就職活動や転職活動では、圧迫面接が実施される場合があります。
圧迫面接は、面接官が高圧的な態度を取ることで、応募者にプレッシャーを与える面接のことです。
しかし、そもそも一体なぜ企業は圧迫面接を実施するのでしょうか。また、具体的にどのような対処法があるのでしょうか。
本記事では、就活生や転職を希望している人向けに、圧迫面接について解説していきます。
目次
圧迫面接とは
圧迫面接とは、就職面接の面接官が被面接者に対して威圧的な態度をとったり、答えにくい意地悪な質問をする面接のことです。
圧迫面接によって相手の反応を見て素質を見極める意図があるとされていますが、企業への印象が悪くなることがあるため、積極的に用いるべきではありません。
面接は被面接者を評価することが主な目的ですが、被面接者もまた企業を評価しているのです。
リクナビの調査によると、新卒の就職活動の際に圧迫面接を経験したことがある人の割合は63.7%でした。
サンプル数が212人と少ないため誤差があるかもしれませんが、多くの応募者が圧迫面接を体験していることがわかります。
(参考:企業はなぜ圧迫面接をする?採用のプロが意図と対処法を解説!丨リクナビ)
圧迫面接が行われる理由・背景
実際に面接に参加する人にとって、圧迫面接はプレッシャーのある面接手法です。
では、それでもなぜ企業は圧迫面接を実施するのでしょうか?
圧迫面接が行われる理由としては、以下の4つが挙げられます。
- 応募者の本音を引き出したいから
- ストレス耐性の有無を確認したいから
- コミュニケーション力を見たいから
- 対応能力を見たいから
それぞれ詳しく解説していきます。
理由1:応募者の本音を引き出したいから
圧迫面接が行われる理由として、まず挙げられるのが、応募者の本音を引き出したいことです。
就職は、応募者と企業の駆け引きの場だと言えます。求職者は、自分自身をよりよくアピールするため、企業側から見ると、建前なのか本音なのかが掴みづらい実情があります。
その点、圧迫面接を実施すれば、応募者がどのようなことを考えているのか、本音の部分が表に出やすくなります。
また、人間というのは苦しい場面になるほど、本性が出るものです。
圧迫面接で応募者に対してあえてストレスをかけることで、本音を引き出すことができます。
理由2:ストレス耐性の有無を確認したいから
圧迫面接が行われる理由として、ストレス耐性の有無の確認が挙げられます。
企業や業界によっては、強いストレスが発生する仕事は珍しくありません。
例えば、営業職でクライアントに断られ続けたり、問題が起きた際に謝罪したりしなければいけない場面は、必ず訪れるでしょう。
ストレスに弱い人材だと、すぐにストレスに負けて、メンタルヘルスに問題が生じる可能性があります。
そこで圧迫面接を実施することで、あらかじめストレス耐性の有無を確認するのです。
威圧的な質問をした際に、どのように対応するかで、ストレス耐性を見極めます。
理由3:コミュニケーション力を見たいから
コミュニケーション力の確認も、圧迫面接を実施する理由として挙げられます。
ビジネスシーンでは、威圧的な態度を取るパートナーや、こちらに興味を示さない取引先など、理不尽な対応を見せる方が少なくありません。
その際に適切なコミュニケーションを実施できるかどうかが鍵になります。
圧迫面接では、面接官が理不尽な対応を取ることで、ピンチな場面での従業員のコミュニケーション能力を確認できます。
そのため、「圧迫面接を実施されている」と分かったら、可能な限り落ち着いて質問に答えるようにしましょう。
理由4:対応能力を見たいから
圧迫面接を行う理由として、対応能力の確認も挙げられます。
会社員は、アルバイトとは異なり、業務が完全にマニュアル化されているわけではありません。
突発的に仕事が入ったり、想定とは異なる状況になったりすることがよくあります。
その際に求められるのが対応能力です。
企業は、あえて無関心な態度を見せたり、予想外の質問をしたりすることで、応募者の対応能力を確かめることがあります。
そのため、応募者は入念に回答を準備するだけでなく、日頃から不測の事態に対して冷静に対応できるようにしておくことが求められます。
圧迫面接の具体例
圧迫面接の具体例としては下記のようなものが挙げられます。
- 睨みつけて大きな声で怒鳴る
- 常に怒った口調で話す
- 横柄な態度をとる
- 被面接者の話を無視する
- 被面接者の意見を否定する
- 何度も「なぜ?」と質問する
例えば同じテーマについて何度も質問したり、「なぜ?」と繰り返し聞く圧迫面接では、面接官は被面接者が普段から深い思考をしているかどうかを見ています。
深堀りして聞くことで、その場しのぎで答えを考えているのか、普段からよく考えているのかを探っているのです。
