社員が増えてくると、どのような企業でも一度は「ハラスメント問題」に直面したことがあるのではないでしょうか。本記事では特にパワーハラスメントに焦点を当て、その対処法をお伝えします。すでにパワハラ問題を経験した社長だけでなく、これから組織を拡大させようとする経営者も、事前の対策を講じておきたいところです。
目次
三つの手順
パワハラが起きた際の対処法は、下記のA~Cに整理できます。
- A:パワハラの認識を合わせる
- B:パワハラの事実を認識し不足と原因を明確にする
- C:行動変化(再発防止策)の設定
以下、それぞれ詳細を見ていきましょう。
パワハラの認識を合わせる
パワハラを防ぐために最初に取り組むべきは、Aのパワハラの認識を合わせることです。
そもそもパワハラとは何でしょうか。厚生労働省によりますと、パワハラの定義は以下の通りです。
職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
※「ハラスメントの定義」
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/definition/about
最終閲覧日:4月27日
この定義、皆さんの会社内で認識のずれは起きていないでしょうか。例えば、部下のためを思って上司が厳しく指導したつもりであっても、周囲にはパワハラと捉えられてしまうことがあります。社員のパワハラに対する認識がそろわない限り、パワハラの発生は防げません。
そこで、パワハラ発生のリスクを抑えるために、「NGな言動」をあらかじめ具体的に決めておくとよいです。
× | おまえ | 〇 | あなた、君 |
× | おい | 〇 | ちょっと |
× | (私物でも)物を投げ置く | 〇 | 物は投げない |
上記のような具体例が社内で明示されているだけでも、パワハラに対しては一定の抑止効果が生まれます。
パワハラの事実を認識し不足と原因を明確にする
とはいうものの、NGな言動を具体化するだけでパワハラが一切なくなるかというと、残念ながらそんなことはありません。なぜなら、パワハラを犯してしまう人のなかには自覚がない人たちも含まれているからです。したがって、次はBが重要となってくるのです。
パワハラの加害者が上司であれば、その事実は表面化しにくいです。この状況を回避する手段として、まず二つの方策が必要となります。
一つ目は、直属の上司以外のホットラインを用意しておくことです。「事実としてパワハラが発生した際は、事業責任者や人事責任者に直接報告してもよい」といった仕組みを事前に構築しておきましょう。
二つ目は、退職希望者が出たとき、直属の上司ではなく事業責任者が面談をすることです。今後の自社の発展のために、現場での事実情報をしかるべき立場の人間がヒアリングするわけです。
この二つに取り組んだからといって、埋没した事実の全てを拾い上げられるとは思っていません。あくまで、最低限これらはやっておく必要があるということです。
事実情報が上がってきたら、次に行うべきことはその事実を本人に伝えることです。加害者側にパワハラの心当たりがあるならば、事実を認めさせ、なぜ行ってしまったかを考えさせます。本人に心当たりがなければ、NGな言動をしているのだと理解させます。「周りからはこういった情報が複数集まっているよ」と釘を刺すのです。
事実を認識しても二度、三度とパワハラを繰り返す人もいます。もしそのような人が管理職だったら、躊躇わずに降格、あるいは組織からの除外を経営者は決断すべきです。ついつい実績を出している人だと大目に見てしまいたくなりますが、長期的な視座に立てば、すぐにデメリットが大きいことに気が付くでしょう。
なぜなら、部下が育たないからです。組織を成長させ続けるにはルールの遵守が必要不可欠なのです。
行動変化(再発防止策)の設定
最後はCの行動変化(再発防止策)の設定を終えて完了です。これからどうやって指導するのか、パワハラだと言われないために、指導をどう変えるかを約束させるのです。
ここで注意しておきたいことは、パワハラの加害者に責任があると自覚させなければ再発防止策も無意味だということです。またパワハラを繰り返してしまう恐れがあります。
私も含めて、人はついつい自分に甘くなってしまいがちです。失敗を犯してしまったとき、「実はこういう理由があって、できなかったことは仕方なかったんだ」と、つい自己防衛をしてしまう生き物なのです。パワハラに関しても同じです。
「周りにも同じことをしている人はいますよね」
「昔はこれぐらい当たり前だったじゃないですか」
と、自分は悪くないと主張してしまう人たちがいます。この主張を通してしまうと、自分の責任ではない、他人に責任があると考え、自分を省みようとしません。この状態では何も改善は進まないのです。
指導をする側も割り切りが重要です。
「あなたが周りからそういう目で見られている、あなたに対し、パワハラの事実が挙がっているから、まずあなたが完璧にしなさい」
このように言い切って下さい。責任を認めようとしない部下をそのままにしてはいけないのです。
営業管理や業務管理のロジックも同じ
ここまでパワハラに対する対処方法を述べてきました。
実は本記事で紹介したパワハラの再発防止手順の本質は、営業管理や業務管理のロジックと全く同じです。すなわち、認識を合わせ、不足と原因を明確化し、再発防止策を講じるというのは、識学理論でいうところの「結果の完了」に基づいています。これは、パワハラ防止だけではなく、人の成長に必要不可欠な手順となります。
識学を理解すると、さまざまな場面で活用することができます。本記事をきっかけに、識学を楽しんでいただければ幸いです。