効率的に業務を進めるにはチーム作りが欠かせません。
人類は、地球上に存在する生物の中で、もっとも大きな集団を形成できる生物です。
本記事を読んでいる方は、おそらく日本人だと思いますが、私たち「日本人」は1億人以上によって構成された集団だと言えます。
人類は、大規模な集団を形成できたから、地球上で最強の生物になることができたのです。
しかし、2000年代に入ってから、チーム作りの在り方が大きく変わってきました。コンピューターがもたらす急速な変化が、チームをより流動的にしてしまったのです。
そこで現在、ビジネスシーンで「チーミング」が注目されるようになっています。従来のチームとは異なり、チーミングは自らを積極的に変化させることで、現代社会に対応します。
今後はチーミングを実施できるかどうかが、組織の運命を左右することになるでしょう。
そこで本記事ではチーミングについて解説していきます。チーミングが注目される背景、学習する組織に求められる5つの領域などを紹介しています。
ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
チーミングとは?
チーミングは「team」と「ing」を組み合わせた造語で、最善のチームを結成するためのチーム作りの過程や、その実践を指します。
現在分詞の「ing」が含まれることから「常にチーム作りをしている」というニュアンスが強く、これが「常にチームを変化させていく」という意味に繋がっています。
ビジネスにおけるチーミングの特徴
元々、チーミングはネットワーク用語で「コンピュータに複数のネットワークカードを繋げて、すべての帯域幅を束ねて利用する技術」を指します。
一方で近年は、ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・C・エドモンドソンが提唱するチーミングが注目されています。
エドモンドソンはチーミングを「職業や地理的な場所にとらわれずにチームを結成すること」と定義し、同時に「異なる組織間の連携が欠かせない」と説明しています。
一般的にビジネスシーンでは、従来のチームに比べて、チーミングの方が「流動性が高い」と認識されている印象です。
現在分詞である「ing」が含まれることから「常に変化し続けられるチーム」とも解釈できます。
このように、ビジネスにおけるチーミングは「流動性が高いこと」と「所属や経歴にとらわれないチーム作り」という2つの特徴が挙げられます。
チーミングが注目されている理由
チーミングが注目されている理由として、以下の2つが挙げられます。
- VUCAに対応するため
- 多様化社会に対応するため
それぞれ詳しく解説していきます。
理由①:VUCAに対応するため
チーミングが注目されている理由として、VUCAへの対応が挙げられます。
VUCAとは「変動性・不確実性・複雑性・曖昧性」が特徴の時代のことです。
そしてVUCAに対応するには、急激な変化に対して迅速に対応することが求められます。
従来の組織構造は、終身雇用を前提にしているため、急激な変化に耐えられません。
一方で、人材の流動性が比較的高いチーミングであれば、急激な変化に耐えられるチームを構築できます。
AIの進化が著しい現代社会では、その時々に合わせて、求められる人物像が変化します。チーミングを用いた新しい組織作りが求められているのです。
理由②:多様化社会に対応するため
チーミングが注目されている理由として、多様化社会に対応することが挙げられます。
一般的なチームに比べて、チーミングでは、異なるスキルを持つメンバーが集まります。
そのため、特定の課題に対して様々なアプローチで問題解決を進めることが可能になり、イノベーティブな商品・サービスが生み出されるようになります。
また、組織作りにおけるチーミングをアピールすることで、多様化社会に適した人事戦略を実施することが可能です。
特に、現代社会では働き方が多様化しており、短期間でメンバーを入れ替えても、十分にビジネスが成立します。
多様化社会に対応するためにも、チーミングを用いて多様性のチームを作る必要があると言えます。
チーミングをベースにした組織づくりのポイント
チーミングをベースにした組織づくりで重要なのは、以下の3つです。
- 明確なビジョンを持つ
- 心理的安全性を確保する
- リソースを効果的に割り振る
流動性が高くなるチーミングでは、明確なビジョンが必要です。
明確なビジョンを持たない組織は、とてもふわふわした存在になり、いつまで経っても目標を達成することができません。
組織とは「共通の目的を有する集合」を指します。特に、流動性が高くなるチーミングでは、より強いビジョンが求められます。
また、失敗と変化を許容できるだけの心理的安全性も必要不可欠です。
「失敗すると怒られる文化」では、組織内に変化(学習)をもたらすことはできません。リーダーは、心理的安全性を確保し、メンバーの能力を引き出す必要があります。
