突然ですが、下記のような疑問を感じてはいませんか?
- 「他社ではどのように賞与査定をしているんだろう」
- 「従業員が賞与査定に満足していないかもしれない」
賞与査定は従業員のモチベーションを左右する重要な要素です。適切に査定が行われていなければ従業員のモチベーションが下がり、最悪の場合離職につながる可能性があります。
本記事では、賞与査定について基本的な知識から、評価の基準、査定をする際の注意点などを解説していきます。
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賞与とは?
賞与とは、毎月支払われる給与(定期給)とは別に支払われる特別な給料を指しており、一般的に「ボーナス」や「お給金」と呼ばれることもあります。労働組合では賞与を「本来の賃金と毎月の支払い額の差額をまとめて受け取るもの」と考え、「一時金」と呼ばれています。
しかし、企業は定期給与を支払う必要はありますが、賞与については法律で定められているわけではなく、支払い義務はありません。
とはいえ、2021年にエン・ジャパン株式会社が中小企業280社に聞いた「夏季賞与 実態調査2021」によると、2021年の夏季給与を支給する中小企業は80%にものぼり、ほとんどの企業が支給することがわかっています。
そして、支払う場合においてもその支給方法には企業によって差があります。日本では、一般的に夏の「夏季賞与」と冬の「冬季賞与」の2度支払われるケースが多いですが、企業によっては1年に3回や1回というケースも存在します。
(参考:中小企業280社に聞いた「夏季賞与」実態調査2021 ―人事向け情報サイト『人事のミカタ』アンケート―│エン・ジャパン)
賞与が支給される人物
賞与やボーナスが支給される人物は、一般的に正社員のみとなっています。パートやアルバイト、非正規社員は勤続年数や勤務時間とは関係なく賞与が支払われないケースがほとんどです。
賞与は労働契約で決められた期間に勤務している場合に支給されますが、欠勤日数や勤務時間によっては対象外となる場合もあります。
賞与の種類
賞与には下記の2つの種類があります。
- 通常賞与(夏と冬に支給されるボーナス)
- 決算賞与(決算のあとに支給される臨時ボーナス)
決算賞与は決算のあとに支給されますが、業績によって支給額が決まり、業績が良くなかった場合は支給されないケースもあります。
このどちらも採用している企業もあれば、どちらか一方のみを採用している企業もあり、企業によってその体系はさまざまです。
賞与に関する法的な決まり
賞与を支給するかどうかは、労働契約または就業規則などで支給すると明記されているのであれば、支払う必要があります。しかし、業績が予想よりも悪かった場合は、支払わなかったり減額することが認められています。
支払額に関しては、労働契約または就業規則などで「基本給×◯ヶ月分」や「利益の◯%」といったように具体的に明記しているのであれば、その記載通りでなくてはなりません。
しかし一般的には、賞与額を決める基準などを労働契約または就業規則などには具体的に記載することはなく、企業の利益や社員の評価によってその都度、金額を設定・変更します。
賞与の平均的な支給額
厚生労働省の「毎月勤労統計調査 令和2年夏季賞与の結果」によると、令和2年(2020年)の賞与を支給している企業の平均支給額は前年より0.5%増えて383,431円でした。これはあくまでも、すべての業種や企業規模を平均して算出した結果ですので、企業や業界によってバラツキはあります。
業種別に見てみると、電気・ガス業が他の業種よりも頭一つ抜けていて、平均賞与額は778,997円でした。その他、いくつか代表的な業種の平均賞与額は下記のとおりです。
- 製造業:491,999円
- 情報通信業:671,221円
- 飲食サービス業等:55,296円
- 医療・福祉:284,697円
- 卸売業・小売業:345,445円
企業規模別に見てみると下記の通りになります。
- 500人以上:633,853円
- 100~499人:418,274円
- 30~99人:335,961円
- 5~29人:274,523円
一般的に、社員の人数が多いほど賞与額が多くなる傾向があります。また、イシン株式会社による調査では、賞与額は基本給の1ヶ月か2ヶ月分を支給する企業の割合が最も多く、全体のおよそ3割となりました。
(参考:毎月勤労統計調査 令和2年夏季賞与の結果│厚生労働省)
