円滑なプロジェクトの進行に欠かせないプロジェクト管理には、さまざまな手法があります。
重要なのは、自社に合った手法を選び、適切に運用することです。
この記事ではPMBOKやWBSなど代表的なプロジェクト管理の種類と特徴、選び方について解説します。
あわせてプロジェクト管理の成功の秘訣についても押さえておきましょう。
目次
プロジェクト管理の目的と必要性
企業が継続的に安定した利益を生みだすためには、低コストかつ少ない工数で高クオリティの商品やサービスを作ることが求められます。
それを可能にするためには、プロジェクト管理の徹底は欠かせません。
まず最初に、プロジェクト管理の目的と必要性をおさらいしておきましょう。
プロジェクト管理は 円滑な進行が目的
プロジェクト管理は円滑なプロジェクト進行を目的として行われます。
決められた納期内、予算内に顧客の求めるニーズを満たし、クオリティの高い成果物を生むためには必要不可欠といえるでしょう。
プロジェクト管理では、品質、コスト、スケジュール、人員、リスクなどさまざまな項目を管理する必要があります。
プロジェクトの進行をコントロールするために必要
プロジェクトは一定のリソースのなかで顧客ニーズを満たす商品やサービスを生みだす必要がありますが、進行中、想定外のハプニングが起こり、プロジェクトが計画通りに進行できなくなる場合もあります。
特に大きなプロジェクトの場合、業務を細分化してチームメンバーがそれぞれ業務を分担して進行するのが一般的です。
そのため、ひとつの業務が遅れると全体の進捗に影響することもあるでしょう。
そこで、適切なプロジェクト管理を行えば、プロジェクトの現在の進み方やタスクの進捗を把握してコントロール可能になります。
【基本】プロジェクト管理の代表的な手法11選
プロジェクト管理には、目的に応じてさまざまな手法があります。
まずは業種を問わずに活用できる代表的な手法を11選紹介します。
1.PMBOK
PMBOKとは、「Project Management Body Of Knowledge」の頭文字を取ったものです。
プロジェクト管理を体系化してまとめたもので、世界中で業種を問わず使用されています。
PMBOKの特徴は、10の知識エリアに項目を分割してプロジェクト管理を行う点です。
ただし、PMBOKは実践的ではないため、PMBOKの手法が実装されたシステムを導入することが有効です。
2.WBS
WBSは「Work Breakdown Structure」の頭文字を取ったもので、日本語では作業分解構成図という意味です。
プロジェクトの構成要素を最小単位に分解して構造化する手法です。
プロジェクトに必要なタスクをリストアップして、プロジェクト実施前に懸念点の特定、工数把握、作業範囲の認識ができるメリットがあります。
3.ガントチャート
ガントチャートとは、縦軸に担当者やタスク、横軸に日時などを配置した帯状の表のことです。
タスクごと・担当者ごとの進捗や全体像を一目で把握することができるため、プロジェクト全体のスケジュール管理を効率的に行いたいときや、メンバー間で進捗を共有したいときに活用できます。
シンプルでわかりやすく、エクセルでも作成可能な点もメリットです。
ただし、各タスクの工数把握が難しい、タスク同士の関連性がわかりにくいといったデメリットがあります。
4.CCPM
CCPMは「Critical Chain Project Management」の略。
プロジェクトの納期を最短で設定し、プロジェクトスケジュール全体にバッファ(余裕)を設ける手法です。
進行中にトラブル発生によってタスクに遅延が発生した場合にバッファを使って対処できたり、最短納期を示すことで担当者の着手が遅れるのを防いだりできるメリットがあります。
5.PERT
PERTは「Program Evaluation and Review Technique」の略で、プロジェクトの工程を可視化したものを指します。
タスクをボックスで示し、タスク同士の関連性を矢印で表します。
プロジェクトのタスクと作業順のフローがわかりやすくなるため、各タスクの相互関係やプロジェクトの要点、問題点などの明確化が可能です。
プロジェクト全体を俯瞰しながら各工程の流れの図を見ることができるため、タスク同士が複雑に関係するプロジェクトに向いているといえるでしょう。
プロジェクトの工程をPERT図の基本形に落とし込むだけで手軽に運用できる手法でもあります。
6.カレンダー
普段何気なく使用しているカレンダーも、プロジェクト管理手法のひとつです。
プロジェクトのスケジュールをカレンダーに表記することで、時間や納期の管理に役に立ちます。
プロジェクトの進行がわかりやすく記載されているかどうかがポイント。
見やすさを工夫することが求められます。納期までの期間を逆算できるようなデザインなら使いやすいでしょう。
7.PPM
PPMは「Project Portfolio Management」の頭文字を取ったものです。
複数のプロジェクトを一元管理、分析するときに役立つ手法です。
組織全体のプロジェクトを俯瞰的に把握して効率的な運用を目指せるため、投資や人的リソースの追加などの迅速な判断が可能になります。
8.P2M
P2Mは「Project & Program Management」の略で、複数のプロジェクトを管理する手法として2001年に経済産業省の指導のもと開発されました。
全体を俯瞰的に把握しながら、個々のプロジェクトを制御するのが目的です。
PPMに近い概念ですが、全体のプロジェクトの監視・管理といった意味を持つPPMに対し、P2Mは関連する個々のプロジェクトを制御するという意味があります。
9.QFD
QFDは、「Quality Function Deployment」の略。
品質管理に関わるプロジェクト管理手法で、顧客ニーズと開発担当者、サービス提供者の橋渡しを行い、効果的な商品開発や提案に結びつけます。
