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【AIは人間に負ける?】「東ロボくん」育ての親が描くAI時代の未来予想図とは?

労働市場は深刻な人手不足に陥っている。
それなのに、巷間は失業者や最低賃金の仕事を掛け持ちする人々で溢れている。
その結果、経済はAI 恐慌の嵐に見舞われる。

そんな衝撃の未来予想図を描いている人物がいます。
新井紀子氏―「東ロボくん」と名付けたAI 搭載のロボットを育て、「ロボットは東大に入れるかプロジェクト」というチャレンジに挑んでいる数学者です。

今後、どのような仕事がAIに代替されていくか考えたとき、AIにはできないこと、つまり「意味を理解すること」が人間の強みになる。
ところが、読解力がないためにその意味にアクセスできない労働者が多い。

それが冒頭の未来予想図の根拠です。
つまり、これからの時代は読解力が「死活」を分けるというのです。 [1]

同氏は、以下のようにも述べています。

“AI ” はまだどこにも存在していない。
近未来にも誕生しないだろう。
コンピュータにできるのは四則演算だけである。

それはどういう意味でしょうか。

本稿では、AI にできることとできないことを明確にし、調査結果をふまえた上で、新井氏の描く未来予想図を検証してみたいと思います。

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 “AI”という言葉のマジック

 

まず、新井氏の「“AI ” はまだどこにも存在していない」という言葉について考えてみたいと思います。 [2]

 

~コンピュータにできるのは四則演算だけ~

ご存じのように、AI は“artificial inteligence”の略で、一般的に「人工知能」と訳されています。
でも、現在、一般に‘AI’と呼ばれているものは、“inteligence”あるいは「知能」と聞いて、私たちが
想起するようなもの、つまり人間の知能とは全くの別モノであると新井氏はいいます。

基本的にコンピュータがしているのは計算、それも「四則演算」です。
したがって、“inteligence”あるいは「知能」と呼ぶからには、そう呼ばれるにふさわしいものを四則演算で表現しなければなりません。

そう考えると、[本当の意味での人工知能」を実現するためには、以下の2つの方法論しかないことになります。

  • 人間の知能の原理を数学的に解明し、それを工学的に再現する

つまり、人間の脳が意識的にであろうと無意識的にであろうと認識していることすべてを、計算可能な数式に置き換えることを前提とする [3]

  • 工学的な思考錯誤の結果、偶然、そのようなものが出現する

まず、前者に関していうと、人間の知能を科学的に観測する方法が少なくとも現在はありません。
また、後者については、その可能性がゼロではないといえる程度の確率しかありません。

そのため、現在、「“AI ” はまだどこにも存在していない」のです。

私たちが“AI”と呼んでいるのは、実は、「本物のAI」を実現するために開発されているさまざまな「AI技術」のことです。
つまり、「本物のAI」と「AI技術」とを混同し、「AI技術」を総称して“AI”と呼び習わしているのです。

こうした混同が、あたかも「“AI”は人間のように考え、判断する」という幻想を産んでいます。

 

~IBMのワトソン~

人間のように理解し、考え、判断する。
まるでそのように見えるAI を例にとって考えてみましょう。[4]・[5]

2011年、IBMは「ワトソン」という名前のAIを開発しました。
みずほ銀行のコールセンターや東大の医科学研究所にも導入され、日本でも有名になったAIです。

このワトソンはアメリカの人気クイズ番組でチャンピオン2人を破り、ニュースになりました。
そのクイズ番組の問題は、例えば以下のようなものです。

MOZART’S LAST AND PERHAPS MOST POWERFUL SYMPHONY SHARES ITS NAME WITH THIS PLANET
(モーツァルトの最後の、そしておそらく最も力強い交響曲には、この惑星の名前がつけられています)

この惑星」は何かがクイズの問題です。

ワトソンはどうやって答えを探すのでしょうか。
その手順は以下のようなものです。

まず、問題文から「モーツアルト」、「最後」、「交響曲」を選んで検索します。
すると、Wikipediaの以下のようなページが出てきます(下の図1)。


図1 ワトソンはどうやって「ジュピター」という答に辿り着くのか
出典::*2 首相官邸 国立情報学研究所 (社)教育のための科学研究所 新井 紀子「AI時代を生きるための 『読解力』とは」 p.4
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/jikkoukaigi_wg/kakusin_wg1/siryou4.pdf

