識学社が行った調査では、人事評価に関する不満の1位は「評価の基準が不明確」で、調査対象者の48.3%がこの不満を感じたことがあるという結果でした。
評価の基準が不明確だと、社員は何をしたら評価を獲得できるのか分からず迷い、離職率が高くなったり生産性が下がったりしてしまいます。
では、評価の基準である明確な指標はどのように作成すればよいのでしょうか。
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目次
評価指標の考え方とは
人事評価の指標は、「定量目標(数値や数量に落とし込む目標)」と「定性目標(数値化できない目指すべき状態を表す目標」の2つに大別できます。
定性評価は、さらに「成果評価(どの程度の業務実績を達成できたかを評価)」、「能力評価(業務に必要な知識やスキル・職務の習熟度・業務を遂行する能力などを評価)」、「情意評価(仕事に対する基本姿勢や心構え・勤務態度などを評価)」の3つに分けられますが、いずれにせよ数値化が難しいため、評価指標が曖昧になりやすいです。
上司が求めている成果を100として、評価指標が曖昧だと、例えば部下が認識している成果は50にとどまり、差分50のずれが発生します。
このずれによって、部下は思考停止に陥ったり、自己解釈で動いたりするのです。
思考停止とは、「何をやってよいかよく分からないから、考えるのをやめた」という状態。
一方で、自己解釈とは、部下が「よかれと思って、求めていないことをやってしまう」状態です。
後者の場合は、結果的に部下は無駄働きをする羽目になります。また、自分が頑張ってやったことを評価してくれないと、上司や会社に不満を持つようになっていくでしょう。
正しい人事評価を設定するために
正しい人事評価をするために、期限と状態を明確にした目標を設定しましょう。これを完全結果と呼びます。
例えば、「10kmを60分以内に走ってください」という完全結果の場合は「60分」は期限が明確なため、10㎞走り終えたときのタイムが50分、55分、59分などであればいずれも「○」。
61分、65分、70分であれば全て「×」です。誰の目からも分かります。
これを、「10㎞を一生懸命走る」という目標にしないように注意してください。
定量評価を明確にするためポイント
- 数値化する
- 上長承認を入れる
数値化する
→顧客獲得件数・目標達成率・コスト削減率など
定性評価を明確にするには、
>「能力評価(業務に必要な知識やスキル・職務の習熟度・業務を遂行する能力を評価)」
>「情意評価(情意評価(仕事に対する基本姿勢や心構え・勤務態度などを評価))」
→数値化し難い傾向です。
関連記事:定量評価とは?定性評価との違いやメリット、注意点から効果的な運用方法を解説
上長承認を入れる
○「企画力」の評価指標
→「RPAを使ったコスト削減の企画書(上長承認)」
企画書やデザインなど主観が伴うものは、「私の承認が得られる企画書(デザイン)を月末までに作成してください」と指示しましょう。
上司は部下に主観(例、クライアントの特徴や盛り込んでほしい内容など)を伝えて、毎週フィードバックするイメージです。
そうすることで、1カ月の完成度40%、2カ月70%、3カ月目100%と仕上がっていきます。
結果的に上司と部下で認識のずれが少なくなり、上司が求めている企画書に近づけることができます。
定性評価を定量評価におとしこむために
人事評価は必ずしも定量評価のみとは限りません。時には、定性的な評価項目を作ってしまうこともあるでしょう。
しかし、平等に運用するためには、定性的な内容を定量化する必要があります。具体例を確認してみましょう。
「積極性」の評価指標
→「勉強会を6回開催する」、「予算達成する」など
積極性を持って動くという経過に対して、「成し遂げたい結果は何か」と考えます。
部下が自身で企画した勉強会を主体的に開催してほしいというイメージを持っていれば、「勉強会を6回、自主開催すること」となります。
そもそも、成果目標を達成する経過であれば、「予算達成」という結果のみの評価でOKです。
チームワークの評価指標
→「個人評価に組織評価を入れる」など
「課員がチームの目標達成のために協力して欲しい」というイメージを持っていれば、「個人評価ウエイト80%、組織評価ウエイト20%」とします。
組織評価とは、一つ上の組織の成果評価、例)課員は課の成果、課長は部の成果、部長は全社の成果)20~40%」とします。
つまり、組織評価ウエイト20%であれば、「組織が負けると、自身の評価に20%の影響が出る」、という設計にすることで、チームのことを考えて、協力するような行動を取るようになります。
関連記事:チームワークを強化するマネジメントは可能?リーダーがやるべきことを解説
部下育成の評価指標
→「スキルマップで3ポイント獲得」など
「いつまでに、このようになってほしい」という部下の成長イメージを明文化します。
例えば、1カ月で、基礎知識は得てほしい(例、ペーパーテストで、80点以上を獲ること)。実務は、お客様の一次対応位はできるようになって欲しい(例、実地試験で上長承認を得ること)。
2カ月で、一人で顧客対応できるようになり、3カ月で、顧客フォローまでやってほしいとすると、その育成工程をスキルマップ化して、ペーパーテストや実地テストで評価していきます。
【注意!】やって当然は評価しない。
「遅刻をしない、挨拶をする、規律を守るなど」は評価項目に入れてはいけません。
なぜなら、難易度のハードルは、「ゼロ(子供でもできること)」だからです。
これらは会社がお客さまから高い評価を得るために、リーダーが必ずやってほしいことです。
赤信号で止まるのは当然ですし、それでポイントを貰える世の中ではありません。
ルール違反が続くと、ペナルティ要素(罰金、免許停止、免免許取り消しなど)が強くなるはずです。
つまり、評価項目とは「やってくれたら褒めてあげたい」です。
一方で、やって当然はルールとなり、「やっていないとペナルティ」となります。