誰しも失敗の原因を特定することに頭を悩ませた経験があるでしょう。どれだけ考えても分からず、明確な答えを出す前に諦めてしまったという人もいるかもしれません。本記事では特に営業職の方に向け、日々の失敗の原因をどのように究明していけばよいか、解決に向けた正しい道筋の立て方をご紹介します。
目次
量の確保は前提条件
営業は逆算です。目標の数字を設定し、そこから逆算して量をこなし、質を高めることによって成果が生まれます。
仮に、かねてより定めていた目標を達成できなかったとしましょう。そこで原因究明をすることになり、その結果明らかに営業の量が足りなかったとします。このとき、「じゃあ営業の量を増やそう」とだけ決めて分析を終えてはいけません。
営業にとって量を確保することは絶対に必要なことです。量を増やすことは難易度が高いことではありません。量は何があっても確保することが前提となっている状態が正しいのであり、営業の量が対象になるような分析ではいけないわけです。
営業の量は確保した上で、質(歩留まり)のどこを引き上げるのか、どこを基準にするのか、その基準をクリアするために何を設定するのか、その設定が適切か、を順に検討していきましょう。
セグメントで切り分けてみる
成約率や単価などの数字をもとにした分析をする際は、営業活動を細かいセグメントで分けて事実確認を試みてください。成約率が悪い場合であれば、顧客を新規と既存で分けて考えてみるといったようなものです。
例えば、新規顧客への成約率は及第点で、既存顧客へのアップセル提案が全滅だったとします。この状態であれば、次に講じるべき対策は明らかではないでしょうか。もし、成約率が悪いとだけ認識して分析を終え、これ以降新規にも既存顧客にも同程度の経営資源を割いたとしたら、大した改善は図れませんよね。
そして、事実確認をするときは「あの社員は経験が浅い」とか「この社員のスキルが足りない」というような、個人の能力ゆえに目標が未達に終わったという判断はやめましょう。そもそも人の能力には差があることが当たり前です。
原因分析においては、常に「その人に罪はない」と考えることが大事です。
分析を週1回する
すべての失敗に関する分析を月末の会議でまとめて実施していませんか。「1カ月終わったタイミングで分析をしましょう」では少し遅いかもしれません。毎月仰々しく大がかりなデータ分析を行うのではなく、1週間に1度、〇か×かが分かるゴール設定とそれを達成したかどうか振り返る場を設けてみてはいかがでしょうか。×が付いたことから改善していくのです。
分析自体に価値があることではなく、分析をすることで未来への修正の精度を上げることが重要なのです。微調整を繰り返した方が、社員の負担も少ないでしょう。
それでも問題が特定できない、何から手をつけてよいか分からないというときは他チームの分析やアプローチを聞きにいきましょう。同じ業務をし、同じ商品を販売していてもそのアプローチが全く異なることがあります。自分が見えていなかった面も、人の考えに触れることで見えてくるかもしれません。
ただ、最初から人の意見を取りに行くことはあまりおすすめしません。自分の管轄で起きていることであれば、自分で事実を確認して考え、結論を出す作業から目を背けてはいけません。それでも分からないときにだけ情報を外に取りにいくという順番が、私は良いと思います。
人を頼っても、結局責任はすべて自分です。まず自分の頭で考えるところからスタートしていくことが大切です。
原因究明をしないことも大事
最後に付け加えておきたいことがあります。それは、失敗の原因究明をしないこともときには大事であるということです。原因分析のやり方を紹介すると述べておきながら何を言い出すのかとお思いかもしれませんが、ここでお伝えしたいことは、原因分析に多くの時間を取られ過ぎないように注意しましょうということです。
そもそも、なぜ原因分析をするのというと、過去の経験を踏まえ未来に向けた適切な改善の一手を打ちたいからです。しかし、例えば経験が足りない若手が少ない経験をいくら分析しても質の良い仮説は立てられません。そうであれば、失敗しても次の一手を出し続け、経験を積み重ねることを優先した方が得られるものが大きいです。
事業責任者をはじめとした責任が重いポジションになってくると、次の一手を決めたら部下の行動や戦略に影響があるので、よりずれの少ない原因分析が必要ではあります。しかし、分析したところでそれを実行する権限も自由に使える予算もない、あるのは自分の行動力とアイデアのみという人は、とにかく動き続けて正解を見つけるというのが、実は効率が良いやり方です。
また、ビジネスには常に変数が伴いますから、完璧に原因分析できたとしても環境は変わりますし、その通りにしてもうまくいくとは限りません。したがって、原因究明に時間をかけすぎるのもロスタイムですので、大枠の方向性を判断する程度の認識で、日々の仕事のなかに取り込み、微調整を繰り返していくプロセスが効率的な改善につながります。