「目標を達成するためにロードマップを作成したいけれど、作り方がわからない」という方も多いのではないでしょうか。
ロードマップを設定する際には、注意点を把握したうえで順を追って作成しなければ、労力をかけても目標の達成に結びつかないときがあります。
なぜなら、ロードマップを作成するにあたり、あらかじめ検討しておくべき点や洗い出すべき事項が多々あるからです。
この記事ではロードマップを作成するメリットや作成手順、作成する際の注意点を紹介します。
しっかりと実施し、目標を達成して企業の競争力を上げましょう。
目次
ロードマップとは何?
ロードマップとは、プロジェクトの方向性を定める思考ツールです。
プロジェクトの開始前に作成することが基本ですが、プロジェクトが進行してからでも、もしスムーズに進んでいない場合にはあとからロードマップを作成することで、状況が改善される可能性があります。
長期の計画を立てるうえで、ロードマップには以下のような内容を記載しましょう。
- 具体的な目標
- 目標達成の期限
- 中間目標
- 具体的に行う内容
- 課題・懸念点
- 大まかなスケジュール
これらを記載するとプロジェクトの全体像を俯瞰しやすくなり、メンバー全員が足並みをそろえてプロジェクトに関わることが可能です。
ロードマップは企業が売上の増加を目指したり、店舗拡大の目標を達成したりする際などに従業員に公表され、進捗具合や質を確認するために使われます。
ロードマップとマイルストーンの違いについて
ロードマップと混同されやすい言葉に「マイルストーン」があります。
マイルストーンは、プロジェクトの進捗管理をしやすいように設置された主要なポイントであり、プロジェクトを達成するための中間地点です。
特に長期の計画になる場合、ゴール一点を目指して最終段階で質を評価することには限界があるため、要所にマイルストーン、つまり中間地点を設けて質や進捗を管理します。
それに対してロードマップとは、プロジェクト全体における計画です。ロードマップのなかにマイルストーンが記載されると理解しておくとよいでしょう。
ロードマップの種類は2つ
ロードマップにはプロジェクトロードマップとプロダクトロードマップの2種類があります。
プロジェクトロードマップとはロードマップの基本的なフォーマットであり、プロジェクト全体の計画をまとめた工程表です。
対してプロダクトロードマップはその使用用途が製品開発に絞られており、製品開発における方針や開発範囲、特性や具体的なタスクが記載されています。
企業において一般的に使われるロードマップとは、プロジェクトロードマップを指すことが多いと覚えておきましょう。
ロードマップ作成の目的・メリットとは?
ロードマップを作成すると以下のようなメリットがあります。
- 目標と期日が明確になる
- メンバーの足並みがそろう
- 進捗を確認しやすくなる
順に解説します。
目標と期日が明確になる
ロードマップには、プロジェクトの目標や期日が明記されます。
ひとつのロードマップを社内で共有するため、具体的に達成するべき成果や期限がすべての従業員にとって明らかになり、目標を達成するための行動を考えやすくなるでしょう。
例えば「〇月末日までに売上を〇〇万円にする」という目標があった場合、現状で何が足りていないのか、どのような選択肢をとると実現するのかをそれぞれが考えやすくなります。
すると、作業効率の向上が期待できるでしょう。
メンバーの足並みがそろう
プロジェクトに関する目標や中間地点などの情報や資料を一部の人、例えば管理職のみが持っていると、チームメンバーは現状の進捗や求められる質を達成しているのかを判断できなくなってしまいます。
対してロードマップがあると、どの従業員が見ても客観的に質や進捗、今後起こりうる課題を把握が可能です。
他のメンバーと解決策を話せたり、未達成を防ぐための具体的な意見が出せたりと、同じ目標に向かって協働できるでしょう。
進捗を確認しやすくなる
複数のチーム、部署でプロジェクトを進行していると、自分が所属するチームの情報しか入ってこないケースもあるでしょう。
その点、ロードマップを作成すると他のチームの進捗も含め、プロジェクトの進捗度合いがひと目でわかるようになります。
目標達成の過程における他のチームの役割や関わり方も把握できるため、いつまでに何を行って連携しなければならないのかを意識しやすくなるでしょう。
万が一作業が遅れている際にも、早い段階で対処方法を検討できるようになります。
ロードマップ作成時に役立つツール
視覚的にわかりやすいロードマップを作成するためには、作成時によく用いられているツールを把握しておくことが有効です。
例えば以下のようなツールがあることを把握しておくとよいでしょう。
