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『ティール組織』に見る新しい組織マネジメントの可能性

2018年1月に日本語版が発行された「ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現」(フレデリック・ラルー、‎ 嘉村賢州著、‎ 鈴木立哉翻訳)。原著である『Reinventing Organizations』の出版から日本語版の発売まで4年の月日が経過しているにもかかわらず、日本では大きな反響を呼んでいます。

OA化の波が押し寄せ、インターネットの普及やスマホの登場など、テクノロジー分野では何度もイノベーションが起き、今は急激な人工知能の発達や仮想通貨の広がりによって経済や産業構造が変化し始めています。一方で組織形態は何世紀も前から大きな変化はありません。しかし、経済の成長期が過ぎ去って資本主義の限界とともに組織も変化が求められており、様々な組織論が注目を浴びるなどまさに暗中模索の状態です。このような状況をブレークスルーするためのヒントとなるのかが本書なのです。

 

産業構造が変われば人の意識も変化します。本書では「人類の意識の進化に合わせて組織モデルも進化してきた」と述べており、過去から現代までの組織モデルの進化と、新たな組織モデルについて紹介しています。

 

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人間の意識進化と組織モデル

歴史家、心理学者、人類学者、哲学者等の膨大な過去の研究で共通していることは「人間性の段階的進化」です。”おたまじゃくしがカエルになるように”人類は新たな発達段階(ステージ)へ意識が変わることで突然変容し、新たな時代を迎えてきました。

人類が段階的に進化した時代の世界観と組織モデルは結びついており、人類の意識が新たなステージに入ると、新たな組織モデルがともに生まれています。

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5つの発達段階と組織モデル

本書では、人類は歴史の中で段階的に進化していく過程で5つの属性による組織が存在しており、それらの属性を色に例えながら紹介しています。「ティール」も色の名前であり、「青緑色」を意味します。

1.    レッド(衝動型)

およそ1万年前に生まれた形態で、特定の個人が力によって支配した組織です。「これが欲しい」という衝動的な自己の欲求を満たすために相手を力で支配し、力のない者は支配者に服従することで安全や安心感を得ます。組織は恐怖と服従の関係で成り立っており、正式な階層や役職は存在しません。

レッドでは長期的な見通しを立てる必要がないため、短期的な思考が優位に働きます。内乱や戦闘繰り返す地域や刑務所、治安の悪いスラム街などにありがちな組織です。

2.    アンバー(順応型)

紀元前4000年ごろに生まれた形態で、厳格な上意下達の命令系統によるピラミッド構造の組織です。短絡的だったレッドと比べると、過去・現代・未来と線形的な時間軸を理解して将来に向けて計画することができるのが大きな違いです。

計画立案はトップが行い、底辺の者たちが計画の執行をするなど、指揮命令系統がはっきりし、「正式」なプロセスによって誰が何をするか明確なルールが築かれています。秩序の維持や前例踏襲を重視し、変化や競争を好まない安定性があります。

また、人々が受け入れた一つの方法を「正しい」、それ以外は全て「間違っている」という善悪の考え方をし、不変のルールとして支配します。現在もアンバー組織は残っており、政府機関、国公立学校、宗教団体、軍隊などが該当します。

3.    オレンジ(達成型)

14世紀ごろに生まれた形態で、ピラミット構造ですが、アンバー組織のような倫理的な判断ではなく、他のものと比べて「うまく作用するかどうか」など「有効性」を軸にした思想を持っています。

実力主義で変化を歓迎することから競争が活発になり、イノベーションが生まれやすい形態に変化しました。また、目的を達成するために実績評価やボーナス制度などのいくつかのプロセスを生みました。グローバル企業を中心に、現代の多くの民間企業がオレンジ組織に該当します。

4.    グリーン(多元型)

18世紀くらいに生まれた形態で、オレンジ組織のピラミット構造を残しつつも従業員の多様性を尊重し、家族のようにお互いに助け合い、話し合うことでエンパワーメントを引き出します。

