突然ですが、このようなことを感じてはいませんか?
- 「ピラミッド型組織からフラット型組織に組織改革をする企業が増えているのはなぜ?」
- 「自社にはどのような組織形態が適しているのだろうか?」
組織のカタチをどのようにするのかは、競争の激しいビジネス社会で生き残るために非常に重要な要素です。環境や自社に合わないカタチで組織を運用していくと、さまざまなトラブルや問題が生じます。
さらに、現代は環境の変化が激しく、消費者の価値観も多様化しているため、組織は今後さらに迅速な意思決定と柔軟な行動が求められるでしょう。
そのなかで今、多くの企業が採用しているピラミッド型組織から、フラット型組織へと組織形態を変える企業が増えているのには理由があります。
本記事ではピラミッド型組織の基本的な知識から、メリット・デメリット、そしてフラット型組織が注目されている理由を解説していきます。ぜひ、ピラミッド型組織をもとにさまざまな組織形態について理解を深め、自社に最適な組織形態を検討してみてください。
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ピラミッド型組織とは?
ピラミッド型組織とは、日本でも多くの企業がこれまで採用してきた代表的な組織形態です。
ピラミッド型組織は組織図のトップに最も権力が大きい者(経営者)を設置し、その下に権力が大きい順に部長、課長、係長、主任、そして一般的な従業員が置かれていきます。権力の構造を図にするとまさにピラミッドのような三角形となるため、「ピラミッド型組織」と呼ばれています。
また、権力が階層を成しているため「階層型組織」と呼ばれたり、「身分制度」や「階級制」を意味するヒエラルキーをもとに「ヒエラルキー型組織」という名前でも呼ばれています。
ピラミッド型組織は、企業において最も一般的に用いられている組織形態であり、特に大企業は基本的にこの組織形態を採用しています。指揮命令系統が1つしかないため、明確かつシンプルで、混乱が起きにくいという点がメリットです。
ピラミッド型組織に変えるべき組織とは
中小企業や創業して間もない企業であれば、従業員の数もそこまで多くはないため、ピラミッド型組織よりも機能別組織(職能別組織)を採用する場合が多く見られます。機能別組織は機能ごとに部署をつくり、専門性を高める組織形態です。
しかし、規模が小さいうちは機能別組織でも十分に機能しますが、組織の規模が大きくなるにつれて、すべての従業員に対してマネジメントをすることが難しくなり、経営者の管理が組織全体に行き届かなくなることも増えてきます。
その結果、組織のどこで何が起きているのかが把握できなくなり、課題やトラブルが生じていてもすぐに気づけなくなるのです。課題やトラブルにすぐに対応できなければ、離職する人が増えたり、事業にも影響するでしょう。
したがって、組織の規模が大きくなるとともに組織形態を最適なものに変更する必要もでてきます。このようなとき、ピラミッド型組織を採用する企業は少なくありません。
経営者からトップダウンで部長、課長、係長、そして一般的な従業員へと指示や命令が下り、権限が委譲されていくため、経営者以外は他者にマネジメントをされている状態を作り出せます。
ピラミッド型組織の特徴は「シンプルで明快」
ピラミッド型組織の特徴としては、「シンプルで明快」という点が挙げられます。
組織図にすることでどのような従業員でも「組織において自分はどのようなポジションかがわかる」ようになります。
これにより、下記のようなメリットが得られます。
- 周囲の従業員と自分との役割がどう異なるのかが明確になる
- 自分では判断できないことについては誰に相談すれば良いのかがわかる
- 「ホウ・レン・ソウ」は誰に行えば良いのかが明確になる
また、ピラミッド型組織は明確な縦割りの構造となっているため、責任の所在が明確になるという点もメリットです。
ピラミッド型組織はモノを大量生産する企業にとって最適な形態であったため、日本の高度経済成長はこの組織形態により成し遂げられたものと言っても過言ではありません。しかし現代は単一のものを大量生産するよりも、数多くの種類のものを少量だけつくる環境へと移り変わってきています。
これは価値観の多様化が進み、皆が同じものを求める時代ではなくなったことが関係しています。したがって、このような時代においてはトップからの命令がなければ動けないピラミッド型組織から、環境の変化に柔軟に対応できると考えてフラット型組織に変える企業も少なくありません。
