人材採用にはお金や時間など多くのコストがかかりますが、苦労して内定を出したにもかかわらず内定辞退となると、さらに採用コストが上がってしまいます。
だからこそ、企業は内定辞退を避ける取り組みをすることが重要です。
本記事では、内定辞退の概要やよくある理由、内定辞退を避けるための方法などを解説していきます。
目次
内定辞退とは
内定辞退とは、学生が得た内定を受諾したあとに、自己都合によって内定を辞退することです。
内定とは
そもそも「内定」とはどのようなものなのでしょうか?
ビジネスにおける内定とは、単なる口約束ではなくれっきとした労働契約であり、これを締結することで入社が決まります。
したがって、内定辞退とは「労働契約の不履行」と言い換えることができるのです。
しかし、労働基準法によって「退職の自由」が認められているので、内定を受諾した学生が内定辞退をすることは問題ありません。
内定辞退の現状とは
株式会社リクルートの研究機関である就職みらい研究所は、2022年3月31日に「就職プロセス調査」を公表しています。
これによると、2022年3月中旬時点における2023年卒の大学生の内定辞退率は、前回調査よりも5.3ポイント増加して23.9%だったことがわかりました。
また、2022年卒の大学生における12月1日時点の内定辞退率は62.4%です。
内定保有企業数は平均1.36社であることから、とりあえず内定を受諾してから取捨選択をしていることがわかります。
(参考:就職プロセス調査(2023年卒)「2022年3月18日時点 内定状況」丨株式会社リクルート)
内定辞退にありがちな理由とは
ここでは内定辞退が生じる理由を解説していきます。
条件に納得できないため
企業側が出す条件について学生や求職者が妥協できないことが、内定辞退の原因になるケースがあります。
選考の際に求職者が自身の不利にならないように、条件に関して深く訊かないことは少なくありません。
これにより、条件面で調整がなされないまま内定まで進んでしまうのです。
この場合、企業側は早い段階で条件について正確に伝え、求職者に確認、納得してもらうことで内定辞退を避けやすくなるでしょう。
内定ブルーに陥ったため
内定ブルーとは、内定を受諾したあとに不安や悩みなどを感じて憂鬱な気分に陥ることです。
多くの内定者が内定ブルーになっており、これが原因で内定辞退につながるケースもあります。
なぜなら、内定ブルーでは「この会社で本当に良かったのだろうか?」「もっと良い選択肢があったはずでは?」と考え込んでしまうためです。
内定ブルーに対処するためにも、企業側には内定者フォローを適切に行うことが求められます。
従業員の態度が悪かったため
学生や求職者にとって企業の印象を左右するのは、人事担当社や面接官です。
こうした従業員の態度やイメージが悪いと、企業に対して悪い印象を抱いてしまうため、これがもととなり内定辞退となるケースがあります。
また、インターネットの口コミや評価を参考にする人もいるため、インターネット上でどのようなことが書き込まれているのかチェックすることも重要です。
関連記事:内定ブルーとは?内定者・企業側の対処方法や陥る原因を解説
内定辞退が生じるタイミングとは
実際に、学生や求職者はどのようなタイミングで内定辞退をするのでしょうか?
ここでは、内定辞退が行われるタイミングを解説していきます。
入社承諾書・契約書を出さなければならないとき
一般的に内定通知を行う場合、誓約書や入社承諾書を送り、提出を求めます。
これらの書類には提出期限があるため、内定者が悩んでいる際は提出期限ギリギリになって内定辞退をするケースがあります。
志望度が高い会社から内定を得たとき
就職活動において、学生はさまざまな企業に応募することが一般的です。
望む企業に採用されるかどうかはわからないため、または面接の経験を積むためです。
その際に、望む企業から内定を得た場合、志望度が低い企業や滑り止めのために受けた企業から得た内定は辞退する流れとなります。
関連記事:新入社員のモチベーション低下の理由!8割を襲う「リアリティ・ショック」とその対処方法
内定辞退を避けるための取り組み事例
ここでは内定辞退を避けるために、各企業では実際にどのような取り組みが行われているのかを紹介します。
サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社では、内定者のためのワークショップや懇親会、採用担当社と内定者がコミュニケーションをとれる内定者のためのグループウェアを設けています。
グループウェアとは、社内のコミュニケーションをスムーズにするためのソフトウェアのことです。
サイボウズのグループウェアはSNSと同じ要領で使用でき、同期がどのような人か把握したり、社内イベントの様子を知ることができるため、入社前の不安感を軽減することができます。
実際、サイボウズでは内定者が一人も出なかった年もあり、その効果が示されています。
株式会社エイチーム
株式会社エイチームでは、面談から3か月以内に素早く内定を出すことによって、内定辞退を避ける取り組みをしています。
従来は半数以上の内定辞退率でしたが、このスピード選考を取り入れてからは内定辞退率を20%にまで下げることに成功しました。
この方法で重要なことは、エントリーからではなく、就業条件や事業内容を知った面談から3か月以内に内定を出す点です。
まとめ:内定辞退を防ぐために、会社の指針を明確にしよう
内定辞退を防ぐためには、採用時点で会社の指針を明確にする必要があります。
たとえば、人事評価制度などの指標です。
あいまいな指標が多い、あるいは評価のイメージが正しく打ち出せていないと、内定後に「やはりここだと評価されないかもしれない…」と思われてしまうリスクがあります。
入社前と、入社直前のイメージを変えないことが内定辞退を避けるために効果的です。