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プレイングマネージャー組織の構造的課題と処方箋

「自分が現場の最前線に出ないと、チームの目標が未達になる」と悩む営業マネージャーは少なくありません。プレイングマネージャーという役割自体は決してマイナスなものではありませんが、個人の売上に依存しすぎると組織の成長はいつか限界を迎えます。本記事では、マネージャーがプレイングに偏りやすい構造を紐解き、役割とKPIを再定義して、「誰でも成果を出せる、再現性のある組織」へと転換する具体的な処方箋をお伝えします。

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プレイヤー化の裏にある課題

営業組織において、マネージャー自らがトップセールスとして現場を駆け回り、自身の圧倒的な売上でチーム全体の数字を牽引しているケースは多く見受けられます。

大前提として、プレイングマネージャーという存在自体は、否定されるべきものではありません。特に立ち上げ期の組織や少人数のチームにおいては、マネージャー自身がプレイヤーとして自ら数字を作り出さなければならないフェーズも存在します。また、「現場の第一線でお客様の生の声を聞き続けたい」「背中で見せることで部下を引っ張りたい」という姿勢は、強い責任感と熱意の表れでもあります。

プレイングマネージャーという役割自体が、部下の成長を妨げることはありません。ただし、プレイング機能にばかり注力してしまい、マネジメント機能を果たさなければ、プレイングマネージャーという役割が部下の成長を妨げてしまいます。マネージャー個人の物理的な稼働時間と体力にはどうしても上限があるため、部下がなかなか成長せず、マネージャーがプレイングに偏る構造のままでは組織全体の営業力は一定の規模から頭打ちになってしまうのです。

組織を中長期的に運営し、拡大していくという観点から見ると、マネージャーの本来の役割は「ルールの決定と管理」です。チーム全体が継続的に成果を出せるようなルール(目標達成に向けた行動基準やKPI)を定め、そのルール通りに組織が機能しているかを客観的に管理することが、最も重要な責務となります。

役割を明確に区切る

マネージャーが「ルールの決定と管理」という本来の業務を全うしつつ、プレイヤーとしてのプレイングも両立させるには、具体的にどう立ち回ればよいのでしょうか。プレイングとマネジメントの時間を適切に分け、組織全体の成果を最大化するためのポイントは大きく分けて以下の3つです。

  • 責任範囲を明確に定義し、介入しない
  • 責任と権限を完全に一致させる
  • プレイヤーとマネージャーの境界線を守る

それぞれ具体的に解説します。

  • 1. 責任範囲を明確に定義し、介入しない

組織において、マネージャーには意思決定・指揮命令者としての責任が、メンバーには与えられた実働者としての責任があります。プレイングとマネジメントを両立する第一歩は、この責任範囲を明確に区切ることです。

もし責任範囲が不明確だと、マネージャーが部下の現場に容易に介入できるようになり、範囲が重複した部分に「そこは自分の担当ではない」「最後は上司がやってくれる」という部下の言い訳が生まれてしまいます。また、一度「部下の責任」として定めた責任範囲に対して、マネージャーがプレイングの延長で介入してしまうと、やはり部下の当事者意識を削いでしまいます。マネージャー自身が自分のプレイングや管理業務に集中する時間を確保するためにも、「一度決めた部下の責任範囲には原則介入しない(変更しない)」ことが重要です。

  • 2. 責任と権限を完全に一致させる

部下の責任範囲を定めたら、同時にその責任を果たすための「権限」を与える必要があります。ここで最も重要なのは、「責任の大きさ=権限の大きさ」となるように完全に一致させることです。

もし「責任>権限」となってしまった場合、部下は「自分には決裁権などの権限が不足しているから達成できなくても仕方ない」など、言い訳出来る領域を生んでしまいます。逆に「責任<権限」となってしまった場合、「責任を負わずに権限を行使できる領域」が生まれます。責任を負わない領域にまで部下が介入できてしまう仕組みは、部下が本来果たすべき役割に集中できない環境を作り出してしまいます。部下が自身の責任範囲において自走する状態を作るには、過不足なく明確に権限を移譲することが重要です。