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これまで日本の大企業の多くはピラミッド型組織を採用してきましたが、ピラミッド型組織と対照的な組織階層が「フラット型組織」です。
フラット型組織では、ピラミッド型組織で多く存在するマネジメント層(中間管理職)を無くすか簡素化し、組織の上位層が持つ権力を下位層に委譲することで、従業員の自立性や責任感を高める組織形態です。
フラット型組織では、一人ひとりの従業員が自ら主体的に意思決定しながら動くことで、迅速に動ける組織を実現します。また、中間管理職が無くなることで経営層と従業員の距離が縮まり、活発な意見交換やコミュニケーションが生まれるのもメリットです。
しかし一方で、フラット型組織は自分の仕事は自分で責任を持たなければなりません。したがって、全ての仕事を自分でマネジメントすることが求められ、それができないのならばフラット型組織で活躍することは難しいでしょう。
つまり、フラット型組織は主体的に動くことができない能力的に未熟な人材には向かず、人を選ぶ組織形態と言えます。
ピラミッド型組織の危険性
ピラミッド型組織では、指示や情報共有が組織の上から下へと流れていきます。そして誰にどのような役割と責任があるのかが明確になっているため、わかりやすい組織形態ではありますが、その一方で迅速な意思決定や行動が難しい側面もあります。
マネジメントの手法を間違えてしまうと、自ら考えて動けない自立性の低い人材、つまり「指示待ち人間」が増えるという危険性もあるのです。実際に、マネジメントの父と言われるピーター・ドラッカー氏も「階層をなす組織に潜む最大の危険は、よく考えもしないで上司の言っていることを、そのまま実行してしまうことだ」と指摘しています。
また、アメリカの実業家でもありテスラ社のCEOのイーロン・マスク氏も、ピラミッド型組織は「組織内のコミュニケーションが遅くなる」として否定しています。
日本は諸外国に比べてピラミッド型組織を採用している企業が多いとされているため、組織のトップはこのような危険性を把握しておくべきかもしれません。
しかし、イーロン・マスク氏やピーター・ドラッカー氏の指摘が正しい一方で、「組織のなかで自立的に動いて成果をあげられない従業員は不必要である」と断言することはできないということも、頭に入れておくべきでしょう。
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ピラミッド型組織のメリット
ピラミッド型組織には課題があることがわかりましたが、それでも現代まで主に採用されてきた組織形態であるため、それだけメリットがあるということです。
具体的には下記のようなメリットが挙げられます。
- 役割分担がしやすく、それぞれの部門で効率性や専門性が高まりやすい
- 指揮命令系統が一つしか存在せず、上下関係や責任の所在が明確になる
- 従業員がキャリアプランを形成しやすくなる
- 経営者が組織の統制をとりやすい
このようなメリットがあるため、官僚機構でも用いられており、従業員の数が多く規模が大きい企業には最適と言えます。また、これ以外にもいくつかメリットがあるので、見ていきましょう。
組織の成長を支えられる
組織がちょうど成長して規模を大きくする段階の企業にとっても適しています。
なぜなら、マネジメント層が多くマネージャーの育成がしやすいため、従業員をどんどんマネジメント層に採用したりリーダーに起用できるからです。
従業員の育成がしやすい
上で触れたことと繋がってきますが、ピラミッド型組織では従業員をマネージャーやリーダーとして起用するため、一般的な従業員でも責任感を持って仕事を進めるようになります。
その結果、仕事を自分ごととして受け止め、自立的に意思決定しながら業務を進めるようになることで、従業員の成長スピードが速くなるのです。
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ピラミッド型組織にはいくつもメリットがあるため、これまでの数多くの日本企業が採用してきました。
しかし、上記でも触れてきましたが、ピラミッド型組織にはデメリットもいくつか存在します。
