不当な人事評価を放置すると、様々なトラブルが発生します。
そのため、人事評価に対しては常に先回りで改善策を実施することが大切です。
本記事では、不当な人事評価を放置するのが危険な理由を解説していきます。
また、解決法も併せて紹介しているので、「自社の人事評価が不当かもしれない」と悩みを抱えている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
関連記事:「不当な人事評価」を放置するとどうなる?具体例から解決法まで解説
目次
不当な人事評価を放置するのが危険な理由を4つ紹介
不当な人事評価の放置が危険な理由は以下の4つです。
- 退職者・離職者が出るから
- 企業のブランドイメージが悪化するから
- 生産性が低下するから
- 不服申し立てが発生するから
それぞれ解説していきます。
退職者・離職者が出るから
不当な人事評価の放置が危険な理由として、退職者や離職者が出ることがあげられます。
例えば、あなたがこれまでで最高の業績を出せたとしましょう。
これはもちろん自己評価ですが、業績は数字で示せるものが大半なので、人事評価に期待が高まります。
しかし、思っていたものとはあまりにも違いすぎる評価を下されたとしたら、あなたはその職場に残るでしょうか?
おそらく、自分を正当に評価してくれる職場への転職を検討するでしょう。
つまり、不当な人事評価を放置すると、従業員が評価システムに不信感を抱くようになり、職場を離れてしまうケースが考えられるのです。
企業のブランドイメージが悪化するから
もうひとつの理由として、企業のブランドイメージ悪化があげられます。
先ほど説明した通り、人事評価に不満を抱いた従業員は、最終的に職場を離れて転職することになります。
そして口コミサイトで「この会社の人事評価は不公平だ」とレビューしてしまうというのは、十分考えられるケースです。
そうすると、主に採用において、企業のブランドイメージが悪化することになります。今後の採用活動も難航するでしょう。
企業のブランドイメージを維持したいのであれば、不当な人事評価に対して迅速に対応すべきです。
生産性が低下するから
不当な人事評価を放置すると危険な理由として、生産性の低下があげられます。
先ほども例にあげた通り、あなたが最高の業績を出したとして、しかしそれが正当に評価されなかったとしましょう。
けれど、なかなか転職する勇気が出ずに、職場に居続けることになったとします。
この場合、あなたはモチベーションを高く維持することができるでしょうか。業績を出しても評価されない職場です。
モチベーションを高く維持するのは難しい環境でしょう。
モチベーションが低ければ、仕事に対するコミットメントも低下し、生産性が落ちるようになるでしょう。
生産性低下は企業の成績に直結します。生産性を維持するために、人事評価は随時見直しを実施すべきです。
関連記事:生産性向上の本質とは?メリットや施策、注意するべきポイントを解説
不服申し立てが発生するから
不当な人事評価を放置すると危険な理由として、不服申し立てが発生する可能性があげられます。
不服申し立てとは、従業員が評価に納得できずに裁判を起こすことです。
実際に、裁判を起こしたケースも数件あり、「人事評価 裁判 例」と検索すると判例が表示されるので確認してみてください。
裁判を起こされれば、その対応に時間や労力を割かれるのはもちろんのこと、不服申し立てはメディアでも取り上げられます。
これは、ブランドイメージ低下に繋がる恐れがあるといえるでしょう。
不当な人事評価となる「人事評価エラー」とは?
評価者の価値観などに影響され、人事評価が不当になってしまう現象を人事評価エラーといいます。人事評価エラーの種類は以下の通りです。
- ハロー効果
- 寛大化傾向
- 厳格化傾向
- 中心化傾向
- 極端化傾向
- 対比誤差
- 論理誤差
- 期末誤差
それぞれ解説していきます。
関連記事:社員への人事評価制度の問題点は?導入・見直し方法を解説!