人間なら、ここでもう答に辿り着いたことになりますが、ワトソンにはもうひと仕事、残っています。
なぜなら、AIには文章の意味が理解できないからです。

それで、ワトソンはこのページから、検索に使った3つのキーワードが多く含まれる記述を探します。それが答である確率が高いからです。
図1の赤いアンダーラインの部分です。

そうやってどのへんに答があるか当たりをつけ、さらに「惑星」のカテゴリーの言葉を探します。
それに該当するのは図1のブルーのアンダーライン「ジュピター」だけです。

ワトソンがこうして答に辿りつくのに要する時間は2秒以内。
このようなことが可能になったのは、IBMのプロジェクトチームが必要なデータをWebから収集し、システムを組み、「最も確からしい答」を2秒以内に探し出すのに必要な計算機を構築したからです。

この「最も確からしい答」というところが象徴的です。

このように、AIは意味を理解して、答をみつけているわけではありません。
統計と確率という方法論を駆使しているのです。

したがって、その答が正しいという保証はありません。
ただ、ビッグデータとディープラーニングによって、「よく当たる」こともあるというわけです。
実際、2011年2月時点でのワトソンのクイズ正解率は7割を下回っていました。

でも、翻って考えれば、AI には考えることも判断することもできない、そこにこそ人間のアドバンテージがあるのです。

なお、本稿では、慣例に従い、現在“AI”と一般に呼ばれているものを、これ以降、カッコなしで AI と記すことにします。

 

 「ロボットは東大に入れるかプロジェクト」とは

 

冒頭でお話しした「ロボットは東大に入れるかプロジェクト」の話に移りましょう。[6]

新井氏がこのプロジェクトを始めたのは2011年。
10年計画で、「東ロボくん」と呼ばれるロボットが東大入試合格をめざすというプロジェクトです。

でも、合格そのものが真の目的だというわけではありません。
本来の目的は以下のようなものです。

  • 毎年、模試などの様子を公開し、「AIとは何か、AIには何ができて何ができないか」を示して、AIの実像を明らかにする
  • AIの実像をふまえた上で、「AIと共存するこれからの社会にどう備えていく必要があるのか」についてさまざまな立場の人が考える材料を提供する

このプロジェクトは当初、年間予算3,000万円という小規模なものでした。
ちなみに、先ほどのワトソン開発のための予算は10億ドルといわれています。

でも、センター模試に挑み始めた2013年からはマスメディアによって次々に取り上げられ、毎年の広告換算効果は5億円を超えています。

現在はこの時代を代表するAI プロジェクトになり、国際的な影響力もあります。
新井氏は2017年、グーグル創立者のラリー・ページやノーベル賞を受賞したジェームス・ワトソンらも登壇したTEDにデビューを果たし、このプロジェクトについてスピーチしました。[6]

 

~東ロボくんの実力~

ここで、「東ロボくん」の実力をみてみたいと思います。[7]

初めて模擬試験に挑んだ2013年、代々木ゼミナールの「第1回全国センター模試」は、5教科7科目900点満点、全国平均は459.5点でした。
当の東ロボくんはどうだったかというと、得点387で全国平均を大きく下回り、偏差値は45でした。

では、その3年後はどうなったでしょうか。
「2016年度進研模試 総合学力マーク模試・6月」では、5教科8科目950点満点(平均得点437.8点)で、523点を獲得し、偏差値は57.1に上昇。

その結果、合格可能性が80%以上の判定を受けた大学・学部・学科数は、下の表1のようになりました。

表1 東ロボくん「2016年度進研模試 総合学力マーク模試・6月」成績による合格可能性判定結果


出典:*2 首相官邸 国立情報学研究所 (社)教育のための科学研究所 新井紀子「AI時代を生きるための 『読解力』とは」 p.7
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/jikkoukaigi_wg/kakusin_wg1/siryou4.pdf

東ロボくんの合格可能性80%の大学は、全大学の約70%にあたります。
その中には、MARCH(明治大学、青山大学、立教大学、中央大学、法政大学)や「関関同立」(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)といった難関私立大学の一部の学科も含まれています。

 

 AIは労働力として人間のライバルになる?