日本の製造業で生まれた品質管理手法ですが、顧客ニーズに的確に応えられるため、商品企画手法としての適用も世界中で進んでいます。
10.マインドマップ
マインドマップは、業種問わず人気のプロジェクト管理ツールです。
頭の中の思考を連想的に展開していくもので、課題の洗い出しに役立ちます。
マインドマップで複雑なプロジェクトを小さなタスクに分割したり、リスト管理したり、問題を分析したりすることができます。
11.かんばん
かんばんは、プロジェクトの進捗状況を見える化するのに役立つ手法です。
「To Do」「進行中」「完了」の3つの枠を作成して、タスクを記載。進捗に合わせて枠を移動させていきます。
現在のタスクの進捗が可視化されるので、遅延などを発見しやすくなる点がメリットです。
プロジェクトメンバー同士でスムーズにタスクの共有ができるので、チーム内での連携が重要なプロジェクトに向いています。
ただし、タスクの数が多くなると進捗管理がしづらくなるデメリットがあります。
また、各タスクの優先順位や工数などは確認できないため注意しましょう。
【システム開発】プロジェクト管理の代表的な手法3選
続いては、システム開発に特化したプロジェクト管理手法について紹介します。
1.アジャイル開発
アジャイル開発は、小単位で実装とテストを繰り返す開発手法です。
アジャイルとは、日本語で素早いという意味。
特徴は、開発途中に仕様や設計の変更を想定しているため、ソフトウェアの計画段階でも厳密な仕様を決めないことです。
要件や設計が流動的なプロジェクトに向いている開発手法といえます。
最小単位で進行しているので不具合が発覚した際に戻る工数が少なくてすむこと、お客様のニーズを反映しやすいこと、トラブルにも柔軟に対応可能なことがメリットとして挙げられます。
デメリットは、全体の進捗がつかみにくくスケジュール管理が複雑になりやすい点です。
また、開発の方向性がはっきりしない場合に改善を繰り返した結果、当初の計画から大きく脱線するリスクもあります。
アジャイル開発は従来の開発手法に比べ工数が短縮される傾向にあるため、早くサービスインしたいプロジェクトに向いているといえるでしょう。
関連記事:アジャイル開発で組織力を向上するには?
2.ウォーターフォール開発
ウォーターフォール開発は、滝の水が落下するように開発を工程順に上流から下流へと進めていく手法です。
最初にシステムの細かい仕様や要件定義、設計をすべて決めてから開発に取り組みます。
基本的には、前工程を終えないと次の工程には進めない仕組みです。
要件がしっかり固まっている場合や、プロダクトの品質を担保したいプロジェクトに向いている開発手法です。
仕様の大幅変更は少ないので顧客にも安心感を与えられる点、スタート時に工数がわかるためスケジュール管理もしやすい点がメリットです。
反面、仕様や計画の変更が難しいため柔軟な対応がしにくく、開発途中で生まれた顧客の要望の反映や想定外の問題発生など計画されていない事柄への対応は難しくなります。
開発前に要件定義などしっかり作成してからスタートするため、開発期間が長期化しやすい傾向にあります。
3.リーン開発
リーン開発はトヨタ自動車が編み出した「トヨタ生産方式」から派生した手法。
leanは痩せた、贅肉のないという意味です。
プロジェクトや開発から無駄を削減し要点だけを抽出して、効率良く業務を進めようとする手法といえます。
顧客ニーズを確認したら、最低限の機能を備えた試作品を作製し顧客からフィードバックをもらい修正していきます。
少ないリソースで大きな成果を上げられるのが特徴で、新規事業の立ち上げや生産性の向上に向いている手法です。
プロジェクト管理手法の選び方
先述の通りプロジェクト管理にはたくさんの手法があり、それぞれのメリット・デメリットがあります。
プロジェクト管理手法としてどれを選べば良いのかわからない人のために、選び方を解説します。
プロジェクト管理の目的で選ぶ
プロジェクト管理を何のために行うのか、目的を明確にすると選びやすくなります。
工数管理をしたいのか、品質を担保したいのか、全体のスケジュールを把握したいのかなど目的を考慮して手法を選びましょう。
組織の規模で選ぶ
組織やチームの規模によっても適している管理手法は異なります。
なかにはチームの規模に関係なく使用できるものもありますが、小規模なチームに適しているもの、大規模な組織に適しているものに分けられます。
例えば大規模なプロジェクトなら、互いの意思疎通や進捗が把握しにくいはず。
それらをカバーできるPERTなどを活用すると良いでしょう。
プロジェクトの難易度で選ぶ
プロジェクトの難易度によっても、向き不向きがあります。
難易度の高い複雑なプロジェクトに用いると余計に複雑化してしまう手法も。
例えば、ガントチャートやかんばんは、難易度の高いプロジェクトには不向きといえます。
プロジェクト管理を成功に導くコツ
プロジェクト管理手法を導入して成功するためには、目標をきちんと決め、メンバー間で共通の認識を持つことが大切です。
メンバーが同じ方向性を向いているとコミュニケーションが活発になって、チームに一体感や信頼関係が生まれます。
すると、情報共有が促されお互いに何をしているのかわかり、属人化防止につながります。
トラブル発生時にも、状況把握が早く対応しやすくなるでしょう。
また、組織に合った管理ツールを導入するのも有効な手段です。
自社にあったプロジェクト管理手法を選び円滑なプロジェクト進行を
プロジェクト管理手法には、業種問わず使えるもの、システム開発に特化したものなど目的に応じてさまざまな種類があります。
何を目的にどの項目を管理したいのかを明確にして、適切なプログラム管理手法を選びましょう。
円滑なプロジェクト進行のために、自社にふさわしいプロジェクト管理手法を活用してください。