ハロー効果
ハロー効果とは、被評価者の目立つ特徴に影響を受けて、他の項目の評価にも影響を与えてしまうことを指します。
ちなみに、ハロー効果の「ハロー」とは、「hello(こんにちは)」ではなく「halo(光背)」のことで、光に目が眩んで正しく認識することができないという意味があるようです。
ハロー効果の例としては「学歴がいいから優秀だ」や「ルックスがいいからコミュニケーション能力が高そうだ」などがあげられるでしょう。
寛大化傾向
寛大化傾向とは、評価内容が実際よりも甘くなってしまう人事評価エラーを指します。
親しい間柄の部下を評価する場合に、どうしても評価が甘くなってしまう気もわからなくはありません。
また「自分に人を評価する資格はない」という気持ちで、評価が甘くなってしまうこともあるでしょう。
しかし、これは不当な人事評価です。部下を大事に想うのであれば、正当な人事評価を実施するために、客観的な事実のみで評価するようにしましょう。
厳格化傾向
厳格化傾向は、実際よりも厳しい評価をしてしまう人事評価エラーのことです。寛大化傾向とは真逆の人事評価エラーだといえます。
例としては「5段階評価のうち3以下しかつけない」や「優秀な従業員が新人従業員に対して厳しく評価した」などがあげられるでしょう。
いずれも被評価者の悪い部分だけを注目してしまい、その点を強調して評価してしまう傾向があるようです。
そのため、業務遂行が優秀な従業員に、厳格化傾向が多くみられるとされています。
中心化傾向
中心化傾向は、中間値で評価してしまう人事評価エラーを指します。
5段階評価で3ばかりつけてしまい、1や5を避ける傾向にある人は、中心化傾向に陥っている可能性があります。
中心化傾向が発生してしまう理由としては、評価者自身が自信を持てなかったり、性格が優しすぎたりすることがあげられるでしょう。
極端化傾向
極端化傾向は、はっきりと評価しようとするがあまり、極端な数字で評価してしまう人事評価エラーを指します。
5段階評価であれば1や5ばかりつけてしまう人は、極端化傾向にあると考えていいでしょう。
中心化傾向とは真逆の人事評価エラーです。
高評価を下すにしても、5だけでなく4の選択肢があります。程度によって1と2、4と5を使い分けるべきです。
対比誤差
対比誤差は評価を下す際に、自分自身の能力と評価者を比較し、それを評価に反映させてしまう人事評価エラーのことを指します。
この場合、自分自身の能力を客観的に理解しているのであれば、エラーとはならないかもしれません。
ただし、自分のことを完璧に客観評価できている人は限りなく少ないといえるでしょう。
そのため、対比誤差が発生しているケースの大半が、不当な人事評価だといえます。
具体例としては「自分よりコミュニケーションが下手だから低評価を下した」などがあげられるでしょう。
論理誤差
論理誤差は、客観的な事実ではなく、評価者自身の憶測によって評価を下してしまう人事評価エラーを指します。
例えば評価者が学歴主義者であれば「いい大学を出ているから、この人は優秀だろう」という憶測で評価してしまうケースが想定されるでしょう。
一見すると論理的なように思えますが、「学歴がいい人=優秀な人」という図式が成り立つことはありません。
客観的な事実のみ、評価するようにすべきです。
期末誤差
期末誤差は、評価期間の期末の業績を重視してしまう人事評価エラーを指します。
「終わりよければすべてよし」という言葉があるように、終盤の印象によって、その出来事の印象が大きく左右されます。
これは心理学的に仕方のないことですが、適切な人事評価を下すために改善すべきです。
もし期末誤差が常態化してしまうと、期末だけ頑張る従業員が出てきてしまいます。
期末を重視するのではなく、評価期間全体を公平に評価するようにしましょう。
従業員に不服申し立てされた場合の対処法
従業員からの不服申し立てに対処する手順は以下の通りです。
- 当事者から話を聞く
- 事実関係を調査する
- 各都道府県労働委員会に問い合わせる
- 訴訟の準備をする
それぞれの手順を解説していきます。
順序①:当事者から話を聞く
まずは当事者である評価者と被評価者から話を伺いましょう。
この場合、被評価者が感情的になっている可能性があるので、落ち着いて話を聞くように注意すべきです。
また、この段階で弁護士に立ち会ってもらうことで、客観的な視点で意見を抽出することができます。