上述の模試における東ロボくんの位置を表したのが下の図2です。

図2 「2016年度進研模試 総合学力マーク模試・6月」における東ロボくんの位置
出典:*2 首相官邸 国立情報学研究所 (社)教育のための科学研究所 新井紀子「AI時代を生きるための 『読解力』とは」 p.8
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/jikkoukaigi_wg/kakusin_wg1/siryou4.pdf

この図の縦軸は人数、横軸の2列の数字列のうち、上が得点数、下が偏差値です。

東ロボくんは平均値を大きく上回り、上位20%に入っています。
図2は、今後、労働力として人間の「ライバル」となるAIが日本のホワイトカラーを分断する様を如実に表していると新井氏はいいます。

確かにそう見えなくもありません。

この結果を受け、新井氏は、「どうすれば、東ロボくんに負けた80%の子どもたちに明るい未来を提供できるか」真剣に向き合うことを決意したと延べています。 [8]

ここで、筆者は「東ロボくんに負けた80%の子どもたち」という表現に違和感を覚えます。
勝ちか負けかといえば、確かに負けですが、それは、入試模試という1点においてのみです。
それは果たして子どもたちの将来に関わる絶対的な指標になる得るのでしょうか。

この点について、筆者は次の2点を指摘したいと思います。

まず、ひとつ目は、入試模試の結果を絶対的な指標とするのであれば、その前提として、肝心の入試制度や入試問題に対する分析と評価が必要だということです。

現在の入試制度や入試問題は、
「高等教育で学ぶのに必要な資質や能力を備えた人間かどうか」
を見極めるスクリーニング装置として機能しているかどうかという観点からの分析と評価です。

それを経てはじめて、入試模試の結果が子どもたちの将来に関わる、信頼にたる指標となり得るかどうかの判断がつくはずです。
そして、もしこちらの方に問題があるのなら、それを変革していく方向性が不可欠でしょう。

折しも、現行の大学入試センター試験は、2020年1月(2019年度)の実施を最後に廃止され、
2020年度(2021年1月実施)から新テスト「大学入学共通テスト」に移行することが決まっています。

この新試験は、英語科目の実施や数学・英語の記述式問題を巡って方針が二転三転していますが、基本方針はこれまで以上に「理解力・判断力」を問うというものです。

新試験が実際にどのような試験になるのかは現時点では判然としませんが、入試制度や入試問題は、このように時代や社会状況に合わせて変革が必要なものです。
そうした観点があれば、より説得力が増すのではないでしょうか。

もう1点は、個々の子どもたちの、それぞれの個性や特性に着目する観点があってもいいのではないかということですが、このことについては最後の部分で考えてみたいと思います。

 

 AI 時代には「読解力」が武器になる?

 

以上のことからわかるのは、AI時代を生き抜いていくためには、AI では代替できない仕事、AI が苦手な仕事、あるいはAIの普及によって新たに生まれた仕事を引き受ける必要があるということです。

AI の弱点は、応用が利かないこと、柔軟性がないこと、限定的なフレームの中でしか計算処理ができないこと、そして、なによりも意味がわからないことです。
人間はこの逆をいけばいいのです。

ところが、現実はそう甘くありません。

 

~RST(リーディングスキルテスト)とは~

RSTと呼ばれる読解力テストがあります。[9]・[10] 開発者はほかならぬ、新井紀子氏。

AI には意味がわからないが、人間には意味がわかる。
それなのに、意味がわかれば解ける問題で、どうしてAIの方が学生より正解率が高いのだろう。
それは、そもそも学生には問題文を理解する読解力が不足しているからではないか。

新井氏は、大学に入学したばかりの学生を対象とした数学テストの結果から、そう推測していました。それを確かめるのが、RSTの目的でした。

RSTの問題は以下の6分野から構成されています(下の表2)。

表2 RSTの6分野

出典:*3 一般社団法人 教育のための科学研究所「リーディングスキルテスト(RST)のご案内 ビジネスの必須スキル「読解力」を診断、高めるツール 」 p.3
https://www.s4e.jp/wysiwyg/file/download/1/1160

