2019/12/25

企業コンプライアンスはわかりにくい? 実際の違反判例からリアルに学ぼう!

民間企業の間でも、法律やガイドラインなどを遵守し収益性と秩序維持の両立を図っていくべきだと、コンプライアンスの重要性がますます高まっています。
中でも、裁判になるほど重大な違反を犯してしまうことは、それから先の企業活動の運命をも左右します。

そこで、どれほどの違反をすれば裁判で厳しい判断が下されるのか。過去の具体的な判例を検討しながら、違法と適法のボーダーラインや、コンプライアンスの大切さを再認識して下さい。

 

コンプライアンス違反で有罪判決を受ける会社への影響

 

企業が法令を守れず、摘発されて裁判にまで至ると、どのような不利益が生じるのでしょうか。主な例として、ここでは4つ挙げます。

・【影響1】罰金や損害賠償命令による経済的損失
刑事事件として立件され、会社などの法人に罰金刑が科される場合、数百万円~数億円のオーダーになることもあります。また、民事事件として提訴され、裁判所による損害賠償命令が確定した場合も、やはり同様の額になります。企業の規模によっては、経営を揺るがすほどの致命傷になりかねません。

・【影響2】レピュテーションリスク
日本では「裁判沙汰」という言葉があるほど、裁判という言葉のイメージはよくありません。まだ判決で正式に結論が出ていなくても、「あの会社、訴えられてるらしいよ」という評判が出回るだけで、客離れや売上げの低下に繋がるおそれがあります。

・【影響3】許認可の取消し
建設業・不動産業・旅行業・人材派遣業など、当局からの許認可を得なければならない事業の場合、裁判で有罪判決を受けるなど、コンプライアンス遵守に重大な支障があったと認められれば、許認可が取り消され、営業停止に追い込まれる危険性もあります。

・【影響4】優秀な社員が離れていく
優秀な社員も、会社が大切に扱っていたり、経営者が信頼され慕われたりしていれば、裁判沙汰ぐらいでは離れていきません。しかし、そうでない場合は転職の格好の理由・口実を与えることになりかねません。

以上の通り、コンプライアンス違反による悪影響は広範囲に及びますので、違反は未然に防がなければなりません。

では、続いてコンプライアンス違反に問われた企業の、過去の裁判例について具体的に検討していきましょう。

なお、背任・業務上横領・汚職・株式の不正取引・脱税など、誰の目にも明らかな企業犯罪については、このページでは改めて取り上げません。時代の流れにおいて、ますます気をつけるべきコンプライアンス違反について検討します。

 

営業秘密コンプライアンス(不正競争防止法違反)

 

企業が、自社製品の開発などを経て得た営業秘密は、他社へ漏れないことで、独占的な利益を維持することができます。ときには特許などで権利収入を得ることもできます。
そのため、ある会社の営業秘密を無断で他社に漏らす行為は、健全な経済活動の発展を阻害させかねませんので、厳しく処罰されます。

たとえば、大手企業のT社が自社製品の開発で独占していた営業秘密がありました。これを知り得る立場にあった元技術者はその機密事項を他国企業に漏洩させます。
東京高裁はこの元技術者に、懲役5年・罰金300万円、そして営業秘密データを記録した媒体の没収を命じる実刑判決を言い渡しました。[1]
もちろん、この件でもっとも悪質なのは元技術者ですが、そのような不祥事を誘発したT社の機密管理態勢も厳しく問われています。

 

個人情報保護コンプライアンス

 

M社のシステム開発を担当していた従業員がサーバーに不正アクセスし、同社の顧客情報(個人情報)約270万人分をCD-R2枚に保存し、情報取引会社(名簿屋)へ約4400万円で売却するという事件がありました。
この点で東京高等裁判所は、M社の社会的評価を不当に失墜させたとして、元従業員に懲役2年の実刑判決を言い渡しました。[2]
この元従業員がM社のオフィスから物理的に盗んだのはCD-R2枚のみに過ぎません。時価100円相当でしたが、裁判所は名簿屋が個人情報買い取りの見積もりを出した4400万円余りを、M社の被害額として算定しています。それだけ、個人方法管理の重要性は高まっているのです。
ただし、M社にとっては「身から出た錆」ともいえる事件です。自社の従業員を信じながらも一方で疑い、社内のコンプライアンス遵守を改めて徹底するいい機会になったことでしょう。こうした事件が散見されることから、入社時の面接などを通じた人物確認の重要性も見直されつつあります。

