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【知らないと恥をかく】「モチベーションに繋がる」の使い方は間違い?誤用しやすい言葉が何なのか解説

「モチベーションが高まらないから仕事が進まない」
ビジネスパーソンが職場で普通に発するセリフです。「モチベーション」という言葉をこのように使っている人は少なくないでしょう。

しかしDeNAの創業者で代表取締役会長である南場智子氏は、モチベーションを口にした若手社員に「給料をもらって仕事をしている自覚がないのか」と叱りました[1]。

モチベーションという言葉が軽くなっており、「やる気」と同じ意味で使っている人も多いようです。
しかし、この場合のモチベーションとは本来、「ワークモチベーション」と呼ばれるもので、100年の歴史を持つビジネススキルです。そして「本来の意味のモチベーション」はビジネスに役立つのは間違いありません。
本来のモチベーションの意味を知り、本来のモチベーションで仕事を進めることを、考えてみましょう。

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軽いモチベーションに警句

 

motivationは「動機」と訳されることが多いのですが、「やる気」という意味もあります。
そのため、軽い気持ちで「やる気が出ないから仕事をしたくない」と言いたいときに、「モチベーションが出ないから仕事をしたくない」と言い換えても、意味は通じます。

しかしビジネスで問題になるワークモチベーションや、本来の深い意味でのモチベーションは、軽いモチベーションとは似て非なるものです。
ワークモチベーションの詳しい定義は後段で紹介します。ここでは、南場氏が指摘する、モチベーションで仕事をすることの問題点について考察してみます。

 

南場氏はなぜ叱ったのか

南場氏が叱ったのは、DeNAの、そろそろ入社2年目になろうとする女性社員です。
南場氏はある日、2年目になろうとする複数の社員を集めて、この1年間の仕事を振り返ってもらいました。
すると件の女性社員が「~という仕事を任されてモチベーションが上がった」「ただその後、~があってモチベーションが下がった」と話し始めました。

南場氏は女性社員のモチベーション・トークを「我慢して」最後まで聞き、そして「給料をもらって仕事をしている自覚がないのか」と叱ったそうです[1]。

南場氏はその前から、若者が使うモチベーションという言葉に違和感を持っていました。南場氏が指摘する、この言葉の問題点は次のとおりです。

・体調や個人的な事情で仕事のテンションが上がらないときはあるが、そのようなときでもそれを口にすべきではない
・プロ野球選手が「打つ気が起きない」と言ったらプロ人生終わり、それと同じ
・報酬をもらっている以上、厳しさを持つべき
・モチベーション頼りの仕事は「想い型」だが、必要なのは「責任感型」

ここから、南場氏は、モチベーションそのものを問題視しているわけではないことがわかります。南場氏は「モチベーションの高いチームの方が、低いチームよりも成果を出しやすいのが現実です。リーダーは、チームの士気を高めて成果を出していかなければなりません」とも述べています。
モチベーションが業務の推進力になっていることは認めています。

南場氏は、モチベーションを都合よく解釈して、仕事をしない言い訳にしている人の態度を憂いているのです。
「気持ちがのったから仕事をしますが、気持ちがふさいだから仕事を中断します」と堂々と言うことは許されないのに、「モチベーションが高まったから仕事をしますが、モチベーションが落ちたから仕事を中断します」と表現を変えると通用してしまうのはおかしい、と言っているわけです。

モチベーションのうち、ワークモチベーションについて詳しく知れば、このような「誤用」を防ぐことができるかもしれません。

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100年前に遡るワークモチベーションの歴史

 

モチベーション研究の第一人者、池田浩氏(九州大学准教授)は、ワークモチベーションには100年の歴史がある、と指摘します[2]。
池田氏の論文「ワークモチベーション研究の 現状と課題─課題遂行過程から見たワークモチベーション理論」から、その歴史を紐解いてみます。

ワークモチベーションの原形は1911年のフレデリック・テイラーの「科学的管理法」に登場した「インセンティブ」でした。
インセンティブは、労働者の怠業を予防するために、標準的な業務を設定し、その達成度に連動して賃金(インセンティブ)を支払う給与体系のことです。
インセンティブほしさに労働者が頑張る仕組みをつくったわけです。「科学的管理法」には、ワークモチベーションという用語は出てきませんが、100年前の経営者にとっても、労働者の意欲の引き出すことが重要課題だったことがわかります。

ワークモチベーションとして研究が活性化したのは、1950~1980年代で、主要な理論はほとんどこの時期に提唱されました。

 

今日的な課題

しかし2020年代になろうとしている現代でも、従業員たちのワークモチベーションは必ずしも旺盛というわけではありません。
Leroy氏は2009年に、ワークモチベーションが現代でも課題になっている理由として、マルチタスクがある、と指摘しています。
現代の労働者は複数の業務を平行して行う必要があり、そうなると、ある職務から別の職務に移行するときに、先の職務に対する注意が残ってしまいます。これが、後の仕事のワークモチベーションの生成を困難にしているのです。

また、職務の分業化が進んで単純労働が増え、それを派遣社員や契約社員が担当する形態が広がりました。単純労働は、知識労働より、ワークモチベーションをつくりにくい性質があります。

派遣社員や契約社員が増えたことで、ひとつの職場に知的労働者と単純労働者がいることが多くなりました。
単純労働者は、単純労働しかやらされないので、独自にワークモチベーションが低下します。
知的労働者のワークモチベーションも、ワークモチベーションが低い人と一緒に働くことで低下してしまいます。
さらに知的労働者は、マルチタスクによって独自にワークモチベーションを低下させます。

 

ワークモチベーションの定義

 