当初の対象者は全国の中学生と高校生でした。
その後、社会人にも対象を拡げ、2016年4月のテスト開始以来、4年間で延べ約20万人が受検しています。

最近では企業による受検が増え、2018年から2019年にかけて受検企業数は2倍、受験者は1万名を超えました。

 

~RSTの結果:中学生・高校生の場合~

まず、中学生と高校生を対象にしたテスト問題とその結果をみてみましょう。 [11]

課題文の出典は新聞と教科書、以下はその出題例です。

図3 RSTの出題例
出典:*2 首相官邸 国立情報学研究所 (社)教育のための科学研究所 新井 紀子「AI時代を生きるための 『読解力』とは」 p.10(上図)・p.11(下図)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/jikkoukaigi_wg/kakusin_wg1/siryou4.pdf

 

これらの例題を読んで気づいたことがあります。
私たちは文を読み解こうとするとき、文法的な知識や論理関係だけを手がかりにしているわけではないということです。

どちらの問題も、もし内容に関する知識があれば、その知識に照らして正誤が判定できます。
背景知識を使うというストラテジーはごく一般的なものであり、それも含めての読解力なのです。

したがって、これらの問題に正解したからといって、必ずしも文の基本的な構造や文の各部分の論理的関係を理解しているとは言い切れないと考えます。


表3 RSTの結果
出典:*2 首相官邸 国立情報学研究所 (社)教育のための科学研究所 新井紀子「AI時代を生きるための 『読解力』とは」 p.14
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/jikkoukaigi_wg/kakusin_wg1/siryou4.pdf

上の表3は、RSTの結果をまとめたものです。

この表からわかるのは、AI にできる問題(ブルーの部分)は生徒たちも正解率が高く、AIが未着手、つまりAIには歯が立たない問題(ピンクの部分)は生徒たちも正解率が低かったことです。

つまり、この表は、一見、AIが解けない読解問題ほど生徒も解けないという状況を表しているように見えます。

でも、先ほどみたように、背景知識を使って正解に至ることができる場合を考えると、6分類の基準が絶対的とはいえない可能性もあります。

 

~RST:対象が社会人の場合~

次に、社会人を対象とした場合についてみてみましょう。 [10]

問題文は、ファクトについて書かれた200字程度の文―教科書、新聞、法律、辞書、行政文書などです。

これから例題をみていきますが、随時、問題に対する筆者の意見を簡単に述べていきたいと思います。
それは、RSTを批判するためでは決してありません。

新井氏はこのRSTの結果をふまえて受験者の読解力の低さを指摘し、それが冒頭の未来予想図の根拠にもなっています。
したがって、RSTの内容を概観し、吟味することには意味があると考えるからです。

なお、正解は随時、示しますが、解説は以下のp.11に載っています。

RST パンフレット

【正解】 Q1:②、Q2:②、Q3:①、Q4:④

まず、Q1とQ2ですが、どちらの問題文ももう少しわかりやすいものであれば、正解率が上がった可能性があるのではないでしょうか。

でも、実際にこういう文があるのだから、このような文でも読み解ける力が必要だという考え方もあるかもしれません。

【正解】 Q5:①、Q6:②、Q7:①、Q8:②

次に、Q7について考えます。
筆者は選択肢の上の文「機械化によって比較的人手を・・・」の「比較的」という言葉にひっかかってしまいました。
小さいところを気にしすぎでしょうか。

Q8の問題文もややわかりにくい文かもしれません。

ちなみに、Q8と同じ問題文を使った係り受けの問題は、某新聞社の論説委員や経産省の官僚も間違えたということです[12]。

【正解】 Q9:①、Q10:①、Q11:①②④、Q12:①③

Q10は背景知識があれば、問題文を読まなくても正解がわかるかもしれません。

Q11は、擬態語の問題ですが、擬態語は擬音と違って、「その状態や身ぶり」と「音」との組み合わせを直観的に感じ取ることが難しく、その感受性には大変、個人差があります。

したがって、この問題は、受験者によってはハードルが高かったかもしれません。

以上のように、少なくとも筆者からみて、RSTの問題には改善点があるように思います。

また、私たちが仕事で文章を読む場合、その多くは業務に関係のある内容です。
なじみのない分野の文を、文脈から切り離して部分的に提示され、それを読解するという行為は受験者にとって厳しいものがあるかもしれません。

先ほどみてきたように、AIと人間とでは「読解」の方法が異なります。
繰り返しになりますが、人間は意味がわかり、文法知識や論理関係だけでなく、背景知識を参考にするなど、さまざまなストラテジーを用いて読解します。

新井氏は東ロボくんに読解力をつけさせるための「勉強」を参考にして人間向けのテストを開発したと述べていますが[13]、そうした手法に加え、人間ならではの読解法にも着目するような方向性があれば、より充実した内容になるのではないでしょうか。

 

 未来予想図は?