「マネージャーやリーダーとして仕事を任されるため、従業員の成長が速い」という点をメリットとして解説しました。しかし、これは裏を返せば従業員はリーダーなど責任ある立場に急に立たされるため、引き受ける従業員のなかにはあまり前向きになれない者も出てきます。
例えば「リーダーは自分は向いていないな…」や「リーダーとして仕事をするのはいいけど、仕事以外の人間関係の相談とかはされたくない」といったように、本音を隠してその役割を引き受けてしまい、最後までやり通せずに会社を去る人が出てくる可能性もあります。
つまり、ピラミッド型組織では従業員の役割と責任が明確になるメリットがある一方で、その役割と責任の重さに押しつぶされてしまう従業員が一定数出てしまう可能性がある、というのががデメリットなのです。
また、これ以外にも下記のような点がデメリットとして挙げられるでしょう。
- 組織のトップから末端の従業員までの距離が遠く、情報共有や意思伝達が遅くなったり内容が変質する可能性がある
- 従業員の自発的な意思決定や行動を抑制してしまう
- 環境の変化に迅速・柔軟に対応することが難しい
- 「0→1」が苦手な組織となり新規事業をつくるのが難しくなる
一見するとデメリットも多いピラミッド型組織ですが、良い面と悪い面を把握した上で、極力デメリットを減らしていける施策を実行しながら運用していくことで強い組織を作ることが可能です。
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フラット型組織では従業員が自立してある程度は自由に動きながら業務を進めていきます。フラット型組織の長所であり欠点は「マネジメント層がいないこと」ですが、マネージャーがいなくても成長できる人材しかいないのであれば、問題はありません。
しかし、会社の規模が大きくなり、従業員の数が増えてきた場合は「マネージャーに頼ることなく自分で動ける人材だけの組織」を維持するのは困難です。マネージャーと一緒に仕事をすることで成長する人材もいるため、規模が大きくなるにつれてマネジメント層の欠如が組織にとって負担になってくるでしょう。
したがって、組織の規模に合わせてピラミッド型組織に変えるのであれば、組織の成功は、従業員の教育よりもマネージャーをいかに教育するかにかかっています。つまり、ピラミッド型組織において重要なポイントはマネジメント層の教育なのです。
しかし、マネージャーを育てることは一般的な従業員を育成することとは異なります。組織のなかでマネージャーを育てることに特化した専門的な仕組みを構築しなければなりません。
また、マネージャーとして仕事を一任したのであれば、それ以降は上司がマネージャーを超えて従業員に直接指導することのようにしましょう。従業員に対して何か指摘することがあれば、マネージャーを通して伝えるというプロセスが重要です。
このように、マネージャーはピラミッド型組織において重要な存在となります。
マネージャーに権限を委譲し、従業員に対して的確なマネジメントを実践していくことで、従業員は成長していきます。また、同時に、誰にどのような責任があるのかを明確にしておくことも重要でしょう。
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ここまで、ピラミッド型組織の基本的な知識やメリット、デメリットを見てきました。
近年、ピラミッド型組織と対象的な組織形態であるフラット型組織に変える企業が増えてきています。その背景には価値観の多様化や環境が変化するスピードが速く、迅速に対応しなければならなくなってきていることが挙げられます。
アイデアとスピードを武器に競争優位を確立する戦略は今後ますます効果的となるでしょう。将来的にはさらにグローバル化が進みますが、そのときに組織の成長を支えてくれるのは、一人ひとりの従業員となります。
しかし、フラット型組織は完璧な組織形態ではありません。実際に、ピラミッド型組織のデメリットを払拭するためにフラット型組織に変えたが、従業員同士の結束が薄れてしまい、組織としての強みが失われてしまうケースが多くあります。
重要なことはどちらが優れた組織形態かを見極めることではなく、環境や自社に適した組織形態は何かを見極めることです。
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