上記の問いを繰り返すことは決して悪いことではありませんが、返答に対して横柄な態度をとる。
あるいは、にらみつけてしまうなどの付加要素があると、圧迫面接として捉えられてしまいます。
自社の面接官が上記の態度をとっていないか、改めて確認しておくとよいでしょう。
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被面接者が圧迫面接と勘違いしているケースも
圧迫面接に関して注意しておくべきポイントとしては、企業側は圧迫面接をしているつもりはないのに、被面接者側が勝手に圧迫面接だと思い込んでいるケースがあることです。
面接官は被面接者が、
- どのような人物なのか
- 何を考えているのか
- 自社が望む資質をもっているか
といったことを短時間で見極めなければなりません。
したがって、結果的に何度も同じことを言葉を変えて質問したり、途中で考え込むことで不機嫌に見えることがあります。
その様子をみた被面接者が「何度も同じことを聞いてくる」「威圧的な態度だ」と感じて、圧迫面接だと勘違いしてしまうのです。
圧迫面接を行う企業側のメリット・デメリット
圧迫面接は倫理的に正しいのか、と問われると、決してそうではないでしょう。
しかし、その一方であえて圧迫面接を行うのは、以下のようなメリットがあるからです。
- 被面接者の素質を見極められる
- 被面接者の本音を引き出せる
現在、採用面接では問答集のテンプレートなどが出回っているため、同じような回答をする人が多くなっています。
そこで、被面接者の本音を聞き出すために圧迫面接が用いられることがあるのです。
しかし、近年は下記のようなデメリットが目立つようになってきているため、圧迫面接を行う企業は減りつつあります。
- 企業のイメージや信用が毀損される
- 圧迫面接によって体調不良になった被面接者が企業を訴えるリスクがある
- 内定を出しても被面接者が不信感を抱いて辞退する
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圧迫面接をするべきではない理由とは
企業が圧迫面接をするべきではない理由は以下の2つです。
- インターネットで拡散される可能性がある
- 内定辞退をされる可能性がある
インターネットで拡散される可能性がある
現代はSNSを用いて誰でも情報発信ができます。したがって、「◯◯社で圧迫面接をされた」といった情報がインターネット上に書き込まれるとすぐに拡散されてしまいます。
一度拡散してしまうと取り返しがつかないだけではなく、噂に尾ひれがつくように、実際よりも酷い情報が真実として広まってしまうこともあるでしょう。
さらに、一度炎上するとインターネットではその情報が半永久的に残ります。
その結果、後にその会社に入りたいと思っている人が会社について調べた時に、その意欲を削いでしまい、優秀な人材を取り逃がしてしまうかもしれません。
内定辞退をされる可能性がある
圧迫面接によって優秀な人材を見極めたとしても、応募者が内定辞退をすれば意味がありません。
採用したいと思う優秀な人材は、他の企業からも内定をもらっていることも考えられます。
そのような場合、その人材は「圧迫面接をしてくるような企業」と「圧迫面接をしなかった企業」とでは、後者を就職先として選ぶ確率が高いでしょう。
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圧迫面接で避けるべき対応について
どんなに圧迫面接がプレッシャーがかかるものだとしても、その企業に就職したいのであれば、最低限の誠意を見せる必要があります。
圧迫面接で避けるべき対応は、以下の4つです。
- 反論する
- 沈黙する
- ネガティブな表情を表に出す
- 面接会場から退出する
それぞれ詳しく解説していきます。
避けるべき対応1:反論する
圧迫面接で避けるべき対応として「反論」が挙げられます。
圧迫面接では、応募者の回答に対してのいちゃもんや、非常識的な言動がよく見受けられます。
その際に、つい強く反論してしまうと、企業にとって悪印象になることがあるようです。
ビジネスシーンでは、常に「冷静さ」が求められるため、感情に左右されるのはマイナスポイントになります。
理不尽なことがあっても、可能な限り冷静さを保つようにしましょう。
避けるべき対応2:沈黙する
圧迫面接で避けるべき対応として「沈黙」も挙げられます。
威圧的な質問や面接官の無関心な態度に負けてしまい、黙り込んでしまうと、面接が成り立たなくなってしまいます。
実際にビジネスシーンでも、何か問題が起こった際に沈黙してしまうのは良くないことです。
面接はコミュニケーションの場であることを忘れてはいけません。
可能な限り会話を続けるためにも、沈黙は避け、自分の考えを述べるようにしましょう。
