組織全体の営業成績を向上させるには、営業マネジメントが必要不可欠です。
では具体的に、営業マネジメントは一体どのようなもので、どのような能力が求められるのでしょうか。
本記事では営業マネジメントについて解説していきます。
営業職や管理職の方はぜひ最後まで読んでみてください。
目次
営業マネジメントとは?
営業マネジメントは、営業職の方々が最大限のパフォーマンスを発揮できるように管理することです。
営業の世界は実力至上主義で、どうしても個人の成果が重視される傾向にありました。
しかし組織として活動する以上「個人の成果<組織の成果」の図式が成り立ちます。
つまり、最終的には組織の成果にフォーカスしていく必要があるのです。
そのため、個人の実力に左右されがちな営業職であっても、マネジメントを通し、組織全体を鑑みた管理が必要となります。
そしてその際には、営業職ならではのマネジメント手法が求められるのです。
営業マネジメントの目的
営業マネジメントの目的としては以下の3つが挙げられます。
- 組織全体の業績目標の達成
- 営業人材の育成
- 組織の利益と個人の育成の両立
それぞれ詳しく解説していきます。
目的①:組織全体の業績目標の達成
営業マネジメントの最大の目的は、組織全体の業績目標を達成することにあります。
営業職の場合、実際に営業活動を実施するのは各営業スタッフです。
一見すると、各営業スタッフが数字を出すことで、組織全体の業績が向上するように思えるかもしれません。
しかし、営業は複雑な要素が絡み合っている職種です。
営業力だけでなく、商品の魅力やチーム全体の営業戦略があって、初めて成果が出ると言えます。
個人の力だけでは解決できない問題も多々あるでしょう。
そのため、営業マネジメントで組織全体の方向性を統一する必要があります。
それと同時に、マネージャーが営業戦略及び営業プロセスにも介入することで、営業成績を向上させていくのです。
ただ「足で稼げ」と命じるのではなく、具体的な方法も伝授するのが営業マネジメントの役割だと言えます。
目的②:営業人材の育成
営業職は、ひとまず数字を追いかけることで短期的には成長できます。
その一方で、長期的に組織を成長させたいのであれば、営業人材の育成は必要不可欠です。
しかし、営業職はどうしても目の前の数字を追いかけてしまいがちなので、現場社員が人材育成にもリソースを割くのは無理があります。
そこで営業マネジメントの出番です。
現場社員に比べて長期的な視点に立ちやすいマネージャーであれば、営業人材の育成にも着手しやすいと言えます。
営業マネジメントの理想は、営業スタッフが主体的となり、自動的に組織全体の業績目標が達成できることです。
そのためには営業人材の育成が欠かせません。
関連記事:人材育成におけるマネジメントとは?【成功のためのポイントも解説】
目的③:組織の利益と個人の育成の両立
上記にも述べた通り、営業マネジメントでは「組織全体の業績目標の達成」と「営業人材の育成」が求められます。
つまり、組織レベルと個人レベルでの業務を同時並行で進めなければなりません。
これは、とても難しいことです。
組織の利益を追求しすぎると人材育成が疎かになり、逆に人材育成に力を入れすぎると短期的な業績が落ちてしまいます。
そのため、営業マネージャーが組織と個人のバランスを取る必要があるでしょう。
ただし、先述したように営業は結果を追求しがちになる傾向があるので、意識的に人材育成にフォーカスするぐらいがちょうどいいかもしれません。
営業マネジメントの具体的な業務7選
営業マネジメントの具体的な業務は以下の7つです。
- 目標設定
- フィードバック
- モチベーション管理
- 営業戦略策定
- タスクマネジメント
- 営業環境構築
- 処遇決定
それぞれ詳しく解説していきます。
業務①:目標設定
営業マネジメントの業務としてまず挙げられるのが目標設定です。
営業部全体で適切な目標を設定することができれば、従業員のモチベーションが向上します。
目標設定する際は、まず企業上層部のビジョンや事業計画に則るようにしましょう。
例えば企業全体の事業計画が「来年度の売上高を前年比130%にする」であれば、それを達成できるような目標を営業部として設定するのが望ましいでしょう。
そして目標を設定する際は、可能な限り明確で具体性のあるものが望ましいです。
