突然ですが、このような疑問を感じてはいませんか?
- 「インセンティブ制度はどのような良い効果があるの?」
- 「従業員のモチベーションをもっと上げるにはどうすればいい?」
- 「インセンティブ制度を導入・設計する方法を知りたい」
年功序列制度が無くなりつつある近年、「インセンティブ制度」という言葉をよく聞くようになりました。
本記事ではそんなインセンティブ制度に関する基本的な知識や、メリット・デメリット、導入や設計をする方法などを解説していきます。
目次
インセンティブ制度とはどんな制度?
インセンティブ制度とは、社員のモチベーションを高めることを目的に、目標の達成度合いによって報酬を与える制度のことです。
また、「インセンティブ」は「報奨」や「奨励」という意味があり、ここでは与えられる報酬のことをインセンティブと呼びます。
基本給だけでは、従業員のモチベーションや生産性を上げることが困難である現代において、個人の成績や実績に応じて基本給とは別に「プラスα」で報酬を与えることで、モチベーションの向上を狙います。
従業員にとって何らかの価値ある報酬を与えることが重要であり、インセンティブは必ずしも「金銭的な報酬」である必要はありません。
しかし、ここで「そもそも基本給を多くしたらいいのでは?」と考える方もいるかと思います。たしかに、基本給を上げれば従業員のモチベーションは一時的に上がるでしょう。
しかし、人間はあらゆる刺激に慣れる生き物であるため、基本給が上がって数ヶ月は効果が持続するかもしれませんが、徐々に慣れてきて基本給を上げる以前と同じモチベーションに落ち着くでしょう。
また、基本給は一度上げてしまうと下げることが難しいので、企業の負担が増えてしまうことも問題です。
その点、インセンティブ制度であれば、実際に会社に貢献した従業員にだけ報酬を与えればよいため、会社の負担を抑えながら従業員の意欲を向上させられます。
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それでは、インセンティブ制度を導入すればどのようなメリットが得られるのでしょうか? ここでは下記の5つのメリットについて見ていきましょう。
- 従業員の意欲・モチベーションの向上
- 正当な評価による不公平感の緩和
- 従業員間に適切な競争関係を生み出せる
- 優秀な人材の採用が可能になる
- 会社のビジョンなど経営陣のメッセージを伝えられる
それでは1つずつ解説していきます。
従業員の意欲・モチベーションの向上
まず、最も大きなメリットとしては、この制度の目的でもある従業員のモチベーションや士気を高めることができる点です。
従業員にとっては自身の働きや功績が報酬に反映されるため、やる気が出ます。
正当な評価による不公平感の緩和
年功序列制度では、そこまで成果をあげていない従業員でも、勤続年数が長いという理由だけで、そこそこのポジションに就いていたり高い給料を得ていることがあります。
これは実力のある新人からしてみれば、自分は成果をあげているのに給料や評価に反映されないため、不公平さを感じる原因となりやる気を失ってしまうでしょう。
そこで、インセンティブ制度を導入することで、実力や功績に応じて正当に評価されるようになるため、不公平感を緩和できます。
また、何をすれば評価が上がり報酬を得られるかといった基準が明確になっているため、するべきことが明確になり、生産性向上にもつながります。
従業員間に適切な競争関係を生み出せる
実力や功績によって従業員の間で報酬に差が出るため、お互いに負けないように切磋琢磨して、適切な競争関係を生み出せます。
また、インセンティブに興味がない従業員がいたとしても、仲間がインセンティブのために努力している様子を間近でみることによって、「自分も頑張ってみよう」と触発され、より努力する企業文化や風土が職場に波及していくメリットも期待できます。
優秀な人材の採用が可能になる
近年は年功序列制度が無くなりつつありますが、それでもまだ完全に無くなったわけではありません。
つまり、能力のある優秀な人材は自身の能力を適切に評価してくれる企業にいくため、年功序列制度が残る企業にはいかないのです。
一方で、インセンティブ制度を導入し、従業員の能力を正当に評価する企業であれば、優秀な人材の採用がしやすくなります。
会社のビジョンなど経営陣のメッセージを伝えられる
インセンティブ制度では、どのような行動や成果をあげたら報酬を与えるのかを明確にする必要があります。
