突然ですが、下記のような疑問を感じてはいませんか?
- 「AMDってどんな会社なの?」
- 「AMDのCPUはどこが優れているの?」
- 「どうしてintelはAMDに負けてしまったの?」
AMDはアメリカの半導体企業であり、コストパフォーマンスに優れたCPUやGPUを提供することで高評価を得ています。
その一方で、CPUといえば「インテル入ってる」でお馴染みのintelもまた半導体企業として大きな成功を収めていました。
しかし、そのintelがいま、AMDに敗れ去ってしまったことをご存知でしょうか?
なぜ、2000年代初頭まで半導体業界で支配者として君臨していたintelに、AMDは勝つことができたのでしょうか?
本記事では、AMDに関する基本的な知識から、AMDの強さの秘密や製品の特徴などを解説していきます。
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AMDとは? 読み方は?
AMDとは「Advanced Micro Devices(アドバンスト・マイクロ・デバイス)」の頭文字をとった社名であり、1969年にジェリー・サンダース氏によって設立された半導体企業です。
「AMD」の読み方は、日本AMD株式会社の登記者名が「日本エイ・エム・ディ株式会社」となっているため「エイ・エム・ディ」ですが、ファンやネットユーザーは親しみを込めて「アムド」と呼んでいます。
AMDはもともとintelのセカンドソースメーカーの一つに過ぎませんでした。
セカンドソースメーカーとは、あるメーカーが開発した製品と同じ仕様の製品を、正規の許諾契約を結んで製造販売するメーカーのことです。
つまり、AMDはintelが開発した製品と同じ仕様で製品の製造・供給をしていたのです。
intelがAMDとセカンドソースの契約を結んだのは1975年のことですが、当時の半導体メーカーではこのような契約が結ばれることは一般的でした。
AMDのCPUが標準となる
当時、intelのセカンドソースメーカーとしてしか認知されていなかったAMDですが、AMDが独自設計した演算用周辺チップ「Am9511/Am9512」によって、両者の立場が変化します。
このチップは8ビットCPU時代のスタンダードとなり、AMDはintel製チップよりも高性能なものを製造できる技術を示した形になりました。
しかし、intelは1985年に発表した「intel386プロセッサ」以降、セカンドソースを認めない方針に切り替え、半導体をつくるのに必要な重要資料を公開しなくなりました。
これにより、大半のセカンドソースメーカーは撤退することを余儀なくされましたが、AMDは独自開発を進めて、同じではないが互換性のあるプロセッサの製造をするようになります。
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1991年、AMDは最初の互換性のあるプロセッサとして「Am386」を製造・販売します。このとき、intelはすでに次世代CPUの「i486」シリーズを販売しており、「Am386」は旧世代ながら低価格製品として採用されました。
その後、AMDはintelの「i486」と互換性のあるCPUの「Am486」を開発しようとしていましたが、intelとの訴訟の結果、出荷差し止めの仮処分を受けてしまいます。
AMDのプロセッサとして初めて商標登録した「Athlon」の登場
その後も互換プロセッサの開発・販売を続けていきますが、いくつかのメーカーは性能においてintelが製造するプロセッサに追いつけなくなったことや、intelが知的財産保護制度を活用したことで、方針転換をせざるを得なくなりました。
多くのメーカーが互換プロセッサ市場から撤退していくなかで、AMDは「Athlon」プロセッサを開発します。
AthlonはAMDが初めて商標登録をしたプロセッサであり、これによりAMDはintelから5%ものシェアを奪い取ることに成功したのです。
「たった5%?」と感じるかもしれませんが、1つの企業が9割以上のシェアを占める市場においては驚くべき数字だといえます。
コストパフォーマンスに優れた製品開発を続ける
その後、AMDは64ビットに対応するAMD64アーキテクチャを開発し、64ビットOSに対応できるコストパフォーマンスに優れたプロセッサを開発・販売を続けていきます。
さらにAMDは、CPUは1コアが当たり前だった時代にCPUのコア数を2コアや4コア、さらには6コアなどマルチコアCPUを開発しました。
また、2006年には「Radeon」などのグラフィックカード(ディスプレイモニターに画像や映像を映し出すためのチップ搭載されたボード)を開発するATI Technologiesを買収します。
そして、AMDとATI Technologiesの強みを掛け合わせることで開発に成功した「APU」によって、AMDはさらなる躍進を遂げることになりました。
AMD躍進のカギ「APU」とは?
AMDはグラフィックカードを開発していたATI Technologiesを買収することによって、自社の強みであったCPUと、ATI Technologiesの強みであったGPUを組み合わせた「APU」というデバイスを開発しました。
では、このAPUは一体何がすごいのでしょうか? APUの凄さを理解するためにも、まずCPUとGPUについて解説していきます。
CPU・GPUとは?
CPUとはよく「パソコンの頭脳」と言われるように、パソコンの性能の善し悪しや処理速度の速さを左右する重要な部品です。
「Central Processing Unit」の略称で、日本語では「中央演算処理装置」となります。
一方でGPUとは「Graphics Processing Unit」の略称で、日本では「画像処理装置」となります。
画像処理や動画処理関係の演算は膨大な計算量となるため、高い処理能力が求められます。
したがって、CPUだけでは処理が追いつかないので、画像処理に特化したデバイスであるGPUを使用するのです。
APUとは?
