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PM理論でリーダーを育成する企業は伸びる『事例紹介』

企業の規模が大きくなればなるほど、経営者は優秀なリーダーを必要とします。組織の規模に見合った数のリーダーがいないと、巨大組織を同じ方向に進めることができないからです。
しかし経営者が望むようなリーダーシップを発揮できるリーダーは少ないのが実情です。
そこで企業はリーダーの育成に力を入れるわけですが、
リーダー育成事業の指針の一つになるのがPM理論です。

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そもそもPM理論とは

PM理論は、元九州大学教授で社会心理学者の故・三隅二不二(みすみ・じゅうじ)氏が提唱したリーダーシップ理論で、世界的に知られています[1]。

PとMはそれぞれ、Performance function「目標達成機能」、Maintenance function「集団維持機能」という意味しています。

例えば、P型リーダーは、目標を達成する能力を持ち、チームメンバーに指示を出したりメンバーを管理したりすることが得意です。ときにメンバーたちを叱咤激励します。

M型リーダーは、チームワークを重視して、メンバー間の人間関係を維持し、リーダーとメンバーの信頼関係の醸成に努めます。メンバーを明るい気持ちにさせます。

 

Pは成果主義、Mはチーム主義

ただ、P型リーダーにもM型リーダーにも弱みがあります。

P型リーダーはチームメンバーに目標や成果を求めるあまり、チーム内に不協和音を生じさせる危険があり、チーム分裂のリスクもあります。
一方M型リーダーはチームの輪を貴ぶため成果をおろそかにすることもあります。

そこでPM理論では、PとM両方の強みを有し、なおかつPとM両方の弱みを排したPM型リーダーを理想のリーダーと位置づけています。

さらに、Pの強みがないリーダーを小文字のp型リーダーとし、Mの強みがないリーダーを小文字のm型リーダーとしています。

上記の内容をまとめると以下のようになります。

・PM型リーダー(理想形):成果を上げながらチームをまとめる力がある
・Pm型リーダー:成果を上げることはできるがチームをまとめられない
・pM型リーダー:チームをまとめられるが成果を上げられない
・pm型リーダー:成果を上げる力もチームをまとめる能力もない

 

PM理論の「リーダーの欠点から逃げない」姿勢が大切

PM理論の優れている点は、リーダーの能力を、成果主義とチーム主義の2つの視点で分析したことだけではありません。
小文字のpとmを使い、いずれかの能力が欠けると企業に損失をもたらすことを明確にしたところも、ユニークだと言えます。

例えば業績不振だった企業がPm型リーダーを急激に増やすと、一時的に業績は上向くものの、次第に売上が落ちることが予想できます。

一方、pM型リーダーばかりの企業は、パワハラや長時間労働がないよい組織になりますが、企業の本分である業績が上がらないでしょう。

PM理論は「企業はリーダーの欠点から逃げてはいけない」ということも示唆しています。

 

欠点に向き合い欠点を改善して理想のリーダーを目指す

企業の経営者のなかには、パフォーマンスが高いリーダーに欠点があることをみつけても、そのリーダーのモチベーションが落ちることを懸念して、あえて欠点を指摘しないようにしている人もいるでしょう。

しかしPM理論は、欠点を改善して理想のPM型リーダーを目指そうと提唱しています[1]。
経営陣とリーダー本人が協力して、リーダーの欠点に向き合うことができれば、理想のリーダーを育成でき、企業は成長と安定を手に入れることができるのです。

リーダーにとっては試練ですが、PM型リーダーに成長できるチャンスでもあります。

企業がPM理論のこの考え方を応用すれば、急成長期、低成長期、安定気、成熟期、ピンチ期のそれぞれのフェーズ(局面)で必要とされるリーダー[2]を適宜養成することができます。