避けるべき対応3:ネガティブな表情を表に出す
ネガティブな感情を表に出すことも、圧迫面接で避けるべき対応として挙げられます。
圧迫面接では理不尽な質問が相次ぐため、ついカッとなって反論したり、表情が顔に出たりすることがあります。
また、メンタルが弱い場合だと、プレッシャーに負けてその場で泣いてしまうなど、苦しい表情が表に出る場合もあるでしょう。
このように、ネガティブな感情が表に出てしまうことは、自分自身の感情をコントロールできないということで、評価が悪くなる可能性が高いです。
常に冷静に、ネガティブな表情を表に出さないようにしましょう。
避けるべき対応4:面接会場から退出する
圧迫面接で避けるべき対応として、面接会場からの退出が挙げられます。
先ほどから述べている通り、圧迫面接は、プレッシャーのかかるビジネスシーンを想定したものです。
そう考えると、面接会場からの退出は「仕事放棄」に相当します。
どんなに圧迫面接が苦しくても、その企業に入りたいのであれば、面接会場からの退出は避けましょう。
ただし、極度のストレスで身体に不快な症状が現れた場合は、体調不良を面接官に伝えるのが無難です。
圧迫面接への対処法4選
圧迫面接でも冷静に対応するために、あらかじめ対処法を理解しておきましょう。
圧迫面接への対処法としては、以下の4つが挙げられます。
- 冷静に回答する
- ロールプレイだと解釈する
- 面接官の指摘を受け入れる
- 念入りに準備しておく
それぞれ詳しく解説していきます。
対処法1:冷静に回答する
圧迫面接への対処法として、まず挙げられるのが「冷静に回答すること」です。
圧迫面接では威圧的に質問されるため、ついカッとなったり、苦しい表情が表に出たりします。
もし、商談の場面でも同じように、ネガティブな印象を相手に与えてしまうと、成約に支障が出るかもしれません。
ビジネスパーソンは、常に冷静な対応が求められます。
同じく、圧迫面接でも冷静な回答を心がけることで、面接官からの評価が良くなります。
対処法2:ロールプレイだと解釈する
圧迫面接のプレッシャーに慣れない場合は、圧迫面接そのものをロールプレイだと解釈してみるのも手です。
当たり前ですが、全ての面接官が圧迫面接をやりたくてやっているわけではありません。
応募者を見極めるために、高圧的な態度を「演じている」ことがほとんどです。
であれば、圧迫面接をロールプレイだと割り切って、冷静なビジネスパーソンを演じるようにすれば、プレッシャーにも対応できる可能性があります。
ただし、面接はあくまでもゲームではなく、お互いを理解する場であることは、忘れないようにしましょう。
対処法3:面接官の指摘を受け入れる
圧迫面接では、面接官の質問や指摘に反抗せず、大人しく受け入れるのが無難な対処法です。
面接官からの失礼な質問に対しても、まずは指摘を受け止めて、それから冷静に理由や補足説明を話すといいでしょう。
実際に営業の場面でも、自社が取り扱っている商品について、相手から嫌なところを突かれることがあります。
この際も、弱みは一旦受け入れた後で、再度強みをプレゼンするのがオーソドックスです。
同じように、圧迫面接の際にも、相手に突かれた嫌な部分は受け入れた方が、印象は良くなります。
対処法4:念入りに準備しておく
常に圧迫面接に備えて、念入りに準備しておくのもいいでしょう。
圧迫面接では、思いがけない質問や、執拗に「なぜ?」と追求し続ける場合があります。
このような状況にも対応できるように、回答を念入りに準備すれば、圧迫面接を乗り越えられる可能性が高まります。
また、入念な準備は、一般的な面接にも役立ちます。就活・転職活動で成果を出すためにも、面接は念入りに準備しておきましょう。
ブラック企業による圧迫面接の質問例と対処法
ここまでは圧迫面接の対処法について解説してきました。
しかし、その一方で「過度な圧迫面接を実施する企業はブラック企業なのではないか?」という考え方もあります。
ここでは、ブラック企業にありがちな圧迫面接の例や対処法を解説していきます。
ブラック企業でありがちな圧迫面接の例と対処法
ブラック企業でありがちな圧迫面接の例としては、以下のようなものがあります。
- 机を叩く
- 書類を投げる
- 大声で怒鳴る
- 横柄な態度を取る
このように、あまりにも過度な圧迫面接は、パワハラが横行している可能性があるため、注意が必要です。
面接は突破するものではなく、お互いの相性を確かめる場です。
もし「ブラック企業かも」と思ったら、その場の面接を乗り切ったあと、その後の内定や選考を辞退するのがいいでしょう。
ブラック企業でありがちな質問例
ブラック企業でありがちな質問例としては、以下の5つが挙げられます。
- 君にうちの企業は合わないよ?
