突然ですが、このようなことを感じてはいませんか?
- 「リーダーシップとマネジメントの違いってなに?」
- 「リーダーとマネージャーに求められる能力は?」
- 「この2つに必要なスキルはどうすれば身に付けられるの?」
リーダーシップとマネジメントは、ビジネスにおいては重要なものですが、この2つの違いを正しく認識しているでしょうか?
今後のビジネスにおいてはこの2つの能力の重要性が高まっていくでしょう。なぜなら、組織においても個人においても、自発的に動ける人材が求められるようになるからです。
本記事では、基本的な知識から両者の違いや必要になる能力と、それらを身につける方法を解説していきます。
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有事に求められるリーダー像 リーダーシップが引き出す意外なモチベーションとは目次
リーダーシップとは?方向性を提示することでチームを結束させる力
リーダーシップとは、チームや組織が設定した目標の実現を目指し、メンバーを結束させて同じ方向性に向かわせることで、実現可能性や効率を高める力です。
この力は多数の学者や識者が言及し、その実態を解き明かそうと研究してきました。なかでも「経営の神様」と呼ばれるピーター・ドラッカー氏や、日本でもベストセラーになっている書籍「7つの習慣」を執筆したスティーブン・コヴィー博士による定義は、多くのシーンで引用されています。
また、それぞれの定義には下記のような共通する点があるため、解説していきます。
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【動画編】リーダーシップの種類6タイプとそれぞれの特徴メンバーの足並みを揃える
まず1つ目は、組織やチームが決めた目標を実現するために、メンバーの足並みを揃えることです。そのためには、メンバーに対して組織・チームがどこに進むべきかという方向性を示す必要があります。
明確な方向性をメンバーに提示できなければ、メンバーの足並みは揃わず、チームとしての協力も難しくなるため目標達成が遠のいてしまいます。
チーム・組織の結束力を高めて維持する
続いては、提示した方向性に沿って効率的に進めるように、チーム・組織の結束力を高めて維持することです。目標に向かって進んでいる途中で、チームが空中分解を起こさないように、最後まで一丸となって突き進む必要があります。
トラブルへの対処
そして最後は、リーダーは率先してトラブルの対処をする必要があります。ビジョンを実現するためにはその途中で必ずさまざまなトラブルや問題が生じます。そこでリーダーが最前線に立って対応しなければメンバーが疲弊し、チームとしての力が発揮できなくなってしまうのです。
マネジメントとは?チームが目標を実現するための戦術を考える
「経営」や「管理」という意味を持つ言葉がマネジメントであり、企業において用いる場合は、企業の経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」が管理する対象となります。
ドラッガーが語ったマネジメント
アメリカの経営学者であるピーター・ドラッカー氏は「マネジメントの父」と呼ばれており、多大な功績を残しています。そのドラッカー氏は「マネジメント」という言葉を学術的に用いた最初の人物としても有名です。
その著書のなかではマネジメントについて「組織に成果をあげさせるための道具、機能、機関」というように言及しています。また、組織を機能させることがその役割だともしています。
組織やチームは、1人では達成できない目標を人と人とが協力することによって達成を目指す存在です。そのなかで目標を達成するために組織にとって必要な要素を考えたり、管理を行うことでチームとしての活動をより良いものへと変えることこそがマネジメントなのです。
具体的には、マネジメントには下記のような仕事があります。
- メンバーの評価や個性、特徴の把握と管理
- ルールや秩序を保つ
- 現状の把握
- 前例や他の事例と現状の比較
- 長期・短期の見通し
また、リーダーシップでは大まかな方向性(ビジョン)をメンバーに示すことが重要でしたが、マネジメントではより具体的な数字に落とし込んで考える必要があります。
