伸びている会社の社長は、方々を駆けずり回ったのに業績が伴ってこないといった苦しい思いはしていません。もちろん体も頭も使わずに業績が伸びるということはあり得ませんが、様々なことに少しずつ工夫を積み重ねることで、自然と業績が上向いていくのです。今回は、そんなできる経営者が大切にしている3つのことについて焦点を当てたいと思います。
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「優秀な従業員に高い給料を払いたい」と本気で思っている
従業員にとって、給料が高い方が良いことは言うまでもないでしょう。プライベートの時間を過ごすことができたり、人よりも少し早く引退して何か好きなことができたりします。生活全体の充実が仕事にも良い影響を与えるはずです。
ただ、給料が従業員にとって充実の源泉であっても、会社にとってはコストでしかありません。「最も優秀な社員は、無給で働いてくれる人だ」とはある社長から聞いた言葉です。極端ですが、あながち間違いではありません。
このギャップを埋める方法は1つしかありません。それは給与を生み出すサービスの質を社員全員で高めることです。「なんだそんなことか」と思う方も多いでしょうが、本当にそれを意識し、実践できている会社はごく僅かです。
実践できていない会社の特徴の1つとして、働きと報酬が見合っていないケースがあります。そこで、経営者の方にお尋ねします。「優秀な従業員に高い給料を払いたいと本気で思っていますか?」
「そんなこと当たり前だろう」とお叱りを受けるかもしれませんが、果たして本当でしょうか。それを確かめるために、優秀だと思う従業員から順番に名前を書きだし、その横にその人が出した実績、払っている報酬を書いてみてください。実績は報酬に見合ったものですか。報酬は高い順に並んだでしょうか?
これをやると大抵の経営者が、「彼はこれくらいしか稼いでいないのか」とか「なんでこの人にこんなに高い給料を払っているんだろうか」といった点に気づきます。実は、こうしたことには従業員の方が敏感です。経営者が放置している成果と報酬のギャップは、従業員のモチベーションダウンを引き起こし、サービスの質を高める意欲を削ぐことになります。
「働きやすい環境の整備」は後回しにせよ
会社を良くしたいがために、まずは従業員が気持ちよく働ける環境を整えようとする経営者がいます。その心意気は称賛すべきものですが、これは間違いです。なぜなら、そういった環境の整備には複雑な要素がいくつもあり、なおかつ時間がかかるからです。
確かに、それこそオフィスのレイアウトは、お金さえ出せばすぐに整えられるものです。とはいえ、それも会社が儲かっていない状態であれば、不確実な投資となるので、避けた方が良いでしょう。
そもそも、オフィスのレイアウトを変えるくらいでは働きやすい環境になりません。なぜなら、会社員に働きやすい会社というテーマについてヒアリングすると、「人間関係の心地良さ」が、オフィスのレイアウトよりもはるかに重視される傾向にあるからです。
とはいえ、集団で仕事をしていく中で、人間関係を良好に保ち続けることが簡単でないにしても、人間関係の良し悪しで仕事の進み具合が変わる組織であるならば、それは人間関係の問題といよりも、組織運営やルールに問題があるのです。お局様という存在は最たる例ですが、特に能力が高いわけではないのに、創業メンバーであるとか幹部と親しいという理由だけで周囲が既得権益を与えているケースは要注意です。ここに組織としての運営ルールがないと、すべてはお局様のご機嫌次第ということになりかねません。
あるときには良くて、あるときには同じことがだめ、という状態は組織に混乱を招きます。例えるなら、時に青信号で止まり、赤信号で進むようなものです。これが何を引き起こすかといえば大事故にほかなりません。皆がスムーズに動くためには、常に青信号は「進め」で、赤信号は「止まれ」であるべきです。
仕事は、人間関係などを気にすることなく、「仕事だからやる」のです。そしてその仕事の完成イメージが事前にしっかりと上から下に流れていることが大切です。
その完成=成果に対しての報酬(人事制度)も、事前に設計されている必要があります。経営者がどんぶり勘定で従業員の給料を決めているようでは、いつまで経っても会社は大きくならないでしょう。
もちろん、今までそういったことを曖昧にしてきた組織では、色々なことに透明性を持たせることで様々な反発も起きると思います。経営者が本気にならなければ何も始まりません。
社長が素直であること
会社が軌道に乗り、公私ともに創業当初にはできなかったことがある程度できるようになると、「自分はすごい」とか、「自分は正しい」と思ってしまいがちです。そういった考えのもとに様々な困難を乗り越えられてきたわけなので、その人のすべてが間違っているとは思いませんが、従業員が生き生きと働き、会社の業績も伸ばし続けたいのであれば、「自分はもっとできる」と思い直した方が良いでしょう。
そして、先ほどお話した優秀な従業員と実績報酬リストに違和感があれば、なぜそうなっているのか分析するのです。「自分は正しい」と常に思っている人は、自分の見たいものにだけ目を向け、聞きたいことだけを聞くようになり、それ以外のものをシャットダウンしてしまいます。新しいものを受け入れて変わるということは自己否定を含むからです。
したがって、今の自分自身に愛着やプライドを持っている人ほど変わることができません。当然ですが、経営者が変わらなければ会社もまた変わらないのです。