現在、その業績や成長度などで注目されている企業の大半は、大企業にありがちな伝統的な人事評価制度ではなく、先進的な人事評価制度を導入しています。
これらの事例を知っておくだけでも、自社の人事評価に役立てることができるはずです。
本記事では人事評価制度の事例を10社分紹介していきます。ぜひ参考にしてみてください。
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本記事では一般的な人事評価について、説明しています。
識学の考え方を知りたいという方は、下記の記事をご覧ください。
関連記事:人事評価制度の作り方!失敗してしまう人事評価が生まれてしまう背景を解説
目次
人事評価制度の事例を知っておくとよい理由
管理職や人事評価担当者が、人事評価制度の事例を知っておくべき理由は以下の3つです。
- アイデアを取り入れられるから
- 自社の個性を組み込みやすくなるから
- 人事部における専門能力が高まるから
それぞれ解説していきます。
理由①:アイデアを取り入れられるから
人事評価制度の事例を知っておくべき理由として、アイデアを取り入れられることがあげられます。
例えば、人事評価制度を再構築する場合に、事例があらかじめ頭の中に入っていれば、そのアイデアをすぐに取り入れることが可能です。
また、人事評価制度の事例は知っておいて損はないため、とにかく大量にインプットするだけでアイデアが広がっていきます。
アウトプットはある程度のセンスが要求されるかもしれませんが、インプットは誰にでもできることです。
人事評価制度の事例を知っておくことは、あなた自身の可能性を広げることになります。
関連記事:社員への人事評価制度の問題点は?導入・見直し方法を解説!
理由②:自社の個性を組み込みやすくなるから
人事評価制度の事例を知っておけば、自社の人事評価制度を俯瞰しやすくなります。
そして結果的に、自社の個性を人事評価制度に組み込みやすくなるでしょう。
逆に、人事評価制度の事例を押さえておかないと、自社がどのような立ち位置で、どのような個性を持っているのかわからなくなります。
これでは自社の強みを発揮することができません。
自社の個性を最大限発揮させるためにも、他社の人事評価制度の事例を理解しておくべきなのです。
理由③:人事部における専門能力が高まるから
人事評価制度の事例を知っておけば、人事部における専門能力が高まります。
一見すると人事部はバックオフィス部門のように思えますが、実際は事務能力の高い人材を置くのではなく、優秀な従業員を集める傾向があり、多くの企業が人事に力を入れています。
そして人事スキルは、どんな企業でも応用可能です。つまり人事の専門人材は市場価値が高いといえるのです。
人事評価制度の事例を知っていればいるほど、様々なシチュエーションに対応できます。
これは人事部における専門能力向上に大いに役立つでしょう。
人事評価制度の事例
ここでは、以下の10社の人事評価制度の事例を紹介していきます。
- 株式会社メルカリ
- アドビシステムズ株式会社
- Chatwork株式会社
- 株式会社ディー・エヌ・エー
- カルビー株式会社
- 株式会社ココナラ
- ヤフー株式会社
- 楽天グループ株式会社
- イケア・ジャパン株式会社
- 株式会社VOYAGE GROUP
それぞれの人事評価制度を詳しくみていきましょう。
事例①:株式会社メルカリ
フリマアプリを手がける株式会社メルカリの人事評価制度は、OKRとバリュー評価の2軸で実施されています。
OKRは「Object and Key Result(目標と主要な結果)」の略称です。
1つの定性目標と3つ以上の定量目標によって構成されています。
メルカリの定性目標は「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」で、その目標達成のための具体的な定量目標が設置されていると考えていいでしょう。
またバリュー評価は、メルカリが掲げる以下の3つの行動指針を基準にした評価のことです。
- Go Bold(大胆にやろう)
- All for One(全ては成功のために)
- Be a Pro(プロフェッショナルであれ)
ただしこれらは定性的なもので、一般的には評価が難しい項目です。そこでメルカリではピアボーナス制度を導入しています。
ピアボーナス制度とは、社員同士で成果給を送り合うシステムのことです。
これによって、評価者が見落としがちな定性的な要素を評価できるようになりました。
事例②:アドビシステムズ株式会社
クリエイティブツールを提供するアドビシステムズ株式会社は、チェックインとノーレイティングを導入しています。
チェックインとは、従業員の日々の成長を評価する人事評価システムのことです。
