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なぜ大企業はベンチャーに勝てないのか?イノベーションのジレンマを克服するための大企業の事例紹介

大企業にとって、新しい事業や技術にいかにして参入していくかは大きな課題です。

企業経営の世界では「イノベーションのジレンマ」と呼ばれる理論が提唱されており、大企業が新しい事業や技術に参入するのは、中小企業(新興企業)よりも不利と一般的に考えられています。

大企業がイノベーションのジレンマを克服するためには、既存の枠内だけでビジネスを回しているだけでは不十分で、発想の転換が必要です。

この記事では、各企業のイノベーションのジレンマを克服するための取り組み事例を紹介し、大企業がイノベーションを起こすために必要な条件について考えていきます。

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イノベーションのジレンマが起こる原因を分析

まずはイノベーションのジレンマの理論を紐解きながら、大企業がベンチャーなどの中小企業に対してイノベーションで後れを取ってしまいがちな原因について分析してみましょう。

「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」

イノベーションのジレンマの理論においては、「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」の2種類のイノベーションが観念されています。

持続的イノベーションとは、既存の製品を徐々に改良していく技術革新を意味します。
既にシェアを取っている領域において持続的イノベーションによる利益拡大を志向することは、大企業にとって得意とする領域と言えるでしょう。

しかし、イノベーションのジレンマの理論が問題提起するイノベーションとは、後者の「破壊的イノベーション」の方なのです。

破壊的イノベーションとは、既存の整品に取って代わるような革新的な製品を開発する技術革新を意味します。

イノベーションのジレンマの理論は、大企業は構造的に持続的イノベーションを重視せざるを得ず、反面破壊的イノベーションを軽視してしまうという問題を指摘します。
その結果、大企業はベンチャーなどの中小企業と比較して、新興の事業・技術に対する参入が遅れてしまうというのです。

大企業の構造的な問題とは?

大企業が持続的イノベーションを重視し、破壊的イノベーションを軽視する構造的な問題については、次に挙げることにその原因を求めることができます。

①既存顧客や短期的利益を求める株主の意向が優先される
大企業には、顧客や株主など、既存のステークホルダーが多く存在します。
大企業は、自らを代替する可能性を秘めた競合企業との競争にさらされながら、常に既存のステークホルダーを繋ぎとめるための弛まぬ努力を続けていく必要に迫られています。

既存顧客や株主を満足させるためには、即時性の高い利益を挙げることが求められます。
そのためには、大企業は既に「稼げる」ビジネス(いわゆる「金のなる木」)を持っていますから、そのビジネスに注力して利益を挙げることが合理的ということになります。

このような理由から、大企業は既存製品の売り上げを拡大するために大きなリソースを投入せざるを得ません。
その反面、コスト・リターンの採算が取れない上に不確実で小さな新興市場には参入しにくいのです。

②既存市場で稼ぐことに特化した結果、異なる事業を行う能力が低下する
大企業は、既存市場でのシェア・ビジネスを拡大するために、組織をどんどん大きくしていきます。
シェアを取っている既存市場においては、マンパワーの投入は増益の観点からも有効であることが多いでしょう。

その一方で、組織の大規模化は必然的に、意思決定の速度を鈍化させます。

既にマーケットからの評価を得て軌道に乗っている市場においては、迅速な意思決定はあまり要求されないかもしれません。
しかし、新規事業にチャレンジする場面においては、次々と新たなアイデアを生み出さねばならないので、そういうわけにはいかないでしょう。

つまり、大企業の大規模化した組織自体が、新規事業への参画に関して障害となる可能性が高いということになります。

また、大企業の中で長年過ごした人材は、「その企業の社員であること」に過度に特化されてしまっている場合があります。
たとえばその企業のマニュアル化された業務には習熟しているものの、別の観点から物事を考えるという経験に乏しいなどの例が挙げられます。

