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「モチベーション神話」はあてにならない 人材マネジメント”そのもの”に目を向けよう

何事もやる気がなければ始まりません。
そのやる気を引き出すのがモチベーション、動機づけです。

仕事にはやる気が必要だ。
そのためにはモチベーションが欠かせない。
上司は部下にモチベーションを与えるべきだ。
部下のやる気を引き出すことができれば、業績がアップする。

そう思って、日々、苦心している方もいらっしゃるかもしれません。
でも、残念ながら、それは根拠のない神話です。

 

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 データが示すモチベーションの「土台」

 

厚生労働省が公表した調査結果に以下のようなものがあります。


図1 人材マネジメント別 正社員の仕事に対するモチベーションが向上している企業が実施している雇用管理の実施割合
出典:厚生労働省(2018)[正社員の仕事に対するモチベーションの向上につながる雇用管理について」
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/18/backdata/2-3-10.html
(バックデータ:https://www.mhlw.go.jp/file/wp/hakusyo/roudou/18/backdata/xls/2-3-10.xls

図1は、正社員の仕事に対するモチベーションが向上している企業が、どのような人材マネジメントを実施しているのか、その割合を表しています。

この図では、ブルーのバーとラベンダーのバーがペアになっています。
ブルーのバーは、
内部労働市場型の企業
(=組織のメンバーが変わらず、人事は内部人材を対象に行われる、つまり、労働市場が企業内にある、従来の日本式企業)
のうち、モチベーションが向上している企業が行っている人材マネジメントの割合を表します。
一方、モチベーションが低下している企業は黒い菱形までがその割合です。

ブルーのバーのに右側にラベンダーのバーがあります。
それは、
外部労働市場型
(=外部人材の出入りがあり、人事は外部人材も対象にして行われるタイプ)
のうち、モチベーションが向上している企業が行っている人材マネジメントの割合を表します。
モチベーションが低下している企業は赤い正方形までがその割合です。

ここでは、モチベーションが向上している企業と低下している企業の割合の差が重要な意味を持ちます。
差がある事項が、モチベーションの向上に影響を与えている可能性が高いからです。

まず、ブルーの内部労働市場型の企業をみましょう。
モチベーションが向上している企業と低下している企業で実施率の差が大きい上位3位は、割合の差が大きい順に、

「労働時間の短縮や働き方の柔軟性」
「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」
「本人の希望を踏まえた配属・配置転換」

です。

次に外部労働市場型の企業を同様にみると、割合の差が」大きいのは、

「業務遂行に伴う裁量権の拡大」
「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」
「能力、成果等に見合った昇進や賃金アップ」

となっています。

以上のことから、社員のモチベーションは、例えば、
「上司が部下の憧れの存在になるよう、いいスーツを着て、いい時計をする」
などという、表面的なところからは生じないということがわかります。

モチベーションが発生する「土台」となるのは、働き方やキャリアに関わること、職場環境に関わること、評価や待遇に関わることなど、仕事の根幹をなす人材マネジメントだといっていいでしょう。
経営者や上司は、まず、これらのマネジメントを適切に行うことが大切です。

 

 モチベーションを「与える」ことはできるのか

 

モチベーションをめぐっては苦い経験があります。

 

学級崩壊発生

当時、筆者はある企業が経営する語学学校で教務主任をしていました。
教師は13名。

その中に20代半ばのOさんがいました。
まだ入社したての0さんは、キャリアは浅いものの、明るく、開けっぴろげで、ガッツもあり、教師仲間から愛される存在でした。

ところが、しばらくして筆者は、彼女が担当するクラスが学級崩壊に陥っていることを学生から知らされることになります。

発端はある学生の質問でした。
答えに窮し、立往生するOさんに、その学生は次から次へと質問を浴びせかけました。
他意はなかったと彼はいうのですが、Oさんはその学生に侮辱され、笑い者にされていると感じました。
カッとなったOさんは、手元にあったプリントを球状にまるめて、学生に投げつけました。
紙ボールがその学生の頬を掠め、彼は罵りながら教室を出ていきました。

