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識学の『尺度』とは?組織の錯覚をなくすマネジメントへの活用法

「尺度」という言葉を聞くと、多くの方は「評価の基準」や「段階的な物差し」を思い浮かべるでしょう。識学においても、この一般的な定義(物事を測る基準)をそのままベースとして扱います。ただし、識学理論において特徴的なのは、尺度をまったく別の意味にすり替えるのではなく、その捉え方を正しく認識する点にあります。尺度の捉え方を正しく認識しなければ、組織内に認識のズレが生まれ、正当な評価や成果へのコミットが難しくなってしまうからです。本記事では、識学が尺度をどのように捉えているのか、そして組織に蔓延する「錯覚」の原因とそれを減らすマネジメントへの活用法を解説します。

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識学が定義する「尺度」の基本概念

他者と対話するとき、会話のテーマに応じて、双方の間には必ず意識上の位置関係が存在します。識学では、意識上の位置関係を決定する要素を「尺度」と呼んでいます。「尺度」はその個人が過去に積み重ねてきた「経験」や「知識」によって形成されます。

ここで、最も注意しなければならないのは、尺度は客観的なデータや実際の役職とは無関係に、あくまで「個人の意識上に主観として存在するもの」であるという点です。事実がどうであるかではなく、本人が頭の中でどう認識しているかによって、尺度の大きさが決まります。そのため、対話をする双方の間で尺度の大きさに「認識のズレ」が発生しやすいという決定的な性質があります。この尺度に伴うズレを認識せずに、マネジメントを行うと、組織内で認識のギャップが生じやすく、本来のパフォーマンスを発揮しづらくなる可能性があります。


「個人尺度」と「組織尺度」の決定的な違い

識学では、尺度をさらに「個人尺度」と「組織尺度」という2つの種類に分類して考えます。

  • 個人尺度:一人ひとりの価値観、思想、過去の個人的な経験や知識に基づく主観的な物差し。「私はこう思う」という、個人の内面に根ざした基準です。
  • 組織尺度:企業や組織における、ありとあらゆる運営のルール(規律、規範、申し合わせ事項、業務プロセスなど)。これは明文化されている就業規則だけでなく、組織内で暗黙の了解となっているマナーや行動様式も含みます。

前提として、組織という集団のメンバーである以上、すべての社員が「組織尺度」に合わせることが求められます。なぜなら、組織やマネジメント側が社員それぞれの「個人尺度」に合わせようとすると、「彼はこういう価値観だから、このルールは免除しよう」といった「個人調整」が発生し、マネジメント側の負担を増大させてしまうからです。

役職と尺度の混同が引き起こす組織の錯覚

識学の組織マネジメントにおける基本原則の一つに、「組織内における位置関係(上下関係)は、組織における役割(役職・職位)によってのみ決定する」というものがあります。社長、部長、課長、一般社員という縦の位置関係は、与えられた「役割」によって定義されているのであり、個人の能力や人間性の優劣で決まるものではありません。したがって、特定のテーマに関する「尺度の大きさ」は、組織の縦の位置(役職)とは本来、一切無関係であるにもかかわらず、役職と尺度を混同してしまうと、組織内に深刻な「錯覚」が生まれることになります。

管理される立場(部下)が陥る錯覚
例えば、特定の専門技術において、若手部下がベテラン上司よりも圧倒的な知識や経験(尺度)を持っているケースです。この場合、部下は「上司は何も分かっていない」と認識し、組織における本来の上下関係を誤認しやすくなり、指示への疑問や独断での行動が生まれやすくなります。その結果、将来的に市場の変化などで組織が方針を転換する局面を迎えた際、新しい方向性へ柔軟にシフトできなくなるリスクにつながります。

管理者(上司)が陥る錯覚
上司は管理者の役割を与えられているにもかかわらず、「部下に対して、すべてのテーマの尺度で勝っていなければならない」と勘違いしてしまうケースも見られます。上司の本来の役割は、あくまで『チームを勝たせること』にあります。そのため、部下との間に尺度の違いを気にする必要はありません。それにもかかわらず、部下と同じ土俵(テーマの尺度)で勝つことに執着してしまうと、自らの管理職としての機能がおろそかになってしまう可能性があります。

成果を最大化する「尺度」の活用法

この識学における「尺度」の概念を正しく理解し、社内から主観的な錯覚をなくすために、以下の2つのアプローチを通じて、尺度をコントロールし、組織の成果を最大化させていきましょう。

  1. 1. 「役割定義」の徹底による、役職と尺度の完全な切り離し
    まずは、各役職の「役割」「責任」「権限」を明確に定義し、特定の業務知識(尺度)の有無が組織の位置関係に影響しないことを全社に周知します。
    上司には「すべての分野で部下より優れている必要はなく、部下の結果を管理・評価することが役割であること」を明確にします。同時に、部下には「特定のテーマで上司より尺度が大きかったとしても、上司の指示に従う必要がある」と認識させます。この役割の切り分けが明確になることで、各自が自分の役割において最大の成果を出すことに集中できるようになります。
  2. 2. 「組織のルール」を組織尺度として明文化する
    個人が組織尺度に合わせる上で見落としてはならないのが、「組織尺度の中には明文化されていないものも多い」という事実です。明文化されていない暗黙のルールが多い組織では、社員は何に自分の尺度を合わせればよいのか迷いが生じやすくなります。 したがって、組織尺度を明確に言語化して共有し、社員が迷うことなく判断できる環境を整えることが、手探りによる個別調整のロスを減らすための確実なアプローチとなります。

本記事のまとめ

尺度のズレを仕組みで防ぐことで、組織は無駄な管理ロスをなくし、本来の成果に集中できるようになります。そのため、組織を成長させるために取り組むべきことは、「役職(役割)」と「尺度(知識・経験)」を完全に切り離すこと、そして「組織尺度(ルール)」を徹底的に言語化・明文化して、従業員に守らせることです。
社員個人の主観によるズレ(錯覚)を排除し、全員が同じ「組織のルール」という共通の尺度で動く環境を整えることこそが、無駄な管理ロスをなくし、成長するための強固な土台となるのです。

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