派遣法は、派遣労働者がより安定的に、そして安心して働けるようにすることを目的に、これまで何度も法改正が行われています。
しかし、そうした繰り返しの法改正によって内容が変化していくため、派遣法について、正しく理解していない企業担当者も少なくありません。
そこで本記事では、派遣法の概要や法改正の変遷を解説していきます。
目次
労働者派遣法とは
労働者派遣法とは、簡潔に述べると「派遣労働者を守るための法律」です。
日本企業において派遣労働者は欠かせない存在になっているように、とても重要な存在です。
しかし、正規労働者よりも立場が弱く、収入が不安定になりやすいなどの課題がありました。
そのためにも法律によって派遣労働者を守るべく、労働者派遣法が誕生し、時代や環境に合わせて法改正を繰り返してきたのです。
派遣法ができた経緯と法改正の歴史とは
労働者派遣法が成立したのは、1986年のことです。
これ以前では人材派遣事業自体が法律で認められていなかったため、業務請負という形式でした。
そこで、業務請負と労働者派遣事業を正式に分けるために「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」が告示されます。
初期の派遣法では13の業務でしか派遣労働者は従事できませんでしたが、その後は人材派遣事業の需要が高まり、徐々に業務の幅が拡大されていきました。
そして、細かな法改正を繰り返したほか、これまでに大きな法改正を過去3度行っています。
ここからは、大幅な法改正が行われたポイントを見ていきましょう。
関連記事:【2021】派遣法改正とは?1月・4月の改正要点と企業の対応を解説
【派遣法】2012年の法改正
一度目の大幅な法改正が行われたのは、2012年です。
労働者派遣事業の需要が高まり続けていたこの頃、その裏で偽装請負や二重派遣など人材派遣に関する違法行為が目立つようになりました。
そこで、派遣労働者を守るために下記のような法改正が実施されました。
改正項目 | 改正内容 |
日雇い派遣の原則禁止 | 責任の所在が曖昧で派遣労働者の収入が不安定になるため、原則として日雇い派遣が禁止となる。 |
マージン率の公開 | この法改正が行われるまで派遣会社のマージン率が不明だったが、労働者が適切な派遣会社を選べるようにマージン率の公開が義務付けられた。 |
グループ内派遣の8割規制 | 人材派遣会社を子会社として設立して、親会社やグループ企業に派遣して人件費を節約する「グループ内派遣」が、8割までの規制となる。 |
1年以内の再就業の禁止 | 離職後、1年以内に元従業員を派遣労働者として受け入れることを禁止する。 |
【派遣法】2015年の法改正
続いて、2015年に行われた法改正の要点は下記のとおりです。
改正項目 | 改正内容 |
許可制への変更 | 従来、許可要件を満たさない派遣会社が事業を行っていたが、本改正によって許可制となった。法令を遵守した健全な派遣事業を促進させる目的がある。 |
労働契約の申込みみなし制度 | 派遣先企業が違法な派遣だと認識しつつ派遣労働者を受け入れると、派遣先が派遣労働者に対して派遣会社と同じ労働契約を申し込んだとする制度。 |
雇用安定措置の義務化 | 派遣期間が1年以上3年未満となる見込みの労働者に対して、派遣会社は雇用継続のための措置を講じることが義務化された。 |
派遣期間の上限統一 | 派遣期間の上限が3年に統一 |
派遣法の2018年問題とは
2015年の法改正のなかで、特に注目を集めたのが派遣期間の上限統一で、「2018年問題」や「3年ルール」とも呼ばれています。
本改正によって個人単位の派遣期間の上限が3年に統一されたため、従来は派遣期間に上限がなかった業務を行っていた派遣労働者が、一斉に雇い止めになる可能性があったのです。
実際は、派遣期間制限を避けるために派遣労働者を入れ替える動きの活発化と、派遣会社の無期雇用化が進みました。
関連記事:【企業向け】人材派遣会社を活用するメリットとは?人材派遣の3つの種類やデメリットを解説
【派遣法】2021年の法改正
最後に、2021年に行われた法改正を見ていきましょう。
法改正 | 改正内容 |
派遣労働者雇用時の説明義務化 | 派遣労働者を雇用する際に、派遣会社が教育訓練やキャリアコンサルティングについて説明することが義務化された。
もともと以前の法改正で義務化されていたが、本改正によってさらに厳格化されることに。 |
労働者派遣契約書のデジタル記録による作成 | 従来、書面による作成が義務となっていた労働者派遣契約が、デジタル記録で作成することが認められた。 |
派遣労働者からの苦情処理を派遣先に義務化 | 従来、派遣労働者の苦情処理は派遣会社が行っていたが、本改正によって派遣先企業も主体的に対応するように変更となった。 |
雇用安定措置に関する希望聴取の義務化 | 派遣会社は雇用安定措置のために、派遣労働者が希望する措置の内容を聞き取り、その結果を「派遣元管理台帳」に記録することが義務化された。 |
労働者派遣法違反の罰則とは
労働者派遣法に違反するとどのような罰則が設けられているのでしょうか。
ここでは、いくつか具体的な例を見ていきましょう。
違反内容 | 罰則 |
派遣労働者に待遇の説明を怠る |
|
派遣会社が派遣労働者に不合理な待遇をする |
|
派遣先企業が派遣企業に情報提供しない、または虚偽説明をした | 派遣企業への勧告と公表 |
関連記事:働き方改革の罰則とは?改正内容を正しく理解して違反を防ごう
まとめ:労働者派遣法とは
派遣社員は、企業にとって心強い人材です。
その一方で、これまで厳しい条件の中で働かされてきたという問題があります。
正規労働者よりも立場が弱い派遣社員。
少子高齢化が進む中で、派遣社員をどのように平等に評価するかという試みが、より一層重要視される局面はしばらく続きそうです。