(参考:社員アンケート「ボーナス、これくらいもらってます!」)
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「給料が上げれば仕事のモチベーションも上がる?」という考えの落とし穴とは?賞与査定に関する基本的な知識
それでは、賞与の査定について見ていきますが、そもそも賞与を査定する重要性はどのような点にあるのか解説していきます。
賞与査定をする重要性
「賞与さえ出しておけば従業員の意欲が上がって生産性も上がるはずだ」と安易に考えてはいけません。深く考えずに賞与を支給していると、かえって従業員が不満を抱く可能性もあるからです。
なぜなら、賞与の金額は可視化される数値であるため、従業員同士で比べることができ、よく考えずに支給すると「あまり成果を出していない人と同じ金額は納得できない」「あの人より自分のほうが成果をあげているはず」という不満が噴出するからです。
また、頑張っても頑張らなくても一律で同じ額の賞与が支給されるのであれば、頑張っている人のモチベーションが下がり、業務に力も入らなくなってくることでしょう。
だからこそ、明確な基準を設けて公開し、適切な賞与査定をすることが重要なのです。
賞与を査定する期間
賞与の査定期間とは、賞与をいくら支払うのかを決めるための評価期間を指しています。
この査定期間には特に明確な決まりは無く、企業が好きなタイミングで行うことが可能です。日本においては夏と冬に二度の賞与が支払われるケースが多く、7月と12月に支給するのであれば、1月から6月、7月から11月の間を査定期間として設定することができます。
しかし、一般的には査定期間は3ヶ月ほどであるため、4月から9月、10月から3月を査定期間とするケースが多いです。とはいえ、企業によってバラバラであり、試用期間中は査定期間外とすることもあります。
また、査定期間は被らないようにすることが一般的です。なぜなら、重複させないことで公平性を保つことができ、評価も容易になるからです。
さらに、査定期間は従業員に対して「◯月から△月までにいつの賞与査定をしている」と周知しておくことで、従業員が「いつの間にか査定が終わっていた」と不満を抱くことを避けられます。
中途採用者や退職者、休職者の賞与査定期間
賞与の査定期間の課題として挙げられるのが、中途採用者や退職者、休職者の扱いです。
一般的に中途採用者に期待されるのは即戦力ですが、その即戦力を発揮して成果を挙げたとしても、査定期間のせいで中途採用者には賞与が支給されない、または支払われても査定期間が足りないため金額が少ないといったケースが少なくありません。
したがって、優秀な中途採用者に活躍してもらうためにも、可能な限り賞与の支給が公平になるように設定することが重要です。
また、査定期間中に休職や退職した場合については、査定期間中の働きぶりを評価して賞与の支給をする必要があります。就業規則や労働契約などで「退職者または休職者は査定の対象にはならない」と明記されていないにも関わらず支給されない場合は、不利益取扱いとなるケースがあります。
規則の内容を確認するとともに注意しておきましょう。
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賞与査定は、企業の業績や個人の評価に基づいて賞与額を決めるケースが多く、人によって支給額が異なる企業も少なくありません。これにより、従業員がより頑張ろうとするため、モチベーションの向上や適切な競争を促せます。
しかし反対に、支給額に差があることは不満の種になり、満足・納得していない従業員がでてくる可能性もあるでしょう。
実際に、株式会社学情が2020年に行った調査では、賞与が減額となった人のおよそ70%が不満を抱いており、中には「支給された金額をみて転職を検討した」や「賞与の減額で年収が減るのは避けたいので転職したい」という声がでています。
「支給額が減ったから納得していないのでは?」と考える方もいるかも知れませんが、この調査では支給額が上がった人でも満足している人は全体のおよそ40%に留まっています。
(参考: 【20代アンケート調査】夏の賞与は半数以上が「減った」「支給されなかった」と回答)
賞与を査定する基準は3つのポイントが重要
賞与を査定する基準は企業によって異なりますが、一般的には下記の3つの要素を用いる企業が多く、賞与以外でも昇進や降格といった判断をする際にもこれらを基準とするケースが多いです。
