メタ認知とは、自分自身や物事に対して高次的に観察することを指します。
メタ認知はビジネスシーンで求められることが増えてきており、ビジネスマンに必須の能力だといえるでしょう。
そこで本記事では、メタ認知能力を高めるためのおすすめのトレーニングや書籍を紹介していきます。
メタ認知能力は後天的に成長させることが可能です。
「自分には無理だ……」と諦めずに、ぜひチャレンジしてみてください。
目次
メタ認知とは?
メタ認知とは、自分自身について客観的に認識することです。
そもそも「メタ」とは、ギリシャ語で「高次な」「超」という意味があります。
そのため、メタ認知を直訳すると「高次な認知」となり、客観的な位置から自分を認識するという意味になります。
メタ認知という言葉はアメリカの心理学者であるジョン・ハーレー・フラベルによって提唱されました。
メタ認知は1970年代から心理学用語として用いられるようになりましたが、ビジネスで用いられるようになったのは最近のことです。
現在のビジネスシーンでは「メタ認知は重要なスキルだ」という共通認識となっています。
メタ認知の高い人の特徴
メタ認知の高い人の特徴は以下の通りです。
- 主観と客観を使い分けられる
- 問題解決のために熟考できる
- 相手の言動の意図を読み取れる
- 自分の長所と短所を見極められる
メタ認知能力の高い人は主観と客観を使い分けるのが上手なようです。
わかりやすく言えば、「これは個人的な意見ですが……」と付け加えることができる人は、主観と客観を使い分けることができていると言えるでしょう。
また、苦手なことに対して問題解決のために熟考できる人も、メタ認知能力が高いと言えます。
主観(感情)に流されることなく、客観的な立ち位置で物事に取り組めるからです。
客観的な立ち位置で他人の言動を見ることができれば、その言動の意図を読み取ることも可能になるでしょう。
そのため、相手の言動の意図を読み取り、それに適した返答ができるようになります。
さらに、メタ認知で自分を客観視できる人は、自分の長所と短所を見極めることが可能です。
例えば「〇〇さんは私よりもコミュニケーション能力が高い」という判断ができるので、適切な仕事の割り振りが可能になります。
メタ認知の低い人の特徴
メタ認知能力の低い人の特徴は以下の通りです。
- 自分の感情に囚われてしまう
- 柔軟な発想ができない
- 自分自身を理解できない
メタ認知能力が低い人は感情に流されがちです。
そのため、感情的な行動をとりやすい傾向にあります。
例えば、些細なことにでも怒ってしまったり、非効率的な長話を延々としてしまったりする人は、メタ認知の低い人である可能性が高いです。
また、メタ認知能力の低い人は柔軟な発想ができません。
物事に対して一度これと決めたものを、そう簡単に変えることができないのです。
このことから、物事に対して一つの視点でしか捉えることができない人間は、メタ認知能力が低いと言えるでしょう。
そして、自分自身を適切に理解できないのも、メタ認知能力の低い人の特徴として挙げられます。
メタ認知能力が低いと、自分の長所や短所を理解できないため、自分の長所を活かした成功体験や、短所をカバーするためのリスク管理といった経験を積むことができません。
そのため、仕事における成長意欲が低くなる傾向があるようです。
関連記事:「感情」と仕事を切り離し生産性増大| 0からわかる『感情の切り離し方』
仕事・ビジネスにおいて役立つ「事実」と「感想」の使い分けとメタ認知
メタ認知能力が高い人は、事実と客観を明確に分けることができます。
その能力が特に活きるのが、上司への「報・連・相」です。
例えば、部下からの報告で以下のようなやりとりが発生することがあります。
上司:そういえば、この前の顧客対応はどうなった?
部下:先方の言動を踏まえると、契約は取れそうです。契約までは、もうしばらく時間がほしいとおっしゃっていましたので、1カ月後に再度商談に行きます。
上司:それはあなたの感想だよね。お客さんはなんていってたの?