言い換えると、これは「企業が評価する人材や行動を名言している」ということでもあるのです。
具体的には、重要な目標に対してはより魅力的なインセンティブを設定することで、従業員に指標の重要度を伝えられます。
この結果、企業が掲げるビジョンや経営陣が伝えたいメッセージが現場や従業員に浸透するようになります。
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上記で見てきた通り、メリットが多く魅力的な制度のように感じた方も多いかもしれません。しかし、インセンティブ制度には下記のようなデメリットがあることも把握しておきましょう。
- 従業員の意欲の低下が起こる
- 過剰な競争が生まれる
- 仕事において視野狭窄に陥る
- 目標達成に対する重圧を感じる
- 評価基準に不満の声があがる
それでは1つずつ解説していきます。
従業員の意欲の低下が起こる
インセンティブ制度の目的であり最大のメリットは、「従業員のモチベーションや意欲が上がること」と解説しました。しかし、その一方で従業員のモチベーションや意欲を損なってしまう可能性もあります。
例えば、あなたは学生時代に部活や勉強において、「努力したにも関わらず望ましい結果を得られなかった」という経験をしたことがないでしょうか?
努力すれば必ずしも良い結果を得られるわけではないため、こういった出来事は仕方がないことと言えます。
これと同じように、仕事においても、「頑張ったけど成果をあげられなかった」ということは往々にして起こります。
しかし、インセンティブ制度のもとでこのようなことが起これば、返って従業員のモチベーションを損ねる結果となるでしょう
過剰な競争が生まれる
これもまた上記で解説しましたが、インセンティブ制度には「従業員間で適切な競争関係を生み出せる」というメリットがあります。
しかし、インセンティブが原因で過剰な競争が生まれるかもしれないというデメリットにもなり得ます。
インセンティブ制度は基本的に個人の成果にフォーカスした制度であるため、評価につながらない行動は軽んじられてしまう可能性があるのです。
その結果、チームワークが乱れて結束力が低下してしまいます。
また、過剰な競争関係に発展すると「あの人が気に入らない」や「ライバルの邪魔をしよう」といったマイナスの感情や行動につながり、組織として成果をあげられなくなってしまうかもしれません。
したがって、個人に対してだけではなく、チームに対してもインセンティブを与えることが重要です。
仕事において視野狭窄に陥る
インセンティブ制度をうまく活用することで従業員の士気を上げることはできたとしても、従業員が仕事において視野狭窄に陥る危険性に注意しなければなりません。
インセンティブは半年や一ヶ月単位と言ったように、短期的なスパンで評価が下されるため、短期的には高い効果を発揮する可能性が高いです。
しかし裏を返せば、従業員が目の前のインセンティブだけを追い求めて、短期的な視野でしか仕事をしなくなる可能性というデメリットも秘めています。
この結果、組織としての俯瞰した視点や、長期的な視点が失われてしまうのです。
目標達成に対する重圧を感じる
能力や実力があり、基準に沿って成果をあげられる従業員にとってはインセンティブ制度は非常に魅力的です。
一方で、能力はありながらもインセンティブ制度により「結果を出さなければ」という重圧を感じることで、実力を発揮できなくなってしまう従業員もいるでしょう。
重圧やプレッシャーを感じるとパフォーマンスの低下につながるため、気をつけなければなりません。
評価基準に不満の声があがる
インセンティブ制度を導入する際は、評価する基準や指標を明確にする必要があります。
また、この基準は報酬に直結するため、従業員にとってはどのようにして成果を評価するのかは死活問題であり、センシティブなことでもあります。
したがって、評価基準に不満の声があがりやすいという点がデメリットです。
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インセンティブ制度の導入・設計をする際は、企業が一方的に進めてはいけません。下記のステップを踏んで適切に導入・設計をしていきましょう。
- 導入目的の明確化
- 社員に対するヒアリング
- インセンティブの内容を検討する
- 社員へ周知する
- 導入後の分析と改善
それでは1つずつ解説していきます。
導入目的の明確化