被評価者の要望次第では、評価の根拠となる資料を開示する必要がある場合があるため、しっかり準備しておきましょう。
順序②:事実関係を調査する
話を聞き終えた後は、事実関係の調査を進めます。
評価者と被評価者が真実を口にしているとは限らないためです。
人事評価が不公平であると判断された場合は、被評価者に謝罪し、ただちに人事評価制度の見直しを検討する必要があります。
逆に、人事評価が公平であると判断された場合は、その旨を被評価者に対して丁寧に解説しましょう。
順序③:各都道府県労働委員会に問い合わせる
人事評価が公平であり、被評価者に対して丁寧に解説したにもかかわらず、それでも納得してもらえない場合は、各都道府県労働委員会に「個別労働紛争解決のあっせん」を申し込みましょう。
このあっせんは、労働委員会に所属している専門家が第三者として介入し、当事者間のあっせん案を提示するものとなっています。
無料で利用できるので、有効に活用していきましょう。
順序④:訴訟の準備をする
個別労働紛争解決のあっせんでも被評価者が納得せず、民事訴訟に持ち込まれた場合、企業は訴訟の準備をする必要があります。
このとき、証拠の収集や弁護士のサポートのような法的準備はもちろんのこと、ブランドイメージ維持のための広報戦略も策定する必要があるでしょう。
もちろん、仮に訴訟で勝てるとしても、訴訟に至る前に和解した方がいいのは言うまでもありません。
常に先回りして対策を立てるようにしましょう。
不当な人事評価を解消する方法
不当な人事評価を解消する方法は以下の4つです。
- 透明性の高い人事評価を心がける
- 成果と評価を連動させる
- 評価と報酬・待遇を連動させる
- 評価者と被評価者の信頼関係を構築する
それぞれ解説していきます。
透明性の高い人事評価を心がける
不当な人事評価をふせぐためには、「透明性の高い人事評価」を心がけるようにしましょう。
具体的には、人事評価項目や評価基準を事前に公表すべきです。
このように透明性の高い人事評価であれば、従業員は評価内容を信用しやすくなります。
また、人事評価項目などを事前に公開しておくことで、従業員が評価項目に沿った行動をするようになるでしょう。
上手くハマれば、組織全体の生産性向上にも繋げられます。
成果と評価を連動させる
不当な人事評価を解消させたいのであれば、成果と評価を連動させるべきです。
従業員がどれだけ成果を出しても、評価に反映されないのであれば、人事評価に不満を抱くようになります。
特に、伝統的な年功序列で、所属歴や職位に忖度して評価がなされているような企業は注意が必要です。
成果を出している優秀な従業員を失うことになります。
成果と評価はしっかり連動させて、優秀な従業員を高く評価できる環境を構築しましょう。
評価と報酬・待遇を連動させる
不当な人事評価を解消させたいのであれば、評価と報酬・待遇を連動させるべきです。
仮に公平な人事評価を実施できたとしても、それが給与や待遇に反映されないのであれば、従業員は「なぜ人事評価をしたのか?」というように不満を持つようになります。
従業員の多くは報酬を増やすために業績を追求しているはずです。
連動していないとわかったときに、仕事にコミットしなくなるでしょう。
逆に言えば、評価と報酬・待遇がしっかり連動すれば、従業員は高評価を求めて仕事にコミットするようになります。
評価者と被評価者の信頼関係を構築する
不当な人事評価を避けるためには、評価者と被評価者の信頼関係を構築するのがおすすめです。
評価者が上司となることがほとんどなので、基本的には評価者側から積極的にコミュニケーションを取るのがいいでしょう。
評価者と被評価者の信頼関係を構築できれば、お互いに不信感を抱くことが少なくなるため、正当な人事評価が実施されやすくなります。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- 不当な人事評価は放置すべきではない
- 不当な人事評価の原因となる人事評価エラーには様々な種類がある
- 正当な人事評価を実施するだけでなく、評価と報酬・待遇を連動させることが大切
不当な人事評価が実施されていることが発覚した場合、迅速に対処することが大切です。
放置してしまうと、優秀な従業員を失い、長期的に大きな機会損失になる可能性があります。
人事評価は、問題になる前に先回りして改善を進めていくことが大切です。