管理職をキャリアプランに組み込んでいる以上、マネジメントに関する知識は絶対に身に着けておくべきです。
そこで本記事は、マネジメントの基礎知識をまとめて紹介していきます。
また、初めてマネジメントを学ぶ人向けの実践的なメソッドも紹介しているので、基礎固めとして今のうちにしっかり学んでおきましょう。
目次
【識学式】マネジメントの基本と原則
弊社では「自身に与えられた責任を果たすために、配下の社員を管理する権限を持つ人」をマネージャーと呼んでいます。
つまり、マネージャーは、自身に与えられた責任を果たし、チームを勝たせることが原則となります。
チームが勝つから、売上が出る、そして会社が成長する。この流れです。
マネジメントとは、チームが勝つために部下を正しく管理することです。
部下を正しく管理するためには、期限と目標を定量化し、部下に迷いが出ないようにすることが大切です。
そして、期日が来たら目標を達成できたか、できなかったかの「○」「×」をつけ、不足があれば部下に「どうすれば目標を達成できるのか」を考えさせる。
次の行動を約束させる。たったそれだけです。
マネジメントは実はとてもシンプルだと、弊社では考えています。
一般的なマネジメントの基礎知識
一般的に、マネジメントは以下の3つで構成されています。
- 管理すること
- 部下を成長させること
- 創造すること
それぞれ解説していきます。
管理すること
マネジメントの最大の目的は、目標達成のために組織を管理することです。
マネジメント手法を活用して、組織の生産性向上を狙います。
また、目標と実際の行動のベクトル合わせもマネジメントで行います。
せっかく生産性が向上しても、目的に合っていない業務をしていては意味がないからです。
そして目標達成のための最短ルートを構築するのもマネジメントの役割の一つです。
常に進捗状況を確認し、計画にズレがあったらそれを修正していく必要があります。
以上のように、マネジメントは「組織を管理すること」であり、基本的に管理業務に集中するので、現場で実際に業務を行うことはほとんどありません。
関連記事:目標管理とは?メリットとデメリット、取り入れる際のポイントやツールも紹介
部下を成長させること
部下を成長させることもマネジメントを構成する要素の一つです。
チームのパフォーマンスを最大化させるには、まず部下のポテンシャルを最大限に引き出す必要があるからです。
その際のアプローチは主に2種類。1つめは管理職が自ら指導する方法です。
これであれば確実に人材育成に繋げることができますが、大人数のチームを抱えている場合、時間がかかります。
そしてもう1つの方法は、部下が勝手に成長する仕組みを作ることです。
実際に仕組みを構築してしまえば、部下が自発的に成長してくれるので、管理職の手間がかかることはありません。
しかし、仕組みが回るかどうかの確実性が低いのがデメリットです。
創造すること
マネジメントは、新しいアイデアを実践したり、客観的な情報と主観による経験を組み合わせることで戦略を生み出したりと、様々な分野で創造する必要があります。
特に上層部に近づけば近づくほど、その傾向が強いといえるでしょう。
そのため、社外の人と触れ合うことや、希少性の高い情報を掴むことに時間を使う必要があります。
また、時流を読んでビジネスチャンスを掴み取りにいくセンスも要求されるでしょう。
そして何よりも、管理職は受容性を高めるべきです。自分と異なる意見が飛び出ても、それをしっかり受け入れて分析する力が問われます。
特に、自分と世代が異なる若手社員のアイデアは貴重な情報源です。新たなアイデアのもととなるでしょう。
マネジメントの段階によって「管理する」広さが変わる
マネジメントは、段階によって管理範囲が大きく変わります。段階は以下の3種類です。
- トップマネジメント
- ミドルマネジメント
- ロワーマネジメント
それぞれの段階の管理範囲を解説していきます。
トップマネジメントの管理範囲
社長、取締役などのトップマネジメントは企業そのものが管理範囲です。
特に、グループ企業などの大企業のトップ層は、様々な業界を横断的にマネジメントする必要があるでしょう。
トップマネジメントが取り組む業務としては、戦略・ビジョンの策定やロビイングが挙げられます。
戦略・ビジョンの策定に関しては、企業の軸を決定することになるので非常に重要です。
またロビイングとは、自社が有利になるような政策を打ち出してもらうための政治活動を指します。
政府関係者と接触することになるので、必然的に上層部が担当しなければなりません。
