社名:株式会社アークス
代表取締役 下田昌孝氏
営業企画部 部長兼草加・八潮店店長 松山健氏
識学コンサルタント 橋本潤也
埼玉県草加市の株式会社アークスは、外壁や屋根の塗装を手がける企業として2010年に始動。
細やかな対応と工事品質の高さで支持を集め、累計施工実績は5000件を超える。そんな同社はさらなる成長を期すべく、2021年8月に識学のトレーニングを開始した。
コンサルティングを担当した橋本潤也が、識学導入の経緯や組織内に生じた変化について、代表取締役の下田昌孝氏と営業企画部部長兼草加・八潮店店長の松山健氏に聞いた。
目次
ルールも目標も定まらず、人が辞めていく職場だった。
識学コンサルタント 橋本潤也(以下、橋本)改めてになりますが、アークス様の事業概要をお聞かせいただけますでしょうか?
営業企画部部長兼草加・八潮店店長 松山健氏(以下、松山)当社は、個人・法人のお客さま向けに外壁や屋根の塗装を手がける会社です。最大の売りは「地域密着」にあると思っています。
例えば、就労支援の一環として、障がいをお持ちの方にチラシを折る仕事をご依頼するなど、施設の方と連携を図っています。「子ども食堂」のような活動にも積極的に参加していますね。
それと、代表の下田は地元の小学校のPTA会長ですし、私もかつては務めていました。おかげさまで地域の皆さまからご愛顧いただき、施工実績は5000件を超えています。
代表取締役 下田昌孝氏(以下、下田)会社の特徴は、女性が大勢活躍している点です。子育て中の方もいますよ。働きやすい職場環境の整備を大切にしているのです。
橋本 塗装会社というと、男性が多いイメージがあります。
下田 そうかもしれません。我々は、仕事の質も職場の雰囲気も、他社とは一線を画したいという思いがあります。
橋本 ありがとうございます。そんな中、識学を始める前は、組織をマネジメントする上でどのような課題を感じていたのでしょうか?
下田 分かりやすく言うと、新入社員が入ってくれたと思ったらすぐに辞めてしまうような会社でした。それに、ルールもなければ会社として向かうべき目標も定まっていなかったのです。
橋本 下田社長は、もともと現場に出るタイプだったんですよね。
下田 はい。私は、社員と目線をそろえ感情で鼓舞するマネジメントこそ正しいと考えてきた人間です。「まだまだだ」とか「もっと頑張れよ」などと口癖のように言っていました。社員からすれば、「頑張っているのに、どうして社長は認めてくれないんだろう」と不満を抱くのも当然です。
松山 会社の成長の限界が見え始めていましたね。社長に仕事が集中し過ぎていました。
橋本 社長がトッププレイヤーであったため、本来社員の方に任せるべき業務も自らこなしていたのですね。これは、いわゆるマネジメントが“属人化”している状態ですね。
「もしも過労で倒れたら……」仕事をし過ぎる社長の傍で抱いた不安
松山 以前、社長が「絶対に体を壊してはいけない」と話していたことがあります。けれども、過労で社長が突然倒れてしまうことがあるかもしれない。そうなったら会社や社員はどうなるのだろうかと怖くなったのです。あり得ない話ではないでしょう。
橋本 そうですよね。そのような状況の中、どのような経緯で識学をお知りになったのでしょうか?
松山 私は、SNSで広告を見かけ、識学を知りました。セミナーに参加し、内容がよければ社長に提案するつもりでいたのです。そうしたら、社長の方から、「識学をやってみようか」という話が出てきて、驚きましたね。
下田 一方私の方では、競合他社が識学を導入しているという話を耳にしたのです。それから、識学のことを調べて、興味を持っていました。
橋本 その時点では、お互いに言葉を交わしていない状態であるにもかかわらず、お二人とも識学にたどりついていたのですね。
自分に足りなかったものが詰まっていると感じ、導入を決意
橋本 お二人の中での識学導入の決め手は何だったのでしょうか?
下田 一番大きいのは、理論の中身に同意したからです。まさに、今までの自分に足りなかったものが詰まっていました。
橋本 下田社長には、無料相談をお受けいただきましたね。そこで、私がルールや目標設定の重要性についてお伝えしました。
下田 何を変えたらよいか、きれいに教えてもらった気がします。
橋本 下田社長は経営についてものすごく真剣に考えている方です。あのとき、具体的な方法論さえお伝えすれば会社はうまく回り出すだろうという予感がありました。逆に、識学導入に対する反発はありませんでしたか?
松山 検索エンジンに識学と入力すると、批判的なサブワードがたくさん出てきますが、それらはあまり気になりませんでした。
私は以前、あるお寺が開催した三日間の研修に参加したことがあります。とんでもないスパルタ研修でしたが、結局そこで何を得られるかは本人次第。研修中ずっと理不尽を突き付けられるものの、普段同じことが起きたらと考えると、鍛えられる面は必ずあります。識学を学ぶにしても同じです。
下田 会社全体で見れば離職した人はいました。離職まではいかなかったものの、変化に戸惑った社員は多少いると思います。ただ、残ってくれた社員は皆前向きにやってくれました。もちろん識学の浸透は楽ではなかったですが、当社では松山が引っ張ってくれましたね。
社員の離職が収まり、辞めた社員も戻ってきた
橋本 識学を導入後、社内には具体的にどのような変化が起きましたか?
