ビジネスシーンでよく用いられる「シナジー」という言葉をご存じでしょうか。
具体的には「シナジーを狙う」や「シナジーをもたらす」というフレーズで使われるようです。
会議やプレゼンだけでなく、記者会見や決算発表会などでも用いられることから、全てのビジネスマンが把握しておくべき単語だと言えます。
そこで本記事では「シナジー」の概要から使い方、効果などを詳しく解説していきます。
ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
シナジーとは何か?
シナジーは英語の「synergy」のことで、直訳すると「相乗効果」という意味になります。
相乗効果とは「2つ以上の要因が相互に作用し、個々の要因がもたらす効果よりも大きくなること」を指します。
簡単に言えば「1+1が2以上になる状態」ということになるでしょう。
具体的にビジネスシーンでは、業務提携やM&Aなどでシナジー効果が生まれることがよくあります。
ビジネスシーンにおけるシナジーの使い方
ビジネスシーンにおけるシナジーの例文は以下の通りです。
- 2つの企業が合併することでシナジー効果が期待される
- 各部門が連携することでシナジーが生まれる
- 海外支社とのシナジーで新市場への進出が容易になった。
以上の例文を見ると、シナジーは決算報告などの発表会で用いられる可能性の高い単語であることがわかります。
また、市場調査や新規事業などのプレゼンや会議でも、シナジーが多く用いられそうです。
そう考えると、ビジネスシーンの中でも特に経営層や新規事業部で頻出する単語だと言えるかもしれません。
複数領域にアクセスできるポジションの人材が、シナジー効果を生み出す業務に携わる可能性が高いからです。
シナジーの類義語
シナジーの類義語の候補としては、以下が挙げられます。
- アライアンス
- 共鳴
- 化学反応
- 協力作用
いずれも複数の領域が結びつくことを表している言葉です。
ただし、その中でもシナジーは「プラスの作用を生み出すこと」に焦点が当てられている単語です。
アライアンスや協力作用は、いずれも「連携」の意味合いが強いです。
また「化学反応」という単語は「変化」を強調する単語なので必ずしも「プラスの作用」いうわけではなく、ニュアンスが異なります。
主なシナジー効果
主なシナジー効果は以下の4つです。
- 販売シナジー
- 生産シナジー
- 投資シナジー
- 経営シナジー
それぞれ詳しく解説していきます。
効果①:販売シナジー
販売シナジーは、流通経路、販売組織、営業、マーケティングなどを共同利用することで得られる相乗効果を指します。
近年「営業職が消える」というフレーズが注目を集めるようになっています。
これは「営業」が消えるのではなく、あくまでも「営業職」が消えるということです。
このフレーズの真意は、ただ営業だけができる人材ではなく、マーケティングや流通などのさまざまな要素を駆使して、商品を売り込める人材が求められている点にあります。
たしかに、営業マンがマーケティングツールを使いこなせるようになったら、より精度の高いターゲティングができるようになるかもしれません。
また、各企業で顧客情報を共有することで、効率的に営業活動を実施できるのも「販売シナジー」だと言えそうです。
効果②:生産シナジー
生産シナジーは工場、機械、情報などの生産設備を共同利用することで得られる相乗効果を指します。
例えば、TSMCという台湾の半導体メーカーは、NVIDIAやAppleなどの世界的な企業のチップを委託製造している企業です。
そのため、半導体製造のノウハウがTSMCに凝縮されており、NVIDIAやAppleは、その恩恵を受けることに成功しています。
また、共同利用で生産数を増やせれば、規模の経済が働き、生産コストが小さくなるのも生産シナジーだと言えるでしょう。
もっと身近な例で言えば、例えばラーメン屋の多くは製麺業者に委託をしています。
それにより生産シナジーが働き、良質な麺を安価で仕入れられるようになっています。
このように生産シナジーは、ノウハウの濃縮や生産コストで相乗効果をもたらすことが多いです。
効果③:投資シナジー
投資シナジーは投資や研究開発で生まれる相乗効果のことです。
投資や研究開発は、場合によっては莫大な資金や時間が必要になるため、1つの企業や小規模で実施するのが難しい傾向にあります。
そこで複数の企業や組織が参加することで、それぞれのコストを抑えながらもリターンを最大化することがあります。
当初の目的とは違ったリターンが得られることがあるのも、投資シナジーのおもしろいところです。
例えば、時価総額1位で話題になったNVIDIAは、もともとゲーム用のGPUに研究投資をしていたところ、AI学習のニーズが大きくなったことで売上高が爆発的に大きくなりました。
このように偶発的なシナジー効果も含めて、可能な限りリスクを抑えながらリターンを最大化させるのが、投資シナジーのメリットです。
効果④:経営シナジー
経営シナジーは、マネージャーや経営者の経験やノウハウを共有することで生まれる相乗効果です。