それを境にOさんと学生たちとの関係は悪化し、学生たちは授業中にOさんの説明を聞かず、あからさまに反抗的な態度をとるようになりました。
Oさんはそれを力ずくで押さえつけようとして、暴言を吐き、学生たちのさらなる反発を招く、という悪循環。
そのうち、学生たちの多くはOさんを無視するようになり、やがて授業中に紙飛行機が飛び交うという事態にまで発展しました。

筆者が学級崩壊のことを知ったのは、ちょうどその頃のことです。
とにかく話を聞こうと2人で向かい合ったとき、何も話さないうちにOさんはわっと泣き崩れ、机に突っ伏しました。

「自分でもこのままではいけないと思ってるんです」
泣き止んだOさんは、時折しゃくりあげながら、俯いたまま話し始めました。
「でも、学生は教師を敬うべきだというビリーフがあって、どうしてもそこから逃れられないんです」
Oさんはどうやら彼女の中学生時代の教師から強い影響を受けているようでした。
その教師のあり方を決して認めているわけではなく、むしろ疑問を抱いているのにもかかわらず、気がつくと、その教師と同じような行動をとっているというのです。

彼女のビリーフはこじれている。これは思ったより厄介かもしれない。このままあのクラスを持たせていても大丈夫だろうか。さて、どうしたものか・・・。
考えあぐねていると、
「自分でも変わりたいと思ってるんです。必ず変わります。チャンスをください」
Oさんは顔を上げ、まっすぐ筆者を見て、そう言います。

信じてみようと筆者は思いました。
そこで、授業改善のための努力を約束してもらい、そのためのアドバイスをいくつかして、少し様子をみることにしました。

でも、実のところ、それしか選択肢がないというのが実情でした。
遠方からこの仕事のために引っ越してきたOさんは、学校の近くにアパートを借りていました。
その家賃を払い、生活していくためには、それだけの収入が必要です。

ところが、Oさんは非常勤講師でした。
非常勤講師は、授業1回につきその分の時給が支払われます。
社会保障に関わる費用の補助もありません。
将来的に常勤講師、つまり正社員に登用される可能性はありましたが、それも確約はされておらず、Oさんは生活がぎりぎり成り立つだけの授業数を持たされていたのです。
つまり、授業数が少しでも減れば、Oさんは忽ち生計が立たなくなる、そんな状況でした。

 

待遇改善を経営者に直談判

筆者がOさんと面談した直後、若い非常勤講師が2人、筆者のところにやってきました。
Oさんのことで話があるというのです。

「私たちもOさんと同じ立場です。同じ立場の者として言わせてください。今回のことは、この学校の労働環境と関係があるんじゃないでしょうか。
私たちは実家から通っているので、生活の心配はありません。でも、Oさんの生活はぎりぎりです。生活がぎりぎりなので、心にも余裕がないんです。そのことも影響しているのではないでしょうか」

実際、Oさんは、水道光熱費を少しでも浮かせるために、夜遅くまで学校にいて、アパートへは寝に帰るだけという日々を過ごしていました。
食事も学校の給湯室で作り、実家から時々、食料品が届いていました。

「この仕事はやりがいがあります。ですから、多少苦しいことがあっても、お給料が安くても、皆、歯をくいしばって頑張っているんです。でも、限度というものがあります」

「一番、辛いのは、これから先のキャリアが描けないことです。私たちは何を目標にしていったらいいのでしょうか。
もちろん、教師としての目標はあります。努力して少しずつ専門性を高めていきたいと思っています。
でも、専門性が高まったら、それを評価していただけるのでしょうか。それにふさわしい待遇になりますか」

それは筆者自身の思いでもありました。

非常勤講師の時給には、授業に先だって教案を作ったり、授業報告を書いたりする時間は含まれません。
また、専門性が高まり、能力が上がって、いい授業ができるようになっても、それが時給に反映されることは、まずありません。個人の「実績」が目に見えないため、評価自体が難しいという問題があります。
経験年数を評価基準にする組織もあるにはあるのですが、多くの場合、時給は安く、一律で固定的です。
賃金が低く抑えられているのは常勤講師でも同様です。
それは、この企業固有の問題というより、業界全体の問題でした。

