されがちです。
株主は基本的に株価と決算情報のみを信頼しているため、環境コントロールに強い興味を示さない傾向があります。
ただし近年は、ジェンダー平等など多様な働き方を提示できる企業が評価される傾向にあるため、深い理解を示す株主も増えてきています。
ユースケース
環境コントロールのユースケースとしては、長期的に大きなリターンを見込める可能性が高い、スタートアップが挙げられます。
スタートアップやベンチャー企業はミッションやビジョンが非常に重要になってくるので、環境コントロールが必要不可欠です。
また、非営利法人やボランティアなどでも環境コントロールの割合が大きくなるでしょう。
いずれにせよ、短期的な利益に影響されない組織で環境コントロールが重視されやすいと言えます。
マネジメントコントロールを成功させるには?
マネジメントコントロールを成功させるためのポイントは以下の4つです。
- 客観的な評価制度を導入する
- 組織内の情報共有を徹底する
- メンバーの意見を聞きすぎないようにする
- 3つのコントロールのバランスを取る
それぞれ解説していきます。
客観的な評価制度を導入する
マネジメントコントロールを成功させたいのであれば、まずは客観的な評価制度を取り入れましょう。
どのようなマネジメントを実施するにしても、評価制度は必要です。
そして全ての従業員が納得できるように、客観的な要素のみで評価を決定します。
客観的で明確な評価制度が構築されれば、従業員のモチベーション低下や離職を防ぐことが可能です。
そのために、まずは評価者の主観を排除する仕組みが必要になるでしょう。
特に、営業職やクリエイティブ職のように目に見える成果がある職種ならまだしも、事務職やバックオフィス職のように評価基準が曖昧になりがちな職種は注意が必要です。
可能な限り数字を用いることで、客観性を高めましょう。
これらに加えて、評価内容や評価結果を各個人にオープンにすることで、不満が発生しづらい評価制度を構築できます。
関連記事:評価制度を徹底解説!【目的・種類・導入手順を人事向けに紹介】
組織内の情報共有を徹底する
マネジメントコントロールの成功には、組織内の情報共有の徹底が重要です。
まず行動コントロールに関しては、普段の業務の進捗を随時共有することで、課題や改善点を見つけられる可能性があります。
これにより、業務マニュアルの正確性がより高まるでしょう。
結果コントロールに関しては、情報共有を徹底することで、従業員の行き過ぎた独立行動を防ぐことができます。
これは稀なケースですが、営業成績を高めるためにグレーな営業活動を実施している可能性もゼロではありません。
それに、プロジェクト管理の観点からも、やはり組織内の情報共有を徹底して、従業員の進捗度をモニタリングできた方がいいでしょう。
その際は、スケジュール管理ツールやチャットツールなど、操作性に優れたITツールを活用するのがおすすめです。
メンバーの意見を聞きすぎないようにする
マネジメントコントロールは、部下の意見を聞くことが大切な要素です。
しかし、部下の意見を聞きすぎるがあまり、マネジメントの軸がブレてしまうのは問題でしょう。
特に組織の規模が大きくなったり、主体性のある従業員が増えたりすると、メンバーの意見も多様化していきます。
有力な意見もある一方で、その度にマネジメント手法が変更になると、かえって混乱を招くことになるでしょう。
メンバーの意見を尊重しながらも、マネジメントの軸がブレないように、バランス感覚と明確な判断基準が必要です。
3つのコントロールのバランスを取る
マネジメントコントロールで成果を出すには、3種類あるコントロールのバランスを取ることも大切です。
例えば、行動コントロールを強めすぎると業務が単純化しすぎてしまいます。
逆に、結果コントロールを強めすぎると、雰囲気がギスギスしてしまうかもしれません。
自社の状況に合わせて、3種類あるコントロールのバランスを取るようにしましょう。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- マネジメントコントロールは、マネージャーが組織目標を達成するために資源を効果的に活用することを指す
- マネジメントコントロールには「行動コントロール」「結果コントロール」「環境コントロール」の3種類がある
- 自社に適したマネジメントコントロールのバランス感覚を探すことが大切
マネージャーは、想像以上に多くのリソースを活用できます。
その大量のリソースをどう活用して成果を上げていくかがマネージャーの腕の見せ所です。
3つのコントロールを意識して、自社に合ったマネジメント手法を構築しましょう。