  • 3. プレイヤーとマネージャーの境界線を守る

プレイングマネージャーの場合、プレイヤーとしての「自分個人に割り当てられた目標を達成する責任」と、マネージャーとしての「メンバーに目標を達成させ、チーム全体の目標を達成する責任」が入り混じってしまうことがよく起こります。管理とプレイングを両立するとは、この二つを混同しないということです。

チームの最終成績に責任を持つ立場として、部下の数字が足りなければ自らのプレイングで不足を埋めなければならない局面もあるでしょう。しかし、マネージャーがカバーしたことによって、部下が「自らの未達成が許された」という錯覚を起こさないようにしなければなりません。

結果を出すためのプロセスは、与えた権限の範囲内においては、部下自身の責任と裁量で実行させ、マネージャーは最終結果に対して評価を行います。マネージャー自身がプレイヤーとしての成果とマネジメントの成果を切り分けて認識し、この境界線をはっきりと引くことで、初めてメンバーに「自分で自分の目標を達成しなければならない」という強い当事者意識が芽生えるのです。

個人の基準と役割を切り離す

人はそれぞれ、過去の経験や知識に基づく独自の「物差し(判断基準)」を持っています。これは事実とは無関係に個人の認識に依存するため、マネージャーとメンバー間では時としてズレが生じます。

ここで多く見受けられるのは、マネージャーが「組織の役割」と「個人の物差し」を混同してしまうケースです。組織の上下関係は本来「役割」によってのみ決まるにもかかわらず、「営業経験やスキルでも部下に勝っていなければならない」と錯覚してしまうのです。上司だからと部下と同じ土俵で競い始めると、無意識に自分の経験則を押し付けたり、部下の成長を素直に喜べなくなったりします。「背中で見せて引っ張る」ことにこだわるのも、この錯覚が一因です。

リーダーがやるべき基本的なことは、曖昧な「個人の物差し」で部下を測ったり競ったりすることではありません。誰が見ても解釈がブレない事実ベースの「組織の物差し(明確なルール)」を決定し、全員がそれに合わせられるように管理することです。属人的な物差しを捨て、組織共通の強固な物差しでマネジメントする仕組みへと移行することで、マネジメントの再現性が高まります。

再現性を作るための処方箋

では、具体的にどのように組織を再設計し、マネジメントがより機能する状態を作ればよいのでしょうか。以下のステップで進めることが効果的です。

  • 「管理職」は「管理」をするのが大前提であると認識を合わせる
  • チーム内で明確な責任範囲を設定する
  • 個人の「物差し」と組織の役割を切り離して考える
  • 1. 「管理職」は「管理」をするのが大前提であると認識を合わせる

第一の処方箋は、マネージャー自身が「自分の本来の役割はルールの決定と管理である」という前提を強く再認識することです。プレイングマネージャーとして自ら数字を作ることも時には必要ですが、それはいかなる時も「マネジメント機能が果たされていること」が大前提となります。個人の売上でチームの未達を補填して満足するのではなく、管理職本来の役割に立ち返ることが、組織再設計の第一歩になります。

  • 2. チーム内で明確な責任範囲を設定する

第二に、マネージャーとメンバー間で、期限と状態を誰が見ても一致して判断できる形で目標を設定します(完全結果)。そして、その責任を果たすための「権限」を過不足なく移譲します。一度設定した責任範囲にはマネージャーは安易にプレイングの延長で介入せず、結果に対する評価と次の指示に徹することで、メンバーに「自分の目標は自分で達成しなければならない」という当事者意識を持たせます。

  • 3. 個人の「物差し」と組織の役割を切り離して考える

第三に、マネージャー個人の経験やスキルといった独自の「物差し」で部下を測ったり、同じ土俵で張り合ったりするのをやめることです。組織内の上下関係はあくまで「役割の違い」によってのみ決まります。属人的な物差しを捨て、誰もが同じ解釈となる客観的な事実や明確なルール(組織全体の物差し)を機能させ、個人が組織の基準に合わせやすい環境を整えることが、再現性のある組織作りへとつながります。

これらを通じて組織の構造を見直すことで、特定のトップセールスの個の力に依存した組織からステップアップできます。役割と明確なルールに基づき、誰でも継続的に成果を出し続けることができる「再現性のある営業組織」へと生まれ変わるため、本記事がその第一歩のヒントになれば幸いです。

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