昨今、従業員の募集や求人情報で「理論年収」という言葉を見かける機会が増えてきました。
理論年収は「想定年収」とも呼ばれることがありますが、どのような意味があるのでしょうか?
また想定年収とはどのように異なるのでしょうか?
本記事では理論年収(想定年収)について、
- 概要や役割
- 内訳や算出方法
- 注意点
などを解説していきます。
目次
理論年収(想定年収)とは
理論年収とは、企業に1年間勤める際に得られる年収を指しており、月収や賞与、手当などに基づいて計算します。
求人情報などに掲載されているものの多くは、この「理論年収」にあたります。
また、通勤手当が理論年収の算出に用いられない理由は、従業員ごとに支給額が変わることから、理論年収の算出に適さないためです。
目的
理論年収を算出する目的は、企業への入社を検討する人に対して、標準的な年収の事例を提示することにあります。
ただし、掲載される数字はあくまでも事例であるケースがほとんどであり、理論上もらうことができる最大限の数値で計算されていることがあるため、理論年収と同額の年収とならない場合があります。
想定年収との違いとは
理論年収は「想定年収」と呼ばれることもありますが、意味はほとんど同じです。
ただし、想定年収では会社で最も高い年収を得ている従業員の年収があてられている場合や、賞与が多めに設定されているケースも少なくないため、入社1年目だと想定年収を下回ることが多くあります。
そもそも「年収」とは
そもそも「年収」とはどのようなものなのでしょうか?
年収とは、年間を通して得る収入の合計のことで、収入から支払う税金や社会保険料も含まれています。
つまり、控除される前の総支給額ということです。
「手取り年収」とは
手取り年収とは、年収の総支給額から税金や社会保険料を差し引いたあとに残る、年間の収入の総額のことです。
総支給額には手当やボーナス、インセンティブが含まれますが、手取り年収を算出する場合は総支給額から下記の金額を差し引きます。
- 所得税
- 健康保険料
- 介護保険料(40~64歳まで)
- 雇用保険料
- 厚生年金保険料
したがって、年収が1,200万円だったとしても手取り年収はそれよりも低くなるため、毎月100万円を使えるわけではないので注意しましょう。
理論年収(想定年収)の内容とは
求人情報に掲載される理論年収を算出する場合は、下記の計算式を使用します。
月給(固定残業代+手当+成果報酬)×12ヶ月+(基本給×自社が定める支給月数)=理論年収
しかし、この計算式だけをみても具体的にイメージすることは難しいでしょう。
そこで、ここからは理論年収を構成する要素を解説していきます。
基本給
基本給とは、文字通り給与の基本となるもので、毎月定額で支払われる固定給与です。
手当のように金額が変わることがなく、企業側も変えることができません。
理論年収における基本給は12ヶ月分となり、「基本給×12」が想定年収の基本給分です。
残業代
理論年収には残業代も含まれますが、毎月変わる残業代は含まれていません。
毎月固定で支払われる残業代のことを指しており、年間の平均額を固定額として算出します。
また、ここでいう固定額とは、1ヶ月単位で想定される残業代を固定して毎月支払う「みなし残業」のことです。
例えば、毎月30時間分の残業代が発生すると想定している企業であれば、仮に残業時間が30時間以下だったとしても、30時間分のみなし残業代を受け取ることができます。
ボーナス(賞与)
理論年収には、ボーナスも含まれます。
「賞与」とも呼ばれますが、会社によっては支払義務がなく業績が悪ければ全額カットされるケースもあります。
ただし前述したように、理論年収にはボーナスが含まれることが一般的であるため、実際の支給額が聞いていた理論年収よりも少ないと感じるのはボーナスの影響かもしれません。
したがって、誤解を招かないためにもしっかりと確認しておくべきでしょう。
ちなみにボーナスは夏と冬の年2回の支給が一般的で、理論年収にはどちらも含まれます。
役職手当
役職手当も理論年収に含まれます。
役職手当とは、「課長」や「部長」など役職が上がるにつれて、支給額が増える手当です。
したがって、理論年収と一緒に「40歳課長のケース」などの掲載がある場合、理論年収には課長の役職手当が含まれています。
また、役職手当は毎月支給されるため、12ヶ月分の役職手当が加算されることになります。
各種手当
役職手当以外にも、下記のようなさまざまな手当が含まれています。
- 住宅手当:従業員の持ち家のローンの補助や、賃貸契約の住居費用補助
- 家族手当:扶養している家族がいる従業員に支給される手当
- 地域手当:都市部や物価が高い地域に勤務する従業員に支給される手当
ただし、要件に当てはまる人にしか支給されないため、当然ですが該当しない人はもらえません。
インセンティブ(成果報酬)
インセンティブが理論年収に含まれる場合もあります。
インセンティブとは「成果報酬」とも呼ばれ、企業が設定した目標に到達した従業員にだけ支給される報酬で、主に営業職などで用いられています。
ただし、インセンティブは人によって差が激しくなる可能性が高いため、理論年収の算出に用いる際は注意が必要です。
まとめ
本記事では、理論年収を解説しました。
転職活動をする際は、理論年収が参考値であることを理解したうえで、交渉に臨みましょう。