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夏目漱石を読んで考える、働くこと・稼ぐことの意味『真面目とは真剣勝負』

 皆さんにとって、働くこと・稼ぐことにはどのような意味があるでしょうか。
 夏目漱石の小説「虞美人草」のセリフをもとに、この意味を考えたいと思います。

 

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「虞美人草」での一幕

 

 登場人物が友人に向けて発したセリフに、次のようなものがあります。

「君はなんだか終始不安じゃないか。少しも泰然としていないようだが。」

「他人が不安であろうと、泰然としていなかろうと、上皮(うわかわ)ばかりで生きている軽薄な社会では構った事じゃない。他人どころか自分自身が不安でいながら得意がっている連中もたくさんある。」

「ここだよ、小野さん、真面目になるのは。」

「この機をはずすと、もう駄目だ。生涯真面目の味を知らずに死んでしまう。死ぬまでむく犬のようにうろうろして不安ばかりだ。」


続いて、「真面目」であることの効用を説きます。

「人間は真面目になる機会が重なれば重なるほど出来上ってくる。」

「真面目になれるほど、自信力の出る事はない。真面目になれるほど、腰が据(すわ)る事はない。真面目になれるほど、精神の存在を自覚する事はない。」


その後、「真面目」とは何かを論じます。

「真面目とはね、君、真剣勝負の意味だよ。(中略)人間全体が活動する意味だよ。口が巧者(こうしゃ)に働いたり、手が小器用に働いたりするのは、いくら働いたって真面目じゃない。頭の中を遺憾なく世の中に敲(たた)きつけて始めて真面目になった気持になる。安心する。」


最後に、こう付け加えます。

「人一人真面目になると当人が助かるばかりじゃない。世の中が助かる。」


物語中、上述のセリフは、2人の女性のうちどちらと結婚するべきか、友人に諭す場面で発せられます。
 しかし、この一連のセリフには、働くこと・稼ぐことの意味が凝縮されているようにも感じられてなりません。ここでは、仕事をするという文脈に置き換えて、これらのセリフを味わっていきたいと思います。

 

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「真面目」は自分を助け、世の中を助ける

 

 「真面目」とは、小手先のテクニックではなく、全身全霊を尽くして物事に取組み、「世の中に敲きつけ」るような真剣勝負をすることです。
 けれども、勝負に出るということは、負けて傷つくおそれもはらんでいます。片手間で戦って負けたのであれば精神的なダメージは小さいかもしれませんが、全力を尽くしたのに負けたとなれば、自分の全てを否定されたような気がして、大きなダメージを負うかもしれません。誰しも、傷つくのは怖いものです。この恐怖から、真剣勝負を避ける選択を続けていくこともできます。そうすると、大きな傷こそ負いませんが、生涯「うろうろして不安ばかり」となってしまいます。

 「真面目」になると、自分を助け、世の中を助けることができます。これは、どういうことでしょうか。
 「自分を助ける」とは、今の言葉でいうと「自己実現」に近いように思います。「頭の中を遺憾なく世の中に敲きつけ」るようなアウトプットとは、自分の内側にあった潜在能力をこの世に顕在化させる営みです。このような機会を重ねれば重ねるほど、自分の存在を少しずつこの世に実現させていくことができ、人間が「出来上ってくる」ようになります。こうすることで、それまで抱いていた、何者でもない自分に対する不安から解放されていき、「安心する」のではないでしょうか。
 自己実現を、とりわけ仕事を通して達成することが叶うと、発揮された能力は社会に還元されます。それはすなわち誰かの役に立ち「世の中を助ける」ことになります。この結果、お金を稼ぐことができるのだと考えられます。
 また、自分を鍛えて、能力を高めれば高めるほど、この世に「出来上ってくる」自分のレベルも上がり、より強く、自分を助け、世の中を助けることができます。

 

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世の中を助けているが、自分を助けていない人

 

 セリフの中では「自分自身が不安でいながら得意がっている」人たちの存在にも触れられています。こういった人たちの中には、「世の中を助けているが、自分を助けていない人」が含まれているように思えます。
 現実社会において、就職してがむしゃらに仕事を続けた結果、高給取りになって喜んでいたけれど、ふと冷静になると、自分の仕事に価値が見出せず虚無感におそわれてしまった、という声を耳にすることがあります。これは、実は自分が「不安」を抱えていることに気がついた、という状態だと言えます。
 このような状態に陥ってしまうのは、ここでいう「真面目」でないことが原因であると整理できるかもしれません。
自分が心から価値を感じられないものに関する仕事においては、真の意味で「人間全体が活動」しているとは言えず、その結果、自己実現のプロセスに乗ることができず「安心」にたどり着かないのです。

 会社において、高い能力が評価されて昇給・昇格を手にした場合、会社から認められ、人より余裕のある生活を手に入れて自信がつくかもしれませんが、「自信力が出る」とは言えないかもしれません。
 「自信力」という言葉はこの作品の中で一度しか使われておらず、漱石がどういった趣旨でこの表現を選んだのかは承知していませんが、他人の尺度に基づき評価されて自信がつく段階と、自分の価値観に照らして自身を認められる自己実現を達成した時に、自分の内側から「自信力が出る」段階とを区別しているようにも思えます。自信力が出てはじめて「精神の存在を自覚する」ことができ、安心するのでしょう。

 自分がどのような価値観を持っていて、何を大事にしているのか。「世の中を助けているが、自分を助けていない」方は、これを見つめ直すことで、「自信力」を湧出させることができるのです。
 現実社会において、自分の価値観に照らして、働くこと・稼ぐことの意味を問い直したとき、起業や転職といった選択もあり得ます。また、現在の仕事を見つめ直すことで、自分の仕事の成果の中に、それまで見えていなかった側面が見えてきて、仕事に価値を感じられるようになるかもしれません。また、同じ仕事でも、取り組み方を変え、自分の価値観に沿った方法で進めることで、自分の仕事に価値を見出せるかもしれません。

 自分を助け、世の中を助けるような「真面目」な真剣勝負をしているか。これを自分に問い続けることで、より充実した働き方を追求できるのではないでしょうか。

 

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私たちの良き助言者

 

 漱石は当初、大学講師をしながら、いわば「副業」として「吾輩は猫である」や「坊ちゃん」などを執筆していました。
 その後、1907年に、彼は新聞社に就職します。そこで「サラリーマン作家」として書いた初めての小説が、この「虞美人草」の連載でした。[1]  新聞連載となると、それまでのマイペースな創作活動とは異なり、多かれ少なかれ日々締切を意識しながら執筆されていたことと思います。
 また、本業として小説を書くこととなり、言い訳が許されない状況で良いものを作らなければならない、という新しいプレッシャーがあったのではないでしょうか。漱石は転職を機に、働くこと・稼ぐことの意味を見つめ直しながら取り組んでいたのではないかと想像されます。

 100年以上前の小説ではありますが、人間の弱さや葛藤に対峙し続けた漱石が生み出した、含蓄のある言葉の数々は、今も、私たちの働き方や生き方の悩みに対する良き助言者になり得るのではないでしょうか。
 ぜひ、一人ひとりが仕事を進めていく上で。
 会社経営を進めていく上で、参考にしてみて下さい。

 

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参照
[1]
「虞美人草」夏目漱石著
https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/761_14485.html

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