同一労働同一賃金ガイドラインとは、非正規雇用労働者と正規雇用労働者の待遇格差を改善するために、働き方改革の一環として進められている取り組みのひとつです。
本記事では、同一労働同一賃金ガイドラインについて解説していきます。
目次
同一労働同一賃金ガイドラインとは
同一労働同一賃金ガイドライン(以下:ガイドライン)とは、働き方改革関連法の柱の1つである、同一労働同一賃金の具体的な方針となるものです。
大企業では2020年から、中小企業は2021年から施行されています。
同一労働同一賃金とは
同一労働同一賃金とは、労働者の雇用形態を問わず、同じ仕事をしている場合は同じ待遇にしなければならないという制度です。
下記の労働者がこの制度の対象となります。
- パートタイム労働者
- 有期雇用労働者
- 派遣労働者
従来、上記の労働者は正規雇用労働者よりも処遇の面で弱い立場にありました。
そこで働き方改革関連法(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正)によって、上記の労働者でも正規雇用労働者と同じ仕事をしているのであれば、待遇や賃金に不合理な格差が生じることが禁止されました。
関連記事:同一労働同一賃金とは?メリットやデメリット、企業が取るべき対策を徹底解説!
同一労働同一賃金ガイドラインについて解説
それではガイドラインの内容について解説していきます。
(参考:「同一労働同一賃金ガイドライン」の概要丨厚生労働省)
基本給について
ガイドラインでは基本給について、
- 労働者の能力または経験に応じて支払うもの
- 業績または成果に応じて支払うもの
- 勤続年数に応じて支払うもの
としており、業務内容が同様であれば雇用形態を問わず同一の、異なるのであればその違いに応じて支給をしなければならないとしています。
昇給について
昇給についても基本給と考え方は同じです。
労働者の勤続によって能力やスキルが上がり、その上昇分に応じて昇給を行うのであれば、非正規雇用労働者でも正規雇用労働者と同じように、同一の昇給を行う必要があります。
一方で、能力の向上に違いがあるのであれば、その違いに応じた昇給にしなければなりません。
賞与について
賞与(ボーナス)についてもこれまでの方針と変わりません。
昇給が労働者の貢献に応じて支払われるのであれば、同一の貢献に対しては同一の、異なる場合はその違いに応じて支払う必要があるとしています。
各種手当について
役職の内容に対して支払われる役職手当は、同じ内容の役職には同じ支給をしなければなりません。また、違う場合は違いに応じた支給をする必要があります。
なお、仕事の内容が同じ場合、下記の各種手当も同じように支給しなければなりません。
- 特殊作業手当:業務の危険度または作業環境に応じて支給される
- 特殊皆勤手当:交替制勤務などに応じて支給される
- 時間外労働手当の割増率:正社員の所定労働時間を超えて同一の時間外労働を行った場合に支給される
- 食事手当:労働時間の途中に食事のための休憩時間がある際の手当
- 地域手当:特定の地域で働く労働者に対する補償として支給される
福利厚生・教育訓練について
従来、非正規雇用労働者は正規雇用労働者と比べて、福利厚生や教育訓練について良い待遇で働いていました。
しかし、「同一の業務の場合は待遇に不合理な格差があってはならない」とする同一労働同一賃金が導入されたことにより、福利厚生や教育訓練、慶弔休暇、病気休職などについて、雇用形態を問わず同一の利用・付与をすることが求められるようになりました。
関連記事:賞与の査定方法とは?評価基準や査定する際の注意点を解説
同一労働同一賃金によって期待できるメリットとは
同一労働同一賃金によって期待できる企業側のメリットとしては、下記のようなものが挙げられます。
- 非正規雇用労働者の労働生産性向上
- 人材確保がしやすくなる
雇用形態による待遇格差が改善されることで、非正規雇用労働者の業務への意欲が向上し、労働生産性の向上が期待できます。
また、非正規雇用労働者への教育訓練の機会が増えることで、能力やスキルを高められれば付加価値の高い業務による生産性向上も期待できるでしょう。
また、待遇格差の改善によって非正規雇用でも納得して働けるということになれば、求職者にとって多様な働き方を選ぶことができるようになるため就労機会が広がり、企業は人材確保がしやすくなる可能性があります。
同一労働同一賃金によって生じやすいデメリットとは
同一労働同一賃金によって生じやすい企業側のデメリットとしては、下記のようなものが挙げられます。
- 人件費の増加
- 企業に負担が生じる
非正規雇用労働者の賃金を正規雇用労働者と同一にすることで、人件費が増加するというデメリットがあります。
これを回避するために人件費を抑える場合、基準となる正規雇用労働者の賃金を押さえるといった形をとることになり、しわ寄せが来るため、モチベーションの低下につながりかねません。
また、同一労働同一賃金の導入に際して企業は、就業規則の見直しや従業員への説明をしなければならず、そのための負担が生じるデメリットにも注意が必要です。
関連記事:「給料が上げれば仕事のモチベーションも上がる?」という考えの落とし穴とは?
まとめ:同一労働同一賃金により組織のありかたが変わる
パートタイム労働者は、企業が人件費を抑えるために雇用を続けてきました。
しかしその一方で、パートタイム労働者の人件費が上がってしまえば、会社の利益率が下がってしまうのでは、と心配に感じている経営者の方も多いことでしょう。
また、人件費の引き上げに加え、平等な昇給制度を構築するためには、定性的な評価だけでなく、定量的な評価を加える必要もあります。
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