このような偏った人材開発の傾向がある場合には、やはり新規事業への参画に関して不利に働いてしまいます。

③持続的イノベーションから破壊的イノベーションへの転換点を見破れない
持続的イノベーションにより既存製品の改良を重ねても、ある水準に到達すると、顧客満足度は頂点に達し、それ以上上がらなくなります。

たとえば、ハードディスクの容量は大きいに越したことはないものの、数TBもあれば十分という人がほとんどではないでしょうか。

しかし、大企業は時として、顧客満足度が飽和点に達しているにもかかわらず、それまでのビジネスの延長として持続的イノベーションに注力し続けるということがしばしば発生します。

その結果、破壊的イノベーションに十分なリソースを割くことができず、新興市場への参入が遅れてしまいます。

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イノベーションのジレンマ克服への大企業の取り組み事例

大企業が陥りがちなイノベーションのジレンマを克服するための方策を、実際の取り組み事例から探ってみましょう。

経済産業省とイノベーション100委員会が共同で策定した「日本企業における価値創造マネジメントに関する行動指針」(令和元年10月4日付)には、企業がイノベーションを起こすための行動指針と挑戦事例が提示されています。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kodoshishin/pdf/20191004003-1.pdf

特に、同指針の中の「行動指針5」は、大企業の抱える構造的な問題の解決に挑戦する内容となっており、注目すべきと言えるでしょう。P 27

行動指針5を具現化する取り組みとして紹介されている2つの事例を紹介します。

<事例①>KDDI株式会社
KDDI株式会社は、会社組織を以下の3層に分ける試みを行っています。

①0→1を作る組織(数十名規模)
②1→10を作る組織(1000名規模)
③10→100を運用する組織(20000名規模)

その上で各組織の独立を確保して、迅速な意思決定を可能にしています。
また、KPIも各組織で個別に設定されており、破壊的イノベーションを志向する組織についても、インセンティブを適切に設計する試みがなされています。

上記の取り組みは、1つの会社という枠を維持しつつ、イノベーティブ・セクションを既存事業から切り分ける試みの例として参考になるでしょう。

<事例②>株式会社みずほフィナンシャルグループ
株式会社みずほフィナンシャルグループは、社長直下の機関であるCDIO管轄の下、新規ビジネス創出機能を持ったBlue Labを新会社として設立しました。

みずほグループ自身はBlue Labに対してマイナーポーションの出資しか行っていません。
よってBlue Labは、みずほ本体とは切り離された会社と捉えることができます。

既存のステークホルダー(顧客・株主)からイノベーション機能を解放するためには、本体から分社化してしまうことが最も直接的な効果を持ちます。

株式会社みずほフィナンシャルグループの取り組みは、分社化の例として参考になるでしょう。

部署の独立化・社外化を通じた意思決定・評価プロセスの改革を

新規事業について既存事業と同じ意思決定・評価プロセスを採用していては、イノベーションのジレンマは克服できません。

大企業がイノベーションのジレンマを克服するためには、構造的な問題の原因となっている既存顧客や短期的利益を求める株主の声を良い意味で「シャットアウト」する必要があります。

この問題を解決するためには、単にスローガンを掲げて意識改革を目指すというだけは不十分です。
部署の独立化・社外化を通じて意思決定の迅速化・評価プロセスの適正化を行い、ビジネスの構造を抜本的に見直すべきでしょう。

また、同時に独立化・社外化された部署が実質的に本体によりコントロールされていないかのチェック・レビューも継続して行う必要があります。
この点に関しては、外部役員の招聘などと組み合わせるのも有効でしょう。

この記事で紹介した大企業の取り組みはあくまでも一例です。
しかし、新規市場にアプローチするに当たっては、既存市場に対する場合とは異なる考え方で臨む必要があり、そのための仕組み作りが重要であるということは納得できるところではないでしょうか。

紹介した事例や行動指針を参考にしつつ、自社がイノベーションを起こすために必要なことは何かについて考えてみていただければと思います。

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