まず、インセンティブ制度を導入する目的と、その目的が達成されたとする判断基準を明確にする必要があります。
この点が曖昧なまま制度を設計しても、費用や時間の無駄遣いとなり、効果があるのかどうかも不明になってしまいます。また、この制度の対象も明らかにしておきましょう。
実力がある従業員がターゲットなのか、実力を発揮しきれていない従業員がターゲットなのかによって、成果にフォーカスするのか、過程にフォーカスするのかが変わります。
社員に対するヒアリング
続いては、社員に対してヒアリングを行います。
なぜなら、インセンティブ制度は企業目線だけで行うと失敗してしまう可能性が高くなるため、従業員目線を取り入れる必要があるからです。
インセンティブの内容を検討する
ヒアリングが終わったら、自社が提供できるインセンティブの内容を検討していきます。
資金が豊富な企業であれば金銭的なインセンティブを与えられますが、そうではない場合は金銭以外の制度でインセンティブを与える必要があるでしょう。
社員へ周知する
インセンティブ制度の設計ができたら、いよいよ社員に周知して、制度を導入、運用していきます。
このとき重要なのは、制度を一方的に押し付けるのではなく、制度を導入する目的や背景などを社員に丁寧に説明し、周知することです。
導入後の分析と改善
社員に周知して制度の導入・運用が済めばそれで終了ではありません。
その後、社員のモチベーションがどのように変化したかや、業績にどのような影響をもたらしたのかを分析します。
そして、得られたデータをもとにPDCAを回して制度の改善を続けていかなければなりません。
インセンティブ制度の種類
「インセンティブ」と聞くと、金銭的なインセンティブをイメージする方が多いかもしれませんが、先述したように必ずしもそうというわけではなく、いくつか種類があります。
物質的報酬
まず、多くの方がイメージするインセンティブが、成果や功績に応じて金銭的な報酬を与える制度です。営業職で主に採用されています。
評価的報酬
金銭的な報酬以外では、評価を上げることで報酬を与える方法もあり、成果に見合った役職や肩書きを与えます。
従業員のモチベーションを継続的に上げる効果があり、離職率の低下につなげられます。
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インセンティブ制度を導入して成果をあげている企業は多数存在しています。ここでは下記の企業の事例について見ていきましょう。
- 株式会社メルカリ
- 株式会社ソラスト
それでは1つずつ解説していきます。
株式会社メルカリ
フリマアプリの運営をしている株式会社メルカリは、「メルチップ(mertip)」というインセンティブ制度を導入しています。
メルチップはピアボーナス制度と呼ばれるもので、これは従業員同士で感謝や称え合い、報酬を贈り合うことができる仕組みです。
上司や会社が一方的に評価してインセンティブを与えるのではなく、従業員同士という対等な関係で評価し合うことで、組織としての視点を損なうリスクを抑えられます。
メルカリの調査では、メルチップの満足度がおよそ87%となっており、他部署との調整がしやすいと評判となっています。
(参考:贈りあえるピアボーナス(成果給)制度『mertip(メルチップ)』を導入しました。│mercan)
株式会社ソラスト
介護サービスや保育サービス、医療事務などを手掛ける株式会社ソラストでは、「ソラストポイント」と呼ばれるインセンティブ制度が導入されています。
この制度では、サービスの品質を上げるための活動や勤続年数に応じてポイントが支給されます。
株式会社ソラストでは、ソラストポイントを導入したことによりスタッフのモチベーションが上がり、従来は離職率が4割ほどだったのが導入後は2年連続1割以下となったのです。
顧客への満足度調査アンケートでも良い結果が出るようになりました。
まとめ
この記事では、インセンティブ制度について解説しました。従業員のモチベーションや生産性の向上は、会社の成長には必要不可欠なポイントです。
また、これらに加えてインセンティブには優秀な人材の獲得や離職率の低下にもつながるため、人材確保の面でも大きなメリットが期待できます。
自社の目指す方向、目的を明確にしたうえで、しかるべきかたちで導入できるよう、この記事を参考にしてみてください。
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