信頼される上司になるには、どのようなことを行うべきなのでしょうか。部下の信頼を集める上司には、実は共通点があります。
本記事では、信頼される上司の10の特徴や、部下の信頼を失う行動の例、信頼関係を築く上で押さえておくべきポイントを分かりやすく解説します。
目次
信頼される上司の10の特徴
部下に信頼される上司になるためには、どのような行動や考えをするべきなのでしょうか。部下に慕われ、信頼を集める上司には、以下に挙げる10の共通点があります。
- 必要なときにいつでも部下の話を聞く
- 部下の意見を否定しない
- 感謝やねぎらいの言葉を伝える
- 判断が的確
- 一貫性がある
- 誰にでも公平に接する
- 秘密を守り安心して相談できる
- ビジョンや考えを共有してくれる
- 約束を守ってくれる
- いざというときに頼りになる
信頼される上司になるには、優れた経歴やキャリアが必要なわけではありません。信頼される上司の10の特徴を理解し、自分の行動に少しずつ反映させることで、自然と部下との関係が改善していきます。
1. 必要なときにいつでも部下の話を聞く
部下からの信頼が厚い上司に共通しているのが、必要なときにいつでも部下の話を聞いてくれる点です。困ったときにいつでも相談に乗ってくれる上司がいれば、部下は安心して仕事に取り組めます。
定期的に個人面談を実施することも効果的ですが、日頃より部下が話しかけやすい雰囲気づくりを行うことが大切です。
2. 部下の意見を否定しない
部下の意見を否定せず、尊重することも上司に必要な姿勢です。部下は上司とコミュニケーションをとるとき、自分を見てくれる相手かどうか、話を真剣に聞いてくれるかどうかに注目しています。
部下の意見に未熟な部分があっても、まずは傾聴し、その上で改善すべき点を伝えましょう。
部下の意見を頭ごなしに否定してしまうと、「この上司に相談や提案をしても無駄だ」という印象を与えてしまい、部下の成長や相談の機会を失ってしまう可能性があります。
3. 感謝やねぎらいの言葉を伝える
「ありがとう」や「お疲れさま」など、感謝やねぎらいの言葉を定期的に部下に伝えることも大切です。特に部下が目標を達成したり、すばらしい成果を上げたりしたときにはきちんと褒めましょう。何気ない一言が、部下との信頼関係を築くきっかけになります。
4. 判断が的確
部下に信頼されるには、仕事ができる人だと認識してもらうことも大切です。特に頭の回転が速く、スムーズに指示を出せる人は、部下からの尊敬を集めやすくなります。仕事上の判断が求められるときは、なるべく迅速に決断することを意識しましょう。
全てのタスクに焦点を当てるのではなく、優先順位を付けて重要なものから処理する癖を付けることで、いざというときに的確な判断を下せます。
5. 一貫性がある
言葉と行動が一致していないと、部下から信頼できない上司だとみなされる可能性があります。有言実行を心がけ、口に出したことは必ず最後までやり遂げるようにしましょう。
また一度は口にしたことでも、状況によっては実現が難しくなることもあるでしょう。そうしたときには、きちんと経緯を部下に説明し、言動の不一致について説明するようにしてください。
6. 誰にでも公平に接する
部下と接するとき、相手によって態度や言葉遣いを変えていないでしょうか。部下は上司のちょっとした発言や行動も見ています。
相手によって態度を変える上司は、誠実でない人だとみなされ、部下からの信頼を失いやすいです。苦手な社員や反りが合わない社員がいたとしても、公平な態度で接することを心がけましょう。
7. 秘密を守り安心して相談できる
部下にとって、安心して相談できる相手になることも大切です。
相談内容によっては、職場でのハラスメントや人間関係についてなど、相談者の秘密を守らなければならないデリケートな事案もあります。口が軽い上司は信用を失くすため、相談を受けたら必ず部下の秘密を守りましょう。
また相談を受けただけで終わらせずに、適切なアドバイスを行うことも大切です。部下一人では解決が難しい場合は、上司が問題に介入し、解決を試みましょう。
8. ビジョンや考えを共有してくれる
仕事に関する内容の場合、積極的にビジョンや考えを共有するオープンマインドな上司が好まれる傾向にあります。
特に部下に対して、取り組むべき目標を時間をかけて丁寧に提示してくれる上司は、リーダーとして尊敬を集めます。部下とこまめに会話し、組織のビジョンや自分の考えを積極的に伝えましょう。
9. 約束を守ってくれる
約束を守らない上司は不誠実な人間とみなされ、部下からの信頼を失います。部下は、上司のちょっとした発言や行動をよく覚えています。
特に部下に対しては「約束を守れ」と言っておきながら、自分は約束を守らない上司は嫌悪される傾向にあるため、約束したことは必ず実現しましょう。
10. いざというときに頼りになる
多くの部下から信頼されるのは、いざというときに頼りになる上司です。例えば、自分が壁にぶつかったときにサポートしてくれる上司や、自分が不利になったときにかばってくれる上司は、部下からの信頼が厚くなります。