例えば「営業成績を前年比130%にする」という目標だったら「ITツールでターゲットを選定することで新規顧客数を50%増やし、第四四半期末までに営業成績を前年比130%にする」というように、具体性のある方が従業員もイメージしやすいです。
業務②:フィードバック
営業マネジメントでは、部下を育成するために、フィードバックを定期的に実施していきます。
このフィードバックは、目標の達成状況に関係なく、決められた頻度で行うことが望ましいでしょう。
フィードバックを通して、部下の営業プロセスを改善できる可能性があります。
また、上司と部下のコミュニケーションが増えるので、信頼関係構築も見込めるでしょう。
お互いのことをよく知っていれば、普段の業務でもコミュニケーションを取りやすくなるはずです。
変化の激しい現代社会では短期間で社会情勢が変わるので、可能な限り高頻度でのフィードバックが効果的と言えます。
業務③:モチベーション管理
営業マネジメントの業務内容には、部下のモチベーション管理も含まれます。
営業スタッフのモチベーションは、営業成績に大きな影響を及ぼします。
そして、みな自分自身ではモチベーションを管理しづらいのも事実です。
そこでマネージャーがモチベーション管理にも着手します。
「とにかく足を動かせ!」「がむしゃらに頑張れ!」というような根性論は根拠に欠ける上、精神衛生上よろしくありません。
モチベーションを維持できるような「仕組み作り」に着手した方がいいでしょう。
関連記事:企業に長期的に恩恵をもたらす「モチベーションマネジメント」とは?
業務④:営業戦略策定
具体的にどのようにして営業活動を進めるのか、営業戦略の策定も営業マネージャーの仕事の1つです。
まずは営業スタッフの行動を数値化します。
そのうえで「1日の営業電話」や「商談数」などでノルマを設けるのです。
また、クライアントとの駆け引きもあらかじめマニュアル化しておきます。
このように営業戦略を組み立てておけば、経験値の乏しい営業スタッフでも、業績を出せるようになるでしょう。
業務⑤:タスクマネジメント
営業戦略は、一度策定しただけでは不十分です。
営業活動の進捗を見ながら、適度に変化させる必要があります。
その際に必要となるのがタスクマネジメントです。
営業スタッフの行動をモニタリングし、その結果から改善策を見出します。
例えば「商談数が少ないために進捗が遅れている」という状況であれば、なぜ商談数が少なくなっているのかに注目し、改善策を策定するのです。
タスクマネジメントを実施するには、営業スタッフの進捗を常に把握する必要があります。
その一方で、営業日報が営業スタッフの負担になっているケースも見受けられるため、ITツールの導入を検討するのも良いでしょう。
関連記事:マネージャーなら絶対身につけておくべき「タスクマネジメント」とは?
業務⑥:営業環境構築
営業環境を整えるのも営業マネジメントの役割の1つです。
つい先ほども述べた通り、ITツールを導入するなどして、可能な限り営業活動に集中できる環境を整えましょう。
特に情報共有の効率化は、必須級の取り組みです。
営業スタッフがオフィスから離れていることが多いはずなので、事実上のリモート環境下での情報共有が求められます。
また、アポが入っていない時間帯を休養に充てさせるなど、柔軟な働き方を提示できるとなお良いでしょう。
業務⑦:処遇決定
営業マネジメントでは、営業成績に見合った処遇の決定を行います。
最も代表的な手法は目標管理制度(MBO)です。
MBOでは目標の進捗度に合わせた評価を実施します。
そして、営業成績をどれだけ処遇に反映させるかを決めるのも営業マネージャーの仕事です。
完全実力主義で歩合制にするのか、それとも基本給を手厚くするのか。
報酬制度の内容が、従業員のモチベーションに大きな影響を与えることになるのは間違いありません。
従業員のパフォーマンスを最大化できる報酬システムを構築しましょう。
関連記事:MBOとは?目標管理制度のメリットや効果的な運用方法、OKRとの違いを解説
営業マネジメントに必要なスキル5選
営業マネジメントを成功させるために必要なスキルは以下の5つです。
- コミュニケーション能力
- 業務遂行能力
- 論理的思考力
- 客観的な視点
- 決断力
それぞれ解説していきます。
スキル①:コミュニケーション能力
営業マネジメントでは、必然的に数多くの営業スタッフとコミュニケーションを取る必要があるため、コミュニケーション能力が必要不可欠です。
また、フィードバックの際は、営業スタッフの意見を吸い上げるためのリスニングスキルが求められるでしょう。