部下:他の商品も気になるから待ってっていってました。今のところ、価格以外は御社の商品が一番だから有力候補ではあると。
上司:それならなおさらすぐにフォローしないと。事実を伝えてください。
上記のように、メタ認知能力が低い人は、自身の感想と事実を分けて考えることが苦手です。
したがって、部下をお持ちの方で、上記のような事態がよく発生する場合には、部下のメタ認知能力を鍛えるのに邁進するのがおすすめです。
関連記事:多人数でのプロジェクト進行、「報連相」の弊害がマネジメントを悩ませる理由とその解決法
メタ認知の能力を高めるメリット
メタ認知能力を高めるメリットは以下の通りです。
- 課題を抽出できる
- 感情をコントロールしやすくなる
- 話の説得力が増す
- 問題解決能力が高まる
メタ認知能力の高い人は、自分達の事業を外側から見ることができるため、客観的な視点から課題を抽出することができます。
自分達の手で事業を回していると、当たり前のことに気付きづらくなることがあるでしょう。
しかし、メタ認知能力が高ければ、自分達を俯瞰できるので、課題に気付きやすくなるのです。
また、メタ認知能力の高い人は自身の感情をコントロールしやすくなります。
例えばイライラしそうな時に気持ちを落ち着かせたり、ここぞという時に気持ちを昂らせたりすることができるのです。
さらに、感情論ではなく客観的なデータをベースにできるので、話の説得力も増します。
プレゼンや営業でも、メタ認知は大いに役立つのです。
メタ認知能力の高い人は問題解決能力が高い傾向にあります。
問題に直面した時に高次的な視点で思考し、蓄積されたメタ認知的知識で解決できるからです。
関連記事:【明日から変わる】効果的なメンタルコントロールとマネジメント法を紹介!
メタ認知能力を高めるトレーニング7選
メタ認知能力を高めるトレーニングとしては以下の7つが挙げられます。
- マインドフルネス
- セルフモニタリング
- ライティングセラピー
- 認知療法
- メタコグニティブトレーニング
- 事実・感想・思考分析法
- 主我客我法
それぞれ詳しくみていきましょう。
マインドフルネス
メタ認知能力を高めるための最も定番のトレーニングといえばマインドフルネスです。
マインドフルネスとは、過去の経験や先入観といった雑念に囚われることなく、今だけに集中することで心を育む練習のことを指します。
日本人であれば「瞑想」の方がイメージしやすいでしょう。
瞑想はマインドフルネスの中で代表的なトレーニングの一つとされています。
瞑想の手順は以下の通りです。
- 調身
- 調息
- 調心
まずは調身で体の姿勢を正すことから始めます。
瞑想する際の座り方に決まりはありませんが、背筋を伸ばすのが基本です。
力まない範囲で背筋を伸ばし、上半身をリラックスさせましょう。
調身ができたら、次は調息です。
鼻から空気を吸って、鼻から出しましょう。
吸う時も吐く時も、それぞれ3秒以上かけて行うことで、気持ちを落ち着かせることができます。
ただし、秒数を意識すると深い瞑想ができませんので、自分自身をリラックスさせることを優先させるのがコツです。
そして最後に、調心で心を整えていきます。ポイントは「今この瞬間に集中すること」です。
感覚をフル活用して、光、音、温度に焦点を当て、そして自分自身が何を感じているのかに集中します。
最初は1分程度から始め、少しずつ時間を伸ばしていくのがいいでしょう。
関連記事:マインドフルネスとは?仕事での活用方法やその効果、ビジネスでの注意点などを解説!
セルフモニタリング
セルフモニタリングとは自分自身を観察するという意味です。
「自分は何をして、何を考えている?」という問いを立てることで、客観的に自分自身を観察していくトレーニングとなっています。
自分の「今の状況」「思考」「気分」「行動」「体の反応」を観察するのがポイントです。
例えば本記事を執筆している筆者は以下のようになりました。参考にしてみてください。
- 今の状況:カフェで記事を執筆中
- 思考:できれば午前中に記事の執筆を終わらせたい
- 気分:適度なストレスを感じている
- 行動:短い休息を挟みながら、指で延々とキーボードを叩いている
- 体の反応:いつもと比べて睡眠不足だからか、それとも椅子に座り続けているからか、肩が少し重い
ライティングセラピー
ライティングセラピーとは、自分が今抱いている悩みや不安を紙に書き出すことを指します。
やり方としては、自分が抱いている負の感情や悩み事を、10分間、とにかく紙に書き続けるだけです。
そうすることで自分のネガティブな感情を可視化することができ、メタ認知に繋げることが可能となります。
また、ライティングセラピーには精神の安定化の効果も期待できます。
認知療法
コーチングや認知療法を受けることも、メタ認知能力を高めるためのトレーニングになります。
なぜなら、第三者視点で自分自身のバイアスやパラダイムに気付くことができるからです。
自分の思考の癖や習慣は、自分自身ではなかなか気付くことができません。