このように、トップマネジメントは非常に高度なマネジメント能力と交渉力が必要だといえます。
ミドルマネジメントの管理範囲
ミドルマネジメントは部長、課長、係長のことで、管理範囲はそれぞれが受け持つ組織やチームとなります。
例えば部長であれば部門ですし、課長であれば課を管理することになります。
ミドルマネジメントの中でも部長は、管理業務により集中するようになり、係長は現場での業務に携わることが多い傾向にあります。
いずれにせよ、職位が高くなればなるほど一般社員との距離が遠くなってしまいます。
そのため、現場の意見に近い位置にいる係長の意見は重要なき情報源といえるでしょう。
関連記事:中間管理職とは?役割や必要なスキル、優れたミドルマネジメントの育成方法を解説
ロワーマネジメントの管理範囲
ロワーマネジメントはチームリーダーや工場長など、現場での業務におけるリーダーを指します。
そのため、ロワーマネジメントの管理範囲は、共に仕事を進めるチームメンバーということになるでしょう。
ロワーマネジメントは、一般従業員の模範となるように、高度な業務遂行能力が求められます。
また、現場の新入社員の育成を行うのも、基本的にはロワーマネジメントの役割です。
マネジメントとプレイヤーは何が違うのか
では、マネジメントする管理職と、実際に業務をこなすプレイヤーとでは何が違うのでしょうか。以下の3つの観点で解説していきます。
- コミットする目標の大きさ
- 責任範囲
- 業務
コミットする目標の大きさ
管理職とプレイヤーでは、コミットする目標の大きさが異なります。
プレイヤーは自分が抱えている仕事にコミットできれば十分です。しかし管理職は、業績にコミットする必要があります。
例えば、プレイヤーがちゃんと仕事をしていても、それが業績に繋がらない可能性もあります。
この場合、プレイヤーは目標にコミットしていると言えますが、管理職がコミットできているということにはなりません。
責任範囲
管理職とプレイヤーでは責任範囲が異なります。
プレイヤーの場合、自分の仕事にだけ責任を持てば十分でしょう。
しかし管理職は、自分の仕事だけでなく部下の仕事にも責任を持たなければいけません。
そう考えるとプレイヤーの仕事の責任は、実質的には管理職が負うことになります。
そしてそれは巡り巡って、最終的にはCEO(最高経営責任者)が責任を負うことになるのです。
実際、現場社員のミスなのに、記者会見では社長が謝罪する場面を何度も見たことがあるかと思います。
これがマネジメントとプレイヤーの責任範囲の違いです。
業務
管理職とプレイヤーでは業務が大きく異なります。
えばソフトウェア開発企業の場合、プレイヤーはソフトウェアの開発に携わります。
一方で管理職は、そのソフトウェア開発にどれだけの人員を投入するか、どれぐらいの期間や金額をかけるかといった管理業務に集中します。
また、管理職の位によっても業務内容は大きく異なります。
例えば開発チームのリーダーであれば、ソフトウェア開発のコーディングに手を入れることが幾度となくあるでしょう。
一方で部長クラスであれば開発に携わることはなく、あくまでも人員配置などでトラブルを解決していきます。
このように管理職の位が上がれば上がるほど、管理業務に集中するようになっていきます。
マネジメントの実践知識~初めてマネジメントを学ぶ人向け~
ここでは、マネジメントの実践的な知識を紹介していきます。以下の通りです。
- 部下に任せることを怖がらない
- 部下の長所を伸ばす視点を持つ
- 部下の成果に着目して、次の打ち手を考える
それぞれ解説していきます。
部下に任せることを怖がらない
初めてマネジメントを実施する際にまずぶつかる壁が、部下に仕事を任せることです。
今までは、自分で仕事をこなすからこそ責任を持てていたという人が多かったと思います。
しかし、マネジメントでは仕事を部下に任せ、その行為に責任を持たなければいけません。
他人のやったことに自分が責任を持つ。それはある意味、非常に怖いことだといえます。
しかし、自信を持って部下に仕事を回せなければ、部下も自信を無くしてしまい、パフォーマンスが低下してしまいます。
自信を持って部下に仕事を任せる必要があるでしょう。
また、一旦部下に仕事を任せてみて、それでダメだったらサポートに入る、という考え方を持つことも必要です。
とにかく、まずは自信を持って部下に仕事を任せましょう。
部下の長所を伸ばす視点を持つ
マネジメントは、部下の動向に常に注目する必要があります。
特に、部下の長所を伸ばす視点を持つようにしましょう。
これが短所を補うという視点になってしまうと、部下の個性が消えてしまう恐れがあります。
