部下の育成に際し、わからないことを何でも細かく教えてはいませんか。 よかれと思って並走し、手取り足取り指導することは、実は部下の成長機会を奪い、組織の生産性を下げる要因となります 。 本記事では、識学の理論に基づき、なぜ細かく教えることがNGなのか、そして、どのように「考えさせる」ことが部下の真の成長に繋がるのかを解説します。 この記事を読めば、部下が自走し、成果を出し続ける組織へと変革させる具体的なマネジメント手法がわかります。
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目次
良かれと思った「並走」が、部下の思考を停止させる理由
私自身、外資系企業で管理職を務めていた頃は、部下に寄り添い、困っていることがあればすぐにアドバイスを送ることが最善のマネジメントだと信じて疑いませんでした。しかし、識学を学んだ今、その「良かれと思った親切」が、いかに組織に害を及ぼしていたかを痛感しています。
部下が業務を進める過程(経過)に対して、上司が細かく口出しをすることを、識学では経過に介入すると言います。例えば、資料作成の途中で「この表の書き方はこうしなさい」「この文章はこの順番に直して」と頻繁に指示を出す行為がこれに該当します。
経過に介入することの最大の弊害は、部下に免責の材料を与えてしまうことです。上司が細かく指示を出せば出すほど、部下は結果が出なかった際に「上司の言われた通りにやったのにダメでした」と、上司のせいにして言い訳をするようになります。これを免責と言います。
さらに、待っていれば上司が答えを教えてくれるという環境に慣れた部下は、次第に自分で考えなくなり、指示待ち人間になってしまいます。本来、管理者は誰よりも遠くを見る役割を担うべきですが、部下の経過につきっきりになることでマネジメントコストが膨大になり、組織の拡大を阻害するのです。
成長の定義を再確認し、経過ではなく結果で管理する
部下を成長させるためには、まず成長の定義を正しく理解する必要があります。識学における成長とは、出来なかったことが出来るようになることです。
成長を促すためには、経過(やり方)を管理するのではなく、結果で管理しなければなりません。結果とは、期限を迎えた時の事実を指します。
多くの部下は、自分の努力や頑張りといった経過を評価してほしがります。しかし、頑張りや一生懸命さといった経過は、個人的な見解や感情に基づく主観に過ぎません。経過を評価対象にすると、部下は「良い結果を出すこと」よりも「上司に良い経過を見せること」に集中し始め、経過のアピール大会が始まってしまいます。
組織は、市場から結果によってのみ評価されます。市場はどれほど頑張ったかという経過を評価することはありません。組織の個人も同様に、事実である結果で評価されることが、公平かつ平等な評価に繋がり、部下の不足を明確にする唯一の方法なのです。

考えさせる環境を作る「結果点」の打ち方と、教育の役割
では、部下に考えさせ、自律的に動けるようにするためにはどうすればよいのでしょうか。その鍵となるのが結果点の設定です。
部下の能力では最終ゴールに到達することが難しいと判断した場合、その手前に部下が迷わないための通過点、すなわち結果点を設定します。この結果点をどのような間隔で、どのような内容で設定するかが上司の采配となります。
結果点は、期間と工程を組み合わせて設定します。例えば、1年の売上目標に対し、1週間単位の期間で区切ったり、コール数やアポ数といった工程ごとに数値を設定したりします。
ここで重要なのは、結果点を設定したら、その結果点までの間にある経過には一切口を出さず、部下を一人で走らせることです。経過に付き合わないことが、部下の思考を促し、成長を加速させます。
ただし、何も教えないわけではありません。育成には教育と管理の2軸があります。教育とは知識のインストールであり、市場で戦うために最低限必要なルールやマニュアル、商品知識などはしっかりと教えなければなりません。教育によって正しいインプットを行った後に、管理(結果の完了)というプロセスで経験を積ませ、思考を変化させていくのです。
「結果の完了」を繰り返し、部下の自責意識を醸成する
部下を真に成長させるための具体的なプロセスが結果の完了です。これは、部下がゴールを迎え、次のスタートを切るまでに行う上司とのコミュニケーション(フィードバック面談)を指します。
結果の完了は、以下の4ステップで回します。
- 結果の明確化:期限と状態を数値等で定める。
- 不足の明確化:期限時に目標に届かなかった事実を確認する。
- 行動変化の決定:不足を埋めるための具体的な改善策を部下に考えさせる。
- 次の約束:次の目標(結果)をコミットさせる。
このプロセスにおいて、特に部下にとって難しいのが不足の明確化です。部下が自分だけで「結果の完了」を行うことは難しい場合もあるため、上司が管理してあげる必要があります。
未達の理由を聞いた際、部下から「時間が足りなかった」「市場が悪かった」といった他責の言い訳が出ることもあるでしょう。この時、上司が「しょうがないね」と寄り添ってしまうと、部下の他責意識を肯定し、成長機会を奪うことになります。
上司がすべきことは、言い訳を排除し、自責(自分の責任)として捉えさせることです。言い訳と課題認識の違いは、次の結果とそのための行動変化を約束できるかどうかにあります。未来の約束をさせることで、部下の視点を過去の言い訳から未来の解決へとスライドさせるのです。
リーダーに必要な覚悟と時感覚、組織の進行感を高める
マネジメントを機能させるためには、リーダーが役割に応じた正しい位置に立たなければなりません。リーダーの仕事は、一言で言えば決断することです。
間違えたらどうしようと不安になり、決断を先延ばしにするリーダーは組織にロスタイムを生みます。リーダーは間違えても構いません。事実に即して迅速に決断し、もし間違っていたのであれば速やかに修正すればよいのです。
また、リーダーには誰よりも鋭い時感覚が求められます。組織のスピードはリーダーの時感覚以上に上がることはありません。時間を短縮することは莫大な価値を生むことを認識し、部下に対しても常に早い期限設定を求めるべきです。
組織のエネルギーを高めるためには、スピードを先に高める必要があります。物理学の公式 エネルギー=質量×(速度)²にある通り、速度(スピード)を上げることが、エネルギー拡大に最も効率的だからです。
さらに、組織全体が同じ目標に向かって進んでいるという進行感を示すことが、従業員のエネルギーの源泉となります。社長が明確なビジョンを掲げ、そこに向かうための目標を各階層に設定し、結果の完了を回し続けることで、組織は迷いなく突き進むことができるようになります。
【記事のまとめ】
部下の真の成長は、上司が答えを教えることではなく、明確な結果(数値目標)を与え、その達成に向けたやり方を部下自身に考えさせる環境の中でこそ生まれます。
管理者は、経過への介入という誘惑を断ち切り、事実である結果に基づいた評価と管理に徹しなければなりません。教育によって必要な知識を授けた後は、結果点を打って部下を一人で走らせ、結果の完了によって不足を認識させ、次の行動変化を約束させる。このサイクルを愚直に繰り返すことが、自走する組織を作る唯一の道です。
今日から、部下へのアドバイスを止め、「で、どうするの?」と問いかけることから始めてみてください。それが、部下を信じ、真の成長へと導くリーダーの第一歩となります。
プロフィール
仲子 健吾
大学卒業後、たばこ業界、家電業界など複数の外資系企業にて営業職としてキャリアをスタートし、その後は管理職として組織マネジメントにも携わり、営業現場での成果創出から、チームの目標管理・人材育成まで幅広い経験を積む。
また、これまでのキャリアの中で2度の会社解散(事業撤退)を経験しており、組織環境が大きく変化する中での意思決定やキャリア選択にも向き合ってきた。
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