部下は上司の背中を見て育つのが一番良い。
とりあえず日々仕事をこなさせたら、新人も自然と成長するはず。
そう思っているマネージャーの方はいませんか?
実はそれ、部下を迷わせてしまい、最終的には離職に繋がる可能性もある、とても危険なマネジメント方法です。
このコラムでは、「背中を見せて育てる」マネジメントに潜む部下の”迷いリスク”と”解決方法”をお伝えします。
すぐに実践できる内容ですので、是非取り組んでみてください。
目次
迷いリスク①何が正解かわからない
「背中を見せて育てる」という手段を取るときは、「これを求めている」ということを部下に伝えられていないのではないでしょうか?
先に「正解の枠」を設定せずに「とりあえず真似をして」などと伝えると、部下は何が正解かわからないままスタートすることになり、成長に無駄な時間がかかってしまいます。
そもそも成長とは何でしょうか。
識学では「できなかったことが、できるようになる」ことを”成長”と定義しています。
そのため成長に必要なのは、目標に対して足りていない部分を認識し、その不足を埋めていくということです。
しかしゴールのイメージがついていないと、どこが足りていないのか、どれだけ足りていないのかということを認識することができません。
例えば「100km先にあるゴールに10日間で到達する」という目標がある場合、「今日はゴールの方向に向かって9km進んだ」という事実に対して「1日当たり10kmのペースで進まないといけないため、1km不足している」という事実が認識でき、その不足をどう埋めるかを考えて次の日の行動に移すことができます。
一方、特にゴールを定めず進んでいる時は、「今日は9km進んだ」という事実は認識できますが、それがゴールに向かって進んでいるのか、十分なペースで進んでいるのかもわかりません。そうなると、不足を埋めることによる改善もできないので、成長にも繋がらないということになります。
これを防ぐために行うべきは、”期限と状態を設定すること”です。
いつまでにどのような状態になっていなくてはいけないのかということを、スタートする前に部下に明確に伝えます。
先ほどの例においては「期限=10日間」「状態=100km先にあるゴールに到達する」として設定されています。このような設定があれば、部下はゴールのイメージができるようになります。
また、このように数値化して設定することで、誰が見ても「できた」の基準がずれない状態になります。もし数値化せずに「100km先のゴールにできるだけ早く到達する」という設定をすると、”できるだけ早く”は、マネージャーにとっては10日間、部下にとっては20日間というように「できた」の基準がずれてしまうことがあり、部下は目標を達成したつもりなのにマネージャーは達成していないと判断するということが起きてしまいます。これは部下にとって目指すゴールが明確になっていない状態です。
迷いリスク②イメージがつかず動き出せない
期限と状態を明確にして設定を行っても、部下が迷ってしまう場合があります。期限の日時が遠すぎる未来になっていたり、求められる状態の難易度が高すぎたりすると、部下の経験値や能力からゴールのイメージをすることができません。そういったときは、部下にとって「次に何をすればゴールに到達できるのか」ということがわからなくなっている状態です。この状態だと、明確に設定できていないことと同じになってしまいます。
部下にとって明確な設定ができているかどうかを確認するには、部下に「次に何をするか?」を尋ねることです。部下が回答できなかったり、回答が正解の方向からかなりずれていたりする場合は、部下にとって明確になっていない状態なので、手前のゴールを設定することで明確にすることが必要です。
例えば、「100km先にあるゴールに10日間で到達する」というゴールに対して部下が「100kmは長すぎてどのくらいの時間がかかるのか見当もつかないし、自分には到達できないだろう」「100km進むのにどのくらいの時間がかかるかは知らないけど、10日間もあるなら最初の方は動かず、最後の1日で追い込めばどうにかなるだろう」などと考えている時は、ゴールのイメージや正しい認識ができていなかったりする状態です。このような場合には、「5日間で50km」「1日で10km」といった手前のゴールを設定することで、イメージがつきやすい状態にします。ただし手前のゴールを設定する場合でも、最終的な「100km先にあるゴールに10日間で到達する」というゴールが「求められていること」であるということは、明確に認識させる必要があります。
迷いリスク③察して動いたら裏目に出た
部下が迷ったときに取る行動として「自分なりに考えてとりあえず動く」というものがあります。
「主体的に動けているので良いことなのでは?」と思った方もいるかもしれませんが、実は、ここにも大きなリスクが潜んでいます。
リスクについてお伝えする前に、決定権者の考え方について整理します。
会社において従業員の役割とは「上司の求める成果を出すこと」です。
なぜなら、会社において従業員が欲しいものである”良い評価”や”高い給料”を与える決定権者は上司だからです。そして、この”上司が求める成果”こそが、所属している会社の方針であり、最終的には、会社が存続するために必要な”市場・お客様からの高い評価”を得ることに繋がるからです。
そのため、「上司が求めることと相反するけど、お客様から良い評価をもらうことが最優先」や「上司が求めることへの近道ではないけど、同僚から支持されるような動きをする」といった取り組みについては推奨しません。それらに取り組んでも、本来の決定権者が求めることとズレており、”良い評価”や”高い給料”は得られず、会社の方針からも外れているからです。”上司が求めること”と”お客様や同僚の求めること”が一致した時のみ、取り組むべき対象となります。