具体的には、マネージャーと部下が高頻度で面談を重ねていき、お互いに評価する仕組みとなっています。これにより、上司と部下のコミュニケーションの機会が増えました。
また、チェックインの特徴として、マネージャーに予算が割り当てられることがあげられます。
そしてマネージャーは、割り当てられた予算を部下に分配することができるのです。これにより、部下のモチベーションが大きく上昇しました。
そしてノーレイティングとは、従業員のランクを一切つけない人事評価制度のことです。
アドビシステムズの社内調査によると、従業員にランクづけをしても、パフォーマンスやモチベーションが低下する一方だったようです。
そこでノーレイティングを取り入れたところ、従業員の仕事に対する納得感が得られるようになりました。
事例③:Chatwork株式会社
ビジネスチャットツールを手がけるChatwork株式会社は、従業員が50人を超え始めたあたりから、OKRとバリュー評価を取り入れるようになりました。
これはメルカリとほとんど同じ人事評価制度です。
ただし、当社はOKRの際に工夫をしていました。それは、OKRの達成率ではなくチャレンジ精神を評価項目に加えたことです。
一般的にOKRは、定性目標を可能な限り高くすることが求められます。
しかし、OKRの達成率を評価してしまうと、この定性目標を現実的な範囲に抑える傾向が出てしまいます。
実際に当社でも同じ傾向が見られたため、OKRの達成率ではなく、「どれだけチャレンジしたのか」を評価項目に加えることになりました。
これにより、従業員がチャレンジングな目標を設定するようになったようです。
また、バリュー評価によって従業員が会社の方向性を理解するようになりました。
事例④:株式会社ディー・エヌ・エー
モバイルゲーム開発やSNS運営を手がける株式会社ディー・エヌ・エーは、360度評価を実施しています。
360度評価とは、被評価者の上司・部下・同僚からのフィードバックで評価する仕組みのことです。
従来の上司が部下を評価する仕組みよりも、客観的な意見を反映させやすいと言われています。
360度評価は匿名でフィードバックを集めるケースがありますが、当社は全て実名でフィードバックを集めることで、従業員同士の信頼関係を構築しているようです。
ただし、あくまでもフィードバックを集めるだけで、それが評価項目に加わることはありません。
また、当社特有の人事システムとして、シェイクハンズ制度があげられます。
これは、本人と部署の合意があれば人事の許可なしで異動できる制度です。これにより、従業員がチャンスを掴みやすい環境となりました。
事例⑤:カルビー株式会社
カルビー株式会社はノーレイティングとオープン化を実施しています。
当社では上司と部下の1on1面談で目標が決定され、その成果によって賞与が決定されます。
そして1on1面談によって決定された目標は、インフラネットによって全従業員が確認できるようになっているのです。これがオープン化です。
このように目標が全従業員に公開されていることによって、誰もが納得できる人事評価制度となりました。
また、カルビーは2010年ごろから成果主義を導入し、これによって利益率が大きく向上したそうです。
事例⑥:株式会社ココナラ
スキルマーケットを手がける株式会社ココナラは、可能な限り客観的に評価できるように、5つの軸と11の段階に分類された等級制度で評価を決定しています。
具体的には「裁量」「コミット範囲」「育成責任」「業務レベル」「ノウハウレベル」の5つの軸が、G1からG7(G2+なども含む)までの11段階のグレードで評価されます。
そしてG7である取締役以外は、グレードの高さによって給与が決定されるようです。
当社は従業員が50名程度の状態からこのような本格的な人事評価システムを構築していました。
人事評価システムは構築に時間がかかるので、結果的には「早めに構築しておいて正解」だったようです。
事例⑦:ヤフー株式会社
ヤフー株式会社は360度評価とピアフィードバックを導入しています。
ピアフィードバックは従業員同士でフィードバックを提供する仕組みで、上司との1on1面談の時に、これらのフィードバックの振り返りが実施されるようです。
また、ヤフーは国籍、年齢、社歴に関係なく、徹底した「Pay For Performance」を人事評価の基本としています。
なお、基本的には年度単位で目標設定を行い、期中では日頃の1on1面談で進捗確認が行われるようです。
事例⑧:楽天グループ株式会社
楽天グループはコンピテンシー評価を軸とした成果主義の人事評価制度となっています。
コンピテンシー評価とは、職務ごとに定義された行動特性を軸に評価する仕組みのことです。