例えば、M&Aや業務提携などでそれぞれの企業のノウハウが共有されて相乗効果が生まれるのが、経営シナジーとなります。
また、別業種の経営者が新社長になるケースでも、経営シナジーが生まれる可能性があります。
例えば、飲食系の企業に、IT系の起業家が社長として就任したとします。
この場合、IT業界で培った業務効率化の経験やノウハウが、飲食の現場で適用されるようになります。これがITと飲食によるシナジー効果です。
また、複数の業界をまたいで活躍してきたマネージャーであれば、それぞれの業界の知見を活かして柔軟なマネジメントを実施できる可能性があります。
このように、経営ノウハウは別領域で応用できる可能性があり、差別化にも繋がります。
新規参入時のリスクを抑えられるのが経営シナジーの特徴です。
アナジー効果とは
シナジー効果の対義語として「アナジー効果」という言葉があります。
例えば「100+100」が200以上になるのがシナジーだとしたら、200以下になるのがアナジーです。
つまりアナジー効果は、本来であればプラスになるはずの相乗効果がマイナスになることを指します。
アナジー効果の事例として、よく挙げられるのが事業規模拡大です。
シナジー効果を見込んで別領域の新規事業を展開しすぎた結果、赤字事業が増えてしまい、足を引っ張り合うケースがあります。
また、組織そのものが大きくなることで身動きが取れなくなるのも、アナジー効果の典型例です。
複数の要素を掛け合わせることは、必ずしもいいことばかりではありません。
アナジー効果のように、マイナスの効果を及ぼす可能性があります。
そのため、経営者やマネージャーは、複数の要素を掛け合わせる際のシナジーとアナジーのバランスを見極めなければなりません。
シナジー効果の活用事例
シナジー効果の活用事例としては以下の4つが挙げられます。
- 業務提携
- 多角化戦略
- グループ経営
- M&A
それぞれ詳しく解説していきます。
事例①:業務提携
シナジー効果の活用事例として、まず挙げられるのが業務提携です。
業務提携とは、複数の企業がそれぞれの経営資源を共有することを指します。
その典型的な例がコカコーラとマクドナルドです。
マクドナルドと言えば、ハンバーガー、ポテト、コーラの3点セットを思い浮かべる人も多いでしょう。
これはコカコーラとマクドナルドが長期的な業務提携を結ぶことで、お互いのブランド力を相互に高め合うことに成功した結果と言えます。
この事例のように、お互いのブランド力や知名度を強く結びつけられるのが業務提携のメリットです。
事例②:多角化戦略
多角化戦略は、1つの企業が複数の業界に進出する戦略のことです。
自社が強みとする事業とは別に異なる事業を運営することになるので、リスクが大きいのがデメリットです。
一方で予想外のシナジー効果が生まれることもあり、その場合には強力な差別化要因になります。
その典型例がAmazonです。
Amazonは、ECサイトをベースにしながら、ビジネス向けのクラウドサービスや映像配信事業を提供することで、顧客の強力な囲い込みに成功しています。
事例③:グループ経営
グループ経営は、子会社や関連会社を含めて「グループ企業」という大きな括りで事業を進める経営モデルのことです。
事業規模が大きくなるため、強力なシナジー効果が期待できる一方で、身動きが取れなくなるというデメリットもあります。
その典型例がソニーです。
元々はエレクトロニクス企業だったソニーは現在、映画、音楽、ゲーム、医療、金融などの事業をグループで抱えています。
エンタメやイメージセンサーなどで強力なシナジー効果を生み出すことに成功しましたが、一方で家電事業は不調で、アナジー効果が見受けられる領域もあります。
グループ経営は、シナジーとアナジーのバランスの見極めが難しい事例だと言えます。
事例④:M&A
M&Aは「Margers(合併)」と「Acquisitions(買収)」の略称で、企業同士が1つになったり、他社を買収したりすることを指します。
M&Aを実施することで、他社の経営資源を高いレベルで取り込むことができるのがメリットです。
事例としては、ディズニーによるピクサーの買収が挙げられます。
ディズニーは3DCGアニメーションで世界No.1だったピクサーを買収することで、技術力の優位性をさらに高めることに成功しました。
ほかにもフェイスブックによるインスタグラムの買収など、同業他社を買収することで技術力やノウハウを素早く取り込むのが、近年のM&Aのトレンドだと言えます。
まとめ
本記事では「シナジー」について解説してきました。
AIが台頭している現代社会では、複数領域でシナジー効果を生み出して差別化することが求められています。
それは企業レベルでも人材レベルでも同じことです。
そう考えると、事業として成立しそうなアイデアや興味があることには、積極的にチャレンジしてみた方がいいのかもしれません。
ナンバーワンではなくオンリーワンを目指す時代が既に到来しています。
この時代で「シナジー」はある種のキーワードになるでしょう。