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リーダーシップとマネジメントの違い
リーダーシップとマネジメントは、目標とするところは同じですが、その内容はまるで異なります。したがって、ここではさまざまな観点から両者の違いについて解説していきます。
求められるスキル
リーダーシップでは、「方向性」や「ビジョン」といったことをメンバーに示す必要があります。また、先を見通してメンバーを育てたり、メンバーに信頼されることも必要です。
したがって、リーダーに求められるスキルは下記のようなものになります。
- 長期的な計画を立てられる計画力
- 将来を見通す先見性
- メンバーに信頼される誠実性や人間力
対して、マネジメントはリーダーシップよりもさらに具体的な目標や数値に落とし込んで、戦術として運用していくスキルが必要です。また、メンバーを観察してそれぞれの個性や特性を把握し、それぞれに合った管理をしていかなければなりません。
したがって、マネージャーに求められるスキルは下記のとおりです。
- 管理調整能力
- コーチング力
- 計画策定力
- スケジュール管理力
このように、両者は求められるスキルもかなり異なります。
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元株式会社ワークスアプリケーションズ代表牧野正幸氏に聞いた、「個」に頼るマネジメントからの脱却。目的
リーダーシップを発揮する目的は、組織やチームの目的や方向性、ビジョンなどを明確にして、長期的な目標を実現するためにメンバーを引っ張ることです。
対してマネジメントを行う目的は、目標を効率的に達成するために長期的な目標を細かく分割して短期的な目標に設定したり、そのための計画や戦術の策定をしていくことです。
「自分はどこに向かっているのか」、「何をするべきなのか」などを示す抽象的なイメージをメンバーに示すのがリーダーシップの目的であり、そのために具体的にすることや計画を定量的に示すのがマネジメントの目的となります。
どこに目を向けているか
リーダーシップの仕事には、メンバーに対してビジョンを明確にして提示するという役割があります。つまり、「1年後には会社はどうなっているのか?」や「10年後にはどのように成長していたいか?」といった将来的なイメージを思い描き、メンバーにわかりやすく伝えるという仕事です。
したがって、リーダーが行動の起点としているのは「現在」ではなく、「未来」や「将来」なのです。「将来的にどのような社会にしていきたいのか」や、自分たちが目指す会社の姿を示すことで、メンバーのモチベーションや意欲が向上します。
一方で、対象的にマネジメントでは「現在」を行動の起点として動く必要があります。将来的なビジョンを闇雲に追って行動しても、非効率的になったり遠回りしてしまうかもしれないからです。
だからこそ、長期的な目標を達成するために、「今、何をするべきなのか?」や「今、どうなっているべきなのか?」を明確にして、プロジェクトの進捗を管理するマネジメントが必要になります。
つまり、まとめると下記のようになります。
- リーダーシップは「未来」や「将来」を行動の起点としている
- マネジメントは「現在」を行動の起点としている
ミッション
数十年、数百年と続いている企業は、創業当初から同じことをしているわけではありません。むしろ、創業当初にしていた伝統や慣習を打ち捨てて、時代や環境に合わせながら変革を繰り返してきたからこそ、老舗として生き残っているのです。
時代にそぐわない事業をやめ、大きな投資をして新しい事業を作り出すことなど、変革をするための「スクラップ・アンド・ビルド」がリーダーのミッションであり、変化を起こして組織を新しいカタチに変えていきます。
つまり、永続的な存続をするために創造的破壊をすることがリーダーシップのミッションなのです。
しかし、常に変化を起こし、変革し続けていては組織の人間が振り回されて疲弊してしまいます。ほどよい緊張感や適度な危機感であれば、組織を活性化させるために必要ですが、過剰になると組織を壊しかねません。
そこで、日常的な秩序を保ち、安定した事業活動を促進することがマネジメントであり、マネジメントのミッションとなります。
リーダーシップとマネジメントに求められる能力
リーダーとマネージャーにはどのようなスキルが求められるのでしょうか?