第三者に観察してもらうことで、自身を見つめるきっかけに繋げることができるでしょう。
メタコグニティブトレーニング
メタコグニティブトレーニング(MCT)は、独ハンブルク大学のMortiz教授が妄想を抱きやすい統合失調病患者のために開発したメタ認知トレーニングです。
MCTはグループでの実施が基本ですが、個人でも実施できる「MCT+」も開発されています。
具体的な訓練ステップは以下の通りです。
- 認知バイアスに関する知識を獲得する
- 自らの認知バイアスに気付く
- 認知バイアスをモニタリングする
- 認知バイアスを修正したりコントロールしたりする
- 問題が解決する、精神的苦痛が取り除かれる
- 動機づけが高まる
- 1に戻る
トレーニング内容はハンブルク大学のサイトからダウンロード可能です。
事実・感情・思考分析法
メタ認知を行う際は、事実・感情・思考の3つに分けて分析するやり方があります。
以下のようなイメージです。
- 事実:今日までにプレゼンの資料を作成しなければいけない
- 感情:プレゼンをすっぽかしたい、イライラする
- 思考:「なんでいつもギリギリになるのだろう」と考えている自分がいる
このように整理していきます。
これだけでも十分すぎるぐらいに自分を客観視できるようになるでしょう。
そしてさらに、これに加えて前向きな言葉を付け加えると、より効果が高まります。
- 事実:今日までにプレゼンの資料を作成しなければいけない
- 感情:プレゼンをすっぽかしたい、イライラする→次は同じ失敗をしないというやる気
- 思考:「なんでいつもギリギリになるのだろう」と考えている自分がいる→とりあえず今は資料作成に集中して、終了後にスケジュールの改善を検討しよう
ぜひ試してみてください。
主我客我法
「主我と客我(’I’ and the ‘me’)」は社会心理学者のジョージ・ハーバード・ミードが提案した用語です。
客我は「社会や他人に対する自分の考え」で、主我は「社会や他人に対する自分の考えに反応する自分」のことを指します。
そして主我と客我の相互作用によって「自我」が形成されるとミードは定義しました。
このように自分の考えを主我と客我に切り分けて自分を客観視するのもいいトレーニングになるでしょう。
主我と客我を理解することで、ようやく自我を理解できるようになるのです。
メタ認知能力を高めるトレーニングアプリ
メタ認知トレーニングは、スマートフォン用アプリをダウンロードすることで手軽に実施できます。
おすすめのアプリは以下の通りです。
- メタ認知トレーナー
- mentment(メンタメンタ)
メタ認知トレーナーは、客観的な視点を誘発する質問をランダムに表示してくれるアプリです。
質問に対して考えるだけで、メタ認知を養うことができます。
mentmentはゲーム感覚でメタ認知トレーニングに取り組むことができるアプリです。
1000種類以上のミッションが導入されているので、習慣化させることもできます。
メタ認知能力を高める本
メタ認知能力を高めるおすすめの本は以下の通りです。
- 鋼のメンタルを手に入れる ゴリラ式メタ認知トレーニング
- メタ思考トレーニング 発想力が飛躍的にアップする34問
- エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする
『鋼のメンタルを手に入れる ゴリラ式メタ認知トレーニング』は、「ゴリラについて考える」をテーマにするという衝撃的な切り口でメタ認知を学べる本です。
初心者は本書を手に取ってみるのがいいでしょう。
また、『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』はメタ認知専門の書籍ではありませんが、メタ認知が必要不可欠な思考法が提示されています。
ビジネスマン一読の書籍と言えるでしょう。
メタ認知のFAQ
ここからはFAQ形式でメタ認知を解説していきます。
メタ認知と年齢に関係性があるの?
はい、関係性があります。メタ認知能力は3歳前後から無意識的に芽生え始め、加齢と共に成長していくと言われているようです。
ここで重要なのは「加齢と共に成長していく」ということでしょう。
これはつまり、メタ認知能力は後天的に成長させることができるということです。
メタ認知的知識をメタ認知的技術で活用してきた人材は問題解決能力が高い傾向があります。
日常的にメタ認知を活用していきたいところです。
日常生活でメタ認知を向上させるには?
日常生活でメタ認知を向上させるのにおすすめなのが、たくさんの作品(ストーリー)に触れることです。
例えばアニメを視聴するという行為は、アニメの中の世界を高次的に観察していることと同義だといえます。
登場人物の心情と一緒に高次的に観察することができれば、主観と客観の使い分けも上達するはずです。
さらに、この思考法を現実世界に持ち込むことで、容易にメタ認知できるようになります。
仕事のシーンだけでなくで、プライベートでもメタ認知を活用できるようにすることで、メタ認知能力がぐんぐん向上するようになるでしょう。