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概要
大阪府と兵庫県の泉州地域一帯で鍼灸整骨院、訪問鍼灸マッサージ、クリニックを展開する総合医療グループ。それが、株式会社Loop Questだ。
東洋と西洋の医学の融合を図り、理論に基づいた治療を提供することで、地域の人々の健康をサポートしている。2006年、30歳にして大阪府泉北郡忠岡町にて同社の前身である「あさい鍼灸院」を開業して以来、地域治療に貢献し続け、事業を拡大していったのが、代表取締役の淺井 健寛氏だ。
淺井氏が近年力を入れていたのが、今後組織をさらに大きく、そして強くしていくための“仕組みづくり”や、社員一人ひとりの“人間力の育成”だった。すでに組織変革を推し進めている中で、新たに識学の理論を組織づくりに取り入れようと思ったきっかけとは。そして、識学という“武器”を身につけたことで、淺井氏や組織にどんな変化が起こったのか。講師を担当した識学スポーツ事業部部長の後藤翔太の対談を通じて紹介したい。
識学導入の決め手は“人間力を育める組織づくり”
後藤 個人的に、御社は僕が識学講師として非常に深く関わらせていただいたので、とても思い入れが深いんです。淺井社長から最初にお問い合わせをいただいたのは、Facebook広告の資料請求でしたよね。それで、僕からお電話させてもらいました。」
淺井 そうそう。当社が入っているコンサルの担当者さんと食事をしていた時に、「最近、『識学』っていうのを学んでいるんですよ」と言われたことがあって、何となく頭に残っていたんだけど、後日Facebookに識学の広告が出てきて「この前彼が話していたのはこれか!」と。中を読んでみたら面白そうだな、と思ったので、問い合わせさせてもらいました。
それで後日後藤さんに来てもらって、色々と話を聞いたり識学さんのパンフレットに目を通していたら、「あー、今、うちの現場でこういうこと起きてるわ」と思い当たることがたくさんあったんですよ。なので、その場ですぐに「受けたいです」とお伝えしました。後藤 実は僕、最初は少しだけ不安だったんですよ。僕がトレーニングをさせていただく前段階から、組織の構造はきれいなピラミッド型になっていましたし、各階層の役割や権限も明確だし、部下を複数人の上司が評価するということもないし……という、「この人は組織図からずれていますね」という部分が特に見当たらなかったので。だから、ちゃんと整っている組織に入り込んで、僕が貢献できることはあるんだろうか……という想いがありました。
淺井 当社の社員は、受付や事務スタッフ以外はみんな専門職の先生。そうすると、新卒以外の先生達は「この組織に所属している」という意識が薄く、組織を外側から見ているような状況になりやすいんですよね。その結果、「もっと会社を組織的にしていこう」というフェーズで変化についていけず、離職や独立開業をするスタッフが続 出した時期がありました。
僕は、日々患者様に向き合う先生として一人前になるには、技術力だけではなく“人間力”も必要だと考えています。その人間力を培う上で、“チームで働く”というのはとても重要です。一人よりもチームで仕事をする方が、自分のわがままが通用しなくなるじゃないですか。
でも、その成長過程から途中で抜け出して、中途半端な状態のまま個人院を立ち上げて、それをゴールだと思ってしまうのはもったいないし、彼らがこれから先一人でやっていくリスクも大きいだろうとずっと思っていました。離職してしまった彼らを上手く導いていけなかった自分自身に、ふがいなさを感じていた時に識学を知ったのは、良いタイミングでした。
個人に寄り添うマネジメントは必要ない