楽天では「楽天主義」の中の「成功の5つのコンセプト」で求められる11個の要素で、評価項目が決定されています。以下の通りです。
- 常に改善、常に前進:①チャレンジ精神、②革新、③Create “Get things done” culuture
- Professionalismの徹底:④責務の遂行、⑤効果的なチームの構築、⑥人材の可能性を広げる
- 仮説→実行→検証→仕組化:⑦戦略策定、⑧協働、⑨仕組化
- 顧客満足の最大化:⑩社内外の顧客価値向上
- スピード‼︎スピード‼スピード‼:⑪スピーディーな判断
これらを(B, BB, BBB, A, AA, AAA)の格付けで評価しているようです。
事例⑨:イケア・ジャパン株式会社
家具販売店のイケア・ジャパン株式会社は、同一労働・同一賃金の人事評価制度を導入しています。
フルタイムもパートタイムも全従業員が正社員として扱われ、共通の福利厚生が提供されるのです。
これにより、従業員は安心して長期的に仕事することができます。
また、徹底した同一労働・同一賃金を実施しているため、育児に追われる女性でも働きやすい環境となっています。
その影響もあって、現在は男女比が5:5になっているようです。北欧企業らしい人事評価制度だといえます。
事例⑩:株式会社VOYAGE GROUP
インターネット事業を手がける株式会社VOYAGE GROUPは、優秀なエンジニアを評価するために、技術力評価会を年に2回実施しています。
技術力評価会は、エンジニア自身が携わった仕事の中から1つネタを選んで発表するイベントです。
この際、被評価者にはサポーターが1人つき、どのようなネタを発表するかを話し合います。
そして評価会では、2人の評価者に対する90分間の発表とディスカッションが行われます。
これにより、ビジネスや課題解決に尽力できるエンジニアが育成されるとのことです。
人事評価制度のトレンド
近年注目されている人事評価制度のトレンドは以下の5つです。
- リアルタイムフィードバック
- 360度評価
- ピアボーナス
- コンピテンシー評価
- ノーレイティング
それぞれ解説していきます。
リアルタイムフィードバック
近年の人事評価制度では、変化の激しい時代を乗り切るために、高頻度でフィードバックが提示されるリアルタイムフィードバックが取り入れられていることが多いです。
具体的には月1回や2週間に1回のペースで1on1の面談が実施されます。
その時々で改善案を提示できるだけでなく、タイムリーに評価できるのがメリットでしょう。
360度評価
360度評価は様々な角度から従業員を評価する仕組みです。
上司だけでなく、部下、同僚からも評価されるので、必然的に様々な人間関係を重視する必要があります。
また、評価者1人の主観的な意見が強調されることなく、複数人の意見を取り入れることができるのがメリットです。
ピアボーナス
ピアボーナスは、従業員同士で賞賛を送り合うシステムのことです。
ピアボーナスを取り入れると、従業員同士でお互いの様子を逐一確認するようになるため、自然とコミュニケーションが増えるとされています。
ただし、ピアボーナスを取り入れた人事評価制度を構築するのに手間がかかるのがデメリットです。
コンピテンシー評価
コンピテンシー評価とは、優れたパフォーマンスを発揮する人に共通する行動特性を軸に評価する仕組みです。
具体的な評価基準を作成できるのがメリットとなっています。
ただし、何をもって優秀な従業員と定義するのかが難しいこと、さらに、時代によって求められる行動特性が変化することも懸念点です。
変化の激しい時代において、コンピテンシー評価を導入するのは至難の技かもしれません。
ノーレイティング
ノーレイティングは従業員のランクづけをしない人事評価制度です。
基本的にはリアルタイムフィードバックによって評価が決定されます。
上司や部下などの上下関係に囚われないコミュニケーションの習慣を身につけられるのがメリットです。
ただし、具体的な評価基準を設けづらいのと、管理職の負担が大きくなるのがデメリットだといえます。
関連記事:人間関係もマネジメント職の重要課題!問題の原因と解決法を伝授
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- 人事評価制度の事例を知っておいて損はない
- 先進的な企業は先進的な人事評価制度を取り入れている
- 近年の人事評価は等級に囚われずに実力が強く反映される傾向がある
人事評価担当者や管理職の方々は、人事評価制度の事例をある程度把握すべきです。
知っているか知らないかで、人事評価のクオリティに大きな差が付くかもしれません。
人事評価は各社のホームページで公開されていることが多いため、気軽にインプットすることができます。
ぜひ試してみてはいかがでしょうか。