突然ですが、あなたはこのようなことを感じてはいませんか?
- 「フラット型組織とは、どのような組織形態なんだろう?」
- 「自社に最適な組織のカタチを知りたい」
現代は環境の変化が激しいため、柔軟な対応をしていかなければ組織の存続が難しくなってきています。そんな中、迅速な意思決定が可能になるフラット型組織が近年注目を集めています。
本記事では、フラット型組織について基本的な知識から、メリットやデメリット、その他の代表的な組織形態について解説していきます。
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目次
フラット型組織とは?
「フラット型組織」という言葉には2つの意味があるとされています。
まず1つ目の意味は、組織においてマネジメント層(管理職層)を無くす、もしくは少なくして組織の階層を減らすことで、組織図がシンプルな状態となっていることを指しています。2つ目の意味は、組織の構造ではなく組織の文化がフラットであるという意味です。
ですが一般的には、「フラット型組織」といえば。フラットな構造の組織、つまり前者を指していることが多いでしょう。マネジメント層を簡易化して、トップに集中しがちな組織の権限を組織全体に行き渡らせることで、従業員一人ひとりに自主的な意思決定と行動を促せるようになります。
環境の変化が激しく、事業を取り巻く要素が複雑化するなかで、企業は素早い意思決定と柔軟な対応ができなければライバル企業に追い抜かれてしまいます。そこで、末端の従業員だとしても自ら主体的に考え、動けるフラット型組織であれば、競争に勝てる可能性が高まるのです。
今後の日本にとって最適な組織形態とは?
従来の日本では、ピラミッド型組織である機能別組織や事業別組織を採用する企業が大半でした。ですが近年では、いくつもの組織形態があり、企業によって採用する組織形態が異なるようになってきています。
今後の日本では労働力人口が減ることは明確になっており、ビジネスの環境もどんどん複雑化し、変化するスピードも加速していくでしょう。そのなかで、自社に最適な組織形態を選ぶことの重要性はより高まっていくはずです。
したがって、フラット型組織も含めたさまざまな組織形態への理解を深めて、時代と環境、そして自社にとって最適な組織形態を選択していくことが重要になります。
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それでは、フラット型組織について解説していきますが、同時にフラット型組織と並んで代表的な組織構造についても見ていきましょう。
- 強いリーダーシップを発揮できるならピラミッド型組織
- 従業員一人ひとりが主体性を持って動けるならフラット型組織
- 小集団に分けてそれぞれが企業のように経営されるアメーバ型組織
それでは1つずつ解説していきます。
強いリーダーシップを発揮できるならピラミッド型組織
日本ではこれまで、フラット型組織と対象的な組織である「ピラミッド型組織」が主流でした。ピラミッド型組織はフラット型組織とは異なり、マネジメント層がいくつも存在しているため階層が多くなっている組織構造で、軍隊で用いられていた組織形態が発祥だとされています。
ピラミッド型組織では、強いリーダーシップを発揮できる人物が、集団を引っ張っていくには最適な組織のカタチです。
しかしピラミッド型組織では、企業の規模が大きくなると同時に階層が複雑化し、組織のトップが発する指示が末端まで正確に伝わらないことや、正確に伝達されたとしてもそのスピードが遅くなるという問題が出てきます。さらに、末端の従業員が指示待ち人間となり、自発的な行動を起こさなくなるなどのデメリットも生じるようになります。
また、ピラミッド型組織では組織のトップによる影響が良くも悪くも強いため、リーダーが変わったりリーダーの調子が悪くなると、組織全体にその悪影響が波及してしまいます。つまりピラミッド型組織は変化に対して適切な対応が難しい点が弱点なのです。
したがって、フラット型組織に移行する企業も、現在では少なくありません。
従業員一人ひとりが主体性を持って動けるならフラット型組織
リーダーシップを発揮して部下を引っ張っていくのがピラミッド型組織なら、一人ひとりがリーダーシップを持って自主的に意思決定していく組織がフラット型組織です。