下田 まず、私自身のことで言うと、「何となく」だった指示を「完全結果」でするようになりました。
松山 その変化は大きいですよね。私からも、社長の指示の仕方がすごく変わったと感じます。部下として、仕事がすごくやりやすくなりました。私が自分の部下に指示するときも社長を見習って話しています。
下田 それと、目標設定の仕方が細かくなりました。最終目標を達成するために、段階を踏むことの重要性を認識しています。
松山 今は、会議を開けば当たり前のようにそれが言語化されます。いつまでに何を誰がやるのか確認しながら会議が進行しますので、参加者の間によい緊張が走ります。
下田 何より、社員の見るべき方向が定まったことでコミュニティができ、そこから外れていた人が、会社というコミュニティに所属する価値を見出してくれるようになりました。今は社員の離職もなくなりましたし、いったん抜けたものの、戻ってきた社員もいます。
橋本 素晴らしい変化ですね。以前に比べて、社長業に専念できるお時間も増えましたか?
下田 はい。将来を見据え、じっくりと経営戦略を練る自分だけの時間を持つことができるようになりました。
かつては営業にかなり口出しをしていた私ですが、今は大事なことだけを伝え、細かいことは言いません。もともとトップダウンの会社であり、それは変わっていませんが、トップダウンの中身が変わりました。何もかも自分でやろうとするのではなく、社員に仕事を任せ、その分結果を求める組織になってきています。
変化なくして発展なし
橋本 社員の皆さんは、以前に比べ責任を持って仕事をしていると感じますか?
下田 かなり感じますね。私が「誰に責任があるのか」を意識していますから。社員は集中できるでしょうし、関係ないはずなのに、責任を負わされる心配はなくなります。
松山 私たちは、他の塗装会社とお会いする機会が頻繁にあります。伸び悩んでいる会社はどこも同じ。変化に乗り出せないのです。
社長のマンパワーで、ある程度の売り上げまではつくれるけれども、そこからは伸び悩んでしまう。社員を入れて状況を打開しようにも、すぐに退職者が出る。この繰り返しです。そういう会社は、この業界には多いと思います。私たちも、職人や間接部門に識学を学んでもらうことには悩みました。
橋本 職人さんに識学を浸透させていくためのコツはありますか?
下田 最初は背景と目的をしっかり伝えることから、後は継続してサポートし続けるしかないですよ。途中でやめてしまえば意味がなくなってしまうので、1年で無理なら2年、2年で駄目なら3年続けるしかありません。
「新時代の経営を取り入れていくべき」
橋本 識学理論のなかで、印象に残っているものはありますか?
松山 私は完全結果です。部下から受けた報告に不足がある、つまり不完全結果だったとき、今まではそれを何となく流してしまっていた。完全結果を意識し始めてからは、不備があるときすぐに修正させることで、問題が起きる前に対処できている感覚があります。
下田 私は「位置」の違いですね。私と社員で見えている景色は異なりますし、社員同士でも違う。ですから、社員を一括りにはしなくなりました。位置が違うため、「この社員にはこれを言ってもよいが、もう一人の社員には駄目」とブレーキをかけられるようになっています。
それと、職人のなかには、年齢が高くて経験豊富という理由から勝手にリーダーになる人がいました。本来同じ位置なのに、周りより自分が偉いと勘違いしている職人が出てきてしまうのです。そういう社員がいなくなりました。
とはいえ、営業職に比べるともっと識学を浸透させていきたいという思いはあります。まだまだ可能性がありますよ。
橋本 せっかく枠組みをつくったまではよかったけれども、なかなか社員の理解が進まず識学が定着しないことはよくあります。お二人は、週1回社員の皆さんにルールの重要性や、会社の目標、個人の目標を伝え続け、私からお渡しするとんでもない量の宿題も徹底してやってくださいました。
最後に、どんな会社や経営者に識学がお勧めか教えていただけませんか?
松山 向上心のある社長に識学の受講をお勧めしたいですね。
下田 売り上げを倍以上に増やしたいと思っている経営者は取り組むとよいでしょう。私は、トレーニングしているときから、3倍、4倍、5倍と伸ばしていくつもりでいました。
それと、先代から社長の座を受け継ぎ、何をしたらよいか分からずにいる社長も識学を受けた方がよいです。今の時代に合った経営ができてない可能性がありますから。新時代の経営を取り入れていくべきではないでしょうか。
以上
インタビュイープロフィール
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代表取締役 下田 昌孝
1978年11月04日生まれ 出身:埼玉県八潮市
生まれ育った草加・八潮に感動する塗装工事を届けたいという思いからからアークスを立ち上げる。昨今、塗装業界は塗料や機器、技術の目覚ましい進歩の渦中にある中、それらを取り入れ、新たな価値としてお客様に提供できるように努力をし続けている。
一級塗装技能士/外装劣化診断士