 

では、冒頭の未来予想図について、どう考えるべきしょうか。

先ほど、個々の子どもたちの個性や特質に目を向けるという視点がほしいと述べました。
最後に、このことについて考えてみたいと思います。

オックスフォード大学の研究チームは、コンピュータ(AI)化によって「10年から20年後に残る仕事となくなる仕事」を予測しました(以下の表4・表5)。

表4 10~20年後になくなる職業 25位まで  表5 10~20年後まで残る職業 25位まで


出典(表4):*1:「全雇用者の半数が仕事を失う」<AIが仕事を奪う<第1章
出典(表5):*1:「問われるコミュニケーション能力」<人間は「AIにできない仕事」ができるか?<第3章

表4と表5を比較してみましょう。
まず、表4の「なくなる」とされている職業は、ホワイトカラーが担う仕事やマニュアル化できる業務が多いという印象です。

一方、表5の「残る」職業は、専門職が多く、人と接する業務が主です。

この資料を信頼するならば、今後も残る仕事のカギは、AIでは代替することが難しい、専門性のある職業、その中でもとりわけ人と接する職業です。

リスクヘッジを考えるなら、そうした職業の中から、それぞれの子どもや労働者が自分の適性や個性にあった職業を選ぶというのが現実的な方策ではないでしょうか。

したがって、読解力だけでなく、職業の選択とそれに伴う専門性の獲得、人間関係の構築、コミュニケーション能力も重要な要素になるでしょう。

新井氏の東ロボくんやRSTはさまざまなことを考える材料を与えてくれています。
それらの材料を有益に用い、もうすぐそこまで来ているAIとの協働時代を冷静に考える。

現在は、そのような姿勢が求められる時期にきているという認識が必要です。

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参照

*1新井紀子(2018)『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』 東洋経済新聞社 (電子版 wer. 1.0)
第1章:MARCHに合格―AIはライバル
第2章:桜散る―シンギュラリティはSF
第3章:教科書がよめない―全国読解力調査
*2首相官邸 国立情報学研究所 (社)教育のための科学研究所 新井 紀子「AI時代を生きるための 『読解力』とは」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/jikkoukaigi_wg/kakusin_wg1/siryou4.pdf
*3一般社団法人 教育のための科学研究所「リーディングスキルテスト(RST)のご案内 ビジネスの必須スキル「読解力」を診断、高めるツール 」
https://www.s4e.jp/wysiwyg/file/download/1/1160

[1]*1:「はじめに―私の未来予想図」
[2]*1:「AI はまだ存在しない」<AI とシンギュラリティ<第1章
[3]*1:「論理、確率、統計に還元できない意味」<シンギュラリティ―は到来しない<第2章
[4]*1:「クイズ王を打倒」<ワトソンの活躍<第1章
[5]*2:pp.3-6
[6] *1: 「東ロボくんのTEDデビュー」<YOLOの衝撃―画像認識の最先端<第1章
[7] *1:「東大合格ではありません―「東ロボくん」プロジェクトの狙い」<偏差値57.1<第1章
[8] *1:「論理で数学を攻略」<東ロボくんの戦略<第1章
[9] *1:「数学ができないのか、問題文を理解していないのか? 大学生数学基本調査」・「全国2万5,000人の基礎的読解力を調査」<第3章
[10] *3
[11] *2:pp.10-11
[12] *1:「アレキサンドラの愛称は?」<3人に1人が、簡単な文が読めない<第3章
[13] *1:「東ロボくんの勉強をもとに、リーディングスキルテストを開発」<全国2万5,000人の基礎的読解力を調査<第3章

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