- すぐにやめちゃうんでしょ?
- 尊敬する人物は誰ですか?
- 第一志望じゃないですよね?
- Fラン大学だよね?何か学べたの?
それぞれ詳しく解説していきます。
質問例1:君にうちの企業は合わないよ
ブラック企業では「君にうちの企業は合わないよ」と直接発言する場合があります。
よくよく考えてみれば、このような発言をしなくても、あとで応募者の採用を見送ればいいだけです。
それにもかかわらず、このようにわざわざ発言することを考えると、ブラック企業である可能性が高まります。
ほかにも、応募者を否定するような発言も、ブラック企業によくあるケースです。
もし、このような発言があれば、こちらから選考を辞退してもいいでしょう。
質問例2:すぐにやめちゃうんでしょ?
短期離職を経験している応募者に対して「すぐにやめちゃうんでしょ?」と質問されることがあります。
この質問に関しては、ブラック企業や圧迫面接に限らず、多くの企業で投げかけられるものです。
企業としては、せっかく採用したのにすぐ離職されると損失になるため、短期離職するかどうかをしっかり見極めます。
一方で、言い方については企業によって異なります。もし上から見るように「やめちゃうんでしょ?」と質問してくる場合は、少し警戒してもいいでしょう。
質問例3:尊敬する人物は誰ですか?
「尊敬する人物は誰ですか?」という質問は、一見するとよくある質問のように思えるかもしれません。
しかし、この質問は場合によっては宗教、イデオロギー、思想に繋がることがあり、就職差別に繋がる可能性があります。
ここで重要なのは「ちゃんとした企業は就職差別に繋がる質問はしない」ということです。
もし、就職差別に繋がるような質問をされたら、その企業は面接官に対して十分な教育をしていない、という判断材料になります。
質問例4:第一志望じゃないですよね?
応募者が面接を受けている企業が第一志望でない場合、「第一志望ではないですよね?」という質問は、応募者にとって非常に答えにくいものです。
質問の言い方によってはブラック企業である可能性はあるものの、一般的な面接でも普通にある質問でしょう。
もし、このような質問をされた場合は、以下のような回答が適切です
- 御社は第一志望群のうちの1社です
- 御社にも興味はありますが、実は迷っている企業があります
- 正直に言うと、現在の第一志望は〇〇です
質問例5:Fラン大学だよね?何か学べたの?
このように学歴を揶揄する質問は、民法709条で定められる不法行為に該当します。なぜならパワハラになるからです。
たしかに、現在の日本の採用システムは、学歴が基準になっているのは否めません。
しかし、目の前にいる人にむかって、学歴を揶揄するような発言は「モラルに欠ける」とみなされ、パワハラに該当するでしょう。
学歴に限らず「自分の悪口を言われた」と思ったら、それはパワハラです。ブラック企業の可能性を疑いましょう。
まとめ
圧迫面接は感情的なマネジメントをする企業に現れることが多いです。
たとえば、上司が部下を激しく叱責する、といったマネジメントは、一時的には効果を生んだとしても、その後部下の心まで啄んでしまうかもしれません。
ストレス耐性に特に強い社員を求めている企業は、知らないうちに組織全体が感情的に動いている危険性があります。
弊社では、感情的なマネジメントを否定しています。
つい、感情的にマネジメントをしてしまう…。そうお悩みの方は、ぜひ弊社「識学」の資料をダウンロードし、ご自身のマネジメントを見直してみてください。
きっと、気づきがあるはずです。