APUとは「Accelerated Processing Unit」の略称であり、簡単にいうとCPUとGPUが1つに組み合わされたようなデバイスです。
従来であれば、1つのデバイスの中にCPUとGPUを別々に組み込まなければなりませんでしたが、APUであれば1つのチップだけで済むため、下記のような3つのメリットが得られます。
- コストカット
- 省電力化
- 処理の効率化
それでは1つずつ簡単に解説していきます。
コストカット
CPUとGPUを別々に組み込んで製造するよりも、APU1つで製造することで必要な部品数が減るのです。
そのため、製造コストを抑えることができ、コストカットにつながります。
省電力化
CPUとGPUに別々にデータが通るよりも、APUだけにデータが通ることで回路を減らすことができます。
回路は少ないほど電力の消費量が減るため、省電力化につながります。
処理の効率化
CPUとGPUが一緒になっているため、処理の効率化が実現できます。
CPUとGPUが別々にある場合、データはCPUが搭載されているマザーボードや、GPUが搭載されているビデオカードを通らなければならず非効率的でした。
しかし、APUではデータのやり取りを直接行えるため、効率的に行うことができるのです。
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2021年1〜3月のCPUの市場シェアにおいて、AMDが50.7%となり、intelを超えたことが明らかになっています。
しかし、AMDにはAPUという強い武器がありましたが、それだけではintelには勝てなかったかもしれません。というのも、intelは2000年代後半から2010年代前半にかけて、PC用CPU市場を独占してきました。
このとき、AMDはintelからライバルとすら認識されないほどの差があったのです。APUは優れた開発でしたが、この差を埋めるほどの威力は持っていませんでした。では、なぜintelはAMDに負けてしまったのでしょうか?
ここでは、その理由をintelの歴史から紐解いていきましょう。
(参考:国内外のデスクトップPCシェアでAMDがインテルを上回る。将棋藤井効果で認知度もアップ丨スラド)
intelの始まり
intelはゴードン・ムーアとロバート・ノイスによって1968年に設立されました。AMDが設立されたのが1969年なので、AMDよりわずかに早い創業となっています。
また、ゴードン・ムーアといえば「ムーアの法則」で知られている、半導体分野のパイオニアとして有名な人物です。ムーアの法則は、「半導体の集積密度は18ヵ月から24ヵ月で倍増する」というもの。
intelは今でこそCPUで有名になっていますが、1971年当初はDRAMという半導体メモリを開発したことで成功を収めました。
しかし、1980年代にはDRAMの価格が急落し、CEOのムーアはintelの主力製品をメモリからCPUに変えることを決めたのです。
intelとAMDの戦いがはじまる
その後、intelは「i386」というCPUを開発し、これが大ヒットします。そして2000年代初頭までは半導体業界でトップの座に君臨し続けました。
そこに、当時はまだ小さな企業であったAMDがintelのシェアをじわじわと奪い始めるようになります。そしてついに、2005年にはデスクトップCPUの市場シェアでintelを超えることに成功します。
しかし、AMDはこれにより虎の尾を踏んでしまったのです。intelはAMDを驚異に感じて対抗措置をとりますが、AMDの低価格戦略に対抗して価格競争をするのではなく、別の手段を取りました。
intelによるAMDの封じ込め
intelは価格競争をせず、AMDを含めたライバルのCPUを採用すれば、割引や技術サポート、特許責任補償、供給補償などの特典が受けられなくなると、取引先の多くのPCメーカーに伝えたのです。
これはほぼ脅迫のようなもので、PCメーカーは従うしかありませんでした。さらに、ライバルのCPUを採用した製品の発売を取りやめさせたり延期させるために、小売業者やメーカーに賄賂を渡すこともありました。
このようなintelのなりふり構わない対抗措置のおかげで、intelは2005年にAMDにシェアを越されてから、実に2016年頃まで圧倒的なシェアを握り続けたのです。
intelの失策により再びAMDが台頭する
順調にシェアを伸ばし続けるintelですが、2011年に参入したスマートフォン市場のプロセッサ事業で決定的な失敗をしてしまいます。
これにより2016年にはintelのスマートフォン部門は資金不足となり、数千人の従業員をクビにして事業を縮小しています。
この失敗の影響はintelの主力事業であるデスクトップPC市場にも波及し、2016年以降、intelの市場シェアは右肩下がりとなり、ZENプロジェクトを直接のきっかけとして、2021年1~3月にはAMDがintelのシェアを抜くこととなりました。
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ここまで見てきたように、AMDとintelはお互いに切磋琢磨しつつ技術を磨き、魅力的な製品を世に出し続けてきています。
AMDがintelのシェアを超えたとは言え、intelの製品が優れていることは変わりありません。
そこでここでは、AMD製品とintel製品の特徴や違いについて見ていきましょう。
AMD製品の特徴
AMD製品の最も大きな特徴は、優れたコストパフォーマンスとその安さです。
パフォーマンスにおいてはintelには及ばないとはいわれていますが、実際のところはintelとAMDのCPUにはそこまで大きな差はありません。
intelより性能が良いとはいえないかもしれませんが、intelクラスの処理能力をもったCPUを安価で手に入れられるのは、大きな強みと言えるでしょう。
また、AMDはセキュリティに力を入れており、intel製品よりも高いセキュリティ性能を誇っています。
intel製品の特徴
intel製品の特徴は、その圧倒的なブランド力や信頼性が挙げられます。
ブランド力があるためAMDよりも高価格ですが、CPUの安定性が高く、どのような処理でもオールマイティーにこなせる万能型です。
まとめ
ここまでAMDとintelの歴史や両者の特徴、ADMが台頭した背景を見てきました。
いち、セカンドソースメーカーに過ぎなかったAMDはM&Aをきっかけに大幅な躍進を遂げます。
その後、intelはAMDを潰すために手段を選ばずに対抗し、長年シェアを伸ばし続けてきました。
しかし、スマートフォン事業で失敗したことをきっかけにシェアをAMDに奪われてしまいます。
一方、AMDはマルチコア化に着目し、昔からコストパフォーマンスやセキュリティに優れた製品づくりをしてきました。
今後もintelとAMDの戦いから目が離せないでしょう。
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