その結果、2022年に中途採用を行う意向のある企業は84.0%でした。また、中途採用に関わる中で採用した人物が入社後に期待したほど成果をあげていないと感じたことがある方が6割以上で、中途採用で「こんなはずではなかった」と感じたことがある方は7割以上にのぼることがわかりました。
目次
■調査背景
2~3月は1年で最も求人数が多く、採用・転職活動が活発化する時期です。企業はより自社にマッチし、より高い成果を出す可能性のある人材を採用するために、費用と時間のコストをかけて採用活動を行いますが、必ずしも期待通りとならないこともあるでしょう。中途採用で「こんなはずじゃなかった」とならないために、直近3年間で中途採用に関わった方を対象に調査を行いました。報道の一資料として、是非ご活用ください。
■調査概要
調査対象:全国の従業員数5人以上300人未満の企業の経営者・正社員の20歳~59歳の男女で、直近3年間に自社の中途採用に関わった方
有効回答数:300サンプル
調査期間:2022年1月19日(水)~1月20日(木)
調査方法:インターネット調査
■調査結果トピックス
・2022年に中途採用を行う見込みは「行う予定」57.7%、「決まっていないが可能性はある」26.3%であわせて84.0%。
・中途採用を始める際に、採用したい人物像や雇用条件として社内で設定している評価項目は「求める人物の人柄・性質」64.7%、「これまでの経験・実績」55.0%、「持っているスキル・能力」54.7%が上位に。「自社で出してほしい結果」をあらかじめ設定している企業は26.0%にとどまる。
・社内で設定した評価項目と評価基準を社員と共有する方法は「口頭で説明」68.9%が最多。
・入社後に期待した成果をあげていないと感じたりそのような評判を聞くことがある 62.7%。
・中途採用で「こんなはずではなかった」と感じた経験がある 75.7%
Q1. あなたがお勤めの会社での2019年・2020年・2021年の中途採用実施状況をお答えください。(単数回答、n=300)
直近3年間で中途採用を行った企業で採用活動に関わった方に、2019年・2020年・2021年の各年の中途採用実施状況を聞きました。国内でのコロナ元年であった2020年から、「中途採用を行った」割合が8割を切る結果となっています。
Q2. あなたがお勤めの会社で2022年に中途採用活動を行う予定があるかお答えください。
(単数回答、n=300)
2022年に中途採用を行う予定があるか聞いたところ、「行う予定」57.7%、「決まっていないが可能性はある」26.3%で、中途採用を行う意向のある企業の割合はあわせて84.0%となりました。
Q3. あなたがお勤めの会社で、中途採用の選考で重視することをお答えください。(複数回答、n=300)
中途採用の選考で重視することのTOP3は「コミュニケーション能力がありそうか」76.1%、「協調性がありそうか」55.2%、「誠実性がありそうか」51.7%となりました。「資格・スキル」38.6%、「経歴」33.2%、「前職での実績」31.7%などの応募者の能力や経験に関する項目よりも、人柄を重視して選考する企業が多いことがわかりました。
Q4. 中途採用の選考で重視する項目をどのようにして知り、判断しているかお答えください。
(複数回答、n=300)
前問で回答した中途採用の選考で重視する項目を応募者からどのようにして知り、判断をしているかを聞いたところ、回答の多い順に「面接・面談」92.7%、「履歴書・職務経歴書」70.3%、「試験・適性検査」31.7%となりました。直近3年間で管理職(候補)の採用を行った方では「自社の求める条件を明文化して提示する」30.0%の回答割合が一般社員採用を行った方に比べて多いことがわかりました。入社してからの責任が重く、給与も高い管理職(候補)の選考では、企業と応募者で誤解や認識のズレがないようにより慎重に、条件を明文化して確認するケースが多いのかもしれません。
Q5. 中途採用を始める際に、採用したい人物像や雇用条件としてあらかじめ社内で設定している評価項目をお答えください。(複数回答、n=300)
中途採用を始める際に採用したい人物像や、雇用条件として社内で設定している評価項目を聞くと、「求める人物の人柄・性質」64.7%、「これまでの経験・実績」55.0%、「持っているスキル・能力」54.7%を設定している企業が過半となりました。入社後に「自社で出してほしい結果」をあらかじめ社内で設定している企業は26.0%にとどまりました。
Q6. 採用したい人物像や、雇用条件としてあらかじめ社内で設定している評価項目とその評価基準について、選考や合否決定に関わる社員と共有する方法をお答えください。(複数回答、n=283)
※Q5で「あらかじめ社内で設定している項目はない」と回答した方を除く
採用を始める際にあらかじめ設定した応募者の評価項目とその評価基準を、選考や合否決定に関わる社員と共有する方法を複数回答で聞きました。最も多い回答は「口頭で説明」68.9%となりました。「評価項目を記載したシートで共有」は約4割、「評価基準を記載したシートで共有」は約2割となりました。一次選考、二次選考と進む中で複数の社員が選考や合否決定に関わる場合、人により評価基準が異なることも考えられます。会社が求める人物とマッチする人材を採用するためには、評価項目と評価基準の認識がズレない形で共有することが重要です。
Q7. 中途採用で入社した社員が期待したほどの成果をあげていないと感じたり、他の社員からそのような評判を聞いたりすることがありますか。(単数回答、n=300)