この前提を基に、「自分なりに考えてとりあえず動く」という状態について考えてみましょう。
この場合、取り組み内容は「上司の求める成果」とはズレていることが多いので、せっかく働いたにも関わらず自分の欲しいものは与えられません。しかも、上司が明確にしないので仕方なく自分なりに考えて必死に動いた後に、「勝手にそういうことをするな」などと否定されると、ネガティブな感情が発生してしまいがちです。そして、いくら働いてもその働きに対して期待される利益が得られないという状態が続くと、最終的には離職などの結果に繋がります。
もちろん、部下が自分なりに考えて動いた結果が偶然上司の求めるものと合致することもありますが、その「偶然」を期待してマネジメントを行うことは、大きな時間の無駄になります。マネージャー側が求めることを先に部下に伝えておくだけで、お互いに、無駄な時間を使うことも、無駄なストレスを発生させることもなく、日々の業務に集中することができます。部下に対して求める成果を明確に伝えることは、「決定権者」という役割を持つマネージャーにとって、重要な業務の一つです。
迷いリスク④エラーの責任の所在がわからない
迷いリスク②でも触れた通り、「自分なりに考えて行動した結果が否定される」というのはネガティブな感情が発生しがちです。なぜなら、部下にとっては「ルールが後出しされた」という状態だからです。
再現性のあるマネジメントを行うにあたり、「ルールを先に設定し、周知しておく」というのは非常に重要なことです。これをせずに何かエラーが起きた場合、マネージャーはとりあえず、当事者である部下に責任を問いがちです。しかし部下からすると、「先に言ってくれればやらなかったのに」「後から言われてもどうしようもない」という印象になってしまいます。つまり、部下自身もそのエラーを自分の責任として捉えることができず、マネージャーも部下も意識上その責任を負っていない状態になってしまい、改善がなされにくくなります。
ルールを先に設定・周知しておき、ルールに基づいた組織運営を行うことで、エラーが発生した時の責任の所在と対応方法がたった2つに分類できるようになります。
・ルールがない/もしくは不明確なことによって、そのエラーが起きた場合
責任の所在:マネージャー
対応方法:ルールの設定/明確化のための修正
・ルール違反によって、そのエラーが起きた場合
責任の所在:部下
対応方法:ルールを守るための改善策とそれに基づいた行動
エラーが発生した時に、すべてを実働者である部下の責任だと考えてしまうと、改善がなされず同じエラーが繰り返される原因にもなります。
ルールに基づいて行うことで、マネジメントはさらにシンプルに、再現性高く行うことができるようになります。
迷いリスク⑤より良いプロセスを見せた方が得?
それを言われたとき、「この部下はよく頑張っているし、高い評価をつけよう」と考えたことはないでしょうか?
これも、大きな落とし穴です。
部下がマネージャーの真似をすることで良い結果を出しているのであれば、問題ないのですが、真似をしていても良い結果が出ていないにも関わらずマネージャーが高い評価をつけてしまったり、真似をしているから良い結果が出なくても大丈夫と部下が誤解してしまったりしているのであれば、危険信号です。
このような状況になると部下は、「結果を出さなくても、より良いプロセスをマネージャーに見せた方が得だな」と考え、「いかに自分自身のプロセスをマネージャーにアピールするか?」という方向に集中してしまうようになってしまいます。
結果を出していないということは、マネージャーや会社がその部下に求めている本来の役割を果たせていないということなので、この時間は非生産的な時間であり、部下は成長するのではなく非生産的な方向に変化してしまっているということになります。
また、「上司のやり方でやった」ということ自体が”結果が出ないことに対する言い訳の材料”になり、「上司のやり方でやったから、もし良い結果がでなかったとしても上司のせいで、自分の責任ではない」というように、本来は部下にあるはずの責任を、部下が自分の責任として捉えられなくなってしまうことも起こりがちです。自分の役割を自責で捉えられない状態になると、不足を埋めるという行動に繋がらないため、成長することができなくなってしまいます。
これは、誰にとっても良いことではありません。部下を成長させるためにも、このような状況は脱却していきましょう。
この状況を脱却するために必要な事はたった一つで、「結果で評価をすること」です。
ここまでお伝えしてきた通り、明確な目標を設定し、ルールに基づいたマネジメントを行っていれば、「期限に達した時に、求める成果を出せているか?」「ルール違反はないか?」という観点で、事実に基づいて評価をすることができます。
プロセスを評価すると、どうしてもマネージャーの主観や見解が入ってしまい部下に不公平感を与えやすくなります。一方、結果を評価すると、事実に基づいて評価を行うことができ、部下も自身の不足している部分を捉えやすくなるので、成長に繋がるようになります。
まとめ:迷わせないマネジメントが部下を成長させる
ここまで、
・期限と状態を用いて、部下から見て明確なゴール設定を行う
・求める成果を部下に明確に伝えることは、マネージャーの必須業務
・ルールに基づいたマネジメントを行うことで、エラーが起きたときの対応がシンプルになる
・結果を評価することで、部下は生産的な方向に成長する
ということを解説してきました。
部下の成長は、チームの成長に直結します。部下の成長をいかに早くするかは、マネジメントを行う方々にとって、非常に重要な役割です。
本来マネジメントはとてもシンプルなものであり、そのシンプルなマネジメントで部下は成長すると私たちは考えています。
さらに、部下を迷わせないマネジメントは、マネージャー自身の無駄な時間やストレスも減らします。
是非、チャレンジしてみてください。