後藤 トレーニングの冒頭あたりは、顕在化している課題に沿ってお話するというよりも、僕から淡々と識学の理論をお伝えして、その上で識学の理論と組織内で起きていることの間にズレがないか淺井社長が答え合わせしていくような流れでしたよね。
そのタイミングで最初に分かったのが、「個人に寄り添うマネジメントをしている」という課題点でした。
淺井 以前在宅マッサージ事業の責任者を任せていた社員が、専門学校時代の鍼灸科の同級生だったんです。彼は個人主義というか、会社よりも家庭のことを第一にするタイプの人でした。何かを求めると、「家族との時間を大事にしたいからできない」と断られることもありました。
家庭を大切にするというのは、もちろん決して悪いことではありません。ただ、こちらが求めている結果に対して彼の仕事振りが追いついていない状態で、自分のプライベートを最優先するのはどうなんだろう……という想いがずっとありました。
そこには、「自分の友人だから、時間が掛かっても彼を良い方向に導いてあげたい」「長い期間在籍してくれているんだから、ポストを用意しないと」という僕自身の甘さもあったのでしょうね。その部分を後藤さんから「個人に寄り添うと、他のメンバーにも延々と合わせていかなければならなくなります。
そうすると、個別調整などのロスタイムが発生する原因につながります」「そもそも、その人は本当に会社にとって必要ですか?」と指摘されたんです。その時、やっと「そうか、組織の規律を守れない人は必要ないのか」という決断ができるようになったんです。
後藤 その次に取り組まれたのが、「組織構造の整理」でしたね。
最初にお伺いした際の御社は上から順に「社長→マネージャー(神戸・大阪の各セクションの統括者各1名)→院長→副院長→一般社員」という構造でしたが、社長とマネージャーの間に「SV(スーパーバイザー)」という役職を用意し、別業界の店長やエリアマネージャー経験のある人を御社のNo.2として迎えることになりました。元々御社の社員でもなければ、鍼灸・柔整の資格をもった治療院経験者でもないそうですが、その方をNo.2になさった経緯を改めてお聞かせください。
淺井 最初にも触れた通り、当社は今まで、受付・事務スタッフ以外は全員専門職の先生という組織で成り立っていました。
つまり、「専門性がある」ということは、「知識や経験や技術に偏りがある」ということでもあるんです。そのため、マネージャーは患者様の治療の他に予算管理やスタッフの教育・育成、さらにはスタッフの採用といった人事に関するバックヤードの業務まで担っていたものの、すべてには手が回らずどこかがおろそかになってしまっていました。その状況を見抜いて指摘してくださったのが、後藤さんです。
後藤 淺井社長が3回目のトレーニングを受け終わった頃に、「マネージャーのトレーニングもお願いするよ」と依頼をいただき、後日マネージャーさんにお会いした際、「あんな仕事もこんな仕事も任されているから全部が求められている通りにできないのは仕方ない」という話を伺ったんです。
そこで、淺井社長には「マネージャーさんにとって本来重要な役割以外はすべて排除してしまった方が良いです。その機能は別のポストを作って、その人に任せましょう。そうすることで、自分自身が与えられた役割や責任に対して完全に言い訳ができない状態にすることができます」とアドバイスさせていただきました。
淺井 予算管理や採用・教育といったバックヤード業務を統括する責任者はSV、売上を最大限生み出す上での現場への貢献や価値提供をするのがマネージャー、と役割を分けたことで、各階層をどんな基準で評価すれば良いのかも明確になりました。
役割・責任・評価基準の明確化で売上170%UP
後藤 業界未経験者を組織のNo.2にすることに迷いはありませんでしたか?