中途採用した社員が入社後に期待したほどの成果をあげていないと感じたり、他の社員からそのような評判を聞いたりすることがあるか聞いたところ、「ある」と回答した方が62.7%となりました。採用費や、選考に関わる社員の時間コストも投資して採用したのに、期待したほど成果をあげていないとなると企業としてはがっかりしてしまうことでしょう。このようなことを防ぐためには、企業は選考の段階で、応募者に対し「こんな結果を出してほしい」ということを提示し、それができるか確認をすることが大切です。
Q8. 中途採用に関わった経験の中で、これまでに「こんなはずではなかった」と感じた経験がありますか。(単数回答、n=300)
※採用活動中の社内のことでも、中途採用した人物のことでも、どちらでもかまいません。
これまでに中途採用で「こんなはずではなかった」と感じた経験があるか聞いたところ、「ある」と回答した方が75.7%であることがわかりました。
Q9. 中途採用に関わった経験の中で、「こんなはずではなかった」と感じたエピソードをお答えください。(自由回答、n=227)
●面接では人柄が素晴らしいのに、入社してからは挨拶もできなかったり、コミュニケーションがとれない方で驚いた。(35歳女性/管理職(候補)を採用)
●元気があり、言動もしっかりしていたがあまり動かなく口だけであり注意しても自覚がなかった。
(54歳男性/管理職(候補)を採用)
●面接時にはやる気で前のめりの姿勢を見せていたが、いざ仕事を始めると不満ばかりを口にしてまともに仕事をしていなかった。(54歳男性/一般社員を採用)
●低姿勢な態度だったが入社してから態度が一変した。(51歳男性/一般社員を採用)
●すぐに辞めたりあきらめない事をアピールしていたので採用したら、すぐに辛いと言い出し即退職された。(46歳男性/一般社員を採用)
●大企業からの転職で期待したが、全く役に立たないことがあった。(58歳男性/一般社員を採用)
●経験豊富な職務経歴書の内容と実際の働きぶりがあまりにも違っていた。仕事を一から教えなければならなかった。(54歳男性/管理職(候補)を採用)
●社会人経験が豊富なので即戦力になると思って採用したが、実際は指示されないと動けないタイプだった。(50歳男性/一般社員を採用)
●採用した人材の経歴に虚偽があった。(40歳男性/一般社員を採用)
●良さそうな転職話を聞いたようで、採用投資を回収する前に辞められたこと。(47歳男性/管理職(候補)を採用)
中途採用の「こんなはずではなかった」エピソードは、面接での印象や経歴で期待した姿と実際の働きぶりが異なったという回答が多く挙げられました。お互いに納得して、採用活動を成功させるために企業側は「何を、どのレベルで遂行してほしいのか」を説明し、応募者がそれを達成できるのかを具体的に話し合うことが重要といえるのではないでしょうか。
※本リリース内の百分率表示は小数第一位以下を四捨五入しているため、合計して100%とならないことがあります。
【調査結果まとめ】
人柄を評価するだけでは不十分!?
「入社後に求める結果」を明確に提示しておくことが重要。
―人柄を重視するも、うまく採用できている企業は少ない
本調査において、「中途採用の選考で重視すること」で上位に入ったのは「コミュニケーション能力」や「協調性」、「誠実性」といった人柄に関する項目でした。しかし、中途採用にかかわった経験のある方の75.7%が「こんなはずではなかった」と感じたことがあると回答しており、その回答の中には、入社した社員の「人柄」に関する内容も複数含まれていました。多くの企業が人柄を重視した採用を行いたいと考えているのに対し、実際は苦戦している企業が多いのかもしれません。
―人柄を見抜けない採用担当者の問題なのか?
入社した社員に対する「こんなはずではなかった」はなぜ発生するのでしょうか?容易に考えられる原因としては、「採用担当者に人柄を見抜く力が無かったから」なのかもしれません。しかし、高い精度で人柄を見抜ける採用担当者を育成するのには大きなコストがかかるため、この原因を取り除くアプローチは現実的ではないでしょう。
―「こんなはずではなかった」が発生する真の原因
では、真に取り除くべき原因は何でしょうか?識学では、それを「認識のズレ」と考えています。ここでの「認識のズレ」は大きく分けて2種類です。1つは、社内間の認識のズレです。例えば、人事担当と面接する現場の担当者で「評価項目」や「評価基準」の認識がズレている場合、後から「なぜあんな人を採用したのだ!」ということになりかねません。もう1つは、採用担当者と応募者間での認識のズレです。例えば、面接する担当者と応募者の間で「仕事内容」に対する認識がズレている場合、後から「説明された仕事内容と全然違う!」ということになりかねません。これら2つは、大きなコストをかけることなく取り除くことが可能な原因です。
―認識のズレをなくすために行うべきこと①~社内間~
本調査では、68.9%の企業が口頭説明で、応募者の評価項目や評価基準を社内共有していることが分かりました。「口頭説明だから認識がズレる」とは言い切れませんが、やはり、評価項目や評価基準は明文化し、曖昧な表現を極力排除した形で社内共有することが望ましいと考えられます。
―認識のズレをなくすために行うべきこと②~採用担当者・応募者間~
識学では、採用担当者・応募者間で認識のズレを減らすために大事なことは、企業が応募者に「入社後に求める結果」を明確に提示することだと考えています。なぜなら、結果は数字で表現できるため、認識がズレにくいからです。多くの会社は、仕事内容や必要なスキルは提示しますが、「求める結果」については提示を行う企業が少ない傾向にあります。実際、本調査でも、入社後に「自社で出してほしい結果」をあらかじめ社内で設定している企業は26.0%にとどまりました。仕事内容やスキルは、あくまでも結果を出すための手段であり、状況に応じて変更されるものです。まずは「どんな結果を出すために人を採用したいのか」をあらためて言語化することから始めてみてはいかがでしょうか。