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目標管理制度導入から20年 高度人材処遇制度導入で、日本の行く末は?

最近、よく見聞きする「日本人の働き方」の話題として、「同一労働同一賃金」と「高度人材処遇制度」があります。
この制度変更は、2000年を前後して導入された、「派遣労働の原則自由化」と「目標管理制度」を思い起こさせる、社会的インパクトの大きいものとなっています。
特に、大企業を中心に導入が始まりつつある「高度人材処遇制度」の導入は、成果主義を前提とした正規社員の長期雇用制度から、正規社員の流動化(転職しやすい社会)に繋がる可能性が高いと考えられます。
この記事では、目標管理制度の導入とその変容、高度人材処遇制度導入による今後の影響について取りまとめています。

 

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目標管理制度の基本

 

 高度成長期の日本企業では、勤続年数によって昇給や昇格が行われる能力主義による人事制度が行われていました。バブルの崩壊後、競争力を失いつつあった日本企業は、能力主義に変わる人事制度として成果主義を導入するようになっています。

 

能力主義とは

能力主義の定義は色々ありますが、この記事では、高度成長期における日本の多くの企業が人事考課の基準として採用した「日本型能力主義」とします。
高度成長期にあった日本企業は、商社、製造業などを中心に海外進出に取り組みようになりました。そして国際競争を勝ち抜くために、企業自身が従業員の能力開発に取り組み、有用で良質化した人材を内部に育成・確保し、能力主義による人事考課が採用されました。
社員に求められる能力は、企業目的達成のために貢献する職務遂行能力(職能)です。具体的な業績や成果だけでなく、知識・経験、上司や周囲の期待や信頼、本人の性格、生活態度などその企業が求めること全てといってよいでしょう。
そして、日本型能力主義の柱となる人事考課制度が職能資格制度です。
職能資格制度とは、社員の職務遂行能力がどの段階にあるのかを評価し、処遇を決定する制度です。
実際にバブル崩壊までは、多くの日本企業が、賃金制度として職能給と年齢給を併用し、年功序列・終身雇用など「日本型経営の象徴」となっていました。

 

成果主義とは

バブルが崩壊すると、企業は業績の悪化でコスト削減に取り組みます。特に大きなコストを占めていたのが人件費です。日本型能力主義では、人件費は勤続年数とともに右肩上がりになる前提でした。そのため、最初は人件費の削減を目標として、日本型能力主義から成果主義への転換に取り組み始めました。
成果主義とは、社員の職務・職責において達成した成果に応じて給与や待遇が決定される人事制度です。単純に言えば、成果を出せは給与アップや昇進に繋がりますが、逆に成果を出すことができなければ、現状維持または給与や処遇のダウンにつながる制度です。

 

成果主義と目標管理制度の関係

目標管理制度とは、成果主義の考え方に基づいた人事制度です。全社・各組織・各個人に目標を設定し、その目標の達成状況に従って給与や処遇が決定する制度です。
目標管理制度は、一般に次のプロセスで進みます。
・一定期間の全社や組織など上位レベルの目標を確認・合意する
・上位レベルの目標を達成するために、個人が設定すべき目標を合意する
・目標達成レベルの評価基準について合意する
・評価基準に沿った実績の評価を行い合意する
・実績評価に基づいて、給与や処遇などを決定する

 

能力主義と成果主義のメリット・デメリット

 

能力主義の考え方に基づく終身雇用と年功序列制度は、高度経済成長期において人材の育成と育成した社員を確保するために設計された日本固有の制度です。バブル崩壊以降、能力主義に代わり成果主義が採用されましたが、様々な課題が指摘されてきました。この課題を解決すべく、この20年、日本企業は、目標管理制度をはじめ成果主義の考え方を企業独自の考え方で修正・改善してきました。
経営環境は日々変化します。現在、高度人材処遇制度など新たな変化が顕在化する中、能力主義と成果主義のメリット・デメリットをモチベーションの観点から整理することが、新たな人事制度の設計に欠かせません。

 

能力主義 成果主義
メリット ・計画的・長期的な人材育成が可能

・将来に対する期待で安定的な人材確保が可能

・組織への貢献意欲や帰属意識が高まる

・明解かつ公正な評価に基づく処遇や報酬配分

・特に、若手や好業績社員の挑戦意欲の向上

・自己の開発に積極的に取り組む

デメリット ・事なかれ主義、

・若手や好業績社員の報酬配分への不公平感

・組織の停滞、ポスト不足が顕著

・計画的・長期的な人材育成が困難

・短期的なインセンティブ目的により離職者の増加

・組織への貢献意欲や帰属意識の希薄化

 

高度人材処遇制度の導入とその影響

 

