年俸制とは、給与を1年単位で決める給与体系です。
多くの企業は月給制を採用していますが、年俸制はどのような企業に向いているのでしょうか?
また、導入する際はどのような点に注意すればよいのでしょうか?
本記事では年俸制について、
- 導入する企業や職種
- 他の給与形態との違い
- メリット・デメリット
- ボーナス・残業代の扱い
- 導入・運営する際の注意点
を解説していきます。
目次
年俸制とは
年俸制とは、給与の金額を1年単位で算出する給与体系です。
とはいえ、1年に1回しか給与を支払わないということではなく、年俸額を12分割して毎月支払うケースや、14分割して毎月支払い、残りの2ヶ月分をボーナスとして支払うケースがあります。
金額はどのように決まる?
年俸額の算出方法は企業によって異なります。
事前に賃金規定にルールや算出方法が定められているケースや、契約を更新する際に年俸額を決めるケースが一般的です。
年俸制とその他の給与体系との違いとは
ここでは、より深く理解するためにその他の給与体系と比較してみましょう。
月給制との違い
多くの日本企業で採用されている給与体系である月給制は、月単位で給与額が決まります。
大きな違いは、給与額の算出が「年単位」か「月単位」かという点だけで、そのほかはほとんど同じです。
日給制との違い
日給制とは、1日単位で給与額を算出し、その金額に働いた日数をかけあわせた給与が支払われます。
1か月の給与の算出方法という点で見れば、年俸制では一度決めた年俸額を分割して毎月支払いますが、日給制の場合は1日単位の給与額が決まっており、その給与額に出勤日数をかけあわせて1ヶ月分の給与を割り出すため、算出方法が異なります。
関連記事:日給月給制とは?類似した給与形態の特徴や利点、計算方法を解説
年俸制を導入する企業や職種とは
一般的に外資系企業は年俸制を導入している傾向があります。
海外では終身雇用制度や年功序列制度が定着しておらず、個人の能力や成果に応じて報酬が支払われます。
したがって、実力さえあれば若手でも高待遇を獲得できる可能性がありますが、成果を出せなければ昇格どころか降格となるケースも少なくありません。
年俸制のメリット・デメリットとは
ここでは、企業におけるメリットをみていきましょう。
企業側のメリット
年俸制を導入することで企業が得られる1つ目のメリットは、計画が立てやすくなることです。
あらかじめ1年間の人件費の総額を算出することが可能なので、中長期的な経営計画の策定がしやすくなります。
2つ目のメリットは、従業員のモチベーションを高められることです。
人事評価と組み合わせて運用することで、成果主義を従業員に定着させやすくなります。
成果主義により成果に基づいた年俸額を決めることで、従業員の給与への納得感を与えられます。
そして、自身の成果や努力次第で収入も変わるため、モチベーションの向上につながるのです。
企業側のデメリット
一方で企業側のデメリットとしては、簡単に人件費を変えることができない点です。
例えば、業績が急激に悪化した場合や、従業員の個人業績が予想よりも悪かった場合でも、年度初めに決めた年俸額から減額することは基本的に認められていません。
もし年俸額から減額した場合、契約違反となる可能性があります。
したがって年俸制を導入するのであれば、従業員がどの程度成果を出せるのかを慎重に検討したうえで、年俸額を決めることが重要です。
関連記事:人件費削減の本質とは?メリットとデメリット、失敗しないための注意点や方法を解説
年俸制におけるボーナスの扱いとは
ボーナスを支給するかどうかは企業によって違いますが、年俸制を導入する企業の中にも、ボーナスを支払うケースがあります。
一般的に、年俸制におけるボーナスの支払い方法は下記の2通りに分けられます。
- 年俸とは別にボーナスを支払う
- 年俸額をボーナスに含む
上述したように、後者では年俸を14分割して12ヶ月分を月ごとに支払い、残りの2回分をボーナスとして支払います。
また、そもそもボーナスは法律で支給が義務付けられていないため、支払わなくても問題はありません。
関連記事:『コロナ禍でのボーナス不支給は違法?』労働基準法など法律上の注意点と影響を再確認しよう
年俸制における残業代の扱いとは
1年間の給与額があらかじめ決められているため、残業代は不要と考える人もいるかもしれません。
しかし、年俸制でも労働基準法が適用されるので、企業は残業代を支払う必要があります。
一方で、「年俸額の1割を、1ヶ月あたり25時間分の時間外勤務手当とする」というように年俸額に残業代を含むケースもあるため、この取り決め以上の残業にのみ、残業代が発生することもあります。
年俸制における退職金の扱いとは
退職する際に企業が退職者に支払う「退職金」ですが、法律で支払いが義務付けられているものではないため、年俸制、月給制にかかわらず、企業は支払わなくても問題ありません。
退職金は給与の支払いとは別に、福利厚生の一つとして企業が独自に設定するものです。
しかし退職金制度があり、就業規則などに記載がある場合は、年俸制でも要件を満たす従業員には退職金を支払わなければなりません。
まとめ
年俸制は、給与を一年単位で決める制度です。
企業にとっては、予算をあらかじめ決められる制度ではありますが、社員にとっては、降格人事が発生するなどの懸念もあります。
しかし、そうした降格の危険性が適度なプレッシャーになり、結果を出す社員が増加するのもまた事実ととらえてよいでしょう。
既に終身雇用制度は崩壊してます。
この機会に、自社にあう給与体系を再検討してみてはいかがでしょうか?