- 業績評価
- 能力・スキル評価
- 行動評価
それでは1つずつ解説していきます。
業績評価:定量的な目標の達成度合いを評価する
業績評価は、賞与の査定期間中に定めた目標の達成度合いを評価する基準です。一般的に、業績評価で用いる目標は定量的に設定した目標であるため、どの程度達成できたかどうかが明確になり、客観的な評価が可能となります。
しかし、数値としての目標達成率だけではなく、本人の意欲や目標を達成するためのプロセスも加味して評価することが重要です。業績評価をする際には下記のようなポイントに注意すると良いでしょう。
- 本人のスキルや能力に適した目標になっているか
- 目標をクリアするために意欲的な姿勢で取り組んでいたか
- 目標をクリアするためにメンバーと協力できたか
- 目標をクリアするために新たな挑戦をしたか
能力・スキル評価:個人の能力を評価する
能力評価では、個々の従業員が持つ能力やスキル、資格を評価します。
組織としての目標や個人の目標をクリアするために、また仕事をより効率的・効果的に進めるための資格を取得したり、さらなるスキルアップを目指していることは、仕事に対する熱心な態度として評価され、賞与査定のポイントとなります。
また、重要なポジション・役職への配置なども評価のポイントとなります。これ以外にも、外部セミナーへの参加なども評価の対象とできるでしょう。
行動評価:勤務態度や出勤状況を評価する
行動評価では、日常的な勤務態度や出勤状況、上司やメンバーとの連携がとれているかどうかを評価します。
例えば、売り上げトップの従業員であろうと、頻繁に遅刻をしたり、メンバーとのコミュニケーションに問題があれば、その従業員の評価はあまり上がらないでしょう。個人として能力があっても、組織として、チームとして成果を発揮できなければ評価は上がりません。
また、個人的な勤務態度だけではなく、勤続年数を評価する企業も少なくありません。年功序列の考え方は古いかもしれませんが、それでもやはり長く企業を支えてきた従業員を評価することは、悪いことではないでしょう。
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賞与査定をする際に注意するべきポイントを解説していきます。深く考えずに査定をしてしまうと、従業員が不満を抱いたり、納得いかずにモチベーションが下がる危険性があるため、ぜひ確認しておきましょう。
査定基準を明確にする
まず、最も重要なことは査定基準を明確にすることです。
なぜなら、賞与査定に納得できない従業員が最も強く感じることは「査定基準がよくわからない」ということだからです。
自身の支給額に不満を抱く従業員に対して、その支給額である理由を明確に説明できなければ、従業員は納得して働くことができないでしょう。最悪の場合、仕事を辞める可能性もあります。
査定に関する情報を共有する
続いて、査定基準を明確にしたら、その基準を前もって共有することが重要です。基準だけではなく、査定期間や査定対象者、対象項目、算出方法などをあらかじめ周知しておくことで、従業員も納得しやすくなり、不満を抱く従業員を減らすことができます。
また、それによってどうすれば高評価を得られるのかもわかるため、モチベーション向上と業務効率化も期待できるでしょう。
査定後にはフォローをする
賞与査定をした後は、対象者と面談をすることで、査定に対して不満を抱いていないかを確認するのが良いでしょう。
もし、従業員が目標をクリアできていなければ、その原因を一緒に探る必要があります。原因は企業によっても人によってもさまざま理由が考えられるため、しっかりとヒヤリングすることが重要です。
本人の能力ではなく、職場環境や業務上の問題によって能力を発揮できない場合は、評価方法を変える必要があります。
まとめ
ここまで賞与査定について解説しました。
従業員がしっかりと自分の能力を発揮して、企業の力となってもらうには、適切な賞与の査定が欠かせません。
賞与そのものは従業員のモチベーション向上にも大いに役立ちますが、その額やそれを左右する査定に関しても明確な基準、方法である必要があります。もし、不適切な賞与査定をしていると、モチベーションの低下や離職の危険性が高まってしまうので、賞与査定は慎重に行いましょう。
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