導入以降様々な課題が指摘された成果主義は、この20年で年功序列・長期雇用型の日本型能力主義とミックスする形で修正されてきました。現在では、多くの企業で、基本給は能力主義、ボーナスは成果主義で評価する日本型成果主義を採用しています。
最近、IT企業を中心に「高度人材処遇制度」の導入を表明する企業が増えています。この制度は、基本給自体を成果主義の考え方で評価して給与や処遇を決める人事制度です。
成果主義の導入から20年。この仕組みが今後の日本企業の経営環境や労働市場環境にどのような影響を及ぼすのか注視する必要があります。

 

高度人材処遇制度とは?導入予定企業とその背景

 富士通は、1990年代に最初に目標管理制度を導入した企業の一つです。その富士通では、現在、「高度人材処遇制度」の導入を検討しています。

「富士通の時田隆仁社長は2019年8月8日、日経 xTECHなどの取材に応じ、2020年3月までをめどに高度人材向けに高給で処遇する制度を採り入れると明らかにした。AIやサイバーセキュリティーといった分野を手掛ける高度人材を対象に、専門性の高さや市場価値などを踏まえて、報酬を個別に設定できるようにする。」[1]

背景にあるのは、グローバルベースの競争の激化とICT技術の劇的な進展です。富士通は、「IT企業からDX(デジタルトランスフォーメーション)企業への変革」を宣言し、新会社設立、DX市場での連携強化、M&Aなど成長性の高い新規市場への集中投資に取り組むこととしています。
目指しているのは、当たり前のグローバル企業。日本企業のみがグローバルの中では異質であることを自覚し、特に人事制度の改革に取り組むことが競争を勝ち抜くためにも必要との思いがあるかと思われます。
具体的な制度としては、年齢や国籍に関係のない高度人材の高給化や通年採用の拡大、経営レベルの社外人材の登用などがあります。

<<あわせて読みたい>>

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高度人材処遇制度は定着する? 日本人の働き方感は変わる?

日本型能力主義から日本型成果主義に転換した現在でも、新卒で入社した会社で一生働き続けるのが当たり前との感覚があります。新卒離職率が、ほとんど変わっていないこともその一例です。
今の日本では、勤続年数が短く転職が多いことは、忍耐力がない・頑張れないなど、まだまだマイナスのイメージで捉えられることが多いように感じます。

一方、グローバルでは、仕事ができる人は、他の会社から声がかかりますし、自分でもより良い処遇を求めて進んで転職します。逆に、一つの会社にとどまることは、より良い処遇を受ける能力が無いと評価されてしまいます。

筆者も海外駐在経験がありますので、グローバルでの働き方感はよく分ります。
「できる人は転職することは当たり前」
この感覚が日本人に身につくことが、高度人材待遇制度を日本企業の定着させる一つの鍵となります。

 

高度人材待遇制度は定着する? 正規社員の解雇規制緩和論とは?

もう一つの鍵は、経営側の視点です。能力主義と組み合わせた日本型成果主義に高度人材待遇制度を導入すれば、確実に人件費アップを招きます。経営環境の不透明な中では、経営側が受け入れることはできません。
今後、改めて検討が加速されると予想されるのが正規社員の解雇規制緩和論でしょう。小泉内閣や安倍内閣で検討された、正社員の解雇規制の緩和論です。現在、日本の法制度では正社員を解雇することはかなり難しく、厳しい要件(整理解雇4要件など)を満たす必要があります。正規社員が手厚く守られている一方、非正規社員の不安定な状態は様々な点で課題が指摘されています。
OECD(経済協力開発機構)による、日本における労働市場の二極化への是正勧告を受け、正規社員の規制緩和論は、格差固定社会解消の有力な手段と考えられています。

 

まとめ

 

高度人材処遇制度と同一労働同一賃金の導入は、極端に言えば、年功序列・長期雇用の日本型人事制度を崩壊しかねかねない制度です。特に正規社員の解雇規制緩和は、「辞めさせやすいし雇用しやすい」労働市場環境を生み出します。
日本社会は、「会社」を「家業」の延長ととらえ、雇用を含め、長期にわたって社会に貢献することを美徳としていました。会社への帰属意識や忠誠心はその特徴をあらわす言葉であり、実は日本人だけに求められる感覚です。
日本人の「会社感」や「働き方感」がグローバルで唯一異質であることを認め、グローバルスタンダードに近づくよう変容していくのか、経営者や社員に限らず日本人として覚悟が問われる時代が近づいていると感じます。

 

[1]出所 日経 xTECH
「富士通が年収最大4000万円で技術者を厚遇、NTTデータ・NECに続く「大盤振る舞い」
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/02729/

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