そして、チームの能力が高くても、それを形にできるリソースがなければ、成果を出すことはできません。
リソースは、具体的には「ヒト・モノ・カネ」です。ビジョンや目標が確立できれば「チームの価値」を算出することができます。
それを元に、リーダーは経営資源を確保し、適切に割り振る必要があるのです。
チーミングで学習する組織へ
エドモンドソンは、自身の著書と論文で、現代社会においては「学習する組織」が求められると何度も繰り返し述べてきました。
「学習する組織」は、各メンバーが個人及び組織として継続的に変化を及ぼし、常に環境に最適化される能力を持つ組織を指します。
例えば2020年代に入ってからChatGPTを始めとする生成AIが登場しました。
これに対して、生成AIを迅速に業務に組み込むことができるのが「学習する組織」ということになりそうです。
おそらく、2020年の新型コロナ禍の時点で、すぐ近くに生成AIが台頭することを予測できた人は、そこまで多くないはずです。
つまり、現代社会はすぐ近くの未来を予測することすら困難な時代なのです。
このような時代では、環境が変化した時点ですぐに対応できる「学習する組織」が求められます。
そして「学習する組織」を作り出すには、以下の5つの領域を常に意識する必要があります。
- システム思考
- 自己実現
- メンタルモデル
- ビジョン
- チーム学習
それぞれ詳しく解説していきます。
1.システム思考
システム思考は、問題をシステムとして全体的に捉えながら思考することを指します。
例えば国家間の戦争は、単純な1つの原因によって引き起こされたわけではなく、複数の要因が複雑に絡まっていることがほとんどです。
大局を見失っては正しい判断ができないので、環境に適応することができません。チーミングでは各メンバーがシステム思考を身につける必要があります。
2.自己実現
自己実現は、メンバー一人一人が「なりたい自分」を実現させることです。
ここで大切なのは、あくまでも「なりたい自分を実現させよう」とする過程が重要だということです。
自己実現を意識し始めた時点で、その人の向上意欲が劇的に向上します。
チーミングにおける「学習する組織」に必要不可欠な要素です。
3.メンタルモデル
メンタルモデルは、個人の心の奥底に固定された思考パターン・思想・信念のことです。
メンタルモデルは、プログラムにおけるソースコードのようなもので、変えることが難しいです。
まずは自分自身のメンタルモデルを深く理解し、それに対して素直になることが重要だと考えられます。
そしてメンタルモデルをアップデートできるチャンスが訪れたときに、それを見逃さないことが大切です。
4.ビジョン
ビジョンは、組織・個人が持つ明確な目標や方向性のことです。
学習する組織では、各メンバーがビジョンを共有し、ベクトルを揃えてあげることが求められます。
また、ビジョンが明確であれば、激動の現代社会の波に負けない「軸」を作り出すことが可能になります。
あらゆる波に耐えうる強固な軸が、学習する組織に求められます。
5.チーム学習
チーム学習は、個々の学習ではなくチームとして共同で学ぶことを指します。
なぜ、人類はチームを組むのか。それは、個人では成しえないことを達成するためです。自動車もパソコンもロケットも、個人で製造するのは不可能に近いです。
チーム全体で学習し続けることで、個人には難しい大きいプロジェクトを動かすことが可能になります。
チーム学習で、個人の限界を超えたプロジェクトを動かせるようにしておくことが重要です。
まとめ
本記事ではチーミングについて解説してきました。
チーミングは職業や地理的な条件にとらわれず、柔軟かつ流動性の高いチームを作る過程や実践のことを指します。
現代社会を生き抜くために必要なのは「対抗」ではなく「対応」です。そのためにリーダーや人事は、流動性の高いチームを作って、変化に備える必要があります。
また、変化し続けられる組織とは「学習する組織」のことです。
システム思考・自己実現・メンタルモデル・ビジョン・チーム学習の5つの領域を用いて、進化し続けられる「学習する組織」を目指すのがいいでしょう。
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関連書籍リンク:
チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ
http://www.eijipress.co.jp/book/book.php?epcode=2182
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4862761828
関連サイトリンク:
英治出版ブログ 「チーム」から「チーミング」へ――変化するチームワークの中でリーダーは何をすべきか?
http://www.eijipress.co.jp/blog/2015/03/05/20685/