チームで行動している以上、短所は他のメンバーの長所で補えばいいのです。
チームのパフォーマンスを最大化させたいのであれば、まずは部下の長所を伸ばす視点を持つようにしましょう。
ただし、PC操作などの社会人基礎力が明らかに悪い時は、しっかり指導しなければなりません。
社会人基礎力は社会人にとって必須スキルなので、長期的な視点でみても必要な指導です。
どちらにせよ、長期的な目線で部下のキャリアをサポートするようにしましょう。
部下の成果に着目して、次のうち手を考える
部下に仕事を任せ、実際に成果が上がってきた時は、次の打ち手を考えるようにしましょう。
具体的には、成果が良さそうであればもう一度同じような仕事を任せ、逆に成果が悪そうであれば違う仕事を任せるという形です。
ただ、その真逆のスタイルで成果が良いからこそ違う仕事を任せて、さらにできる可能性を広げる、逆に成果が悪いからこそ同じ仕事を任せて育成する、というアプローチもあるでしょう。
とはいえ、部下の成長を促進させるとともにチーム全体の業績とのバランスもあります。
チームの業績向上に最大限取り組みつつ、余裕がある時に部下を育成できるといいでしょう。
関連記事:部下への正しいフィードバック方法とは?手順やポイント、注意点を解説
正しく部下を管理するために必要な資質
部下を正しく管理したいのであれば、以下の資質が必要です。
- ビジネススキル
- マネジメント知識
- 目標設定・評価能力
それぞれ解説していきます。
ビジネススキル
部下を正しく管理したいのであれば、まずはビジネススキルが必要です。
ここで取り上げるビジネススキルとは、PCスキルやコミュニケーション能力、資料作成などのビジネスマンとして最低限必要なスキルを指します。
また、業務における専門的知識も含まれるでしょう。
部下に指導する立場なのに、自分自身ができなくては信用度がガタ落ちです。
そのため管理職は、メンバー以上のビジネススキルを保有する必要があります。
管理職を任されるような人材であれば、必然的に高度なビジネススキルを保有しているかと思いますが、油断大敵です。
日々、自己研鑽を積み上げるようにしましょう。
関連記事:『定年後も働く時代に』人生100年時代においてビジネススキルを身につけるための心構えとは
マネジメント知識
管理職である以上、当然のことながらマネジメントにおける知識が必要です。
基本的にマネジメント能力は経験値に大きく左右されます。
そのため、まずは実践してみることがマネジメント能力を身に着けるロードマップのテンプレートだといえるでしょう。
その一方で、マネジメントにおける知識があるに越したことはありません。
例えばピーター・ドラッカーの『マネジメント』や、デール・カーネギーの『人を動かす』は、管理職に限らずビジネスマンであれば絶対に読むべき名著です。
それ以外にも最先端のマネジメント理論が解説されているビジネス書や、場合によっては経営学の論文を読んでみるのもいいでしょう。
優秀なビジネスマンは、例外なく大量のインプットをこなしています。
管理職の方々も、しっかり本を読んでマネジメント知識を身につけるべきです。
目標設定・評価能力
部下に正しい行動を促すためには、適切な目標設定と人事評価が必要です。
例えば目標設定においては、現実的かつ成功が見込めるギリギリのラインで目標を設定する必要があります。
具体的には、従来のパフォーマンスの120%で達成できる目標がおすすめです。
また、人事評価に関しては、成果に見合ったインセンティブを用意する必要があります。
成果を出しているのにちゃんと評価されないという環境では、部下のモチベーションが下がってしまうでしょう。
なお、ここでいう成果とは、個人の業績だけに限りません。チームの業績向上を陰で支えることも評価すべき成果です。
また、業績は出せていなくとも、企業のビジョンと合致していてポテンシャルを感じている場合も、評価すべきです。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- マネジメントは組織を管理し、部下を成長させ、創造することが求められる
- マネジメントとプレイヤーでは、責任範囲や業務内容が決定的に異なる
- マネジメントの第一歩は、自信を持って部下に仕事を任せること
マネジメントは、実際に実践してこそスキルが身につくものです。しかし、知識があるに越したことはありません。
少なくともドラッカーの『マネジメント』やカーネギーの『人を動かす』はひとまず読んでみるべきです。
読んだことがない方はぜひ読んでみてください。