KKDという言葉を聞いたことがあっても、その言葉の意味や活用方法を詳しくは知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事ではKKDの意味やメリット・デメリット、併せて用いるべきフレームワークなどを紹介します。
目次
KKDとは
KKDとは、
- 経験(KEIKEN)
- 勘(KAN)
- 度胸(DOKYOU)
の頭文字をとった造語で、日本の製造業を中心に大切にされてきた考え方であり、手法です。
たとえば何らかのトラブルが生じた場合、職人がもつ長年の経験と勘によって解決法を導き出し、度胸によって実行に移します。
製造業だけではなく、「ものづくり大国」である日本の職人が持つ職人技は、高度な専門性をもつ技術であり、まさに経験と勘、そして度胸の賜物であるといえるでしょう。
しかし、経験や勘に基づいたノウハウは属人化しやすいという欠点があり、長期的には組織にネガティブな影響をもたらす可能性が指摘されています。
関連記事:技術継承が成功する企業と失敗する企業の違い!日本企業こそ早めの対策を!方法や人材育成のポイントを解説
KKD法とは
KKD法とは、KKDに基づいて工数等を推定する手法のことです。
IT業界で用いられることが多いですが、業界に関わらず、KKDだけを用いて問題解決をし続けると、トラブルに発展する可能性があります。
例えば、明確な基準が定められていないので、判断を下す従業員によって結果が異なってしまうことや、KKDを保有する従業員が転職・退職してしまうと、KKDに基づくノウハウも失われてしまうことが挙げられます。
さらに、KKDはこれまでの経験に基づくものなので、裏を返せば経験したことがない事態・状況に対応することができないのも課題でしょう。
KKD法と併せて用いるフレームワーク
KKDを用いることによるデメリットを紹介しましたが、以下のようなフレームワークを使うと、そのリスクを避けられます。
- COCOMO法
- LOC法
それぞれ順に紹介します。
COCOMO法
1981年に考案された手法で、過去の情報をもとに構築された統計を参考に、ソフトウェア開発の工数や開発期間の推定に用いられました。
昨今は、テクノロジーの発展によりビッグデータの収集と分析が容易になったため、属人化していた経験や知識、ノウハウといった抽象的な情報を明確なデータとして蓄えられるようになりました。
COCOMO法はデータを蓄えるまでにある程度の期間を必要としますが、蓄積されることでKKD法のリスクをカバーできます。
関連記事:企業会計にデータ分析を活用する方法について:データドリブン経営に向けて
LOC法
LOC法とはソフトウェアの規模を調べる手法で、ソースコードの行数をもとに推定します。
昔からある手法で、現在でも用いられています。
ただし、事前に標準的な記法(コード規約)を決めておく必要があり、途中で状況が変わって仕様を変更しなければならなくなった際には対応できないことがデメリットです。
KKDの反対語とは?
KKDの反対語として「データドリブン」があります。
データドリブンとは、マーケティングや経営活動、Webでの解析情報などの具体的なデータに基づいて意思決定をすることです。
感覚や経験に頼るのではなく、データによる事実を重視することで、より正確、かつ効率的な戦略立案や問題解決を可能にします。
テクノロジーの進化により、多くのデータをとれるようになった現代に注目されている考え方であり、アパレル業界や流通業界など、業界問わず利用されています。
KKDのメリット・デメリットとは
ここでは、KKDのメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
KKDでは経験や勘をもとに判断するため、迅速な意思決定と実行が可能になります。
また、新しい領域の業務については、経験がないため正確な対応はできませんが、経験や勘を応用することはできます。
データを分析する手法では過去のデータがないため分析できず役に立ちませんが、KKDであれば新たな領域でもこれまでの技術や経験の応用で成功率を高められるのです。
デメリット
しかし一方で、KKDではノウハウや知識が一部の職人に属人化しやすいというデメリットがあります。
これにより、退職や転職によって知識・技術が失われるリスクがあるのです。
さらに、勘に頼る部分が大きくなるため、どうしても非論理的・非合理的なものになり根拠に欠けてしまいます。
また、必ずしも「経験が長いから正しい判断が可能」というわけではない点にも、注意しなければなりません。
KKDは時代遅れ?
個人が長い年月をかけて培うKKDは、そう簡単に伝承することができません。
技術や技能の面では伝えることができても、勘や経験といった部分に依存すると、ミスが頻発したり事故につながる可能性があります。
また、環境の変化が激しい現代においては、常に新たな情報をもとに判断することも求められるでしょう。
したがって、ベテランが若手に教えるというやり方は、現代では通用しなくなってきているのです。
KKDに関するQ&A
KKDに関する知識や活用場面を詳しく知ることで、用いるタイミングを判断できます。
ここからはKKDに関するQ&Aを紹介します。
KKDによる経営とは何ですか?
KKD経営とは、経験・勘・度胸に頼る経営手法です。
経営者の直感や過去の経験を重視し、データ分析というよりも個人の洞察力に頼って意思決定します。
数字ではとらえきれないような、めまぐるしい時代の流れにも対応できる点がメリットです。
一方で、客観性を欠くため再現性が低いというデメリットもあります。
そのため現在のビジネス環境では、KKDによる経営と客観的な数字による分析とを組み合わせて行うことが重要視されています。
KKDが生きる場面はどのようなケースですか?
KKDがビジネスで生きる場面をいくつか挙げます。
例えば、不確実な市場環境下で、経営者が長年の経験をもとに大胆な経営判断をし、企業衰退の危機を救うことはKKDに当たります。
その他にも、製造業で熟練作業者が機械音の変化から故障を予測し、大規模な生産中止を未然に防ぐケースがあれば、それもKKDの一例です。
このように、直感的にエラーや動向を見抜く際に、KKDが使われます。
メリットの反面、KKDは属人性があるという点がデメリットです。
そのため、AIやビックデータと組み合わせると、より精度の高い判断が可能になるでしょう。
まとめ
ビジネスの場では、長年の業務で培われた勘や経験が、経営判断に生きる時があります。
その一方で、業務や判断が属人化してしまうことや、判断に対する根拠が乏しく、常に正しい判断とならない点がデメリットです。
現代では、あらゆるデータを瞬時に取得することが容易になっています。
これらのデータを使いつつ、瞬時に判断が求められるような場面ではKKDを活用すると、変化の激しい時代でも生き残れる企業になるでしょう。