数ある職種の中でも営業スタッフには高いコミュニケーション能力が求められますが、営業マネージャーは、またそれとは違った分野でのコミュニケーションが求められます。
その違いを踏まえた上で、部下とのコミュニケーションを試行錯誤すると良いでしょう。
スキル②:業務遂行能力
営業マネージャーには、最低限の業務遂行能力が求められます。
営業マネージャーがどれだけ現場で活動するかにもよりますが、場合によっては営業マネージャーが部下の尻拭いをするケースも考えられるからです。
もちろん、これは望ましくない事例なので、可能な限り避けるように努めた方がいいでしょう。
とはいえ、部下を指導するためにも、高度な営業スキルを有していた方が良いのは間違いありません。
スキル③:論理的思考力
営業マネジメントでは、単純な営業成績だけでなく、その結果に至るまでの数字に着目する必要があります。
なぜ今期の営業成績が良いのか、その理由が分かれば、来期でも良い数字を再現できるからです。
そのためには、その営業成績に至った要因を読み取れる論理的思考力や分析力が必要なのは、言うまでもありません。
スキル④:客観的な視点
営業マネジメントは、営業スタッフを管理する仕事です。
そのため、チーム全体を俯瞰できる客観的な視点が必要不可欠となります。
チームを俯瞰することができれば「このままだと目標を達成できない」という兆候をいち早く掴み取ることができるので、すぐに改善策を打ち出せるのです。
だからこそ、営業マネージャーは可能な限り現場から離れて、管理業務に徹するのが効率的かつ効果的だと言えます。
スキル⑤:決断力
営業マネージャーの元にはいくつもの選択肢が日々迫ってきます。
それらの選択肢を迅速に処理するためにも、一定の決断力が必要です。
ビジネスにおける決断で重要なのは、やはりスピードです。
タスクを自分のところに抱えたままにしてしまうと、他のメンバーの仕事が止まってしまいます。
可能な限り即レスで、素早く決断していくようにしましょう。
営業マネジメント力を強化する方法
営業マネジメント力を強化する方法は以下の3つです。
- セミナー・研修に参加する
- 成功事例を集める
- ITツールを活用する
それぞれ詳しく解説していきます。
方法①:セミナー・研修に参加する
まずはマネージャー向けのセミナー・研修に参加するのがいいでしょう。
営業マネージャー向けのセミナーが望ましいですが、幅広い知識を集めるという意味でも、さまざまなマネジメント系セミナーに参加するのも悪くない選択です。
どちらにせよ、営業マネージャーは営業スタッフとは全く異なる能力が求められます。
マネジメントスキル強化に努めましょう。
方法②:成功事例を集める
成功事例を集めるのも有力な選択肢です。
必ずしも再現性が担保されているわけではありませんが、成功事例を事前に集めておくことで、決断に役立つ可能性があります。
また、成功事例を収集する際は、インターネットや書籍はもちろんのこと、従業員との身近な会話を増やすのもポイントです。
営業マネージャーを経験済みの先輩社員から、ノウハウを教えてもらえる可能性があります。
身近なところにも、ヒントは転がっているものです。アンテナを多く立てましょう。
方法③:ITツールを活用する
マネジメント業務を効率化させたいのであれば、ITツールの活用は必要不可欠です。
少なくともチャットツール・スケジュール管理ツール・プロジェクト管理ツールは導入しておきたいところ。
また、営業日報を省力化できるツールも積極的に導入していきましょう。
自分自身のマネジメント業務をよりスマートにするのはもちろんのこと、営業スタッフが営業活動に集中できるような環境作りに努めましょう。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- 営業マネジメントは営業スタッフが最大限のパフォーマンスを発揮できるように管理することを指す
- 営業マネジメントでは目標設定・フィードバック・処遇決定などの業務を実施する
- 営業スタッフと営業マネージャーでは求められるスキルが大きく異なる
一般的に、営業マネージャーは営業スタッフから昇格する形で配置されます。
しかし営業マネージャーと営業スタッフでは求められる能力が異なる点に注意が必要です。
マネージャーである以上、現場での業務から可能な限り離れて、管理業務に徹するのが理想だと言えます。
そのためにどのような取り組みが必要なのか、試行錯誤できると良いでしょう。