フラット型組織の組織図はシンプルで、組織のトップに経営者がいて、その下に組織の従業員が置かれている状態です。組織規模が大きくなると機能しなくなるため、日本ではまだまだ採用している企業は少ないです。
わかりやすく言うと、「組織にある一定の貢献をしているのであれば、それ以外の面では比較的自由に働いてもらって構いませんよ」という具合に従業員を放任して育てるようなイメージです。能力があり個性が強いクリエイターや職人が集まって、事業を進めている企業を想像すると良いでしょう。
フラット型組織では、「従業員を一人ひとり細かくマネジメントしない」という特徴があります。これはフラット型組織のメリットでもありデメリットでもありますが、マネジメントを徹底しないため、統制を重んじるピラミッド型組織とは相性が良くありません。
また、フラット型組織では従業員に明確な役割を与えずに、自ら必要な業務をしてもらうことが前提となります。したがって、従業員は自分が上司でもあり、比較的責任感を持って仕事に当たらなければなりません。
小集団に分けてそれぞれが企業のように経営されるアメーバ型組織
アメーバ型組織とは、京セラの創業者であり名誉会長でもある稲盛和夫氏の「企業は組織のトップだけが経営するのではなく、従業員が全員参加して経営していくものだ」という考えに基づいて作られた組織形態です。
組織に独立採算制をとる「アメーバ」と呼ばれる小集団をいくつか作り、従業員をリーダーに任命して、リーダーはアメーバを一つの企業のように経営していかなければなりません。
これにより、アメーバのリーダーとメンバーたちは、自分たちのアメーバの収支を意識して動くようになるため、アメーバの利益を最大化することを目標に経営に積極的に関わるようになります。また、アメーバ型組織は経営破綻したJALが導入し、見事に再生できたことで注目を集めました。
アメーバ型組織では、ピラミッド型組織やフラット型組織にように階層が存在せず、上下関係に縛られることがないため、お互いに気兼ねなく活発な意見交換ができます。これにより新たなアイデアや課題の発見がスムーズにできる組織となるのです。
しかし、アメーバ型組織の上下関係がないという長所は同時に短所にもなり得ます。上下関係がないからこそ、年齢や経験に関係なく相手のことをリスペクトする姿勢でコミュニケーションをとる必要があるのです。
したがって、アメーバ型組織で働く人材には、自主性があり、積極的に自分の考えを発信し、さらにどのような人とでも尊敬の意を持ってコミュニケーションできる能力が求められるでしょう。
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上記で3つの組織のカタチを見てきましたが、これ以外にも組織構造の種類があります。
ここでは多くの企業で主に用いられている下記の3つを見ていきましょう。
- 職能別組織
- 事業部制組織
- マトリックス組織
それでは1つずつ解説していきます。
職能別組織
職能別組織は事業に必要な人事や営業、製造、経理といった機能ごとに編成される組織形態です。よく用いられている組織形態で、取り扱う製品や事業があまり多くない中小企業が主に採用しています。
職能別組織は部署ごとに機能が分かれているため、それぞれの部署に専門のスキルやノウハウをもった人材が集まります。これにより、専門性の高い知識が蓄積されるという点がメリットです。また、機能が重複することもなく、ムダのない組織形態でもあります。
一方で、部署を超えたコミュニケーションが希薄になりやすいという点や、事業が増えてきた際に柔軟な対応が難しくなる点がデメリットです。
事業部制組織
事業部制組織は、事業単位やエリア単位、製品単位で編成する組織形態で、運営する事業の数が多い組織が主に採用しています。
事業部制組織では部署ごとに事業運営に必要な機能(営業やマーケティングなど)を抱えることになるため、迅速かつ柔軟な運営が可能になったり、それぞれの機能を事業に最適化できる点がメリットです。
また、事業部間に適度なライバル関係が生まれることにより、従業員の意欲刺激されるというメリットもあります。一方で、部署ごとに事業運営に必要な機能を持つため、組織のなかで機能の重複が生じ、経営資源の最適分配ができない点や、組織のトップによる統制が取りづらくなる点がデメリットです。