ワークモチベーションの「正体」を探っていきましょう。
池田氏は、ワークモチベーションを次のように定義しています[2]。

”与えられた職務を精力的に遂行する、あるいは目標を達成するために頑張り続けるなど、組織の従業員がある対象に向けて行動しているダイナミックな状態”

「精力的」「頑張り」といった言葉から、ワークモチベーションには、エモーショナルな要素が含まれていることがわかります。

ワークモチベーションは、方向性、強度、持続性の3つの要素で構成されています。
方向性とは、「目標をなぜ成し遂げなければならないのか」「目標をどのように成し遂げるのか」といったことを明確にすることです。
強度とは、目標を達成するための努力や意識を高く持つ行為のことです。
持続性とは、目標を追求するために費やされる時間の長さのことです。

つまり、目標の意義を理解して、常に努力して、いつも意識が高く、持続して頑張り続けることの源が、ワークモチベーションというわけです。

 

まもなく2年目になる女性社員の間違い

ワークモチベーションの定義が理解できると、南場氏に叱られた、まもなく2年目になる女性社員の間違いがわかります。
女性社員は「~という仕事を任されてモチベーションが上がった」「ただその後、~があってモチベーションが下がった」と、経営者に言いました。

この発言から推測できる意識には、「方向性」はみられません。
なぜなら「目標をなぜ成し遂げなければならないのか」という意識を持っていたら、気分の高まりや低下で仕事への態度が変わるはずがないからです。
また、その発言からは、努力も高い意識も感じられません。さらに、入社から1年程度で落ちるモチベーションには、持続性を見出すことはできません。

南場氏に叱られた女性社員は、そのミーティングのあと、泣いたそうです。しかし彼女はその後、まぶしいほどたくましく成長しています[1]。
南場氏に叱られ、泣いたことで、本来のモチベーションである「ワークモチベーション」を身につけることができたのでしょう。

 

ワークモチベーションを働き方改革につなげた事例

 

ワークモチベーションを職場に普及させたことで、労働時間の削減と生産性向上に成功した事例を紹介します。
三菱電機株式会社のコンポーネント製造技術センター(以下、技術センター)は、職場内で共通の業務ワークフローをつくったり、成功事例と失敗事例の共有化を図ったりして、ワークモチベーションを高めて、残業時間を20%削減し、有給休暇の取得率を30%増やしました[3]。

1)ある取り組みをしたところ、2)ワークモチベーションが高まり、3)働き方改革を実現できた、わけです。
この3ステップを詳しく追っていきましょう。

 

1)ある取り組みをする

技術センターでは、社員1人ひとりに、違う仕事が与えられています。チームで開発するのではなく、1人ひとりの社員にテーマが与えられていて、それを1人で開発していくのです。
この職場にも先輩社員と後輩社員はいるわけですが、先輩は後輩の仕事を知らないので、後輩を指導してあげることができません。後輩もその状況を知っているので、先輩に頼りにくい雰囲気がありました。
それで若手社員は、経験不足から仕事が進まないという事態に陥っていました。
失敗を恐れて前に進めなくなり、その結果、納期が遅れる、ということもしばしば発生していました。

そこで技術センターでは、次の2つのことに取り組みました。
・職場内で共通の業務ワークフローをつくる
・成功事例と失敗事例を共有化する

この2つの取り組みによって、ワークモチベーションを高めることに成功しました。

 

2)ワークモチベーションが高まった

ワークフローをつくったことで、若手社員は「このとおりにやっていけば間違いなく進められる」という気持ちを持つことができるようになりました。
必ず出口があることを知っていて洞窟のなかを歩くのと、出口があるかどうかわからず洞窟のなかを歩くのでは、歩くモチベーションが異なってきます。

成功事例と失敗事例を共有化は、具体的には、職場のメンバーが年1回集まって「振り返り会」を開きました。これにより「失敗を恐れて前に進めなくなる」状態が、「失敗を恐れず前に進む」気持ちに切り替わったわけです。

 

3)働き方改革を実現できた

2つの取り組みによって、技術センターは次のように変わりました。

<気持ちの変化>
・仕事が楽しくなった
・談笑が増えた
・職場内で雑談ができるようになった
・職場の雰囲気がよくなった
・心理的な余裕が生まれた

<仕事の進め方の変化>
・気軽に相談できるようになった
・最初のスケジュール決めの段階から相談できるようになった
・次のアクションを決めるタイミングで相談できるようになった
・先輩からのアドバイスが増えた

<効率化や生産性の変化>
・仕事の効率が上がった
・アイデアがどんどん出てくるようになった
・スケジュールが「押す」ことがなくなった
・残業時間が20%減った
・有給休暇の取得率が30%増えた

理想の働き方改革といってよいでしょう。

 

総括~気分ではなく、組織的かつ戦略的に進める

 

三菱電機の事例から学べることは、ワークモチベーション改革は、組織的かつ戦略的に進めなければならない、ということです。
ワークモチベーションもモチベーションの一種なので、気持ちが深くかかわっています。しかしワークモチベーションを気分的なもので片付けてはならないのです。

ワークモチベーションが不足している会社や職場は、組織としてチームとして、ワークモチベーションを高めていく方法を検討しなければなりません。
そしてワークモチベーションが不足していることによる弊害を洗い出し、その解消に的を絞る必要があります。さらにその解決方法は、つまりワークモチベーションを高める方法は、具体的でなければなりません。

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参照
[1]「給料をもらって仕事をしている自覚がないのか」(DeNA)
https://dena.com/jp/article/002694
[2]ワークモチベーション研究の現状と課題(池田浩)
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2017/07/pdf/016-025.pdf
[3]残業時間20%削減、有給取得休暇30%増、モチベーション向上が働き方改革、生産性向上につながった三菱電機(モチベーションクラウド)
https://www.motivation-cloud.com/case/mitsubishielectric/

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