成果の有無で判断するオレンジ型に物質主義、社会的不平、コミュニティーの喪失などが目立ってきたために変化しました。公平、平和、調和、コミュニティー、コンセンサスなどを求める傾向があり、ポストモダンの学術思考、非営利組織、社会事業家、地域活動家の中によく見られます。

5.    ティール(進化型) 

1970年ごろから生まれた形態で、ピラミット構造ではなく、経営者中央からの指揮も統制もない、自律的な組織です。個人に合理性だけを求めるのではなく、生きがいなどプライベートな部分にも焦点を当て、個人の全体性を重要視します。

また、組織を「生命体」や「生物」に例え、組織の進化に向けて活動し、常に組織のどこかが変化します。組織の目的も、集まったメンバーにより進化していきます。本書では、ティール型組織の事例としてビュートゾルフ、FAVI、モーニングスターなど複数の企業を紹介しています。

ティール組織の3つのブレークスルー(突破口)

本書では、ティール組織の事例研究により明らかになった3つのブレークスルー(突破口)について説明しています。現代の民間企業が採用するオレンジ組織と対比しながら紹介しましょう。
ブレークスルーポイント オレンジ組織 ティール組織
自主経営 ・ピラミッド構造の組織
・ピラミッドの上部が意思決定
・組織図によって役割が決まる
・義務によって仕事をこなす
・固定された構造がない
・個々が意思決定(セルフマネジメント)
・意思決定の前に関係者や専門家の上限が必要
・発案や協力は個人の自由に決めることができる
・自発的な意思によって仕事をこなす
ホールネス ・研修の企画は組織のトップが行う
・仕事での成果を評価
・仕事に直結する能力のみを求める
・研修は自ら企画し、実績は組織全体で行う
・プライベートも含め、個人全体の情熱や学習経験、指名などを評価
・個人の能力全てを求める
存在目的・組織の慣行 ・存在目的の意識が希薄
・個人の行動をコントロールする
・生存競争を行う
・常に競争によるプレッシャーがかかる
・個人の指名に関心がない
・存在目的を重視
・組織の方向性を感じ取り自分で行動する
(他人にコントロールされない)
・競争という概念がない
・競争がないためプレッシャーがない
・個人の使命とその時期の存在目的の交差点を探る

1.    セルフマネジメント(自主経営)

オレンジ組織はピラミッドの階層構造で、ピラミッドの上部にいる人間が意思決定します。
組織図によって決められた役職や職務内容に沿って業務を遂行します。一方、ティール組織は経営者中央からの指揮も統制もない、仲間との関係性の中で動くセルフマネジメント組織です。誰が意思決定を下してもよく、代わりに事前に関係者と専門家に助言を求めるなど、組織で決めた助言プロセスによって意思決定することが決まっています。
オレンジ組織では役割が決められているため、やりたくない仕事であっても与えられた業務をこなす必要があり、有益なアイデアがあったとしても、上下関係によって聞き入れてもらえないことがありますが、ティール組織では意に沿わない仕事をする必要はなく、誰でも発案者になり、また協力者にもなれます。どの仕事に関わるかどうか、どのような関わり方をするかなどは個人の自由です。アイデアを出すことや、誰かが出したアイデアへの賛同、どのような関わり方をするかなどは個人の自由であるため、情熱を削ぐことなく仕事に取り組むことができます。

2.    ホールネス(全体性)

オレンジ組織は実力主義であるため、高い生産性や技術開発などの実績を出してもらうために組織のトップが従業員の能力向上のために研修を企画し、実績を評価し、昇進などを決め、従業員も出世することを目指します。また、仕事をするにあたっては個人が持つ一部の人格のみを必要としているため、誰もが仕事用の自分とプライベートな自分を分離させています。それに対してティール組織はセルフマネジメントを行う組織であるため、役職などはありません。自ら自身の研修プログラムを企画・実施し、評価面談では貢献や実績を認めるだけでなく、これまで何を学び、どこに情熱があり、何の使命があるかなど、一人一人と探求します。