 

pM型リーダーが多かった日立は「P強化」でグローバル化に成功

日立製作所はいわずと知れた世界的な総合電機・インフラ企業です。売上高は連結で10兆円を超え、従業員数は単体で約4万人、連結で約34万人に達します(2016年3月)。

 

日立にはリーダーを養成する子会社HIMDがある

これだけの巨大組織ですので、リーダーシップを育成する部門がひとつの会社になっています。それが、株式会社日立総合経営研修所(HIMD)です。

日立はグローバル企業になることを目指し、実際そのとおりに進んでいます。海外売上比率は2012年度の41%から2015年度には48%となり、2018年度は55%超を目標にしています。
そこでHIMDでも2011年から「グローバル人財プロジェクト」を立ち上げて、世界に通用するリーダーの育成に取り組み始めました。

 

優秀な日立社員の弱みは行動に移すことだった

HIMDは、外部のコンサルタント、大学教授、その他有識者などに、日立社員の強みと弱みを聞いて回りました。その結果は、おおよそ次のことがわかりました。

<日立社員の強み>
・スマート・まじめ・バランス感覚に優れる・課題理解力が高い・課題解決力が高い・人間関係で動く

<日立社員の弱み>
・タスクオリエンテッド(方向づけられている)・ビジョンがない・課題設定力が低い・保守的・安定と調和志向・リスクを取らない・困難にチャレンジしない・海外で修羅場を経験していない・業績を重視した動きをしない

この調査結果からHIMDは、日立の現状を「日立の社員はグローバルに活躍する素養を持ちながら、行動につながっていない」と分析しました。

 

まさにPM型リーダーに成長させるプログラム内容

その結果2015年に生まれたのが、新たな社内研修コンセプト「志」でした。グローバル人財プロジェクトのリニューアル版です。
「志」研修では、次の3項目に焦点を当ててリーダー候補者たちを鍛えていくことになりました。

A:使命感と目的意識:日立バリュー、内省による価値観の確認と統合、個人の目的意識、志
B:組織と人を鼓舞する:影響力の行使
C:リーダーシップ強化:戦略づくり、多様性のマネジメント、意思決定

HIMDは各種研修を通じて、次代の日立を担うリーダー候補者にABCを身につけさせるのです。

BはPM理論のPに、CはMにそれぞれ該当します。

よって、例えばBが足りていないpM型リーダー候補者は、研修によってBが身につき、PM型リーダーになることができるわけです。

HIMDが取り組んできた、グローバルに活躍できるリーダーを育成する事業は、日立に大きな成果をもたらしました。詳しくみていきましょう。

 

日立はイギリスで鉄道を走らせた

2017年10月、イギリスのロンドンと南西部を結ぶ都市間高速鉄道に、日立製の鉄道車両「クラス800」が導入されました[4]。この事業は今後28年間続き、総事業費は1兆円に達します。

イギリスを走る鉄道車両は、日本で基幹部分をつくり、それをイギリス国内の工場に持ち込み組み立てて完成させます。

日本の鉄道技術の高さを知っている人であれば、日立の鉄道車両がイギリスを走ったからといって「鉄道大国ニッポンの技術を輸出しただけ」と映るかもしれません。

しかしそれほど簡単なことではありません。実は日立がイギリスの鉄道事業に取り組み始めたのは1999年のことなのです。日本品質はすぐに認められたものの、日本人社員による営業活動は難航しました。

そこでフランスの鉄道会社から幹部をスカウトしたり、2012年のロンドン五輪で実証実験を行い定時運行の実績を残したりして、ようやく20年かけて「大動脈」での営業運転にこぎつけたのです。

まさに、日立自体がグルーバル企業として成長しながら勝ち取った大型プロジェクトといえます。

 