マトリックス組織
上記で解説した職能別組織と事業部制組織をかけ合わせたような構造を持つのが、マトリックス組織で、トヨタ自動車が2016年に導入したことで注目を集めました。
マトリックス型組織では、職能別や事業別、エリア別など複数の要素を掛け合わせることで、同時に2つのメリットを実現します。例えば、事業と職能を組み合わせた場合は、1人の従業員が事業と職能という2つの系列に所属し、それぞれの上司の指揮下に入るため2人の上司を持つことになります。
マトリクス型組織では、先程も触れましたが職能型組織と事業部制組織の良い点だけを採用しているような組織形態のため、それぞれのデメリットを軽減することができます。しかし、2人の上司がいることで指揮系統が複雑化しやすく、「どちらの命令を優先すればいいのかわからない」といった場面も生じる点がデメリットです。したがって、従業員に対してストレスがかかりやすく、組織には従業員のケアが求められます。
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上記でも軽く解説しましたが、ここではフラット型組織にすることのメリットを見ていきましょう。
フラット型組織のメリットが下記の2つです。
- 従業員が責任をもって仕事をするようになる
- 組織内のコミュニケーションが活発になる
それでは1つずつ解説していきます。
従業員が責任をもって仕事をするようになる
フラット型組織ではマネジメントをする中間管理職がいないか簡素化されているため、従業員一人に対する責任が重くなります。
したがって、従業員がより仕事に対して責任感を感じるようになるため、意欲的に仕事に取り掛かるようになるというメリットがあります。
組織内のコミュニケーションが活発になる
一般的なピラミッド型組織では、組織のトップと末端の従業員との間は、何層もの中間管理層によって隔てられているため、お互いに発信することが伝わるまでに内容が変質したり、下手をすると伝わない可能性すらあります。
しかしフラット型組織では中間管理層が存在しないため、組織のトップと従業員とのコミュニケーションがとりやすくなります。つまり、お互いに発信したことがストレートに伝わるようになり、組織内のコミュニケーションがより活発化するのです。
フラット型組織によって生じる問題点
フラット型組織にはいくつものメリットがあることがわかりましたが、一方で問題点も存在するため、導入する際は把握しておく必要があるでしょう。
フラット型組織によって生じるデメリットや問題点が下記の2つです。
- 組織を俯瞰できる人材が育成できない
- 規模が大きくなると組織の統制がとりづらい
それでは1つずつ解説していきます。
組織を俯瞰できる人材が育成できない
フラット型組織では、専門的なスキルやノウハウがある従業員が、それぞれ自由に仕事を進めていくという組織形態です。したがって、従業員一人ひとりが自分の仕事にだけ集中することになるため、組織全体を俯瞰して統率できる人材の育成が困難になります。
規模が大きくなると組織の統制がとりづらい
フラット型組織では人数が少ない間は統制をとるのに問題はありませんが、組織の規模が大きくなると問題がでてきます。
なぜなら、フラット型組織の「マネジメント層がいない」という特徴により、全ての意思決定を組織のトップがしなければならなくなり、経営者への負担が増加するからです。
また、従業員には報連相の相手となる上司が存在しないため、報告系統が曖昧になりやすいといったデメリットもあります。
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ここまでフラット型組織についてメリットやデメリット、その他の主流な組織形態について解説してきました。
フラット型組織は優れた組織形態だと言えますが、それでも環境や組織に合ったカタチを選択することが重要です。つまり、フラット型組織が特別に優れているというわけではなく、それぞれの組織形態のメリットやデメリットを把握して、自社に最適な組織形態を選ぶことが、組織の存続と成長には重要なのです。
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