- タスクリスト
- ガントチャート
- PERT図
- フローチャート
順に紹介します。
タスクリスト
ロードマップを作成する際には、目標達成に必要となるタスクを洗い出す必要があります。
そのため、「期限に決まりがあり、今すぐにやるべき作業」を書き出したタスクリストを作成し、何を行うべきなのかを可視化できるようにしましょう。
これにより、作業の漏れを防ぐことができます。
なお、似たようなものにTodoリストがありますが、Todoリストは期限に決まりがない作業も含まれるのに対し、タスクリストでは期限がある作業を書き出す点で異なります。
ガントチャート
ガントチャートとは、プロジェクトの開始から終了までに行うべきタスクとそのスケジュールが書かれたグラフです。
縦軸にはタスクや担当者などを書き、横軸には日時や進捗を書きます。
それぞれの縦軸から横に伸びるグラフにより、作業の進捗や工程を把握できます。
ガントチャートは企業においてプロジェクト管理によく用いられ、直感的にプロジェクトの全体像を把握するのに役立つでしょう。
PERT図
PERT図(Program Evaluation and Review Technique)とは、タスク間にある依存関係を視覚的に把握できるツールです。
工程をボックスで表現し、矢印で結んで業務の流れをネットワーク図で表すと、工数や所要時間を把握できます。
多くの部署やチームが関わるような複雑なプロジェクトでは状況把握が難しくなりますが、PERT図を用いると全体の見通しが立ち、工程の遅れを防げるでしょう。
フローチャート
フローチャートとは、業務のプロセスやシステム、判断などを視覚的にまとめた図です。
「流れ図」と呼ばれることもあり、複雑なフローを直感的に理解するのに役立ちます。
プロジェクトにおいてフローがしっかりと設計できていれば、そのとおりに進めることで、経験によらず効率的に業務を進められます。
また、全体像が直感的に把握しやすくなることで漏れを防ぎ、品質の向上を期待できるでしょう。
ロードマップの作成手順
ロードマップを作成する際には、ある程度時間と労力がかかります。
そのため、あらかじめ流れを把握しておき、効率よく精度の高い表を作成しましょう。
ここからは、ロードマップの作成手順を紹介します。
1.最終目標を決める
まずは何をもって成果とみなすのか、客観的にわかるプロジェクトのゴールを設定しましょう。
プロジェクトメンバー皆が同じ目標に対してアクションをとります。そのため、ゴールは数字を用いて定量的にわかるようにすることが大切です。
例えば「売上〇〇円を達成する」「開発にかかるコストを〇%減少させる」などが挙げられます。
ゴールが想像しやすいほど向かうべき場所が明確になるため、実現可能でわかりやすい目標を設定しましょう。
2.達成の期間を決める
目標を決定したら、次はそれを達成する期日を決めましょう。
期日はクライアントや取引先への納品日になるケースが多いです。外部が関わるため余裕を持って設定しましょう。
ただ、目標に対してあまりにも期日が短いと、従業員のモチベーションを下げることや長時間労働を強いることになりかねません。
外部の信頼を損ねないためにも、エラーが起きてしまう可能性も考えながら期日を設定しましょう。
3.現状を把握する
目標と期日が決まったら、組織の現状を把握しましょう。
プロジェクトを達成するために人材や資金、時間などのリソースは足りているか、スキルは十分であるのかを把握します。
特に新しいプロジェクトを進める場合、従業員は現状の仕事も並行しながら新たな取り組みに時間を割くことになるでしょう。
いずれも質が下がらないように、現在個々が受け持っている業務のボリュームや時間を客観的にわかるように書き出し、プロジェクトの業務を配分すると、作業が進まない事態を避けられます。
4.課題や起こりうるリスクを考える
プロジェクトは見積もりどおりにうまくいかないケースがしばしばあります。そのため、課題や起こりうるリスクを検討しましょう。
例えば新しいプロジェクトを行うなかで、人材面でのリソースが多くかかる工程では、一時的に既存の業務に関わる従業員が手薄になってしまうケースも考えられます。
また、業務の歴が浅い従業員がプロジェクトに多く関わる場合、スキル不足による遅延も考えられます。
経営層だけでなく、現場の声も聞くことで、あらかじめ想定できるリスクをできる限り洗い出しましょう。
5.課題への対処法を考える
課題を洗い出した次は対処方法を考えると、万が一の際にも焦らず適切に対応が可能です。
仮に、プロジェクト開始前に発生すると予測できる困難であれば、計画の修正や人材育成などを行い、事前に課題をつぶしてからプロジェクトを進めることができるでしょう。