個々では、下記の3つにわけて解説していきます。
- 両者に求められる能力
- リーダーに求められる能力
- マネージャーに求められる能力
それでは1つずつ解説していきます。
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マネジメントとは?業務や能力が高い人について解説両者に求められる能力
リーダーとマネージャーはさまざまな点で異なりますが、どちらにも求められる能力があります。
まず、自分で決めたことや目標を達成する意志力が必要です。意志力がなければ、長期的な目標を達成する前に諦めてしまったり、メンバーを事細かに管理することはできません。また、組織やメンバーのためになる判断を迫られることもあるため、その際に思い切って決められる決断力も求められます。
また、あらゆる仕事に言えることですが、仕事は人と人とが接しながら協力して進めるものなので、コミュニケーション能力も必要です。
リーダーに求められる能力
リーダーには、物事の全体を捉えて考える能力が求められます。なぜなら、物事の一部分だけを見ていたら、長期的な目標やビジョンを適切に設定できないからです。主観的なものの見方や凝り固まった固定観念をもって仕事を見ていては、正しく将来を見据えることができません。第三者視点から見るように、思い込みをなくして客観視することで新たな発見やトラブルの予防につながるでしょう。
また、誠実性も必要です。なぜなら、メンバーがリーダーの指示に従う際は「信用」に基づいていなければならないからです。恐怖によってメンバーを動かすこともできますが、そのようなチームは長続きせず、生産的でもありません。したがって、誠実な人間性をもってしてメンバーからの信頼を勝ち取る必要があります。
マネージャーに求められる能力
マネージャーとして活躍するためには、まず最も必要とされる能力が「管理調整能力」です。チームやメンバーがするべき仕事の管理や、プロジェクトの進捗状況の把握と調整、目標達成のためのタスクや課題の分析が主な仕事になるため、この能力が求められます。
さらに、上記のような業務をするためには「論理的思考能力」も必要です。「なんとなく」や「大体こんな感じ」といったように曖昧な管理だと、適切な目標を設定できませんし、達成もできません。
したがって、論理的に現状と目標の差を分析して、どのようなステップを踏めば目標を達成できるのかを論理的に導ける思考能力が必要です。
リーダーシップ・マネジメント能力の向上法
昨今では、ビジネス環境の変化が激しく、先を見通すことが困難な「VUCAの時代」になっているため、組織力の向上が急務となっています。そして、組織力を強化するには組織の従業員一人ひとりがリーダーシップやマネジメント能力を身につけ、向上させることが効果的です。
下記の方法を用いて、一人ひとりにその能力が身につけば、従業員が自発的に動いたり自分の仕事を的確に管理できるようになるため、組織力の強化につながります。
- 講座や研修などを活用する
- コーチングを活用する
それでは1つずつ解説していきます。
講座や研修などを活用する
リーダーやマネージャーに必要なスキルを身につけられる講座や研修を活用することで、効率的に人材の育成が可能です。職能資格や役職で分けて行う階層別研修も合わせて行うことで、より効果的な人材育成となるでしょう。
しかし、講義式の研修は従業員にとっては負担になることもあるので、忙しい時期は避け、短期間で済ませられるものを選ぶのがベターです。
また、eラーニングによる研修を用いることで、従業員が自由に自分の都合に合わせて学べるため、企業の事情に合わせて選ぶと良いでしょう。昨今のコロナ禍により人が集まるのは憚られるため、インターネット環境で学べる研修は、より普及していくことが予想されています。
コーチングを活用する
「コーチング」は人材育成方法の一つで、コーチと呼ばれる指導者がクライアント(指導を受ける人物)に対して質問や傾聴をすることによって、クライアント自身に課題や問題の解決方法の発見を促します。
自身に問いかけて、より正しい答えや考えを探る能力、自分で考えて動く力は、マネージャーやリーダーにも求められるため、コーチングはその能力を育む良い方法といえるでしょう。
専門のコーチにコーチングを依頼することも効果的ですが、社内ですでにリーダーやマネージャーとして活躍している従業員が部下にコーチングを行うことも可能です。これは低コストで人材育成ができる点がメリットとなります。
まとめ
ここまでリーダーシップとマネジメントの違いや必要な能力などを見てきました。
この2つは、個人が仕事を進めるうえで活躍するためにも、組織が組織としての力を強化するためにも必要な力です。また、今後はビジネス環境の変化がますます激しく複雑になるため、組織を率いる人材のパフォーマンス次第で、組織の今後が左右されると言っても良いでしょう。
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