個人の持つ能力を最大限に活かすために、仕事用の人格だけでなく、ありのままの姿を求めて組織が受け入れる環境を構築します。オレンジ組織のように、仕事で必要な部分のみを求められても、自分の一部分のみという不自然な形で応えるため、その人本来のパワーを出すことができません。しかし、ティール組織では、全てをさらけ出して仕事をして初めてその人が持つ能力全体を使うことができるため、圧倒的なパワーを引き出すことが可能です。

3.    存在目的・組織の慣行

オレンジ組織では自社が何を目的とした企業なのかを示す存在目的の意識が従業員にとって希薄なため、自己防衛本能が強く働きます。生き残るために「予算と統制に基づいて計画を立てる」「計画を重視し、そこから逸脱する場合には説明が必要」「目標数値に足りない分は埋め合わせをする」などのアプローチがとられ、従業員にプレッシャーを与え続けます。

一方、ティール組織では自社の存在目的を重視しており、従業員は「企業の存在目的に対してどう貢献できるか」を軸に意思決定します。従業員は誰かに行動をコントロールされることはなく、組織全体の方向性を感じ取りながら自ら進みます。予算や目標数値、予実分析などはありません。

オレンジ組織は「頑張らなければ会社が滅ぶ」などの恐れにとらわれ、周囲を敵だと思い込みます。そして、生き残るためには競争相手を犠牲にしてでもシェアを拡大し、利益を増やそうと競争に夢中になりますが、ティール組織では自社の存在目的が共有され、それを軸に意思決定を行うため、競争という概念がないことから、恐れからくる管理業務やプレッシャーから解放されます。

また、オレンジ組織では個人の使命について関心がありませんが、ティール組織では組織の存在目的と個人の使命との交差点を探っていき、それが見つかった場合は、「ホールネス(全体性)」で述べた個人の圧倒的なパワーが組織の存在目的を満たすために注がれます。そのため、自分の使命を知る人が多ければ多いほど組織のなすべき仕事に大きなエネルギーが集まります。

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ティール組織の実現性

本書ではティール組織の実践例として複数の企業を事例として紹介しています。

例えば、オレンジからティールへの変化の事例として地域密着型の在宅ケアサービスを行っているオランダの看護師組織「ビュートゾルフ」を取り上げています。

ビュートゾルフが設立されるよりも前に存在したある組織は、初めは管理職のいない組織でしたが、規模が大きくなるに連れオレンジ組織へと変わり始め、仕事は専門化し、より効率化するために管理され始めました。

効率化が優先されたことで患者との人間的なつながりはなくなり、組織内の人間関係も諍いが絶えなくなっていくなど、信頼関係を失っていき、医療の質も低下します。組織は本来の組織の目的を失い、結果的に仕事に疑問を感じたメンバーが離れていきました。

その後、一人の看護師が新たなビュートゾルフを立ち上げます。上司やリーダーはおらず、チームごとに計画し、重要な判断もチームで決め、また、組織の存在理由を意識し、組織の目的や自己の使命との接点を探るなどの研修プログラムを重視した結果、患者との時間を重要視しているにもかかわらず、一人当たりの介護の時間数は他介護組織よりも減り、患者の自立までの時間が短くなるような大きな成果を出し、高水準のケアを実現しています。

本書ではビュートゾルフのように3つのブレークスルーを実現している企業が純粋なティール組織であるとしながらも、ティールの意識レベルに合っていればティール組織と呼んでおり、事例の大半は一部のみティールの要素を取り入れたブレンド型です。例えば、モーニングスターでは自主経営を強烈に推し進めている一方、他の2つのブレークスルーについてさほど追求していません。

人々の意識レベルによって組織が変わってきたことを考えれば、一気に全てが変わるわけではありません。時代の変化の最中にある現代では、ティール組織に変わる素地を持つ民間企業が徐々にティールの要素を取り入れ始め、模索しながらもブレンド型を経て将来純粋なティール組織へと変わっていくことでしょう。

「効率化や生産性に限界を感じる」あるいは「自分や社員が疲弊しているように感じる」などオレンジ組織のマイナス面を感じ、解決方法に悩んでいる、または変化を望んでいる企業には、この「ティール組織」という書籍が革新的な解決につながるヒントになるのではないでしょうか。

 

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