プロジェクトの進捗によって途中で起こりうるリスクであれば、その際にどのように対応するかを練っておくことが大切です。
そうすることで、なるべくエラーが起きないようにしたり、実際に起きたとしてもなるべく時間をロスしないようにしたりといった対応ができます。
6.マイルストーンを設定する
プロジェクトは長期におよぶケースが多いものです。
それによってモチベーションが低下したり進捗が把握できなくなったりする事態を避けるため、要所でマイルストーンを設定しましょう。
マイルストーンを多く設定しすぎると自由度が低くなってしまうため、重要なステップを見極めて適量に設定することがおすすめです。
すると、優先して取り組む事項の把握や、進捗具合と質がともなっているかに関する客観的な評価につながります。
7.計画を作成する
設定したマイルストーンとプロジェクトの最終目標を達成するために、必要となる工程を時系列で並べ、計画表を作成します。
プロジェクトを遂行するためには主にガントチャートが用いられます。
ときには関わりやフローが複雑になることもあるため、従業員の知識に応じてフローチャートやPERT図なども併せて作成しましょう。
実現不可能な理想を描いた計画にならないよう、こちらの工程でも現場の声を取り入れながら無理のない計画を立てる必要があります。
8.社内へ共有する
ロードマップを作成したら、ひとつの表を一元管理し、従業員やステークホルダーに共有しましょう。
ロードマップを共有すると全体像やスケジュールが理解しやすくなるだけでなく、一体感が生まれて責任感が生じると期待できます。
仮にロードマップを変更した際にも、古いデータが手元に残らないように注意を呼びかけたり、管理ツールに常に最新版を保存したりしておくと、スムーズに情報を伝達できます。
ロードマップ作成時の4つのポイント
ロードマップを作成する際には以下の4つのポイントに着目しましょう。
- 定量的な目標を設定する
- 評価しやすいKPIを設定する
- PDCAを回して改善する
- クリティカルパスを把握する
順に解説します。
1.定量的な目標を設定する
プロジェクトの最終目標がわかりづらいものであった場合、目指すゴールが個人ごとにブレてしまい、組織の足並みがそろわなくなってしまいます。
そのような事態を避けるため、例えば「売り上げを増加させる」ではなく、「〇月〇日までに売上を〇〇円にする」と、定量的な数字を含めて目標を設定しましょう。
すると、そのゴールに向けてどのような動きをするべきなのかがわかり、目標を達成するのにふさわしい行動ができるようになります。
2.評価しやすいKPIを設定する
KPIとはKey Performance Indicatorの略称で「重要業績評価指標」を指し、ゴールを達成するために欠かせない要素です。
こちらの数値を追うと進捗管理がしやすくなるため、ゴールと同様、評価しやすいKPIを設定することが大切です。
KPIを設定すると必要なプロセスをいくつか細分化して可視化できるようになり、ゴールの軌跡となるため、チームリーダーを巻き込みながら慎重に検討しましょう。
3.PDCAを回して改善する
一度作成したロードマップでも、実際に業務を進めるうちにエラーや矛盾点が見つかるケースもあるでしょう。
計画段階でなるべく多角的な視点から分析し、ブレない計画を立てる姿勢は大切ではあるものの、変化の速い現代では途中で計画を修正しなければならないときもあります。
そのような際には定量的な評価のもとで柔軟に対応し、ロードマップを修正させることも視野に入れておきましょう。
よりよい計画を立てると、ゴールへの道のりを縮められると期待できます。
4.クリティカルパスを把握する
プロジェクトを遂行するまでには複数のタスクがあります。
一連のタスクを時系列で結んだ際に、一番時間がかかる経路をクリティカルパスといいます。
言い換えると、プロジェクトが完了するために欠かせない作業工程のことです。
クリティカルパスを把握したら他の工程よりも優先して行うと、遅延防止につながります。
タスクを洗い出し、タスク間の依存関係を把握したら早めにクリティカルパスを特定して共有しましょう。
まとめ
何かプロジェクトを進める際には、しっかりと計画を立て、ロードマップを作成することが重要です。
なぜなら、ゴールが明確になると生産性が上がったり、進捗状況がわかってモチベーションを維持できたりするからです。
しかし、計画が甘く、プロジェクト開始日以降にあらゆるエラーが出てしまってはそもそも立てた目標を達成することが難しくなってしまいます。
そのような事態を避けるため、本記事を参考に破綻しないロードマップを作成し、組織の成長をうながしましょう。