上司は全ての分野において有能である必要はありません。それでも、いざというときに部下の助けになれるよう、日頃から部下の状況をこまめに把握しておくことが大切です。
信頼されない上司の特徴
ここまで信頼できる上司の特徴を紹介してきましたが、一方で信頼されない上司の行動にはどのような共通点があるのでしょうか。部下に嫌われる上司の主な特徴には、以下の4つがあります。
- 部下の話や意見を聞かない
- 感情的・否定的である
- 一貫性がない
- 優柔不断で決断力がない
信頼される上司になるには、部下に嫌われる上司の特徴を反面教師にして、自分の行動を見直していくことが大切です。
1. 部下の話や意見を聞かない
部下に嫌われやすい上司に共通しているのが、相手の話を聞かなかったり、意見に耳を貸さなかったりするケースです。自分の主張ばかり押し付ける上司は、相手の存在を蔑ろにしていると認識され、部下からネガティブな評価を受けることがあります。
昔は部下の話を聞かず、一方的に指示を出すワンマン上司の存在が当たり前でした。ただし、1981年~1996年頃に生まれたミレニアル世代や、1990年代後半~2000年頃に生まれたZ世代の社員は、上下関係を嫌い、オープンでフラットな関係を好む傾向にあります。
言い訳ばかりしている部下の姿を見ると、相手の話をさえぎって厳しい発言をしてしまうことがあるかもしれません。しかし部下と信頼関係を築くためにはまずは相手の言い分を聞き、傾聴することが大切です。
2. 感情的・否定的である
常に感情的で、怒りの感情をコントロールできない上司も部下に嫌われやすくなります。また部下の努力や頑張りを認めず、常に否定から入る人も同様です。
感情的・否定的な上司がいる職場は、社員のモチベーションが低下しやすく、業務効率や生産性に悪影響を及ぼす可能性があります。
怒りの感情をコントロールできず、すぐに怒鳴ったり八つ当たりをしたりしてしまう人は、怒りを制御するためのアンガーマネジメントと呼ばれるプログラムを受けるのがおすすめです。
3. 一貫性がない
言動に一貫性がない上司も、部下から信頼できない人だとみなされます。例えば、以下のようなケースです。
- 時間が経つと、言うことややることが変わる
- 相手によって態度や言葉遣いが変わる
- 経営陣の顔色ばかり伺い、すぐに責任逃れをする
上司に言動の一貫性がないと、社員が働きにくくなったり手戻りが増えたりして、業務効率が低下する可能性があります。
やむを得ない事情がある場合は、以前の言動を訂正しても構いません。その場合は部下にきちんと理由を説明し、納得してもらうことが大切です。
4. 優柔不断で決断力がない
部下と適切に接しているにもかかわらず、うまく信頼関係を築けない場合は、普段の仕事の仕方を見直してみましょう。仕事上の判断が求められるときにいつも優柔不断になり、決断が遅れていないでしょうか。
優柔不断で決断力がないと頼りない人だとみなされ、部下からの評価が低くなりやすいです。常に完璧な上司である必要はありませんが、なるべく即断即決を意識し、仕事上の判断をスピードアップすることを心がけましょう。
信頼関係のない組織はどうなる?
上司と部下の信頼関係がない組織には、以下のような弊害が出てきます。
- 社内コミュニケーションが停滞し、組織が不活性化する
- 業務効率が低下し、生産性が悪化する
- 社員のモチベーションが低下し、離職率が高まる
上司がすぐに怒りの感情を表に出したり、部下の話や意見を聞かなかったりすると、人間関係が悪化し、社内のコミュニケーションが停滞します。仕事を効率的に進める上で、社員同士の活発な交流は欠かせません。
上司と部下の信頼関係がないと、業務効率や生産性の低下につながる可能性もあります。また組織内の人間関係が悪化すると、離職率が高まりやすいです。
以下の表は従業員の離職理由について、厚生労働省の「令和2年転職者実態調査」から抜粋したものです。(※)
自己都合による離職理由 | 割合 |
労働条件(賃金以外)がよくなかったから | 28.2% |
満足のいく仕事内容でなかったから | 26.0% |
賃金が低かったから | 23.8% |
会社の将来に不安を感じたから | 23.3% |
人間関係がうまくいかなかったから | 23.0% |
他によい仕事があったから | 16.1% |
いろいろな会社で経験を積みたいから | 15.9% |
能力・実績が正当に評価されないから | 15.3% |
安全や衛生などの職場環境がよくなかったから | 10.2% |
雇用が不安定だったため | 8.3% |
結婚・出産・育児のため | 6.2% |
病気・怪我のため | 4.0% |
介護・看護のため | 2.7% |
家族の転職・転居のため | 2.2% |
その他 | 14.0% |
自己都合による離職理由として、「人間関係がうまくいかなかったから」を挙げた従業員の割合は、全体の第5位となる23.0%です。