また、ある法人Cがサーバーで管理する個人情報が、外部者の不正アクセスによって流出する事件が起きました。その不正アクセス者は、とあるインターネットセキュリティイベントで、法人Cのサイトの欠陥を指摘し、しかも盗み出した個人情報を誰でもダウンロード可能な状態にしていました。
東京地方裁判所はこの不正アクセス者について、懲役8か月(執行猶予3年)を言い渡しています。[2]

不正アクセス禁止法は、コンピュータやインターネットの発展する時代に追いつき、適切な規制の網を掛けるべく、西暦2000年に施行されました。形のない「無体物」である情報を盗む行為を、窃盗や横領に問うことはできませんが、不正アクセス禁止法の制定によって、法規制の隙間が埋まった形です。

 

労働環境コンプライアンス

 

「働き方改革」の一環で、各企業は自社従業員をより大切に扱い、その権利や待遇を可能な限りで尊重し、安全で働きやすい環境を常に整備しておく義務を負うようになりました。この労働環境コンプライアンスは、自社内の問題なので「多少いい加減なことをやっても、外部には漏れないだろう」と思いがちです。
しかし、誰もが写真や動画を世界中にばらまけるSNSの出現により、そのように悠長なことを言っていられなくなりました。

K社事件[3]
チェーン店の店長が、200日以上にわたって休みのない連続の長時間労働を課されて、低酸素脳症に陥ったという事例です。2010年に裁判所は、会社から店長に対して約2億円の支払いと、未払い残業代700万円余りの支払いを命じました。その直後、会社は裁判外にて2億4000万円の支払いで和解に至っています。じつは、過労死のケースよりも、過労によって深刻な障害を抱えて生き続けた場合のほうが、賠償額が高額にのぼる傾向があります。

G社事件[4]
長時間労働が常態化していた管理職の従業員がいたのですが、G社ではタイムカードなどで正確な労働時間を客観的に記録するしくみがありませんでした。しかし、働き過ぎを心配していた妻は、夫の帰宅時間をノートに記録していました。もちろん、完璧に正確な時間を記録しているわけではありませんが、タイムカードすら導入していなかった会社の落ち度のほうが大きいと裁判所は認定しています。
妻のノートの記録によれば、夫は月に60~80時間程度の残業をしていたと推認されることから、2005年の東京高等裁判所は、会社に対して、未払い残業・休日深夜出勤代272万円と、付加金230万円の支払いを命じています。
夫の帰宅時間をつけていた妻のノートの記録も、裁判の有力な証拠になりうるという重要判例です。

 

まとめ

 

企業が社会的な存在として大きくなるにつれて、社会からの要求も重たくなります。コンプライアンスも同様で、成長した企業が具体的な力を持つにつれて、世間からの目も厳しくなるのです。
会社がまだ成長途中の段階から、コンプライアンスを意識しておくことが重要です。コンプライアンスは、会社の運営を阻む面倒な邪魔者ではありません。むしろ今後の社会では、顧客や取引先から安心され、支持され、応援してもらうための重要な一要素となります。

【識学からのお知らせ】
リーダーシップが育つロジカルなマネジメント手法を学んでみませんか?
<ご訪問 or Web会議で体験できます>
1500以上の企業が受講した「識学マスタートレーニング」を無料で体験しませんか?
今、お申込みいただくと『伸びる会社は「これ」をやらない!』書籍をプレゼント

識学マスタートレーニングとは、「部下が育たない」「組織が思ったように成長しない」「離職率が高く人材不足」など、 問題に直面している管理職の方へ「学びながら実践」いただき、組織内の問題を解決していくものです。
平均して3ヶ月ほどで「売上向上」「離職率の低減」など目に見える成果が上がっています。


お申込み・詳細は こちらお申し込みページをご覧ください

参照
[1]ジュリスト増刊『実務に効く企業犯罪とコンプライアンス判例精選』(有斐閣)p.206
 T社(東芝NAND型フラッシュメモリ)事件 東京高裁2015年9月4日判決
[2]ジュリスト増刊『実務に効く企業犯罪とコンプライアンス判例精選』(有斐閣)p.215
 M社(三菱UFJ証券)従業員顧客情報売却事件 東京高裁2010年3月9日判決
 C法人(コンピュータソフトウェア著作権協会)事件 東京地裁2005年3月25日判決
[3]K社事件 (全基連)
 https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/08793.html

[4]G社事件 (全基連)
 https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/08456.html