日立はイギリスで原発もつくる

日立のグローバル事業では、原子力発電所の輸出という、大きな成果もあります。

2018年6月、日立とイギリス政府は、原発の建設計画に関する覚書を結びました[5]。これで日立は、2020年代前半の原発稼働を目指し動き始めることができます。

日本の原発事業は最近、東日本大震災による福島第一原子力発電所事故や、東芝による米ウェスチングハウス社買収の失敗[6]など、暗いニュースばかりでした。
では日立のイギリスでの原発事業は大丈夫なのでしょうか。もちろん100%成功する保証はありませんが、しかしマーケットは、日立の慎重かつ大胆な交渉に安心感を持っているようです。少なくとも危機感は持っていないことは明白です。

日本経済新聞は2018年4月29日、「日立、英政府と原発巡り最終協議へ 撤退も視野」という記事を掲載しました[7]。

日立の中西宏明会長とイギリスのメイ首相との交渉が決裂すれば、日立はイギリス原発事業から撤退するかもしれないという観測記事ですが、市場は好意的に受け止め、日立の株価は4月27日の801円から、次の営業日の5月1日には850円へと高騰しています。

また日経は2018年6月5日に「日立、英原発の推進で覚書 英政府と基本合意」という記事を掲載しました[5]が、この報道前後の日立の株価は6月4日801円、6月5日797円、6月6日822円という値動きでした。
ここでも市場は日立の取り組みに関し、少なくとも嫌気はしていません。

マーケットを安心させている「日立の慎重かつ大胆な交渉」とは、次のような内容です[5]。
・日立中西会長とメイ英首相が会談し、総事業費3兆円のうちイギリス政府が2兆円超の融資を全額負担することを決めた
・原発開発会社への出資金9千億円は、「日立」「日本政府とイギリス政府」「その他の企業連合」で3千億円ずつ負担する
・原発新設が計画通り進まなかったときに損失が発生したら、「日立」「日本政府とイギリス政府」「その他の企業連合」がそれぞれ1,500億円ずつ拠出する
・日立は2019年に原発を新設するかどうか最終決定する

日立のリスクがかなり軽減できていることがわかると思います。また、イギリス政府にここまで譲歩させておいて、まだ最終決定を保留するしたたかさも垣間見えます。

 

まとめ~全方向に強いリーダーがいる企業は成長する

PM理論によるリーダー育成は、リーダー候補者が全方向に強いリーダーシップを身につける内容といえるでしょう。しかし1人のリーダーが、ぐいぐい業績を上げる資質と社内の協調を図る資質の両方を備えることは簡単ではありません。それで従来の企業には、Pm型リーダーかpM型リーダーが多かったわけです。

しかし日立は「それでは世界で闘えない」と考え、PM型リーダーの育成に取りかかりました。そして「やればできる」の言葉とおり、グローバルに戦える社員が育ち、鉄道事業と原発事業という国家プロジェクトの輸出に成功しました。
PM理論によるリーダー育成は経営者にとって苦労が多い作業かもしれませんが、得られる成果は大きいものです。

 

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参照

[1]https://management-online.jp/column/detail/id=258 マネジメントオンライン リーダーシップ向上のためのPM理論とSL理論
[2]https://management-online.jp/column/detail/id=261 マネジメントオンライン リーダーシップとは?リーダーシップを発揮するために覚えておきたいこと
[3]https://www.e-sanro.net/jirei/kanbu/e1607-67.html 産労総合研究所 日立製作所(日立グループ)グループ全体でグローバルリーダー育成 経営トップと対話する選抜型研修
[4]https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00446769 日刊工業新聞 日立製の新型車両、英高速鉄道で営業運転開始
[5]https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31363070U8A600C1MM8000/ 日本経済新聞 日立、英原発の推進で覚書 英政府と基本合意
[6]https://dot.asahi.com/aera/2015072700035.html AERA 東芝を狂わせた「巨額買収」 世界に打って出た結果…
[7]https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29996700Z20C18A4MM8000/?n_cid=SPTMG002 日本経済新聞 日立、英政府と原発巡り最終協議へ 撤退も視野

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