上司と部下の信頼関係を築くことができないと、優秀な人材や会社の将来を担う若手人材の流出につながるリスクもあります。次の項目では、部下との信頼関係を築くためのポイントを紹介します。
※出典:厚生労働省.「労働安全衛生調査」
部下との信頼関係を築くためのポイント
部下との信頼関係を築く上で、上司はどのようなポイントを意識すればよいのでしょうか。部下との接し方に悩む管理職やマネージャーの方は、以下に挙げる5点を意識してみましょう。
- 積極的に部下の状況を確認する
- アンガーマネジメントを身に付ける
- 説得力のあるコミュニケーションをする
- フォローしながらも部下に仕事を任せる
- 部下からのメールやチャット連絡に必ず返信をする
例えば、部下からの連絡にこまめに返信する癖を付けるだけでも、少しずつ上司と部下の関係は改善されていきます。日々できることから、自分の行動を少しずつ見直していくことが大切です。
1. 積極的に部下の状況を確認する
まずは、積極的に部下の状況を確認することから始めましょう。部下の状況をよく知らずに指示を出したり、仕事を割り振ったりすると、仕事がスムーズに進まないことがあります。自分の都合しか考えていない身勝手な上司だと思われる原因にもなります。
上司は広い視野を持ち、部下の状況や業務進捗に合わせた判断を下す必要があります。テレワークやリモートワークが普及した今、部下一人ひとりの状況を知ることが難しくなりました。
Web会議システムを使用した1on1ミーティングなどを活用しながら、部下の仕事ぶりをきちんと把握することが大切です。
2. アンガーマネジメントを身に付ける
アンガーマネジメントは、怒りの感情をコントロールし、冷静に行動するためのプログラムです。
最近は企業の管理職研修やマネージャー研修にアンガーマネジメントが取り入れられるケースも増えてきました。アンガーマネジメントにはさまざまな種類がありますが、例えば以下のような方法が知られています。
- 怒りの感情を自覚したら、別のことをして数秒間やり過ごすようにする
- 新しいことに挑戦し、さまざまな価値観を受け入れる訓練をする
- 怒りを誘発しやすい言葉(「でも~」「だって~」など)を避けるようにする
- 怒りの感情をスコア化し、客観的に記録する習慣を付ける
アンガーマネジメントを身に付ければ、感情的・否定的にならず、部下と冷静に接することができるようになります。
3. 説得力のあるコミュニケーションをする
日頃の話し方を工夫し、説得力のあるコミュニケーションを意識することも大切です。例えば以下に挙げる習慣を身に付けるだけでも、説得力のある話し方ができるようになっていきます。
- 部下に意見や主張を行うときは必ず根拠を述べる
- 根拠を述べるときは、数字やデータ、客観的な事実を交える
- 一つの観点からだけでなく、多角的な観点から意見するようにする
上記の3つのポイントを意識すれば、ロジカルな意見や主張になります。最初のうちはなかなか難しいかもしれませんが、説得力のある話し方は後天的なトレーニングで身に付けることが可能です。
4. フォローしながらも部下に仕事を任せる
部下の成長を促すため、適度に仕事を任せるのも上司の役割です。ただし仕事を部下に任せきりにするのではなく、必要に応じてフォローするようにしましょう。
部下が仕事でつまずいたら、適切なフォローをすることで、頼りになる人だという印象を与えることができます。
5. 部下からのメールやチャット連絡に必ず返信をする
コロナ禍によってテレワークを導入する企業が増加し、メールやチャットで連絡を取り合う機会が増加しました。部下からのメールやチャット連絡があったら、こまめに返信する習慣を付けましょう。
いつでも自分の話を聞いてくれる人だという印象を与えられるだけでなく、部下の状況を把握する上でも役に立ちます。
ポイントを押さえて部下から信頼される上司を目指そう
信頼される上司になるには、部下と良好な関係を築く上司の行動モデルから学び、自分の行動に反映させることが大切です。部下から慕われる上司の行動には、10の共通点があります。
- 必要なときにいつでも部下の話を聞く
- 部下の意見を否定しない
- 感謝やねぎらいの言葉を伝える
- 判断が的確
- 一貫性がある
- 誰にでも公平に接する
- 秘密を守り安心して相談できる
- ビジョンや考えを共有してくれる
- 約束を守ってくれる
- いざというときに頼りになる
なお信頼される上司になるには、必ずしも優れた経歴やキャリアが必要なわけではありません。部下との信頼関係を築くポイントを理解し、日々できることから少しずつ行動を見直しましょう。
部下から信頼される上司になりたいという方は、株式会社識学による組織マネジメントコンサルティングをご利用ください。マネジメントをしている方であれば業種業界問わずどのような方でも相談可能です。
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