したがって、専門性が求められる業種でありながら、生計を立てられるだけの収入を得るのは至難の業です。

こうした構造上の問題がある以上、優秀な人材がこの仕事に魅力を感じて続けたいと思っても、この企業、この業界には留まらないだろう、いや、留まりようがない、と筆者は常々考えていました。

「一度、主任から社長に話していただけませんか」

社長は、レストランやボーリング場、ゴルフ場など主にサービス業を幅広く手がける経営者でした。
たたき上げの苦労人で、親分肌。

直談判して、懐に飛び込んでいけば、思わぬ突破口がみつかるかもしれない。
見通しは厳しいけれど、当たって砕けろだ、やるだけやってみよう。
そう考えた筆者でしたが、すぐに己の甘さを思い知らされることになります。

黙って話を聞いていた社長は、
「わかった」
と一言。

案外、スムーズに交渉できそうだと思ったのも束の間。
その「わかった」には、「だがね」が続きました。

この学校がなんとか軌道に乗るまで経営的には非常に厳しかった。
それでも、役員の反対を押し切り、社長の強い意思でここまで続けてきた。
でも、まだ採算が取れているわけではない。
言いたいことはわかったが、今はまだその余裕がない。
経営状態がよくなったら、必ず改善するから、少し待て。

夏と冬の2回、社長のポケットマネーで非常勤講師にもボーナス代わりの「アイスクリーム代」と「餅代」を支給する―結局、それが唯一の成果でした。

 

「勉強会」というモチベーション

このことをきっかけに、若手教師の士気がみるみる低下するのがみて取れました。
肝心のOさんの授業運営もなかなか好転する気配がみられません。

責任を感じた筆者は、なんとか教師たちのやる気を引き出し、意識を向上させようと、勉強会を開くことにしました。

週1回、筆者が選んだ本を皆で読み合わせ、感想を述べ合うというものです。
その本は、「自己研鑽型の教師を目指す」という内容で、その分野では名著とされていました。

たとえば、
「社会とのつながりという視点から考えたとき、あなたの授業にはどのような意味があると思いますか

「あなたが学習者だったら、あなたはあなたの教師としてあなたを選びますか」
など、読者にシビアな質問をつきつけてきます。

自由参加でしたが、ふたを開けてみると、毎回、全員の教師が参加し、熱心な意見交換が行われました。
Oさんも、この本によって新しい視点が得られた、と目を輝かせています。

皆、成長したいと願っている。
やる気もある。
これなら、きっとうまくいくだろう。

ところが、結果は意外なものでした。
その勉強会の雰囲気とふだんの校内での雰囲気は全くの別モノで、若手教師たちの士気が上がる気配はその後も一向にみられなかったのです。

Oさんには頃合いをみて、他の教師と授業を交替してもらい、心機一転、取り組んでもらうことにしましたが、結局、新しいクラスでも授業運営がうまくいかず、数か月で学校を去っていきました。

 

 内発的なモチベーションをもたらすもの

 

これまでお話ししてきたことは、会社の話ではなく、学校の話です。
その内容も極端なものだったかもしれません。

でも、学校とはいえ、運営しているのは企業でした。
また、極端な内容だからこそ、単純化され、明確にみえてくるものもあるのではないでしょうか。

最後に、以上の経験から筆者が得た教訓をお話ししたいと思います。

まず、外発的に「モチベーションを与える」のは難しいということです。
モチベーションとは、社員が懸命に仕事に取り組み、達成感を得たときに、それがきっかけとなって新たな目標を見出し、あるいは設定するなかで、内発的に生じるものではないでしょうか。

そのためには、まず労働環境が整い、その中で社員が懸命に仕事に取り組み、その成果が適正に評価され、待遇に反映される、そのような仕組みが大前提です。
また、そうしたしくみがあるだけでなく、それを正しく機能させることも大切です。

そして、そのために経営者や上司ができることは、仕事の根幹に関わる人材マネジメントを適切に実施することです。

社員のモチベーションは、社員が成長する過程で、社員自身が見出していくものです。
モチベーション神話を捨て、なすべきことに目を向けましょう。

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参照
厚生労働省(2018)[正社員の仕事に対するモチベーションの向上につながる雇用管理について」
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/18/backdata/2-3-10.html

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