淺井 元々彼とは20年来の知り合いなのですが、当社のクレドは彼の勤めていた会社を参考にさせてもらった部分があったので、考え方の軸の部分は近いと思っていました。また、当社に出入りすることもあったのですが、人当たりの良さや人に何かを教えることに長けている人物だと感じていたので、適任だという想いの方が強かったです。ただ、入社してしばらくは、まだ自分の役割と責任がしっくりときていないような様子でした。
後藤 その点に関しては、淺井社長とSVとマネージャー2名のグループLINEがあるとお聞きした際にアドバイスをさせていただきました。
淺井 「SVがマネージャー2名に対して何か困ったことがあると、そのグループ内で相談をする。そうすると、社長がマネージャーに対して指示を出す。それは、識学の理論上NGです。この状態が続くと、SVはいつまでも自分の役割・責任を全うできない状態になってしまいます」という指摘を、後藤さんからもらいましたね。
後藤 このままではいけないと思ったので、SVが入社されて1ヶ月半ほど経った頃、淺井社長とSVと私の3名でお食事をした際に、「これからはマネージャーの管理はSVがしてください。社長が指示を出すのはSVだけ、という状態にしましょう」とお伝えしました。
そうお伝えした際、SVの表情は緊張で引きつっていらっしゃいましたが、その日以降から上手く新しい組織として回り始めたように感じています。
その後、評価制度にも識学の理論を取り入れていただきましたが、各階層において明確な評価項目を設けたことで、組織に何か変化はありましたか?」
淺井 こちらが各階層に対して求めていることを明確にできたということと、それぞれに責任を当てはめて今まで曖昧だったものを明確にしたことで、みんな求められていることを理解しているし、成果も上がっているという状態です。その変化は数字にも大きく現れていて、例えば識学のトレーニングを受けた神戸のマネージャーの統括エリアの売上は、前クォーター比170%アップでした。
その理由も、マネージャーが自分の役割を正しく理解し「今まで時間を取られていた業務はもうしなくても良い。現場の売上貢献に専念をすれば良い。その代わり、それが達成できなければ評価が下がり、降格する可能性もある」という認識を持ったから。
そのマネージャーは、以前は社員の教育に対してこちらが求めている以上に頑張りすぎてしまっていたんです。自分の管轄は神戸エリアなのに、大阪エリアの院長より下の階層の先生のオペレーションやトレーニングに自ら率先して取り組んでいました。
彼は人に教えることが得意なので、その能力を発揮して組織全体の技術力のボトムアップを図りたいという「よかれと思って」の行動だったのだと思います。「『神戸の売上をつくること』が、社長があなたに求めていること。大阪エリアの売上が上がっても、あなた自身の評価にはつながりません」と後藤さんがマネージャーに伝えてくれたことで、お互いの認識のズレを正すことができました。
後藤 みなさんのトレーニングを担当させていただいて気づいたのですが、整骨院業界で働く人というのは、いつも患者さんの気持ちになって親身に治療をしてくださる方々の集まりじゃないですか。つまり、みなさん「超いい人」なんです。患者さんに対して常にいい人であり続ける働き方なので、そういう関係性を組織の中にも適用しようとしているんじゃないかな、と。みんながいい人の集まり、という組織は、「相手のためにやりたい」「相手に寄り添いたい」という思考によって不具合が起きやすいのかもしれません。
“原理・原則”が学べる理論だから、
どんな組織も学んで損はない
後藤 淺井社長はトレーニングを受け終えた今、改めて識学に対してどんな印象をお持ちでしょうか。
淺井 組織の問題も個人の問題も、後藤さんに相談させてもらいましたがとても心強かったですよ。毎回、トレーニングで「これ、今まさに起こっていることですね。じゃあ、ここはこのように整理していきましょう」というやりとりをしながら、問題解決に向けた実践がすぐにできる内容だったので、即効性も高かったんだろうと思います。
今まで色々なコンサルや研修を受けて、経営や組織マネジメントにも取り入れてきましたが、今まで全く足りていなかった部分がついに上手くはまった!……と感じられたのが識学です。
後藤 淺井社長、一時期姓名判断にハマっていて、自分の名前を調べたら全部「大吉」だったんですよね。でも、診断結果には「人を動かす力がある」という文言があったけれど、その部分に関してはまだ持っていないと思っていたそうで。それが、識学を身につけたことで「ついに手に入れた」と思えた……という話を先日してくださった時は、本当に嬉しく思いました!
今後は組織をどのようにしていきたいですか?
淺井 日本だけでなく、世界にも進出していきたいと考えています。そして、メンバーがこの組織で夢を叶えていけるような「自己実現の舞台」を作りたいです。
後藤 最後に、どんな人に識学をお勧めしたいかお聞かせください。
淺井 経営者に限らず、すべての階層の人が受けるべきなのではないかと思います。当社では、今後新入社員研修にも識学の理論を取り入れていく予定です。そのくらい、組織に所属している人は知っておいて損のない理論ですよ。